8月18日(水) アテネの物価 「よし、誰も見ていないな・・・」
周囲を確認するやいなや銀行のATMに飛びつき、あっという間に現金を引き出すと、素早くその場を離れます。よし!これで3百ユーロゲット!!
別にお金を盗んだわけではありません。最近、街の中心部シンタグマ広場などで、ATMからお金を引き出したところを狙われる窃盗事件が発生しています。こちらのATMは無防備というか無造作というか、遮蔽物もなにもない状態で通りに設置されています。周囲から丸見えなうえ、通行人も普通に背後を通り過ぎて行くので、用心してお金を引き出さなくてはなりません。
しかし、そうたびたびATMのお世話になっているわけでもないんです。なぜかというと物価がとても安い!から。東京の生活からは想像できないくらい、こちらではお金を遣いません。
たとえば僕たちが一日に何本も消費するミネラルウォーター(暑くて空気が乾燥しているので、500mlのペットボトルを常に携帯しています)。これが1本75円です。安いでしょ?お昼にギロス (グリルした肉の薄切りと野菜をピタパンで巻いたもの)を食べました。これが220円くらい。量も多くお腹いっぱいになります。コーヒーは一杯270円ほど。ただし観光客がよく来るカフェなどでは400円くらいになります。タクシーは初乗りが100円程度。市内中心部の移動であれば6百円以内でおさまります。ただしギリシアのタクシーは他の乗客との相乗りが常識。料金はそれぞれ請求されます。また最近になって、オリンピック・ボーナスと称して約400円を上乗せするようになりました。生鮮食品はたとえば大きなステーキ肉が4枚入ったパックが600円弱で買えます。やっぱり安いですよね〜。
おおざっぱに計算してみたのですが、アテネではおそらく月に15万円もあれば、家族4人生活できると思います。質素に暮らせば10万円でも可能かもしれません。
オリンピックを前にアテネでは物価が高騰しました。ホテルなどはいたしかたないのかもしれませんが、市民が困ったのは、生活必需品の価格があがったこと。これではいけないと政府が物価統制に乗り出したそうです。たとえばコーヒーだったら「適正価格は2ユーロ。観光地では3ユーロ」と決めて、違反したカフェには罰金を科すことにしたそうです。また不当に高い料金を請求された客は、レシートを持っていけばお店に返金してもらえるとか。それでなんとか市民の生活に欠かせない商品の価格が安定したと、何人かのアテネっ子が教えてくれました。
オリンピックが開幕してから、アテネ中の広場という広場で、毎晩夜遅くまでコンサートが開かれています。僕たちの泊まるホテルの近くでも、伝統音楽が奏でられるなか、手拍子がうたれ、お年寄り夫婦が楽しそうに踊っていました。こんなふうにお金を遣わずに楽しむ術を知っていることも、物価安に一役買っているのかもしれません。
|
|
 |
8月17日(火) アテネ食事情 皆さんお待たせしました!文化放送入社以来、給料はすべて食べることにつぎ込んできたわたくしが、アテネの食事情についてレポートいたします!いや〜取材に(というか一通り食べるのに)一週間もかかってしまいました。
ギリシア料理の特徴を一言で表現すると「薄味でヘルシー」!調理の基本スタイルは、素材の味をそのまま生かして塩と胡椒、オリーブオイルやレモンで味付けするというもの。日本人の舌にはあう味です。アテネの中央市場(8時から15時くらいまでオープン)に行くと、アジやサバ、イワシ、鯛、カジキマグロ、タコ、イカなど見慣れた魚が並んでいます。日本と違うのは青果市場の野菜たち。
代表的なギリシア料理をご紹介しましょう。まずはサラダから。マッシュしたポテトとタラコと玉ねぎを混ぜたタラモサラダ、酸味のあるフェタチーズ(クリームチーズをイメージしてください)をフォークで崩しながら、オリーブオイルのかかったトマトやキュウリと和えて食べるグリーク・サラダが定番です。次は前菜。ひき肉とライスを炒めてぶどうの葉で包んで軽く煮込んだドルマダギア。クリームソースがかかっています。ひき肉とジャガイモ、ナスを重ねて焼いたムサカはトマトソースで。
魚料理は小ぶりのイカを唐揚げにしたカラマラキアや、ほのかにガーリックの香りをつけたガリデス・ティガニスという海老のフリッターがビールのお供に最高です。タコや小さなイワシのマリネは冷えた白ワインと一緒に。
肉料理はスブラキです。チキン、ポーク、ラムなどを串に刺して焼いたもの。塩、胡椒のシンプルな味つけです。このほかハーブや塩で味をつけた肉団子もよく食べられています。オリーブオイルで揚げて食べたり、トマトソースと煮込みソース状になったものをライスにかけて食べたり、いくつかのバリエーションがあります。
ギリシア特有のお酒には、ブランデーにアニスの香りをつけたウゾ(度数が高いので水で割って飲みます。水を入れると白く濁るのが特徴)や、メタクサというブランデー(瓶の星の数でグレードを表す。7つ星まであるようです)が有名です。しかし暑いせいか、やはりビールやワインを飲む人が多いですね。特にワインは素朴な味がします。もしギリシアにいらした時には、松ヤニを入れた伝統的なワイン、レツィナに挑戦してみることをおすすめします。
いかがですか?ギリシア料理のイメージは伝わったでしょうか。
