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PART1 くにまる東京歴史探訪
ONAIR REPORT

1月12日(火)〜1月15日(金)
今週は、「落語名人伝説」。
昭和三十年代、落語の黄金時代を彩った 名人たちのエピソードを集めてお送りします。


1月11日(月)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
コーナーはお休みしました。

1月12日(火)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

本日ご紹介いたしますのは「八代目 桂文楽」師匠
黒門町…といえば、古い落語ファンなら 知らないものはない、八代目 桂文楽師匠でございます。 明治二十五年、父親の赴任先、青森で生まれた文楽師匠。 明治四十一年、十六歳のときに落語家の道を歩き始めます。 大正六年に真打となり、大正九年に「文楽」を襲名。 一字一句揺るがせにしない、きっちりとした芸が持ち味で、 亡くなられてから四十年近い月日が過ぎた今でも、 人気の高い落語家の一人であります。
どれくらいきっちりしていたか…。 昔は、電力事情が悪く、停電も日常茶飯事でした。 あるとき、文楽師匠の出演中に、停電が起きてしまった。 電気はほんのニ、三十秒で通じたのですが、 困ったことにこの日は、ラジオの録音を行っていたんですね。 テープレコーダーは別の電源を使っていたので 回っていましたが、その三十秒の間だけ空白になってしまった。
さて、困った、どうしよう…と悩むプロデューサー。 そうだ、文楽師匠はいつもきっちり同じ時間で噺を終える。 確か三年前に、ウチで録音したテープがあるはずだ…と、 倉庫を探してテープを持ち出し、空白の三十秒に 当てはめてみると…これがピッタリ、寸分の狂いもなくハマり、 誰もテープが繋いであることに気づかなかったという、 ウソのような本当の話がございます。 そんなキッチリした人物なら、さぞかし生活も 堅かったのだろう…と思うと、これが大違い。 とにかく少年時代からモテてモテて仕方がなかったという、 名うてのプレイボーイでいらしたんですね。 生涯に結婚すること五回、そのほかにも 親しくしてらっしゃった女性は数知れず。
大正の頃には、当時のおかみさんが関西に出かけている間、 あちこちから女性が家にやってきて甲斐甲斐しく世話を焼く。 ある日、家に帰ってくると長屋中の人が集まっている。 いったい何事か…と入ってみると、 あちこちにいる仲のいい女性のうちの二人が鉢合わせして、 組んづほぐれつの大喧嘩になっていたそうでございます。 ここまでくると、うらやましい、を通り越して、 自分はそんなにモテなくてよかった、と思うわけですが…

1月13日(水)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

本日ご紹介いたしますのは「八代目 林家正蔵」師匠
八代目 林家正蔵、のちの彦六師匠。 若いファンの皆様は、林家木久扇師匠による 愛情たっぷりの物真似で、ご存知かもしれません。 きのうご紹介した文楽師匠が黒門町なら、 八代目の正蔵師匠は「稲荷町(いなりちょう)」。 地下鉄、稲荷町駅近くの長屋に暮らしていたことで有名です。 上野、浅草、新宿、どこの寄席に出かけるにも便利なので、 定期券を買っていた正蔵師匠。
ある日、わざわざ切符を買って乗ろうとするので、駅員が、 「師匠、定期で乗ってくださいよ」と言うと、 「定期券は、寄席へ通うために安くしてもらっているんだ。 だから、ほかのことで使っちゃアいけねェんだ」 と、仕事以外で出かける時は、 頑なに定期を使おうとはしなかったんだそうです。 只今のエピソードでもわかるように、先代の正蔵師匠は、 「曲がったこと」が大嫌いな正義漢でした。
ある日、巡業先のホテルでこんなことがありました。 バイキング形式の食堂で、隣のテーブルに座った 若者グループが、大量に持ってきた料理を食べきれず、 山盛りのまま残して帰っていくのを目撃しました。 イライラした師匠ですが、まさか若者たちを怒ることもできず、 向かいに座った弟子に向かって、 「てめえの食える量もわからねえのか、このバカ野郎!」と、 お怒りになったんだそうで、お弟子さんはいい迷惑ですよね。 長屋住まい…といえば、いかにも昔ながらの落語家。
日ごろから純和風の暮らしをしていたんだろうな、 と思えば、さにあらず。 朝食は、ご飯に味噌汁…ではなく、トーストにコーヒー。 そのコーヒーも、きちんと豆から挽いて、 アルコールランプを使ってサイフォンで淹れるという、 本格的なモノだったそうでございます。 昭和五十五年(1980年)、自分より三十歳も年下の 先代の林家三平師匠が亡くなります。 すると三平師匠のお宅「海老名家」から借り受けていた 「正蔵」の名前を潔く返上し、「彦六」を襲名。 それからおよそ一年後の昭和五十七年一月、 八十六歳で亡くなられています。

