2017/9/21

米FRB資産縮小10月開始 景気拡大、12月利上げ模索

【ワシントン共同】米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は20日、金融の量的緩和策で膨らんだ保有資産の縮小を10月から始めることを決めた。量的緩和は2008年に起きた世界的な金融危機リーマン・ショックへの対応策で、今回の決定により危機対応からの完全脱却に踏み出した。景気拡大に伴う措置。リーマン後の世界的な大規模緩和は危機から9年を経て、米国が先陣を切る形で転機を迎えた。
 追加利上げは見送ったものの、今年はあと1回、来年は3回とする従来予想を維持。年内の利上げは早くても12月になりそうだ。

内容を読む
博士(経済学)・帝京大学経済学部教授・慶大経済学部非勤
宿輪純一
24

本件は番組でも詳しく解説したが、実は中央銀行というものは、インフレ率(物価上昇率)の管理のほかに、そもそも政策金利をある程度の高さに持っていく必要がある。それは、基本的には景気は波で合って、良いときもあれば、悪いときもある。その悪くなった時に、金利の下げ余地が必要だからである。
 米国は現在、ニューヨーク株の最高値更新に見られるように景気がいい。この景気が良い状態の時に金利を戻しておくことが必要となるのである。逆にいうと、株価が上がっている状態の時しかできない。そのために、FRBは急いで引締め(利上げ・資金量の縮小)をしなければならないのである。その動きを、FRBは「正常化」と呼んでいる。それは引締めではなく、正常化であるとFRBと面談した時に彼らは強調していた。
 FRBは2008年9月リーマンショック(金融危機)の対応として、政策金利(FFオーバーナイト)を0.25%に引き下げ、国債などを買い入れることによって、資金量を約8000億ドルから約4兆ドル超まで5倍に増加させた。最近では、リーマンショックの傷も癒えてきて、2015年に1回、2016年に1回0.25%ずつ利上げをおこなった。今年はすでに3月と6月に2回利上げを行っている。
 FRBの政策決定するFOMC(連邦公開市場委員会)は年8回開催される。一般的には2月、3月、5月、6月、7月(8月は夏休み)、9月、11月、12月に開催される。実は、FOMCには議長が記者会見をする大きい会議と、そうでない小さい会議がある。大きい会議は3月、6月、9月、12月の4回あり、そこでしか、金融政策の変更は行われない。今年、大きい会議は9月と12月である。9月のFOMCで「資産買入の縮小(テーパリング)」について決定がされた。FRBにとって、テーパリングは鬼門である。バーナンキ議長(当時)がテーパリングに言及しただけで、金利は急騰し資産価格が急落したからである。そのため、今回は慎重に対応している。12月は通常の利上げ(0.25%)を行う予定である。
 米国などが引締めをすると、アジア通貨危機など新興国が通貨危機になる可能性がある。今回も同様である。すでにIMF(国際通貨基金)が新興国を中心に貸出し枠の設定を始めている。

  • URLを
    コピー

このコラムを書いた人

他の人のコラム

関連ニュース