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「イヌの嗅覚(1)」
コーチャー/外崎肇一(とのさきけいいち)さん(明海大学教授)
大村正樹&外崎肇一
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
みんなの中にはワンちゃん飼ってる人、結構多いよね。今日はそのワンちゃんの嗅覚についてサイコーに聞きます。CMの後、驚くべきワンちゃんの嗅覚についての話が待ってますよ〜。
大村正樹
今週のサイコーは、明海大学教授の外崎肇一(とのさきけいいち)先生です。こんにちは。
  どうも。よろしくお願いします。
大村正樹
先生はイヌの嗅覚、匂いを嗅ぐ力に関して非常に詳しいそうですね。よく「イヌは鼻が利く」と言いますが、人間の何倍と考えればいいですか?
  人間の約1万倍…。
大村正樹
1万倍!
1000倍とか。
大村正樹
1000倍。
  人によっては、「全く変わらない」と言う人もいるんです。
大村正樹
へぇ〜。先生は何倍派ですか?
  僕は、大体1000倍から1万倍ぐらいは違うと思います。
大村正樹
やっぱりイヌの嗅覚は優れていると思ってらっしゃるわけですね。
ただ、犬種によってだいぶ違います。同じ種類によっても違いますし、同じ兄弟のイヌでも1000倍や1万倍ぐらい違うこともあります。
大村正樹
ちなみに、イヌで嗅覚が鋭いのはどんな種類ですか?
シェパードやラブラドールなどの、鼻の長いイヌです。
大村正樹
警察犬といわれる種類のイヌは、やっぱり鼻が利くんですね。
  その代わり、ブルドッグとかシーズーなど、鼻の小さいイヌはあまり良くないみたいです。
鼻の長い犬
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大村正樹
ペットとして飼うワンちゃんは、あまり鼻が利かない。
はい。
大村正樹
チワワはどうですか?
あれは、なかなか良さそうです。
大村正樹
小っちゃいけど鼻が利く。
チワワとかビーグルなんかも、良さそうです。
大村正樹
そうなんですか。オスとメスによっても嗅覚の能力に違いがあるとか?
どうもメスのほうが鼻は良さそうだと。ただ匂いの感覚は、経験とか学習、勉強によります。匂いの勉強をしたかしないか。ちなみに、オス犬というのは意外と女性になつきやすい。
大村正樹
オス犬は女の人になつく?
それから、メス犬はどうも人間だと男の人になつきやすい。
大村正樹
じゃあ、これは男女間の摂理にかなっているわけですね。
そうですね(笑)。
大村正樹
イヌも人間も。
たぶん、我々にはないと言われているフェロモンという特別な匂いが、動物にはあります。
大村正樹
フェロモン! えっ、何で? 人間も「フェロモンがある人」とかフェロモン俳優とかよく言うじゃないですか?
  人間の場合は、フェロモンを受け取る装置が痕跡になっちゃってる。昔はあったでしょうけど、今は跡があるだけで働いてはいない。
大村正樹
じゃあ、人間がフェロモンを発したり、感じることってあまりないんですね。
  ないですね。
大村正樹
イヌはフェロモンを出して、嗅ぎ取る力がある?
あります。昆虫は特に有名ですね。ネコにもフェロモンがあります。
大村正樹
へぇ〜。
  オス犬は人間の女の人、メス犬は人間の男の人という組み合わせが、非常にいい結果を生むようです。
大村正樹
悩ましいなぁ。うちは男の子と女の子がいるんですが、二人とも「イヌを飼いたい」と言ってる。やっぱりメス犬を飼ったら男の子になつくわけですよね、傾向的には。
そうです。
大村正樹
そしたら、娘が悲しみますよね。
そうですね(笑)。
大村正樹
娘を喜ばせようと思ってオス犬を飼ったら、息子が悲しんじゃいますよね。どうしよう〜。
  それは大丈夫、心配ありません。イヌはものすごく賢くて、飼い主の気持ちをパッと読み取りますから。だから、男の子にも女の子にもちゃんとなつきます。
大村正樹
基本はフェロモンが入口だけれど、飼っていけば同じようになつくということですか?
  はい。
大村正樹
安心しました。イヌの嗅覚って、若干メスのほうが強いことがわかりました。あとは、時間帯によって寝起きに鼻が利くとか、寝る前に利く、日中に利くとかはあるんですか?
