2007年1月、浜松町に新しい落語会が誕生しました。
その名も『浜松町かもめ亭』。

駅と直結する文化放送メディアプラスホールの立地を生かし、毎月一回定期開催する落語会です。
文化放送と小学館の共催で、新進気鋭の若手落語家から人気実力共に揃ったベテラン落語家まで、バラエティに富んだ出演者を予定しています。
これまで落語を聴きに行ったことのない人も、 耳の肥えた落語ファンも満足すること間違いなし!
入場料金も、週末のお仕事帰りに気軽に寄れる料金設定です。
是非、週末の楽しいいひとときをお過ごしください。
また小学館は、『らくだ亭』の名前で、 2007年夏から神田・神保町界隈に新たな落語会の開催してます。
こちらも2社の共催という形で実施運営していきます。
この二つの落語会を是非、ご贔屓に。

『浜松町かもめ亭』はチケット絶賛発売中です!
詳しくは、下記までお問い合わせください。。








第36回かもめ亭レポート

文化放送の落語会「浜松町かもめ亭」の第36回公演が11月19日(木)、文化放送メディアプラスホールで催されました。
今回は柳派の実力者、柳亭市馬師匠と”直情で表現される繊細さ”の人、橘家文左衛門師匠の二人会と言うご趣向です。
当日の番組は以下の通りです。

一、鈴々舎やえ馬 「初天神」
一、橘家文左衛門 「天災」
一、柳亭市馬   「粗忽の釘」
中入り
一、橘家文左衛門 「ちりとてちん」
一、柳亭市馬   「味噌蔵」

鈴々舎やえ馬さん
鈴々舎やえ馬さん

前座のやえ馬さんは鈴々舎馬風師匠のお弟子さん。
おなじみの「初天神」を童顔を上手く生かした表現で演じてくださいました。
この噺、子供の計算があまりに際立ってしまうとほのぼのした味が薄くなってしまいますが、やえ馬さんの口演には無邪気な感覚が横溢して楽しい出来でした。

文左衛門師匠
橘家文左衛門師匠

「浜松町かもめ亭」初登場の文左衛門師匠は十八番の「天災」と「ちりとてちん」の二席。
「コワモテ」「乱暴」というキーワードで語られることの多い文左衛門師匠、今回の「かもめ亭」でも、わざとお客さんに聞こえるように舞台袖でやえ馬さんを脅かしたり(もちろんそれ自体がギャグです)、みずからのキャラを確立していますが、そのじつ、噺の組立には繊細な神経が張り巡らされていることは誰の目にも明らかです。

今回の「天災」では主人公の八五郎が乱暴と屁理屈で周囲を混乱におとしいれますが、紅羅坊の先生に「天災」の教えを説かれ、納得する一瞬の表情や、良かれと思って町内の痴話喧嘩に割ってはいるくだりには八五郎の
無垢な人間性がよく出ています。
もう一席の「ちりとてちん」でも、後半の試食のくだりは仕草も大きく、ギャグだくさんに運んでいますが、文左衛門口演のポイントは憎まれ口を叩き続ける竹さんが悪意のない人物であるところにあると思います。
料理を並べての悪態が、照れから来る偽悪のように感じられるので、旦那のイタズラも洒落のきつい”遊び”という領域に留まり、後味は悪くありません。ここを本当の対立にしてしまうと落語からは離れてしまいます。
文左衛門師匠の口演はまことに落語らしい、ほのぼのとした「ちりとてちん」でした。

柳亭市馬師匠
柳亭市馬師匠
もはや大看板と言っても良い市馬師匠は「粗忽の釘」と「味噌蔵」の二席でした。「粗忽の釘」は演題の通り、底抜けの粗忽者を主人公にした一席です。主人公がひたすら逸脱し続ける噺なので(「粗忽長屋」や「堀の内」など粗忽噺はそういうものですが)噺家さんにとって実は難しい部類のネタだと伺いますが、市馬師匠は余裕の筆さばきで昼下がりの滑稽を鷹揚に描いてくれました。

落語国の法則の通り、この噺の夫婦も女房はしっかり者ですが、旦那の言動に呆れながらもそんな旦那をうまく立てている(もちろん立てた上で真の主導権を持っているのは女房です)賢さ、その根底にある亭主への愛情がよく表現され楽しい一席でした。
トリの出し物は冬の噺「味噌蔵」。吝嗇家の大旦那と奉公人たちが繰り広げる悲喜劇の一席ですが、ここでも市馬師匠の描写の腕は冴え、大店の中での人間関係、お互いの距離感などが的確に表現されます。大旦那はいわば吝嗇で奉公人を苦しめる存在ですが、ここでも(物語の表面にはほとんど出てこない)女房と子供の存在が隠し味になっています。
倹約一方で生活をしていた旦那が女房を貰い、やがて子をなすという”想定外の”プロセスは地の語りであっさりと描写されますが、旦那の像に人間的な深みを与えています。旦那の留守に奉公人がひらく宴会の場面では炭坑節で美声を聴かせるサービス。あたたかみのある市馬落語の魅力が横溢した高座でした。

松本尚久(放送作家)

今回の高座は、近日、落語音源ダウンロードサイト『落語の蔵』で配信予定です。どうぞご期待下さい。



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