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「飛行機のふしぎ(1)」
コーチャー/秋本俊二さん(航空ジャーナリスト)
大村正樹&秋本俊二
大村正樹
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
もうあと1ヶ月ぐらいしたら夏休み。家族でどこか遠くへ行く人もいると思うけど、みんな飛行機には乗る? そもそも飛行機って、「何であんな鉄の塊りが空を飛ぶの?」って思うことない? 僕は子どもの頃に不思議でしょうがなかったよ。今日はみんな、カレースプーンを用意して聞いてね。
大村正樹
今週のサイコーは、航空ジャーナリストの秋本俊二さんです。こんにちは。
  こんにちは。よろしくお願いします
大村正樹
多くのキッズも大人たちも、飛行機が飛ぶことを極めて不思議に思っているんですね。今日は秋本さんに言われて、キッズたちがカレースプーンを持って待っています。これで、なぜ飛行機が飛ぶのかを教えてくださるのですね?
  分かりました。やりましょう!
大村正樹
そもそも、なぜ飛行機は飛べるのですか?
実は、飛行機が飛ぶのが不思議なのではなくて、飛行機が飛ばないほうが不思議なのです。
大村正樹
飛ばないほうが不思議?
  その実験をこれからやってみましょう。
大村正樹
はい。みんなもカレースプーンを持って、サイコーの言うとおりの行動を取ってください。
  まず、スプーンの持つところ、柄の部分の一番先端を人差し指と中指で軽くはさんで、下にブラーンとぶら下げてください。
大村正樹
カレースプーンの手のところを持ってブラーンと下げて、頭の部分が下ですね。
はい。次は、近くの水道、流し台、お風呂場でもいいので移動してください。
大村正樹
OK。キッチンへ走って。
蛇口をひねって水を出します。
大村正樹
ジャーって出ました。
  そうしたら、水の流れに向かってスプーンの丸くふくらんでいるほうをゆっくりと近づけていってください。
飛行機
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実験
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大村正樹
スプーンの底の部分を水の流れに接近させる。
丸くふくらんでいるほうです。そーっと近づけていって、水にくっつけてみましょう。
大村正樹
ピタッと。
どうですか、吸い寄せられませんか?
大村正樹
何でこのラボには水道がないんだよ〜。
ハハハハ。
大村正樹
どうなるか知りたい! それで、どうなるんですか?
実は、これが飛行機が飛ぶ原理なのです。
大村正樹
何でですか?
水道の水の流れとスプーンを真横にした形を考えてみてください。
大村正樹
はい。
水道の流れを空気の流れとするなら、スプーンの丸くふくらんでいる部分が飛行機の主翼、翼の断面図にそっくりなんですね。飛行機はエンジンの力で前に進みます。そうすると空気が水道のように後ろに向かって流れます。
大村正樹
でも、飛行機の翼の下にも空気があるじゃないですか。
  あります。翼のふくらんでいないほうには空気がゆっくり流れて、ふくらんでいるほうはふくらんでいる分だけ早く流れる。
大村正樹
へぇ〜。
そうすると負圧といって負の圧力が生まれ、圧力に差がでるんですね。
大村正樹
“負け”の圧力ですか?
  そうですね。ふくらんでいるほうの圧力は、空気が早く流れるので低くなる。
大村正樹
知らなかった。
  遅く流れるほうが、圧力が高いんです。
大村正樹
はい。
物というのは、圧力が高いほうから低いほうへ吸い寄せられるという仕組みがあるんです。今やっていただいたのが、まさにその実験です。
大村正樹
なるほど。じゃあ、翼の上と下にある空気の量は同じだけれど、翼の形状によって曲線を描いているところに空気の流れが集まりやすい、早い流れが来やすいと。
  はい。
大村正樹
そうすると、下のほうは空気があまり来なくなるから、上のほうに引き寄せられて自然と翼も上に上がって、飛行機の胴体も上に上がるということですか?
