第17回かもめ亭レポート

<古今亭壽輔師匠>

小学館・文化放送共催の『浜松町かもめ亭』第17回公演が、
5月23日(金)、文化放送メディアプラスホールで開かれました。
今回の番組は、『喜多八・壽輔二人会』。
"虚弱体質の柳宮喜多八殿下"こと柳家喜多八師匠と、"寄席の怪人にして名物男"こと古今亭壽輔師匠という、落語協会・落語芸術協会の誇る個性派二人の初共演が話題となっております。

番組は
『間抜け泥』  柳家緑君
『欠伸指南』  柳家喜多八
『ぜんざい公社』  古今亭壽輔
仲入り
『盃の殿様』  柳家喜多八
『文七元結』  古今亭壽輔
という出演順。

開口一番は、柳家花緑師匠門下で、かもめ亭は二度目の出演となる柳家緑君さん。
簡単な自己紹介だけで、スッと泥棒物のマクラを振ると、いつまで経っても上達しない泥棒が空き巣狙いをしようと、留守の家を探して街中をウロウロする『間抜け泥』へ。花緑師匠の祖父、人間国宝・五代目柳家小さん師匠の十八番『出来心』の序盤部分、つまりは「御家芸」。

シャキシャキした芸風の花緑師匠とは全くタイプが違い、緑君さんはフワリ、ヒョロリとした芸風で、それがヘボな泥棒の頼りなさ、与太郎っぽい太平楽な無邪気さにはピッタリ!
親分に空き巣のノウハウを習ってから、いざ出かける時、「それでは親分、空き巣狙いに出かけて来ます!」と大声で叫ぶ姿や、隣の家から空き巣狙いを始めてしまい、親分に叱られる様子が妙におかしい。特に、「隣の家はマズかったかなァ。様子が分かってるから、いいかと思ったんだけど・・・」というギャグのとぼけた調子には笑いました。
ちょいと口調の流れる所もありましたが、フワリフワリと、如何にも柳家らしい語り口で、御座を固めてくれました。

二番手は、柳宮喜多八殿下こと柳家喜多八師匠が『かもめ亭』2度目の登場。
いつものように、わざとヨタヨタ高座に現れるや、世にも不景気な表情をして、「今日は、かもめ亭、始まって以来の不入りだそうで(※冗談ですよ)・・・私と壽輔師匠の二人が一同に会したという歴史的な日にも関わらず、なんかこの会場も、キリッとしてませんね。ドンヨリとしている」
と笑わせてから、「寄席というのは今や数少ない"大人の遊び場"なんです。皆さんのように、友達のいないもの同士が慰めあう場所なんです」と、お得意の寄席観や、子供時代、ラジオを寝床に持ち込んで落語番組を聞き漁った記憶へと話を展開。
さらに、幼い頃、なんと絵画・ピアノ・ヴァイオリンを習った経験があり(※ほんまかいな?)、家にはグランドピアノまであったという、"隠れセレブ"ぶりを語ってから(さすが学習院大学馬術部出身!)、落語国ならではのくっだらない稽古事に、町内の若いものが出かけるという、立川談志家元曰く"史上最高の怠惰無気力落語"である『欠伸指南』へ。

28歳で独り身の上、何を習っても様にならない八五郎が、横丁に出来た「欠伸指南所」の師匠が"乙な年増で、しかもどうやらオレにトーンと来てる"とかなんとかノボセちゃって、付き合いを嫌がる友達を無理矢理誘い、女師匠目当てに稽古に出かけます。
唾で髷を整えてから、粋がって稽古所の門を潜ったところが、師匠と思った乙な年増は初老の師匠・欠伸斎長息(けっしんさい・ちょうそく)のお内儀さんと分かってガックリ。
途端に態度が変わり、実にいい加減に欠伸を習い始めますが、欠伸斎先生演じる「夏の欠伸」の優雅さに、ついつい引き込まれると、自分も夏の欠伸の稽古を始めます。
しかし、元より何をやっても様にならない八五郎、船に乗ってユラユラと揺れる動きもメチャクチャなら、欠伸だかくしゃみだか判らない出来で欠伸斎先生も大弱り。まして、それをただ見せられていた友達は・・・・というお噺。