1月14日(木)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

本日ご紹介いたしますのは「三代目 三遊亭金馬」師匠
明朗快活、誰にでもわかりやすい語り口でラジオに登場、 昭和三十年代、落語ブームの牽引車となったのが、 本日ご紹介する、三代目の三遊亭金馬師匠でございます。 とにかく大変な「釣り好き」として知られた方で、 釣り専門の出版社からエッセイ集を出版しているほど。 三代目金馬師匠、晩年は、高座で正座することができず、 講談で使う「釈台」を前において落語を演じていました。
それというのも、ある日、大好きな釣りに出かけた帰り、 鉄橋を渡っていて列車にはねられてしまい、 左足の先を切断する大怪我をしてしまったからなんですね。 ある日、この三代目金馬師匠のところを、 きのうご紹介した八代目正蔵、後の彦六師匠が訪ねてきた。 「釣竿を一本、分けていただけませんか?」 金馬師匠、大喜びで、どれにしようかな…と、 時間をかけて竿を選んでいると、正蔵師匠が 「どれでもいいですよ、怪談噺で火の玉をぶら下げるのに  使うので…」と言ったもんだから、 「バカ野郎、とっとと帰りやがれ!」 もう、烈火のごとくお怒りになったんだそうです。
そんな金馬師匠、大変な人情家としても知られております。 日ごろから親しくしていた釣竿作りの名人の家が、 空襲で跡形もなく焼け落ちてしまった。 金馬師匠は、矢も盾もたまらず焼け跡に出かけ、 なんとか一家の消息を知りたいと、 「金馬来たる 連絡こう」…こんな札を立てたのです。
名人の一家は、ほとんどが空襲で亡くなってしまったのですが、 男の子と女の子、二人の子供だけが生き残りました。 金馬師匠は、戦後再会したこの二人を引き取りまして、 わが子同然に育て上げたのです。 上の男の子は、テキ屋になっていたのを、 釣竿職人に弟子入りさせ、後に実家を再興させる。 そして、下の女の子は、当時の若手ピカイチの落語家、 林家三平のところに嫁入りすることになりました。 皆様よくご存知の「根岸のおかみさん」、 現在の海老名香葉子さんですね。 金馬師匠が、必死に焼け跡を訪ね、立て札を残さなかったら、 落語の世界も、今とは随分違う形になっていたかも知れません。

1月15日(金)放送分 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

本日ご紹介いたしますのは「八代目 三笑亭可楽」師匠
昭和ニ十年代から三十年代といえば、正に「ラジオの黄金時代」。 中でも人気番組、キラー・コンテンツと申しますと、 なんといっても「落語」でございます。 ゴールデン・アワーともなりますと、各局とも 落語番組のオンパレード。 民放ラジオは、人気の落語家たちに 「うちと契約してくださいよ」と専属契約を持ちかけます。 まずラジオ東京、現在のTBSが、 昭和二十八年に、文楽、志ん生、圓生、小さん、桃太郎、 この人気者五人と契約してしまう。 翌年、後発のニッポン放送が、ラジオ東京から、 人気ナンバーワンの志ん生を引き抜いてしまいます。
で、若干、出遅れたのが、我が文化放送でございます。 うちも誰かめぼしいのを専属にしろ! …と いうことになりまして、昭和三十一年(1956年)、 契約に漕ぎ着けたのが、本日ご紹介いたします、 八代目の三笑亭可楽師匠です。 この可楽師匠の持ち味を一言でいえば「くろうと好み」。 志ん生師匠のハチャメチャさもなければ、 文楽師匠のような練り上げられた高座でもない。 金馬師匠のわかりやすさ、明るさもない。滑舌も、今ひとつ。 だけど、聞いていると、思わずクスッと笑ってしまう。
その面白さは、知らず知らずのうちに体の中に入り込んできて、 しまいには可楽なしには夜も日も明けぬ、ということになる。 八代目 三笑亭可楽師匠は、明治三十年(1897年)、 東京・下谷生まれ。 実家は経師屋さん…掛け軸や屏風、襖などを仕上げる 職人さんだったそうですが、父親が商売上手だったこともあり、 家の中には土蔵もあるような恵まれた環境で育ちました。 本人も家業を継ぐべく修業に励んでいたそうです。
ところが、実家の持っていた借家に、志ん生師匠の 叔母さんという女性が住んでおり、ここに、若き日の 志ん生師匠がしょっちゅう遊びに来ては昼から酒を飲んでいた。 噺家という商売はのんきでいいなあ、…と思っていたら、 「あんちゃん、じゃあ、紹介してやろうか」 志ん生師匠の手引きで、落語家となったのが、 これからご紹介する八代目 三笑亭可楽師匠でございます。

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