浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2020年10月5日 優しい香り

今年も金木犀が香る季節が来た。
例年なら、もっと早く気付くはずだが、今年はマスクをしているからか中々気づかなかった。
週末八王子に戻るとマスク越しによい香り。
庭の木を見ると、オレンジ色の小さくて可愛らしい花が身を寄せ合うように所々咲いている。
中国ではお茶やお酒「桂花陳酒」として使われたり、
最近ではアロマや香水としても人気がある。
何でも、金木犀にはイライラを和らげる作用があり、
この香りを嗅ぐことでリフレッシュやリラックス効果があるという。
これはラベンダーと同じで「気持ちを落ち着かせる香り」であることから安眠にも効果があるそうだ。
だから 街の中で金木犀の香りがした時、気持ちが安らのだろうか。
「良い香りだ」何だか懐かしいような、切ないような気持ちになりながら、
ふと疑問が湧いた。
金木星は何故こんなに良い香りを漂わせるのか。
小学校の理科で習ったかしら・・。
改めて調べてみると、花が香るのは「虫を集めるため」。
花の香りで虫を誘い、虫の体に花粉を付けてもらい受粉を促す。
そして、受粉をし、実ができて種が出来、子孫が繁栄していく。
このサイクルのため、花は香りを放つとあった。
しかし、金木犀の花に虫が寄っているのをほとんど見たことがない。
さらに調べてみると、
多くの花の香りは 虫たちを引き寄せるための香りだが、
金木犀の香りは一部の虫たちを追い払う、忌避行動のための香りとなっているらしい。
唯一この匂いが平気なのがホソヒラタアブという虻。
この虻だけが金木犀の花に付くので、開花期間の長くない金木犀の花に対して、
虻が専門的に受粉してくれ、効率的に受粉が出来るというわけ。
特定の虻との専属契約とは知らなかった。
ところで、甘く強いあの香り、心地よいものにもかかわらず、
一定の年齢以上の人は、「トイレの芳香剤の匂い」を浮かべるはずだ。
かつてトイレの芳香剤といえば、キンモクセイの香りが代表格だった。
ところが、現在、スーパーやドラッグストアの芳香剤売り場には、
ラベンダーに森林、レモンなど柑橘系に、「せっけんの香り」など、
様々な香りのバリエーションが出ている。
それなのに、キンモクセイは、見ない。何故なのか。
専門家の話によると
「今ほどインフラが進んでいない頃は、
汲み取り式のトイレがほとんどで、悪臭を放つトイレも多かった。
その臭いを消すために、悪臭に負けない、より強い香りが必要だった。
それが、甘めでかつしっかりした香りのキンモクセイだった」
かつては便所の近くに金木犀を植える家庭も多かったという。
この「キンモクセイの香り」1970年代初頭に始まり、1990年代前半まで主流だった。
約20年間も「トイレの香りといえばキンモクセイ」だった。
私たちにイメージが定着しているはずである。
ではなぜ近年減ってきたのかというと、
キンモクセイの香りが余りにも便所の芳香剤と結びつき過ぎ敬遠され始めたことと、
臭いの元を分解する消臭技術の発達で香りの種類が豊富になったことがある。
これまでは臭いが10あるとしたら、12の強い香りで打ち負かしてきたのを、
消臭技術が発達し、10のニオイを3位まで抑えた上で、
そこに2〜3の香りを加える方向に変わってきた。
そしてやわらかな香りの消臭芳香剤が増えたという。
個人的には、今の技術で、本来の「金木犀の香り」を再現した消臭剤が出てくれないかと望んでいる。

金木犀しづかに時を降らせをり  中根美保

優しい香り
優しい香り
ピラカンサと彼岸花
ピラカンサと彼岸花

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