2017/5/18

NY株急落、372ドル安 政権不安で円も急伸、110円台

【ニューヨーク共同】17日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、トランプ米大統領の政権運営への不安から急落し、前日比372・82ドル安の2万0606・93ドルと約1カ月ぶりの安値で取引を終えた。下げ幅は昨年9月9日以来約8カ月ぶりの大きさで、昨年11月にトランプ氏が米大統領選で勝利して以降では最大だった。
 リスク回避姿勢を強めた投資家は、相対的に安全な資産とされる円や金に資金を振り向けた。ニューヨークの外国為替市場では円が一時1ドル=110円後半と3週間ぶりの円高水準を記録。金先物相場は約3週間ぶりの高値で引けた。

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みずほ証券チーフクレジットストラテジスト
大橋英敏
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17日の米国市場は、典型的なリスクオフでした(株安、債券高に加え、米ドルは主要先進国通貨比で下落、一方主要新興国通貨比で上昇)。
今年3月以降、既に金融市場ではトランプ政権への期待剥落が鮮明になっていましたが、それにも関わらず株式市場を中心として値持ちが良かったのは、上下院とも過半数を握る共和党の政策(主に減税と規制緩和)への期待が残っていたからでした。一方、昨日になって市場が反応したのは、トランプ大統領の弾劾の可能性が高まったことを受けて、政治的な混乱の継続が懸念された可能性が高いのではないでしょうか。製造業景気が循環的な調整局面に入りつつある中、市場にリスクオフ圧力がかかる可能性は以前からあったので(実際に米国債に対するロングポジション(金利低下にベットするポジション)は過去最高水準付近まで積みあがっていました)、余計に市場は反応した可能性もあります。
トランプ大統領が弾劾される可能性は依然として低いと思われます。具体的な証拠が不十分であることや、不法行為があったのかという論点もあります。トランプ大統領はマスメディアと対立してきましたので、現在のマスメディアの報道内容は過剰と考えるべきです。
また、リスクオフは長続きしないとの見方も根強いです。背景には、①米ドル指数は既に昨年11月水準まで低下しており必ずしも米ドルが割高な水準にあるわけではないこと、②トランプ大統領が弾劾となった場合はペンス副大統領が大統領指名される可能性が現時点では高く共和党が掲げる主要政策(減税と規制緩和)が実行される可能性が高まると共に、政治の不透明性払拭が好感される可能性が高いこと、および③弾劾という点で比較されやすいウォーターゲート事件のリチャード・ニクソン大統領辞任後に米国株が暴落したが単純な比較はできない(ニクソン大統領は様々な政策を実施し株式市場でも評価されていたが、トランプ大統領は目立った政策を実行していないなど)との意見があります。

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