先日書店でもっとも売れているという料理本を買ったのですが、そのタイトルは『ヘルシー・グリーク・フード』となっていました。素材に手を加えずシンプルに食するのがギリシアスタイル。そこに海をはさんだトルコやイタリアからの影響も加味されて、豊かな食文化が形づくられています。
日本から大量にインスタント味噌汁やお吸い物を持ち込んだのですが、まだいちども手をつけていないのが我ながら不思議です。ギリシア料理と和食には相通ずるものがあるのかもしれませんね。いずれアテネのレストラン事情についてもお知らせします。
さぁ、きょうは何を食べようかな♪
|
|
 |
8月16日(月) 海風の吹くスタジアム エーゲ海をのぞむ海沿いにあるヘリニコ競技場。ここには野球やソフトボール、バスケ、ホッケーなど、主に球技を中心とした競技場が集まっています。「エーゲ海をのぞむ・・・」なんていうと風光明媚な場所を連想されるかもしれませんがさにあらず。ここを訪れた人は競技場の周囲に広がる荒涼とした風景に驚くはずです。
ヘリニコ競技場はギリシアを代表する航空会社オリンピック航空の飛行場跡地につくられました。そのため競技場の周辺には、古い滑走路や朽ちた格納庫が打ち捨てられたように残っています。僕たちが街の中心部から乗ったバスは、まず競技場から離れた滑走路の上に到着し、そこから各会場に向かう小さなバスに乗り換えます。次のバスを待つあいだは何もない滑走路の上で待っていなくてはなりません。さびれた滑走路の上を海からの強い風が砂煙をあげていく様は、まるでアリゾナのようです(たぶん・・・行ったことはありません・・・)。
ところで、野球やソフトボールをテレビでご覧の方々、目が疲れませんか?ヘリニコは風が強く、センターカメラが揺れるのです。僕らもメディアセンターの大画面で見ていて酔ったような気分になることがよくあります。
アテネに来て感じることは、自然環境がけっこう過酷なことです。ギリシアといえば青い海に白い家というイメージを持っていたのですが、とんでもない勘違いでした。眼球を刺すような太陽の光の強さ、乾ききった砂、海からの強い風。そんな自然環境に選手たちが翻弄される場面をいくつも目撃しました。ソフトボールの日本対アメリカ戦では、太陽が目に入った宇津木麗華選手が痛恨の落球をしましたし、自転車のロードレースでは、砂でタイヤがすべって選手が大怪我を負っていました。アウトドア競技の選手たちは、オリンピックのプレッシャーはもちろんのこと、このアテネ特有の厳しい自然とも戦わなくてはならないのです。
しかし条件が過酷であればあるほど、観る側にとっては楽しいのもまた事実。鍛えあげられた肉体を持つ選手たちが困難に立ち向かう光景を見ていると、まさに今回はオリンピック発祥の地にふさわしい大会だと思えます。
|
|
 |
8月15日(日) ミッドナイト・バス オリンピックの楽しみのひとつに、さまざまな人々との出会いがあります。まずは偉大なるアスリートたち。金メダリストと間近で言葉を交わせるというのは、ほんとうに贅沢な経験だと思います。
そして取材先で一緒になる人々。特に蟹瀬さんは知り合いが多いので、彼らと取材のあいまに談笑することもあります。テニスの松岡修造さんやサッカーの武田修宏さん、スポーツキャスターの青島健太さん、QRリスナーにはお馴染み小倉智昭さんなどなど。『深夜特急』で有名な作家の沢木耕太郎さんとも取材先でよくご一緒します。蟹瀬さんとは行きの飛行機が同じだったとか。
それからもちろん、見ず知らずの人との偶然の出会いも楽しみのひとつ。
深夜に仕事を終えて、IBC(国際放送センター)から、バスでホテルまで帰ることになりました。オリンピック中は、ほぼ24時間各国メディアの人間を輸送するためのバスが運行されています。ホテルは地区ごとにグループ分けされ、そのグループごとにバスが振り分けられているという、たいへん合理的なシステムになっています。
その日、深夜3時40分発の乗客は僕ひとりでした。運転手は髪を後ろで束ね、ちょっとジョン・レノンに似た背の高い男。彼は「ミルトス」と名乗りました。ひとりなのに後ろに座るのも変なので、僕はミルトスのすぐそばに座りました。国際メディアセンターからホテルまでは30分ほど。人気の途絶えたアテネの街を2人きりのバスが走り始めました。
「どっから来たんだい?」「日本だよ」「日本なら知っている。ヨコハマ、コウベ、ナガサキ・・・」。
ギリシアは海運王国です。そのため元船乗りが多く、日本人だと知るや、自分の知っている日本の港町の名前をあげ始めます。ミルトスも例外ではなく、バスを停めてひとしきり思い出話を聞かされました(約15分)。
バスが再び走り始めました。「ミルトス、子どもはいるの?」「あぁ、5歳の男の子がね。写真見る?」
彼はまたバスを脇に停めて、写真を見せてくれました・・・(約15分)。
「トーキョーはどんな街だい?」「大きな街だよ。それにとてもお金がかかる」「じゃあさ、一ヶ月の家賃はいくら?何ユーロ?」「ユーロで?ちょっと待ってね・・・」
計算が面倒くさいから10万円をユーロに換算することにしました。
「だいたい735ユーロだね」「ホワッツ??オーマイガーッ!!!」
急ブレーキが踏まれ、またバスが停まりました。しまった!!またバスが停まってしまった!
