文化放送HPへ 番組審議会
 

第404回番組審議会は、新年懇談会を兼ねて1月28日(火)に開催されました。
恒例の、放送に関連したテーマでの委員の講演会が行われました。
今回の講演担当は現代詩作家の荒川洋治委員で、テーマは『放送のなかの知識』です。
その要旨をご紹介致します。

私は何年か、幾つかのラジオ番組で話をしてきました。その時に、この放送と、一般に本を読む事に決定的な違いを感じました。活字の時には黙読で色々な言葉を自分の中に受け止めますが、放送でそれを紹介する時には読み方が分からない。小野十三郎の『半分開いた窓』という詩集は、「開く」という漢字で、「ひらいた窓」なのか「あいた窓」なのか。放送の時に、読み方が急に分からなくなるという場合があるんですね。

「日本百名山」という深田久弥の名著では、百座の山が紹介されていますが、「山」という字についてルビをほとんど振っていない。そうすると「やま」なのか「さん」なのか地名辞典によって調べるしかなくて、非常に煩雑な事になる。で、山の名前が出てきた時は声に出せない、黙っているしかないという事態になります。

一番読みたいところを読ませてくれない、一番欲しいところにルビが無い。
人の名前もそうです。「郎」の読み方一つを取っても「お」か「ろう」か。逆に、活字文化の不足な面が照らされてくる。これは、新聞とか雑誌とか、単行本の世界に跳ね返ってくる問題です。

もう一つは、ある事柄を放送で紹介する場合の仕方です。
以前、小熊秀雄という詩人をNHKラジオで非常に上手く紹介していました。ところが、あまりにも十分過ぎると、こちらの腑に落ちて物足りなくなってくる。つまり、十分な紹介は聴いている人の中に何も残さず、物事がそこで終わる事だと逆に気付かされる。何か余地を残して、人々が興味を持つような紹介の仕方を考えた。放送の時の体験、失敗談が多少活かされて、自分の文章の書き方の中にも影響していると思いました。
アドラーとドーレンが書いた読書論の「本を読む本」というのがあります。読書が自分の内部を作る事の重要性が書かれています。テレビやラジオからの情報から、ものを考えていく事も大事だが、読書は、また違った道筋で人間を作り上げる。
聴いている人が、その与えられた知識を元に何らかの自分なりの動きを生じさせる精神的な、知的な関わりを生むような方向に持っていく為の紹介とか、そういう心得は、とても大事だと思います。

知識と情報の違いは、情報は“今”で、知識は情報も含むが、その人の中に堆積して、それをまた違った場面で役立てるというもの。放送でも活字でも、情報を伝えるだけでなく、知識に繋がる因子を意識する。ラジオを聴く側であれば、知識の受け止め方が大事だ。放送する側、送り手の側から言うと、その知識をどういうふうに、どんな文脈やスタイルで、もっていくかが大切だ。

例えば、元号に明治は67を足す、昭和は25を、大正は11を足せば西暦になるという事を若い人は教わらなかったという事です。
私は中学の国語の教科書の編集をしますが、学校では教えないらしい。西暦と和暦を別々に見て取る。本来、国語の時間に教えるものだと言う。日本文学や外国の話をしていても、時代が分からなくなるわけです。基本的な知識の欠如ですよね。

放送とか、新聞とか報道のあり方というのは、基本的に、国語の時間だと思うんですよね。皆が本当は知らなくちゃいけないのに、空白になりかねないようなところを、国語の時間に教えていく。知識の伝達あるいは享受という時に、大事な基礎的な事を、しっかりとカバーする。

ものを書くときに、これをどう伝えればいいのか、受け手はどう受け取るだろうかと、放送で自分も話してみて、長年、感じていました。もう一度、色んな角度から、この「知る」とはどういう事か、あるいは「伝える」という事を、改めて考えていきたいと思っています。

第404回文化放送番組審議会の出席委員は以下の方々です。 
黒井千次委員長・加藤タキ副委員長・寺尾睦男・弘兼憲史・松永真理・荒川洋治・福本容子の
各委員(敬称略)白井勝也委員は欠席。

平成26年 2月14日
文化放送番組審議会事務局

Copyrightc2007,Nippon Cultural Broadcasting Inc. All right reserved.
TOPに戻る 関連会社 個人情報 番組審議会 放送基準 採用情報 番組史 組織図 社長挨拶 会社概要 TOPに戻る お知らせ 文化放送HPへ