  そうです。例えば車でも実験できます。高速道路を走っている時に窓を開けて、手の平を下に向けて出して、スプーンのふくらんでいるような形に手を変えてみる。そうすると手がスーッと上がっていきますから。
大村正樹
やったことあります。それは分かる。やったことある〜(拍手)。
  あれと一緒です。
大村正樹
上には飛んで行きませんでしたけれど、力を入れなくても上がりました。
  飛行機の飛ぶ要素は2つあって、推力と揚力が必要です。今言ったのが揚力、上に上がる力です。
大村正樹
推力は“水”の力じゃないですよね。推進力の推力。
  そうです。それはジェットエンジンで、前に進んでいく力。
大村正樹
はい。揚力は浮き上がる力。
その両方の力で、飛行機は高く遠くに飛んでいくという仕組みです。
大村正樹
なるほど。強引にジェットの力で斜め45度に打ち上げているわけではないのですね。
全然違いますね。
大村正樹
いわゆる翼の揚力によってフワッと上がっているというイメージですね。
はい。
大村正樹
だけど、やっぱり胴体部に人が乗って、そこに多くの機械があって、とにかく詰まっているわけですよね。
  ええ。
大村正樹
あんな重い胴体部が上に上がるぐらいの揚力が、翼だけで起きるのですか?
  例えば、ジャンボジェットのボーイング747は一番大きい飛行機で、翼の広さは面積が500u以上あります。
大村正樹
家よりも広い。
  片方の翼の上でテニスができちゃうぐらい。テニスコートがすっぽり収まっちゃうぐらい広い。
大村正樹
そうか(笑)、500uって相当広いですねぇ。
  そんなに大きな翼で揚力を得ながら、なおかつジェットエンジンで300kmぐらいで滑走路を走って行く。
大村正樹
時速300kmで?
  大体そうです。
大村正樹
へぇ〜。だけど、上空では1,000kmぐらい出ますよね?
出ますね。
大村正樹
「今、945kmで飛んでいます」って書いてありますよね。
はい。
大村正樹
時速300kmで、500uぐらいの広さを持ち上げていると。でも、人間のいる真ん中のほうが広くありません?
  普通、真ん中だけが重いといくら翼を持ち上げてもポキッっと折れちゃうじゃないですか。でも本当は、翼が重いんですよ。
大村正樹
翼が重いんですか!?
なぜかというと、燃料のタンクがあるんですね。
大村正樹
翼の中に燃料タンクがあるんですか?
  主翼の中に。
大村正樹
へぇ〜。翼って強いんですか? 僕はよく飛行機に乗っていて、たぶん年間150回ぐらい乗るんです。「翼の上の席です」と言われたら嫌で、なぜかというと翼がフラフラ揺れるんですよ。分かります?
分かります。
大村正樹
あの不安感がたまらなく嫌で。
だから、「あっ!この飛行機、翼をバタバタさせているよ」と言う子どもがいるんですが、それは決して間違いじゃないんですね。飛行機ってそうできているんですよ。
大村正樹
できているんですか?
  ええ。柔軟性を持たせないと上空での揺れがすべてボディに伝わるので、お客様の席が上下に揺れる。翼を揺らすことでそれを抑えているのです。
大村正樹
あの翼がしなるのも、乗り心地がある程度維持されるために仕方がないということですか?
  そうです。
大村正樹
ちなみに、どれぐらいしなっていいんですか?
僕が見た中では、5メートルぐらいしなっていましたね。
大村正樹
上下に?
はい。
大村正樹
5メートル!?
はい。
大村正樹
それ、やばいでしょう!
僕は逆にそういうのを見ると、「この飛行機はちゃんとできているな」と思いますね。
大村正樹
そういう翼のしなりを見て興奮しているんですか、航空評論家の人って(笑)?
  いやいや(笑)。
大村正樹
「おぉ〜!」、「来た! しなり〜」とか、そうなっちゃうんですか? 職業病ですねぇ(笑)。素人は絶対嫌だもの。いやぁ、分かりました。これから翼がしなっているのを見ても、びびらないようにします。
ぜひそうしてください。
大村正樹
秋本さん、たぶん本来の航空評論家としての話って、スプーンのくだりしか話してないですよねぇ。
  すみません(笑)。
大村正樹
来週また話し足りない部分を伺ってもいいですか?
はい、了解しました。
大村正樹
今週のサイコーは、航空ジャーナリストの秋本俊二さんでした。ありがとうございました。
  はい、ありがとうございました。
大村正樹
今日のサイコーの話を聞いて、ちょっと安心しました。ジャンボ機の場合、翼は上下5メートルまで揺れてもいいんだって。もう15〜16年早く聞いとけば、僕の寿命ももうちょっと長かったかも知れないなと思ったけど(笑)。みんなはどう思ったでしょうか?
ジェットエンジン
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