喜多八師の師匠である小三治師匠も得意にされているネタですが、喜多八師は
★女師匠だと、八五郎が勘違いして出かける。
★欠伸斎という名前を先生が名乗る。
★「皆さんのしているのは、あれは"あくびのようなもの"で・・・」と皮肉な科白を欠伸斎先生に言わせる。
★船に乗っている様子を八五郎が演じるのが、左右に震えてボクシングの動きみたい。
★不器用なくせに、八五郎が平然と「根が器用なタチなんですが・・」なんて言ったりする。
といった具合に細かく手を入れ、すっかり自分流の噺にされております。
特に、小三治師を思わせる欠伸斎先生の渋さと、お内儀の妙に訳あり風の言葉つき、それと正反対な八五郎の動きのバカバカしさが抜群。一見、渋そうなのに『ラヴレター』や『鋳掛屋』などを演ると、凄くおかしい喜多八師らしい魅力溢れる高座となりました。

仲入りは、愛弟子・六代目古今亭今輔師匠の真打昇進披露もひと段落。ホッとされている古今亭壽輔師匠が『かもめ亭』初見参!
一度見たら忘れられない、黄色く光る着物に羽織、そして口ヒゲという、東京落語界屈指の個性的ないでたちで、"寄席の名物男""寄席の怪人"と呼ばれる壽輔師にまず、「突然、熱帯魚が現れまして、お客様も呆然自失・・・」なんて言われれば、そりゃ客席は驚きます。
「なるべく演者を喋り難い状態にする。こうでなきゃ、かもめ亭らしくない」と、壽輔師独得のシニカルなマクラに客席からチラホラと笑いが沸き起こると、「それで良いんです。全員が拍手をし、声を揃えて笑うのは北朝鮮だ。ここは自由の国・日本なんですから」と、更に言われて客席が爆笑に至る。これぞ正に壽輔師のペースなのであります。
 「中国で数万人が亡くなった地震のあったばかりなのに、よく落語を聞きにきますね。(客席苦笑) いや、いいんです。"自分の命を賭して人を助けよう"てェ人が、落語を聞きに来る訳がない(客席爆笑)」と、壽輔ワールド連発のマクラから、政府新設の「ぜんざい公社」へ一杯のぜんざいを食べに出かけた善良なる庶民・佐藤俊夫(=砂糖と塩)が、役所仕事の酷い対応に四苦八苦する"役人気質徹底風刺落語"の傑作『ぜんざい公社』へ。

公社では、ぜんざい一杯食べるのに書類作成が始まり、まず住所・氏名・年齢・職業・地位まで訊かれ、「ヒラ(社員)ですね?」と蔑まれる。ファーストクラスのぜんざいには供託金まで必要になるというのが大笑い。食べる前には健康診断が必要で、餅を焼くには火気使用許可書が必要。ぜんざい一杯5000円もするというので佐藤さんが断ろうとすると、「書類作成をした以上、契約不履行で死刑!」と脅かされる。
後期高齢者医療問題における総理や厚生大臣の答弁をそのまま落語にしたような、真に、戦後日本という、民主とは名ばかりの官僚専制国家のタチの悪さが次々と皮肉られます。
亡くなった桂小南師匠の十八番で、壽輔師も小南型が基礎になっているようですが、壽輔師の知的でシニカルで、しかも冷静な口調と、痛烈な風刺がピッタリ。
また、「脱北者」「ファーストクラス」「供託金」「シンドラー社製のエレベーター」「エコ」と、壽輔師独得のギャグが散りばめられ、皮肉な笑いを一層キワキワと盛り上げてくれます。
出てきたぜんざいがちっとも甘くないので、内閣直轄のぜんざい事務官に文句をいうと、アッと驚くオチに至るまで、ヒヒヒと笑いながら、落語らしい反逆精神を堪能させて戴きました。

仲入り後は再び喜多八師から。
「この日のために稽古してきたネタで、ですから、出来が多少悪くても、おめこぼしを戴いて・・」と語りだすと、昔のお大名の噂をマクラにサッと入ったのが、廓噺数ある中でも珍しい"大名吉原体験記落語"『盃の殿様』。主人公が病弱な大大名の殿様ってェのは、"虚弱が売り物(ホントはウソなんですよ)の喜多八師にはピッタリすぎ(笑)"と楽屋で評判でありんした。