  その辺は、イヌに聞いてみないと分からないところでなかなか難しいんですが、今までの色々な記録からすると、夜の方がより利くようです。例えば狩猟に出かけたイヌは道に迷うことがなく、ご主人から離れることもない。そしてイヌが戻ってくるのは、たいてい夜なんです。
大村正樹
はい。
夜になると光や音の刺激が少なくなるから、匂いに集中できる。夜のほうがイヌにとっては匂いを嗅ぎやすいんだろうと思います。
大村正樹
なるほどねぇ。じゃあ、飼ってるワンちゃんが行方不明になっても、夜にひょっこり帰ってくる可能性があるということですね。
  そうです。
大村正樹
へぇ〜。よくイメージできました。それから、警察犬に匂いを嗅がせて犯人を追ったり、いなくなった人の足跡を追ったりなどと、テレビでやっていますよね。警察犬って色々な匂いを嗅がされて、頭がパンクしたりしないんですか?
それは非常に難しいところです(笑)。ただ、例えば「見ても見えず、聞いても聞こえず」とあるように、イヌも見てるんだけど何も見えていないこともあります。
大村正樹
無意識ということですね。
聞こえてるはずなのに聞いてない。
大村正樹
はい。
人がたくさんいる中でも、自分のお父さんやお母さんの声はパッと分かる。それと同じで、イヌもある匂いに集中していれば、それ以外の匂いがどんなにいっぱいあってもそれほど気にならない。普段の生活の時はそれなりにスイッチが入っていますから、色々な匂いがあっても気にならない。そういうことができるんだろうと想像しています。
大村正樹
イヌの鼻にはオンとオフがあるんですね。集中して「このハンカチの匂いを嗅いで被害者の足取りを追って」と言われたら、一生懸命追うけれど、オフにしたらリセットできちゃうと。
はい。
大村正樹
へぇ〜。イヌの鼻の構造はどうなっているんですか?
  鼻の構造は、原則的には人と同じです。かなり複雑に中が仕切られてる。
大村正樹
人と同じだけど鼻が利くんですね。
  その代わり、鼻が長いですから。匂いを受け取る細胞は、人の場合は500万個ですが、イヌは2億個あると言われています。
大村正樹
ということは、匂いを受け取る細胞の数が人間の40倍あるということですか?
  そうです。
大村正樹
それは鼻の穴の中にあるんですか?
  人の場合は、鼻の穴の上のほうに50円切手1枚分ぐらいの大きさの場所があって、そこに細胞があります。一方でイヌの場合は、あの長い鼻の中全体に細胞がたくさん散らばっているんです。
大村正樹
へぇ〜。
細胞自体の大きさは大体同じです。ところがその細胞には、匂いを受け取る毛が生えていて、人の場合は数ミクロンの長さの毛が数本ですが、イヌは50とか100ミクロン。非常に長く、たくさんあります。
大村正樹
100ミクロンって100分の1ミリ? とても短いですね!
顕微鏡の世界です。
大村正樹
でも人間の匂いを感じる細胞にも、すごい小さな毛が生えているということですか。
  そうです。
大村正樹
それを肉眼で見ることはできない?
できない。顕微鏡で見ます。
大村正樹
鏡で鼻の穴を開いてみても、そこには到達できない?
  もうずっと奥ですから。
大村正樹
ずっと奥のほう。目よりも奥ですか? 脳みそと目の間ですか?
  目と目の間と、耳の間を結んだ中心ぐらいのところにあるんですよ。
大村正樹
みんな、分かる? 先生は目の前で一生懸命やってくれてるから、僕は分かったんだけど、目と目の間の鼻の付け根、そこから数センチ奥。その辺に嗅覚をつかさどるものがあって、イヌはそこの面積が非常に広いから嗅覚が優れているということですね。
人の場合はそれを広げると切手1枚ぐらい、ところがイヌの場合は新聞紙の両面ぐらいの広さになる。
大村正樹
新聞紙を見開いたぐらいの広さに、細胞が2億個つまっているものが鼻の奥に収納されているということですか?
  そうです。
大村正樹
すご〜い! 先生、イヌの話をこれだけ熱く語るということは、イヌがお好きで飼っていらっしゃる?
  僕は飼っていません。
大村正樹
そうなんですか。でも、イヌは大好きですよね?
仕事をする時は大好きですが、それ以外の時は恐いです。
大村正樹
あっ、イヌは苦手!?
大きいイヌは特に苦手です(笑)
大村正樹
この間も、は虫類を研究しながら「は虫類は苦手」と言うサイコーが…。研究のテーマは、必ずしも趣味の領域とは違うという人もいるわけですね。
はい。
大村正樹
分かりました。時間が来てしまいましたので、また来週もお願いします。今週のサイコーは、明海大学教授の外崎肇一先生でした。ありがとうございました。
はい、ありがとうございました。
大村正樹
ワンちゃんを飼ってる人は、ワンちゃん同士でどちらの鼻が利くかを競争して、「一番鼻が利かないのは、何々という種類でした」って教えてください。ちなみに、確実に鼻が利くのはシェパードとラブラドールで、いわゆる大型犬。チワワは意外に鼻が良いというのも、今日はいい勉強になりました。
チワワ
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警察犬
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