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PART1 くにまる東京歴史探訪
ONAIR REPORT
5月29日(月)〜6月2日(金)今週のテーマは、「職人の技 東京の伝統工芸」
受け継がれてきた匠の技をご紹介します。

5月29日(月)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
今日は、「園芸用じょうろ」をご紹介します。

如雨露(じょうろ)。雨露(あめつゆ)の如し、と書いて「じょうろ」と読むんですね。墨田区で園芸用じょうろを造っている根岸修(ねぎし・おさむ)さん。それまでトタン製のじょうろを造っていましたが、売り上げが伸び悩んでいたんだそうです。そこで、園芸用に切り替え、銅製のじょうろを作り始めました。35年ほど前のことです。従来のものとは全く違う出来ばえ。「これは、絶対売れる!」車に積んで、都内の園芸品問屋をセールスに回ったんです。ところが、売れない。3ヶ月間、1個も売れない。ある日、暗くなってから訪ねた問屋の社長が話をきいてくれ、買ってくれたんだそうです。その社長や、後になってご縁が出来た盆栽協会の方々の感想やアドバイスを参考にして改良、ロングセラーになっているんです。

作業の手順は、まず、銅の板を切ります。次に、筒がはめ込まれる穴を開けます。切り取った板を機械で巻くと、筒が出来ます。次に、底の部分に掛かります。ハンダ付けの後、筒先と網の部分を取り付けて完成、となるのですが、これが一度使ったら手放せないという品物なんです。「インペリアルホテル」の名は、たちまち外国に知れ渡りました。決して安くありません。トタン製のなんと10倍、1万5千円から2万円もするんですが、人気が高いんですね。根岸さんのじょうろは、丁寧に作られていて、丈夫なんです、飽きることがありません。入る水の量ですが、2リットル、4リットル、6リットルの3種類が中心です。

世界の園芸好きからも支持されていて、いま、ベルギーやイギリス、アメリカなど欧米各国では「BONSAI」が大人気になっています。根岸さんの製品の3割ほどは輸出されているそうで、水の勢いが強いんです。



5月30日(火)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
今日は、「錺職(かざりしょく)」をご紹介します。

台東区浅草。江戸時代からさまざまな工芸の職人さんが集まっていた場所で、現在も変わらぬ伝統が受け継がれています。先週は、三社祭で盛り上がりました。藤平一雄(ふじひら・かずお)さんは、錺職の二代目で、67歳。この道40年になります。

金偏に芳と書いて、かざり。頂戴した名刺には、飾師とありました。錺職の仕事の幅は広いんですが、藤平さんは、神社仏閣の金具や、神輿の金具、額縁金具などを得意にしています。お寺や神社などで見かける大きな額や、大きな提灯には必ず見事な細工をほどこされた金具が見られます。お馴染みの江戸消防の纏(まとい)にも使われています。錺職の技術は、さまざまな場所で見ることが出来るんですね。

面白い話を伺いました。大きな建物の仕事では、錺職の出番は最後の仕上げの段階になるんです。そこで、念入りに打ち合わせをしておかなければならないのが、足場の問題なんだそうです。足場がないと…大変ですよね。
作業は、材料の加工から仕上げまで、すべて手作業です。木槌や鏨(たがね)と、金梃(かなてこ)を使って作業が行われます。鏨の大きさは大小さまざま。300本ほどを使い分けているそうです。使う道具は、気に入ったものがないと、ご自分で作ってしまうそうです。

藤平さんの作品は、意外な形でテレビや映画にも登場しています。それは、小判。悪代官が、悪徳商人に向かって、「お主も、なかなかの悪よのう」などと言う場面に欠かせない、小道具の小判づくりを頼まれることがあるんだそうです。「江戸時代だったら、大変ですよ」笑いながら、話してくれました。31歳になる息子の「よしお」さんは、現在、同じ台東区の会社で修業中。伝統の技は受け継がれてゆくことでしょう。



5月31日(水)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
今日は、「手作り飴」をご紹介します。

東京の下町、東向島。1917年(大正6)生まれの山田増太郎さんが飴づくりの道に入ったのは、70年以上も前のことでした。現在の場所に移ったのは、34歳の時。奥さんの久(ひさ)さんと二人で、毎日、飴づくりを続けています。
1日に作る飴は、およそ30キロ、飴の数にして3000個ほどになります。来年1月には90歳になるという増太郎さん、とてもお年には見えません。がっしりした身体と、大きな手。職人さんの手です。伺ったところでは、増太郎さんは大の甘党だそうで、飴は健康にいい、と力説されていらっしゃいました。

毎日の作業は、原料の水あめなどを似ることから始まりますが、欠かせないのが、包丁研ぎです。鍋で煮た材料を機械で練ってから、棒状に伸ばしてしきます。さあ、ここで包丁が登場するんです。ご夫婦が向かい合って、それぞれの槌(つち)と包丁を使って切っていくんです。道具もまな板も、長年使い慣れたものです。この作業、息が合っていると、はかどるんだそうです。奥さんは、「私は、いつまで経っても上手くならない」と謙遜しますが、なかなかリズミカルな音です。