ちょいと欝の気になっていた殿様。華の吉原を描いた浮世絵を見た途端、「吉原にひやかしに行きたい。行けないと病気が重くなる!」とダダをこね、総勢360人という、城攻めでもするような人数で吉原へ。
ここで、吉原で今が全盛、飛ぶ鳥が落ちるという"殺生石"みたいな勢いの花魁・花扇を見て、目が☆になっちゃった殿様、「花扇と盃事がしたい!出来ないと病気が重くなる」。「花扇の所にひと晩泊まりたい!泊まれないと病気が重くなる!」と徹頭徹尾ダダをこね、吉原初体験。
またね、花扇が最初はわざと無視して、殿様のプライドをちょいとムラッ!とさせておいてから、うって変わって愛嬌を振り撒くって手練だから(この時の喜多八師の表情は見たもん勝ち!)、ウブな殿様なんぞ、簡単にコロッと行っちゃうのがトーゼン!
尤も、そのおかげで殿様、「ベストコンディションである(虚弱がうりものの喜多八師のいう科白じゃないね)」と自称するほどのお元気ぶりに回復します。そりゃあなた、世にも稀な美人があんなことや、こんなことをしてくれれば、元気にもなりますよね。

それからというもの、「敵に後ろは見せられん」と夜毎の吉原通いで、「こんな行状が幕府に知れたら大変だ」と、ご家来衆をやきもきさせますが、そこが大名の宿命。参勤交代でお国表に帰らにゃならぬ。花扇とタップリ別れを惜しんだ挙句、打掛けを貰って殿様は領地へ。
帰国した殿様、寝ても醒めても花扇の姿が目の前にちらついてしまい、茶坊主に打掛けを着せて花扇の真似をさせたりしますが、満足出来る訳がない。 遂に、藩内一番の快速男に大盃を持たせると、「花扇と盃事がしたい。吉原に行って、花扇に一献献じて参れ」と命令します。ここで快速男が九州の某藩から江戸・吉原を目指すのですが、「小倉から船に乗って姫路に着き、そのまま大阪・京都を駆け抜けて桑名から船に乗り、熱田で下りたら東海道をまっしぐら〜街道筋の宿場・宿場の名前を挙げて〜高輪の大木戸からようやく江戸市中だ。そこから・・・」と、古今亭志ん生師匠の『黄金餅』より、遥かに距離の長い道中附けをするってェのは、喜多八師の新工夫。
ちょっと詰まったり、ゴニョゴニョ言った所もありましたが、こいつァは面白うござんした!

吉原で花扇の「ご返杯」を受けた快速男、帰路、箱根の山中で別の大名行列の鼻先をつっきったため、捕まって咎められます。ここで快速男を取り調べた別の大名、"九州の大名と吉原の遊君の盃事の使い"と訊いて、「余は小身にして、そのような事は真似出来ぬが、大名の遊びとは、かくありたいものじゃ」と、七合五勺入る大盃を借り受けると、自らもグッと一息に飲み干し、「よろしくと」と快速男に渡します。
この噺のポイントは、ここでございますね。「大名の遊びとは、かくありたいものじゃ」のセリフなんですよ。今時のIT長者みたいな成り金とは違う大らかさ、胸に金勘定や謀り事のないピュアさが遊びの真骨頂ってェものでありまして、喜多八師のセリフから、その大らかさへの憧れがジンワリと感じられたのが、なんたって結構でありました。
 で、帰国した快速男からこの話を聞いた殿様、「その大名に返杯をしてまいれ!」と命じたので、快速男は国を飛び出したのだけれど、何処の大名だか名前も国も分からない・・・・・

 廓噺の中で最もスケールの大きい、華やかな楽しさに溢れた噺として、『盃の殿様』は六代目圓生師匠の華麗な十八番でありました。華やかさと花扇の色気が売り物だった圓生師型に対して、今回の喜多八師は、病弱な殿様の子供っぽい無邪気さから、花扇の胆の据わった大太夫ぶり、行列の大名が見せる遊びの心栄えと、噺の華やぎと優雅さのポイントを的確に描いて、心豊かな遊びの雰囲気で楽しませてくれました。余は満足じゃ!

