浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2020年10月26日 一直線

それでも飛行機雲は力強く描かれた。
3歳牡馬による「第81回菊花賞」(G1・芝3000メートル)は25日、京都競馬場で行われ、
断然の1番人気、コントレイルが直線、突き抜けてアリストテレスとのたたき合いを制して首差で勝利。
1984年シンボリルドルフ、2005年ディープインパクトに次ぐ、史上3頭目となる無敗の三冠を達成した。
父であるディープインパクトと親子2代での無敗達成は史上初の快挙だ。
加えて、先週、デアリングタクトが史上初となる無敗の牝馬(ひんば)三冠制覇を達成。
そして今回牡馬(ぼば)のコントレイルが菊花賞に勝ち、
牝牡の無敗三冠制覇が同一年に達成され、これも史上初の快挙。
コントレイルは2歳時に3連勝でJRA賞最優秀2歳牡馬を受賞。
3歳になった今年、皐月賞は半馬身差、ダービーは3馬身差で優勝。
秋の神戸新聞杯を2馬身差で勝利、菊花賞も制覇しデビューから無傷の7連勝。
父ディープインパクトとの2代制覇という空前の偉業を達成した。
コントレイルは、父ディープインパクト、母ロードクロサイトという血統。
先週、デアリングタクトが史上初となる無敗の牝馬三冠制覇を達成。
コントレイルの素晴らしさとしてスタッフが口を揃えるのは、オンとオフの切り換え。
馬房にいるときは体を横にして寝ていることが多く、横に人が来ても構わず寝つづけているという。
図太いことに加え、人と馬との関係を理解し、人を信用しているのだろう。
対照的に、レースに向けて強い調教をすると自分でカイバの量を控えて戦闘態勢を整え、走りに集中するという。
コントレイルは皐月賞を462kg、ダービーを460kgで走り、今回の菊花賞も458kgほぼ同じ体重で出てきた。
ディープインパクトの三冠での馬体重は、444kg、448kg、444kg。
史上初の無敗の三冠馬となったシンボリルドルフのそれは、470kg、476kg、474kg。
2頭の無敗の三冠馬は、三冠すべてをほぼ同じ体重で走っていた。
トレーニングと実戦を重ねるほど贅肉が取れてバランスが整い、外観には表れない中身が充実していく。
「名馬は自分で体をつくる」と言われる所以である。

コントレイルに騎乗したのはデビュー25年、福永祐一騎手。
これまた父が福永洋一天才ジョッキーと呼ばれた騎手だ。
1979年レース中の落馬事故により一時は生死を彷徨った。
しかし不屈のリハビリの成果で今は元気に過ごしている。
その事故は裕一騎手が2歳の時。小学5年の時、それまで習っていた乗馬を、
「おもしろくない」といって自分から辞めた。
しかし、時が経ち騎手になることを決めた。
母親の反対もきかず競馬学校を受験。1度は落ちる。
それでも次回受験して合格。
学校に入って2年目、厩舎実習の時、自分が調教に携わっていた馬がレース中に骨折、
厩舎で安楽死処分が決まり、その場に立ち会った。可哀そうでただ泣くだけだった。
競馬学校の先生は言った。
「いいか祐一、ちゃんと見ておけ。俺たちの仕事はこういう犠牲の上に成り立っている仕事なんだ」
そこから「馬は命を懸けて走っていること、だから馬に対しては真摯でいなければいけない。」
など、いろいろと教えられた。
3年の学校生活の後、1996年3月2日に騎手デビュー。
そこから約1カ月、開催リーディングを取ることができた。
しかし3月27日のレースで大きなミスを犯し、30日間の騎乗停止になる。
加えて、事故により腎臓を摘出し、3カ月半以上休養を経験。
ここまで様々なプレッシャーやアクシデントを乗り越えてジョッキー生活を送っているのだ。
そんな福永祐一騎手は、保田隆芳元騎手、岡部幸雄元騎手、武豊騎手に次ぐ史上4人目のクラシック通算10勝。
「思っていた以上に接戦になりましたし、相手(2着のアリストテレス)の脚いろもよかったですが、
何とかしのいでくれて、馬が応えてくれた。最後まで馬が抜かせなかった。改めて、すごい馬だと思いました。
我慢してくれました。相手の手応えがよかったので、"まずいな"とも思いましたが、
強い気持ちを持って臨みました。3000メートルはントレイルには長い距離。
それでも、勝ち切ってくれた。無敗の3冠馬は、
ディープインパクトが達成して以来、その息子が達成したということは、世界でも類をみないこと、
すごいことだと思います。その鞍上にいられたことを誇りに思います。
これからは、(同期の)牝馬のデアリングタクトもそうですし、古馬相手の新たな戦いのスタートになる。
日本で一番強い馬、という称号を勝ち得るために、これからもコントレイルと頑張っていきたいと思う」
父、洋一氏は息子の快挙に「おめでとう」のあと、どんな言葉を続けるだろう。

「人間は、目標を追い求める動物である。目標へ到達しようと努力することによってのみ、
人生が意味あるものとなる」   アリストテレス 
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