アテネ市内では、2部屋のアパートメントでも400ユーロが相場とのこと。5万4千円くらいですから確かに安い(ミルトスが興奮してしまったので約20分)。
結局ミルトスはその後3回車を停めました・・・。
1度目はオリンピック開催国のギリシア国民の誇りについて、ギリシアのタバコを勧めながら話してくれました。2度目は自分がいかに海が好きかということを、ナイフで器用にリンゴを剥きながら話してくれました(2切れくれました・・・)。
3度目はもし休日がとれたらギリシアの内陸部に足をのばしてみろと、ビスケットを勧めながら力説してくれました・・・。
「じゃ、いい仕事をしろよ!!」
親指をくいっとあげ、さわやかに笑いながらミルトスは去っていきました。
まもなく夜があけようとしています。きょう15日はギリシアでは聖マリアの祝日だそうです。
あぁ、神よ、我に休日を与えたまえ・・・。
|
|
 |
8月14日(土) 世界がアテネに押し寄せた!! シャワーのお湯がアテネの太陽で真っ赤に焼けた肌にしみて、毎朝お風呂場で悲鳴をあげています。到着した日よりも日差しの強さが増しているような気がするのは気のせいでしょうか。
ところで、僕たちのあいだでよく話題になるのが、ギリシアの気象庁の人たちはいったいなにをやっているんだろう?ということ。これだけ雨が降らないと、はっきりいって「天気予報」という仕事は成立しないのではないか。そんな疑問がわいてきます。でも天候に変化がないと、選手にとってはコンディションを整えやすいようですね。
しかし我々は大変です。各国の放送局の拠点となっているのがIBC(国際放送センター)というところなのですが、ここの中が物凄く寒いんです!放送機材保護のために、館内は21℃に設定されています。外は35℃の暑さですから、気温差は実に15℃近くになります。いまIBCでは風邪をひいてしまった人をよく見かけます。
感動と興奮のオリンピック開会式から一夜明けて、各競技がいっせいに始まりました!
きょうはまず女子バレーの日本対ブラジル戦の取材からスタート。競技場に向かうメトロの中では、ブラジルの応援団が大騒ぎしていました。歌を歌ったり、ダンボールをひろげてマジックでプラカードを作り始めたり、警備員から注意されてしまうくらいの騒ぎようです。駅から競技場にかけても、目につくのは黄色と緑のブラジル国旗ばかり。
こうなるとだんだん不安になってきますね。日本人サポーターはどうしたんだ?君たちはこんな日本から20時間もかかるような場所で戦っている女子日本代表を見捨てるのか??
そんな不安に駆られていると、2台のバスが到着。そこから日本人サポーターがぞろぞろと降りてくるではありませんか。あぁ!やっぱり来てくれたんだ!サポーターたちは整然とセキュリティ・チェックを受け、行儀よく会場に入っていきました。
それにしても、てんでバラバラなブラジル応援団と組織だった日本人サポーター。まったく対照的でしたね。それはそのまま、代表チームのプレースタイルの違いにも通じていました。
会場でアテネ在住35年になるという日本人女性にお話をうかがいました。
彼女によれば、ギリシア人は何事も直前にならないと盛り上がらないそうです。当初懸念された会場建設の遅れも、オリンピック直前にあっという間に解消されてしまったとのこと。それまで面倒くさそうに作業していたギリシア人たちが、一転、目の色を変えて仕事を始めたそうです。不可能を一夜にして可能にしてしまうギリシア人気質を、彼女は「ギリシア・マジック」と表現しました。
世界の202の国と地域から1万6千人が参加するアテネ・オリンピック。街は各国の人々で溢れかえっています。競技の結果だけでなく、それぞれの国の文化の違いにも目を向けていきたいと思います。
|
 |
close
|