2017/4/19

英、6月8日総選挙へ EU離脱で国民の信問う

【ロンドン共同】英国のメイ首相は18日、声明を発表し、下院を解散して2020年に予定されていた総選挙を今年6月8日に前倒しして実施する意向を表明した。5月にも始まる欧州連合(EU)離脱交渉を巡る自らの方針について国民の信を問う。メイ氏の方針は国民の多数の支持を得ており、議会内の反対を抑え、交渉基盤を固める狙い。
 前倒し総選挙の実施には下院で3分の2の賛成が必要。最大野党、労働党のコービン党首は18日、総選挙実施に賛成する姿勢を示し、総選挙の実施は確実だ。
 各種世論調査ではメイ氏の与党保守党が高い支持率を保ち、労働党は低迷している。

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みずほ証券チーフクレジットストラテジスト
大橋英敏
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このタイミングでのメイ首相の決断は、金融市場にとってサプライズでした。

そして、英ポンドが対米ドルで急上昇したことも注目されました(英株価は下落)。

ハードブレグジットの可能性が低下するのではとの見方をした可能性があるのと、英ポンドのショートポジションが偏っていたことにより、急劇な変動となったとの見方が根強いです。


さて、メイ首相のこのアクションに対しては、ハードブレグジットを目指すために「勝負に出た」との見方が大勢を占めています。

要は、①EU離脱にあたり重要な点は議会の承認が必要という状態にあるなか、②EU離脱を円滑化するために内閣に権限を集中すべきと考えていたメイ首相が、③自らへの高い支持率を背景に下院の絶対多数を握ることで内閣主導のEU離脱交渉を目指すということです。

しかし、メイ首相は本当にハードブレグジットを目指しているのでしょうか?

確かに、メイ首相は表面的にはハードブレグジットを目指す姿勢を示していますが、実は首相になる前はEU離脱反対派だったことは有名です。


EU側は、EU離脱の流れが他国に波及しないようにするためにも、強行姿勢を貫く可能性が高いため、当然に英国側も厳しい姿勢で臨む「ふり」をします。

その「ふり」をすることに対して反対意見を言う国内勢力を選挙を通じて排除するという目的が潜んでいる可能性があります。


次に、メイ首相の本音は、再度国民投票をして国民の真意を問いたいというものかもしれません。

仮に、今回の選挙でEU離脱を支持する結果となれば、メイ首相の求心力が高まり、厳しいEUとの交渉に臨むための権限(武器)を得ます。

一方、EU離脱は不支持となっても、自らの肩の荷が下りることになります。

換言すれば、2年間で離脱と新協定の交渉が妥結することは恐らく無理ですし、誰もそんな厳しい交渉はしたくない、というのが英国政治家の本音ではないでしょうか(実際、EU離脱を訴えていたリーダー達はこぞって首相レースを辞退しました)。


最後に、メイ首相の政治基盤が強固になるのではとの見方で英ポンドが上昇したとの見方もありますが、もしそうならば、メイ首相の力が増すことでソフトブレグジットの可能性が高まるとの見方が出たからと考えるべきであり、ハードブレグジットの可能性が高まったとの評価は間違いではないでしょうか。

このように考えると、市場の反応は正当化されます。

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