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「イヌの嗅覚(2)」
コーチャー/外崎肇一(とのさきけいいち)さん(明海大学教授)
大村正樹&外崎肇一
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 先週に引き続き、今週もイヌの嗅覚について伺います。イヌの嗅覚でガンが分かるという、気になるお話も。お知らせの後、サイコーの登場です。
大村正樹
今週のサイコーは、前回に続いて明海大学教授の外崎肇一先生です。こんにちは。
  こんにちは。
大村正樹
先生、先週は「イヌが苦手」と言いながら、今日はイヌのネクタイでご登場ですね。
  はい(笑)。
大村正樹
どういうメッセージですか?
「イヌを大事にしてますよ」というメッセージです。イヌをただ実験動物として扱うのではなく、われわれの役に立つ身近な存在で、一番の仲間だと思う気持ちからです。
大村正樹
ところで非常に気になったのですが、イヌの嗅覚でガンを見つけることができるんですか?
  一番最初にイギリスの有名な医学雑誌『ランセット』に、「イヌが皮膚ガンを見つけた」という報告があったんです。
大村正樹
皮膚ガンということは表面上のガンですね。
  そこをイヌがいつも突っつくので、おかしいと思って病院に行ったらガンだったという話があったんです。ガンというのは細胞が異常に増殖する病気です。悪い細胞がどんどん活動して増えてくると、ガン特有の物質が次々と分泌されます。そういうものが血液にのって体中を巡るだろうと考えたんです。血液に混じって回れば、肺に来た血液の匂いが吐く息に混じって出てくるだろうと。
大村正樹
ガンの匂いが?
ええ。そういうことを考えて、それがひょっとしたらイヌに分かるんじゃないかと。
大村正樹
それは肺ガンの場合だけじゃないですか?
肺ガンだけじゃなく大腸ガンでも乳ガンでも、結局その細胞に血液が行って栄養を送ったり、酸素を取り出したりするわけです。
大村正樹
ええ。
  つまり、流れている血液が肺にも来るわけだから、肺からガンの匂いが出てきてもおかしくない。
大村正樹
でもきっと微々たるものですよね。血流が流れて肺に行って、中に入ってすぐ出ちゃうわけで、そこにガンの匂いが付着するのはほんのちょっとですよね?
もっと極端なことを言えば、例えばニンニクとかギョウザを食べた後「ハーッ」とやると臭い。あれと同じ原理で匂うんじゃないかと。
大村正樹
人間だったらギョウザやニンニクは分かりますけれど、ガンの匂いはやっぱり分からないわけですね。
それで調べてみようということで、マリーンという特殊なイヌが…。
大村正樹
マリーン? ガンを見つけるイヌはマリーンちゃんという名前なんですか?
今一番活躍しているのはマリーンちゃん。
大村正樹
メス犬ですか?
日本のメス犬です。
大村正樹
えっ! 日本のイヌでガンを見つける? 外国の話じゃなかったんですか。
最初は僕たちも半信半疑でした。例えばガン患者さんの呼気を4つ準備した袋のうちの1つに入れます。
大村正樹
4人が吐いた息を袋に入れて、その内の1つがガンの人の息ということですね。
はい。残り3つは健康な人です。それでガンの匂いをマリーンに嗅がせて、4つの内どれでもいいから今と同じ匂いのする箱の前に座れという指示をしてやると、マリーンは同じ匂いを探して座るんです。
大村正樹
はい。
何回やってみても、いつも正しい箱の前に座る。それで、「これはガンを見つけられるぞ!」と。
大村正樹
ガン患者の方はその場にいない。息だけですか?
  息だけです。
大村正樹
4つの箱の中にガンと同じ匂いがあるということですね。
  はい。ところが、イヌは非常に敏感ですから、どの箱に入れたか答えを知っている人が室内にいるとダメなんです。分かっちゃうんです。
大村正樹
へぇ〜。
例えば計算するイヌや、足し算するイヌっていますよね? あれも、イヌがやっているわけではなくて、そばにいる人のサインなんです。
大村正樹
えっ! インチキ?
  インチキって言うと語弊がありますけれど(笑)。
大村正樹
ショック!
答えが3だとすると、3回吠えたときにそばにいる飼い主がここで止めて欲しいと願ったり、足に力が入ったりします。その感情が、我々に分からない合図でイヌに伝わるんです。
大村正樹
飼い主や近しい人の合図は分かっちゃうわけですね。
イヌは「何か変わったぞ!」と感じて止める。そうすると飼い主は、「4つ吠えなかった。良かった〜」とホッとする。イヌもそれを理解して、そこで止めちゃう。イヌって人の心をすごく読むんです。
大村正樹
なるほど。
  ですから、どの箱に入れたか誰も分からないようにして探させます。4つとも健康な人の息にしても、マリーンはどこにも座らないで戻ってきます。
大村正樹
ちなみに、マリーンちゃんの種類は何ですか?
  黒のラブラドールです。
大村正樹
やっぱりシェパードやラブラドール種は嗅覚が鋭いわけですね。先生はイヌがちょっと苦手なのに、イヌの嗅覚を利用する研究をこれからも続けていかれるわけですよね。
  はい。
大村正樹
今後はどんなことをされたいのですか?
  イヌの嗅覚の特長を利用して、色々な病気を見つけるセンサーを開発したいと思っています。例えば、今のようにある程度大雑把に呼気で探せれば、患者さんの負担も少なくなる。それから心理的な不安もそれほどない。痛いとか疲れるとかもないですし、僻地での医療診断でも、大雑把にスクリーニングで探すことができます。そんな装置を作りたいと考えています。
大村正樹
装置ですか。そんなワンちゃんを育てるというのではなくて、イヌの嗅覚を利用した機械を作って、色々な医療に活かせたらということですね。
  はい。
大村正樹
飲酒運転の検査だって機械で測ることができますから、匂いの元が分かれば、やがてはそんな機械もできそうですねぇ。
ただし、イヌが探したガンや大麻、麻薬の匂いも、我々が最先端の装置を使って分析しても分からない。
大村正樹
だからワンちゃんに頼っているのですか?
そうですね。機械で匂いを分析しても、イヌほどには分からない。今の技術では10の7乗とか8乗倍ぐらいに薄めた匂いを判断するのが限度なのです。でも、ガン探知犬の場合、10の12乗倍ぐらいまでわかります。プールの中に1滴落としたぐらいの薄い匂いです。
大村正樹
はぁ〜。イヌの嗅覚のすごさがよく分かりました。先生、目標に向けてますますイヌを研究していただいて、イヌも大好きになってくださいね。応援してます。
はい。しっかり頑張ってみようと思っています。
大村正樹
すごく参考になりました。今週のサイコーは、明海大学教授の外崎肇一先生でした。ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
大村正樹
結局イヌの嗅覚のメカニズムは、人間でもまだ解明できてないということなんだね。だから、いわゆる科学捜査と言われるもっと上のレベルに麻薬犬がいたりするわけだねぇ。勉強になりました。
黒のラブラドール
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