第4回かもめ亭レポート

<『あちたりこちたり』を口演した柳家小満ん師匠>

小学館と文化放送の共催による『浜松町かもめ亭』の第4回公演が4月19日(木)、文化放送メディアプラスホールで開かれました。
今回の番組は、
『道灌』 立川こはる
『貧乏花見』 桂雀喜
『お見立て』 五街道雲助
『あちたりこちたり』柳家小満ん

こはるさんは立川談春門下の女性の前座さん。『かもめ亭』では第一回から高座返しも受け持っています。眼鏡を外した顔立ちは名探偵コナン風。
「立川流は高座に上がれる回数が少ないもんで」とボヤきながら、江戸城を作った太田道灌公が、「七重八重 花は咲けども山吹の 実のひとつだけに なきぞ悲しき」という歌の意味が分からず、「余はまだ歌道に暗いのう」と嘆いた、という逸話を基にした典型的な前座噺『道灌』へ。
こはるさんは歯切れよく噺を進め、座を固めます。しかし好事魔多し!緊張からか、何故か途中で咳が出はじめ、調子が乱れたのはお気の毒。喉は不随意筋で心理的影響が出やすいから御用心御用心。

続く桂雀喜さんは上方の俊英。師匠の桂雀三郎師に良く似た風貌で、「お寺で落語会がありましたか、午前中が葬式、夕方、焼き場から戻って初七日という間に挟まった会で、開演中、初七日の始まりを待つ人が骨壷を持って外で立ってる」と、お寺の会場が多い上方地域寄席事情をマクラに『貧乏花見』へ。
東京では『長屋の花見』でお馴染みで、お茶が酒の代り、沢庵漬けが蒲鉾の代りは東京型と同じですが、原典の上方型は更に過激!長屋の面々が花見に行く格好は「襦袢の襟を取って羽織のつもり」「裸に鍋炭を塗って洋服のつもり」という凄さの爆笑編。
雀喜さんは帰りの新幹線の都合か(笑)途中で切りましたが、サゲまで聞きたかったなぁ・・。

次なる五街道雲助師匠はユッタリと大きな高座ぶりで、お得意の廓噺から『お見立て』。田舎の金持ち・杢兵衛大尽と会いたくないお女郎が、「花魁は病気だ」「死んじゃった」と若い衆に嘘を吐かせる。所が杢兵衛大尽、「見舞いに行く」「墓は何処だ」と言うので若い衆は四苦八苦。結局、嘘の墓参へ連れて行くハメに!純朴な杢兵衛大尽が実に不思議な声で泣くおかしさ、平然と嘘をつく癖に愛嬌のある花魁のしたたかさ、師匠の特徴であるクリクリした目をパチクリさせる若い衆の困り方を、雲助師匠は鮮やかに描き分け、タップリと笑わせてくれました。

主任はベテラン、柳家小満ん師匠。「ネタを考えて来たんですが、前に出たネタと似ちゃうんで、どうしようかと迷ってます」と笑わせて、自作の『あちたりこちたり』へ。
浴衣で石鹸箱を手に銭湯へ行った男が、銭湯から居酒屋、キャバレーと、ついつい梯子して行く様子を、酔った男の一人語りでトロトロと・・。「居酒屋にあった三味線が破れてて、そこにサロンパスが貼ってあるのが許せない」とか、「銭湯の名前が丸正湯(マルセイユ)、途端に、手に持った石鹸がシャボンと変わったね」という洒落たセンスの良さ!銭湯のロッカーの番号を、「18番、嬉しいね、レッドソックスの松坂と同じだ!」など、酔ってウダウダ言う男の軽妙さ・可愛さも実に楽しい「?に楽しい「?人?????大人の酒飲みエッセイ」で笑いの連続!

かくして第4回の『浜松町かもめ亭』、上方落語の破天荒さあり、廓のダマシあいあり、大人の粋なエッセイありと、お楽しみ戴けた模様。
次回、5月公演もご期待あらん事を。

(高座講釈・石井徹也)

今回の高座は、近日、落語音源ダウンロードサイト『落語の蔵』で配信予定です。どうぞご期待下さい。



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