売られている飴の種類は、年間を通じて10種類ほどです。ただし、夏場は、溶けやすい「さらし飴」はお休みで、キャンデー状の有平(あるへい)が中心です。さきほど作られていたのは何か、と申しますと…。あんこ飴、でした。他に、ニッキ、はっか、オレンジ、黒飴などが売られていました。山田さんが作る飴、長年のお馴染みがついていらして、遠くから買いに来られるお客様も多いそうです。



6月1日(木)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
今日は、「江戸すだれ」をご紹介します。

港区赤坂。人通りの多い一ツ木通りの近くに、江戸すだれを製造・販売している鈴松商店があります。二代目の鈴木寿雄(としお)さん、三代目の盛雄(もりお)さん、弟の祐二(ゆうじ)さんが、伝統のあるすだれを作っています。簾は、初めは宮廷で使われました。その後、次第に神社仏閣にも広まり、江戸時代には一般にも使われるようになりました。目隠しと日よけの効果を兼ねた、日本独特の工芸品として、定着したんですね。鈴松商店は、大正時代に、京橋区、現在の中央区京橋から赤坂に移ってきました。
当時、都内には築地・新橋・赤坂などに料亭が多く、300軒ものお得意さんがあったそうです。衣替えにあわせ、料亭は6月1日に、一斉にすだれをかけたそうです。毎年、2月から3月に、100軒ほどから予約が入り、納品直前の時期は大変な忙しさだった、弟の祐二さんに伺いました。料亭の数は、昭和50年ごろから激減、同業者も次第に減って、現在は都内で10軒ほどが、すだれ、ほうき、かごなどを作っています。

すだれの原料は、葭(よし)、がま、そして竹です。昭和40年代には、国内の湖の水質が悪くなり、材料を中国から輸入するようになっていました。近年では、だいぶ水質が改善され、霞ヶ浦や琵琶湖で取れた材料が使えるようになっています。吟味された材料を台に並べ、投げ玉と呼ぶ糸巻きを兼ねた道具を付けて、台の手前と向こう側を往復させていきます。心地よい音がします。

すだれのお値段、一般的なものは1万5千円ほどから。高級品は15万円ほどするんですが、「ヘリ」さえ交換すれば、長く使え、次第に味わいが出てくるそうです。住宅の変化から、本来のすだれの需要は減っているんですが、代わりに増えたのが、店舗の需要でした。天然素材の良さが見直され、間仕切りや、インテリアとしての利用が多くなっているんですね。「江戸すだれ」は、東京都伝統工芸品に指定されています。また、鈴木さん親子は、港区の伝統工芸士に指定されています。今日は衣替え。今年の夏は、すだれで涼しい夏をすごしてみてはいかがでしょうか。



6月2日(金)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
今日は、「秩父三十四か所札所巡り江戸木箸」をご紹介します。

墨田区東向島。ここに江戸木箸の大黒(だいこく)屋があります。工房を兼ねた店に置かれた箸の種類、およそ200!オーナーの竹田勝彦さんは、元々はサラリーマンでした。食器問屋に勤めていて、20年ほど前に、「より良い箸づくり」を目指して独立したんです。伺ってみると、お祖父さんが大工さん、お父さんが下駄職人ということで、ものづくりのDNAを受け継いでいたのかも知れません。

竹田さんがサラリーマン時代に疑問に思っていたのは、毎日三度三度お世話になる箸に、どうして関心が薄いのだろうか?ということでした。確かに、料理や食器にこだわる割には、箸には余り注意を払いませんよね。何となく、色や柄で選んでいませんか?自分が使う箸なのに、買ってきてもらってものを使ったりしていますね。でも、私たちは道具、靴やグローブやメガネなどを買うときは、いろいろ試してから買いますよね。ぴったり合った箸ならば、正しい持ち方も出来、料理をより美味しく味わえるのではないか、こんな考えから箸づくりをはじめたそうです。

竹田さんが試行錯誤の末に生み出したのが、ごく普通の四角のものから、五角形のもの、八角形のもの。細いもの太いもの、長いもの、短いものと、実に多くの種類の箸でした。人間工学の面からも優れた発想、と認められ、工業デザイナーの団体からも認定が贈られているんです。工夫を凝らした箸を《江戸木箸》と名づけたのも竹田さんでした。

手作り箸は、一膳ごとに違った仕上がりになり、味わいがあります。確かに、いろいろ持ってみると、重さも持ち応えも、ひとつひとつ違うのが良くわかります。江戸木箸のお値段、少々高めです。700円ほどから、高いものは1万5千円ほどします。売れ筋は、2000円から3000円程度のものだそうです。でも、手にぴったりと合って使い心地が良く、長く使えるので、人気が高まっているんです。



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