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  第354回文化放送番組審議会は、平成21年1月27日に行われ、新年懇談会をかねて放送に関連した講演を中心に行われ、黒井千次委員長が講演されました。小説家、随筆家の黒井氏ならではの、「詩と小説の中のラジオ」というタイトルです。講演内容の概要をご紹介します。
 
○ いつもは、番組審議会として取り組むべき対象の番組があるのだが、たまには具体的なものから離れて、ラジオそのものについて考えてみたい。最近読んだ本の中に ラジオを扱った詩集と、ラジオ局が中心の小説があったので、ラジオがどういう風に扱われているかご紹介したい。

まず、斉藤恵美子さんの詩集 思潮社刊の「ラジオと背中」の中から「8月の声」という詩で、敗戦の玉音放送について、筆者の親世代を描いたものである。長いので略して紹介するが「父は戦争に行かなかった学徒のままで生き延びた・・中略・・・あの終戦もそこで知る敗れた声を聴くのである  ラジオひとつで戦争が、すっぱりそれが終わるだなんて  それに終わりがあるだなんて  声のあなたを聴くなんて・・・・ 後略 」

玉音放送は私も旧制中学の一年生でよくわけがわからずに聴かされた。ラジオが無ければ、隣組からとか新聞で知らされたのだろうか。もし、テレビがあったら、あの敗戦の受け止めかたも違っていただろう。

敗戦を知ったのが、テレビでなく、ラジオの声であって良かったと思う。それは、もう一つの詩「ラジオのことば」の中に出てくる< ・・・それが、映像で明かされると、言葉のままでいいのにと思う・・・・ 〉という部分に繋がるものなのではないか。ラジオそのものが生き物みたいに、戦争で負けた我々の中に入って生きていた。

一方、現代のラジオが描かれているのが、黒川創さんの小説「かもめの日」(新潮社刊)。小さなFM局で働く人たちが中心の物語で、 話の緩やかな展開や人々の柔らかな繋がり具合が、ラジオの持っているイメージと重なっている。 

リスナーが出てこないのだが、それでも漂うように存在し、顔の見えない人々にことばを届け続けるラジオの持つ世界が感じられる。 詩のほうは、1945年の限定された時間に刻まれた声を抱えた媒体、小説の方は、とりとめのない現代空間に漂う言葉の世界を作っている媒体、と漠然と考えた次第です。

* 思潮社 斉藤美恵子著 「ラジオと背中」
* 新潮社 黒川 創 著  「かもめの日」 より引用

以上、第354回文化放送番組審議会から 黒井千次氏の講演の概要をご紹介致しました。

        第354回文化放送番組審議会の出席委員は以下の方々です。            黒井千次委員長・加藤タキ副委員長・松尾羊一・白井勝也
寺尾睦男・弘兼憲史・松永真理・荒川洋治の各委員(敬称略)

文化放送番組審議会事務局





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