2017/7/19

経済成長3%でも赤字8兆円 政府、20年度黒字化困難

政府は18日、経済財政諮問会議を開き、中長期の経済財政試算を示した。名目で3%以上、物価変動の影響を除いた実質で2%以上の高い経済成長が続く前提でも、国と地方の基礎的財政収支は2020年度に8兆2千億円の赤字が残ると見込んだ。今年1月の試算からは歳出抑制で1千億円縮小するが、20年度に黒字にする財政健全化目標の達成は難しい情勢だ。
 現時点で目標維持の方針を変えていないものの、中間評価を予定する18年度をにらみ見直し議論が進む見通しだ。根拠の乏しい成長頼みが一段と強まり、財政悪化に拍車が掛かる恐れがある。

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みずほ証券チーフクレジットストラテジスト
大橋英敏
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そもそも2020年のプライマリーバランス黒字化は達成困難と思われていたので、多くの方にとってサプライズではないでしょう。問題は、この状況をいつまで看過し続けるのかということです。
我が国の今後は、少子高齢化という「今から対策をしてもほとんど対応不可能な絶望的かつ確実な将来像」を背景にした、①政府支出の持続的増加(主因は年金・医療を中心とした社会保障費)と、②生産年齢人口の減少によるGDPの減少、という2つの不安を抱えています。少子高齢化問題も、結局はこのような将来不安を長年にわたり看過してきたことが主因です。
②については、移民政策を含む人口対策、インバウンド需要、緩和的な金融政策(資産価格上昇に寄与するという意味で間接的にGDPに貢献)、および生産性向上に向けた政府主導の強力かつ継続的な研究開発が必須ですが、既に材料が出尽くしており、年3%を超える成長を実現できる可能性は極めて低いとみてよいでしょう。


一方、①は、政府支出を減らす試みは今後も継続すべきですが、それよりも大事なことの一つとして、国民間の公平性を担保しつつ、負担とサービスの享受の均衡を探る点があるのではないでしょうか。この点では、民進党の前原誠司衆議院議員(News Masterの一人)が提唱する「All for All」の発想は、過去には無い切り口であり、興味深いです。政治の場で真剣に議論していただきたいものです。
結局は、限られた「パイ」(経済成長が見込めない)の「配分政策」が、我々が出来る最大限ですので、当然に、国民が広く負担を強いられることになります。国民に負担増を求める政策こそが中長期的な我が国の発展に資するものと考えますが、(国民負担に目を伏せるのが仕事の)ポピュリスト政治家が跋扈するなか、果たしてどこまで実現するのか。悲観的な見通しと共に今後に注目したいと思います。

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