かくして、本日の主任は、再び古今亭壽輔師の登場。羽織なしの着流し姿です。
壽輔師が、「今度は真剣に演ります、って、さっきが真剣じゃなかった訳ではないんですが、ネタ卸しをしてから、まだ4〜5回しか演ってない噺で、今日も午前中、稽古をしたんですが、よく間違えまして。・・・落語界の天才・三遊亭圓朝師匠の名作、『文七元結』を・・・名作中の名作です、作品はね。演者は・・・・四十分はかかりますから、そんな長くては耐えられないという方は今のうちにお帰りを・・・」と語りだされると、客席も「オッ」と少し緊張しました。
この"江戸っ子気質実証名作落語"『文七元結』、実は「かもめ亭」のスタッフが前もって、壽輔師に、この日の口演をお願いをしていた作品なのであります。

「本所の達磨横丁に、左官で長兵衛という・・・」と壽輔師は、左官の親方・長兵衛が博打に狂って大きな借金を背負ったこと。暮れの二十八日、長兵衛の娘お久が借金を返すために父親の仕事先だった吉原の大籬(おおまがき=大店)・佐野槌へ自ら身を売ったこと。佐野槌の女将に呼び出された長兵衛が、お久の身代として受け取った五十両の金を懐に、吉原大門を出て吾妻橋へ掛かった。という所までを説明し、吾妻橋から噺に入ります。
これは亡くなった林家彦六師匠も演られていた型ですが、終演後、壽輔師は「吾妻橋からなら、寄席の主任でも出来る長さになります。折角の噺ですから、寄席で演らないと意味がありませんでしょ」と仰っていました。ということは、羽織なしの着流し姿も、女房の着物一枚に身をくるんだ長兵衛の雰囲気を出そうという演出でしょうか。

吾妻橋の上で、長兵衛は集金の帰りに五十両の金を掏られ、申し訳なさに身投げをしようとする鼈甲問屋の手代・文七と出会います。天涯孤独な文七が「どうしても死ななきゃならない」というのを聞いた長兵衛は迷った挙句、娘の身代の五十両を文七に恵んでやります。
「死ななきゃならない」というセリフで、文七の若さが出るのは老練の腕前でありますが、長兵衛が文七に言う、「どうしても、五十両要るのか、鐚(ビタ)一文まからねえのか?死のうって割りにゃあ、しっかりしてんなァ」も、長兵衛の困惑した表情が浮かんできましたゾ。
また、直ぐに身投げをしようとする文七に、「なんでそういきなり飛び込むんだ。オリンピックだって、ブザーが鳴ってから飛び込むじゃねえか」と長兵衛が呼びかけるタイムリーなクスグリは、如何にも壽輔師らしく、場面の緊張を落語らしく解してくれましたね。

金をやる際、この金は娘が佐野槌に身を売った金であること。来年の大晦日までに金を返せば娘は女郎にならずに済むが、大晦日を一日でも過ぎれば女郎になって客を取らされること。しかし、娘が女郎になって悪い病気を貰っても死ぬ訳ではない。文七は五十両の金がないと死ぬというから金をやるんだ。ということを長兵衛は文七に語ってきかせます。
「店ェ出されるんだ。客ゥ、取らされるんだよォ」という長兵衛の言葉に、シミジミと親の悲しみが出ていましたし、「お前ェの信心する不動様でも、金毘羅様でもいい、吉原の佐野槌で今年十七になるお久って娘が悪い病気にならねェように祈ってくれ、それだけ、それだけ、頼んでくれりゃあいいんだ」の「それだけ、それだけ」の重ね言葉も、実に印象的・効果的でありました。

