浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2020年11月2日 芝G1 8勝牝馬

3週連続の激走は、単なる偶然なのだろうか。
歴史的名牝の快挙により、今週もまた日本の競馬史が書き換えられた。
11月1日「第162回天皇賞・秋」(3歳以上オープン、GI、芝2000メートル、12頭立て)は、
クリストフ・ルメール騎手騎乗で断然の1番人気に支持されたアーモンドアイ(牝5歳)が勝った。
GI馬7頭と豪華メンバーが集結した秋の中距離王決定戦を制し、史上最多の芝GI8勝目。
アーモンドアイは、2018年に桜花賞、オークス、秋華賞、ジャパンCと4つのGIを制し、
2019年は天皇賞・秋に加え、海外GIのドバイターフでも勝利を挙げた。
5歳となった今年、ヴィクトリアマイルでGI7勝目を挙げたが、安田記念では2着。
約5力月の間隔で、今回天皇賞・秋を制し、2002、2003年のシンボリクリスエス以来史上2頭目、
牝馬では初となる秋の天皇賞連覇を達成した。
「シンボリルドルフやディープインパクト、キタサンブラックら歴代の名馬も果たせなかった
"壁"を突破し、日本競馬の歴史に新たな1ページを刻んだ。」
と言われるが、シンボリルドルフやディープインパクトは種牡馬の役割が非常に大きく
4歳で予定通り引退した。同じ土俵で語ることに異論を唱えるファンがいるのは事実だ。
それでもアーモンドアイが素晴らしい馬であることには変わらない。
そのアーモンドアイも、オーナーのシルクレーシングの規定では
牝馬が現役をつづけられるのは6歳の3月までだそうだから、彼女にとって最後の秋シーズンだった。
今回アーモンドアイの偉業は「ルドルフの呪い」から脱したことも挙げられている。
先に記したが、アーモンドアイは6月7日の安田記念(G1)で2着に敗れている。
「芝GI8勝」が壁となっていたのはなぜか。
シンボリルドルフという競走馬がいた。
大層な強さで皐月賞・日本ダービー・菊花賞の三冠を無敗で制覇したのは1984年。
中央競馬にグレード制が導入された年だった。
そのルドルフが史上最多の芝GI7勝を挙げて以来、
肩を並べるところまで来た馬は、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、
そしてキタサンブラックと、アーモンドアイの前に5頭いたのだが、みな壁を超えることはできなかった。
いつしか人はこのジンクスを「ルドルフの呪い」と呼ぶようになった。
今回も呪いが発動するのか?と言われていたところを、見事に8勝目を勝とったのだ。
大きな勝利の原動力は鞍上のクリストフ・ルメール騎手。
2018年天皇賞・秋から天皇賞5連勝。
1949~51年の保田隆芳元騎手以来69年ぶり2人目となる天皇賞・秋3連覇となった。
大一番での信頼度や実力は説明はいらない。
そのルメール騎手、インタビューで目を赤くしていた。
「信じられないパフォーマンス。今日、日本一になった。
もちろん強い馬だが、毎回乗る時はプレッシャーが凄いです。
本当にG1・8勝目を獲りたかったから重圧があった。
改めてアーモンドアイは凄くよい競馬をした。
最後はきつかったけど、よく頑張ってくれた」と馬を称えた。
前走2着の安田記念は出遅れが響いたが、今回はスムーズなスタート。
最後の直線はフィエールマン、クロノジェネシスの猛追を受けたが
「ちょっと怖かった。坂のぼってからはちょっとキツかった。外から馬がきたので心配したが、
アーモンドアイはめちゃくちゃ強かった。頑張ってくれた」と振り返った。
その外から来たフィエールマンのジョッキーは先週勝った福永祐一。
先週の菊花賞は、コントレイルが優勝。
福永祐一騎手のコントレイルと.ルメール騎手のアリストテレスとのゴール前の壮絶な一騎打ちがハイライトとなった。
今回は、逆の立場で相棒に鞭をいれていたのだ。
ところで、アーモンドアイは、共同馬主クラブ・シルクレーシングの所有馬。
共同馬主クラブは、『馬主にはなれないが馬を所有したい』という人たちに向けてつくられたシステム。
会員はパンフレットを見て馬体をチェックしたり、父母や兄弟姉妹、
入厩予定の厩舎などから活躍できるかどうかを見極めたりして、支払える金額の範囲内で個々の馬に出資する。
競走馬は1年あたり8000頭が生産される。そのうち共同で所有できる馬は約1割の800頭前後。
この800頭は21社ある共同馬主クラブにて所有され、それぞれ募集価格と募集口数が提示されるという。
アーモンドアイは募集価格3000万円、1口6万円で500口の出資者が募られた。
つまり、のべ500人の出資者が1口6万円で共同馬主(一口馬主)となっている馬だ。
この値段はかなり安く、厩舎では新人教育の馬として管理されていたと聞く。
育成が進められるにつれ、2歳春を迎える頃には「いつしか騎乗歴の長いスタッフが乗っても、
押さえるのが大変になっていました」と言われるほどの成長ぶりを見せていた。
その馬が記録を作ったのだ。
アーモンドアイは、目頭と、目尻がきゅっと閉じていて、
幅広い部分は、広すぎず、狭すぎずの、スッキリ、キリッとした東洋的神秘を持つ目のこと。
新記録の瞬間、彼女の眼には何が映ったのだろう。

芝G1 8勝牝馬
芝G1 8勝牝馬

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