文七が驚いて、金を断ると、長兵衛は財布ごと金を叩きつけ、逃げるようにその場から立ち去ってしまいます。
文七が夜老けて鼈甲問屋へ戻ると、掏られたと思ったのは自分の粗忽で、相手の大名家に財布ごと金を忘れてきたものと判明。ビックリ仰天して狼狽する文七から、店の旦那と番頭が訳を聞きだし、吉原の佐野槌にいるお久という娘が身を売った金だと分かります。
この件にも壽輔師ならではの工夫がありました。
まずは、文七が帰ってくたと分かると番頭が「頭、当人が帰ってきました。もうお支度には及びません。有難うございました」というセリフ。集金に出た文七の帰りが遅いので、町内の頭を呼んで探しに出ようとしていた事が分かりますが、この独自の演出で夜更けの感じも一緒に出るのは素晴らしい!また、文七の話を聞いた旦那が「分かった。文七、お前もよく聞いてきたな」と褒めるのも、かつてない演出で、主人の人柄の佳さが出ます。普通は「そんな恩人の名前をどうして聞いたこない」と文七を怒るだけですからね。
壽輔師の『文七元結』では、典型的な庶民の長兵衛と、この旦那の好人物ぶりが出色です。
五十両を前に出した文七に向かい、「どうしてこの金を工面した」と番頭が怒ると、「五十両が倍になった。それは何かあるんだろう」と、落ち着いて言う旦那のセリフも味がありますゾ。

 翌朝、鼈甲問屋の旦那は文七を連れて、達磨横丁へ。ここで文七が吾妻橋の上から下を見て、「こんなとこから飛び降りるなんて馬鹿な奴かいる」「お前のことだ」というのは、どの『文七元結』にもある遣り取りですが、文七が下を見て「昨夜は暗くて分からなかったけれど、渦を撒いてます」という壽輔師の工夫は、川の流れの雰囲気と文七の若さが出て面白かったなァ。

一方、達磨横丁では法被一枚・下は丸裸の女房と長兵衛が、文七にやった金の件でひと晩中喧嘩をしています。 そこへやってきた旦那と文七の言葉で、金があった事が分かるや、「今更、出した金は引っ込められない」と気取っちゃう長兵衛の江戸っ子ぶりも楽しい。
そこから、旦那に落籍されたお久が美しく着飾って達磨横丁に現れ、大団円となりますが、ここでお久の乗った駕籠を呼ぶ際、旦那が「お〜い、頭!」と声を掛けると、「倶利伽羅紋々の担いだ三枚の駕籠が長兵衛の家の前へ」というのは独得。この頭は、ひと言もセリフは言いませんが、ここって所で姿を現します。映画の「美味しいチョイ役」みたいで面白い。
また、半裸のため、屏風の陰に隠れていた女房が、「お久が帰ってきたゾ」と声を掛けられ、「座布団で前を隠して現れる」という演出も、おかしさと哀れが適切です。人によっては、「お尻丸出し、慌てて後ろを向くとあそこがパックリ」と演っちゃった凄い人もいましたからね。

『文七元結』は戦後の落語界でも、古今亭志ん生師匠・三遊亭團生師匠・林家彦六師匠・先代三笑亭可楽師匠・先代三遊亭小圓朝師匠・先代柳家小さん師匠・金原亭馬生師匠・立川談志家元・古今亭志ん朝師匠・三遊亭圓楽師匠・柳家小三治師匠・入船亭扇橋師匠と、錚々たる師匠連が手掛けてきた、手掛けたくなる名作であります。
特に、談志家元以降の『分七元結』は、リアリズム優先の傾向がありますが、今回の壽輔師の、演者独得のリズム(語り口・節というべきかも)で語られる、江戸から東京の庶民感情そのままのような『文七元結』もまた、他に類を見ない味わいがあると私は思ったのでありました。

という訳で、第17回『浜松町かもめ亭 喜多八・壽輔二人会』。
間抜けな泥棒気質丸出しの『間抜け泥』から、職人のお稽古事気質丸出しの『欠伸指南』、役人気質批判タップリの『ぜんざい公社』、殿様気質横溢の『盃の殿様』、そして江戸っ子気質の御本尊『文七元結』と、多彩な気質揃いで、お客様にはお楽しみ戴けた次第・・・・・・・という訳で、次回、6月のかもめ亭も御多数ご来場あらん事を。

高座講釈・石井徹也

今回の高座は、近日、落語音源ダウンロードサイト『落語の蔵』で配信予定です。どうぞご期待下さい。



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