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キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
今週も飛行機についての話です。飛行機の燃料って、僕はてっきりガソリンだと思っていたのよ。みんなもそう思うでしょ? でも、石油ストーブの灯油によく似たケロシンという燃料が使われているんだって。知らなかったね。今週も飛行機にまつわる興味深い話を聞いていきます。 |
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今週のサイコーは、前回に続いて航空ジャーナリストの秋本俊二さんです。こんにちは。 |
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こんにちは。よろしくお願いします。 |
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僕はよく飛行機に乗るのですが、飛行機の窓から見える景色は、「高い航空券を買ってよかったな」と思えるぐらい素晴らしいものが多いんです。 |
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はい。 |
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だから、あいにくの天気の時は、とても損した気分になる。 |
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そうですね。 |
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やっぱり富士山が見える時は感動するし、瀬戸内海などの島々が見えるときは、もう最高です。 |
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きれいですよねぇ。 |
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家に帰って、見た島をグーグルの航空写真で探して「僕が見たのはこの島だ」、「これは石灰石を取るための島なんだ」と乗った後の余韻にひたるのも好きなんです。 |
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はい。 |
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ただ一つ不満なのは、窓が小さい。今でこそ慣れましたけれど、最初は小さすぎて酔ったぐらいです。あの窓って何とかならないのですか? |
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それは、みなさん言うんですよ。 |
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やっぱりそうですか。 |
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構造上の問題があって、飛行機はどうしても軽く造らないといけません。実は飛行機の外側の材料はアルミ合金を使っているんですね。 |
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アルミ合金ですか。 |
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1ミリとか2ミリの薄さで必要な強度を保つためにストリンガーという骨組みを造り、そこに薄いアルミの材料を張り付けた構造です。 |
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恐竜の骨にアルミを張り付けたようなイメージですか? |
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そうです。例えば、縁日で見る提灯のような感じです。 |
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なるほど、提灯は分かりやすい。でも、飛行機の鉄板って1mmか2mmなのですか? |
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はい。 |
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おっと、鉄板と言っちゃダメなんだ。アルミ板だ。 |
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それを組み合わせて造ってるんです。 |
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じゃあ、「骨組み多めの皮薄め」ということですね。 |
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そうですね。 |
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それで軽量化を図っていると。 |
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ええ。骨は穴を開けられないので、窓を開けようとすると、その骨組みを避けなくてはいけないんです。だから、どうしてもあの大きさになってしまうんですよ。 |
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でも、窓の間隔が結構詰まっていますから、その間隔ごとに骨が通っているんですか? |
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そう考えていいです。 |
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かなり細かい骨組みが全体を覆っているということですね。 |
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そうですね。 |
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じゃあ、窓の大きさはどうにもならないということですかねぇ。 |
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かつて飛んでいたコンコルドという超音速旅客機などは、相当な空気抵抗を受けるので、強度を高めるために骨組みがもっと多かったんですよ。ですから、窓の大きさはものすごく小さくて、ひとつがハガキ1枚ぐらいのサイズしかなかった。 |
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じゃあ、今の航空機の方がまだましということですね、その2.5倍ぐらいありますから。 |
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そうですね。 |
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でも、将来的には窓の大きな飛行機ができると期待してもいいんですよね? |
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実は、今ちょうど開発を進めています。日本でも来年の2月か3月ぐらいに就航予定のボーイングの新しい飛行機787は、ボディに金属ではなくプラスチックを使っているのです。 |
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プラスチックのボディって、大丈夫ですか? 恐いなぁ。聞いて不安になっちゃった。 |
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炭素繊維の複合材という新しい素材を使って。 |
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カーボンですか? |
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そうです。それが、ものすごく強いんですよ。鉄よりもはるかに軽くて、強度が鉄の8倍ぐらいある。 |
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へぇ〜。 |
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実は、それを導入する全日空のエンジニアが「本当に大丈夫なのか。壊れたらどうやって直すんだ?」という話になって、実際にサンプルを取り寄せたのです。ところが、みんなでハンマーで壊そうとして叩いたら、壊れなかったんですね。 |
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へぇ〜。 |
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「これはすごい!」ということになって、現在の導入の運びになったのです。 |
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なるほど。 |
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新しい素材を使うと、骨組みが極端に減らせるのです。大きな一枚板を張り合わせてボディを造れるんで、当然窓も大きくできますよね。 |
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ええ。 |
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実際に今開発している飛行機は、現状の1.6倍の大きさがあるんですよ。 |
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それでもまだ小さいけど、現状に比べれば大きいか。 |
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実際に目の前で見たら大きいですよ〜。 |
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そうですか。今の窓は縦が大体30センチ、横が20センチぐらいですよね。これの1.5倍ぐらいということは…。そうか、大きいですね。 |
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この3月にボーイングのエンジニアに会ってきたのですが、「これからは通路側の人でも景色が楽しめるよ〜」と言っていました。 |
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半年ちょっとですね。 |
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もうすぐ新しいテスト用の機体ができ上がって、そろそろテストフライトが始まるんです。 |
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そうなんですか。 |
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これから半年かけてテストをしてライセンスを取って、いよいよ実際のエアラインに導入され、お客さんを乗せて空を飛ぶようになる。もうすぐです。楽しみですよ〜! |
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ところで秋本さんは、航空評論家としてガッカリしたことは何ですか? |
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ガッカリ? |
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例えば、僕が先週「翼がしなってビビッた」という話をしましたけど、そういうのはないのですか? |
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われわれは、何もガッカリしない。 |
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えっ、ほんとですかぁ? |
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何を見ても楽しいんです(笑)。 |
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僕のビビリ経験の話ですが、翼に雷が落ちたことがあったんです。夜間、羽田空港に着陸する時に、目の前にピリピリと電気が走っているのを2、3度見たことがある。あれは大丈夫なんですか? |
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飛行機って雷が落ちるんですよ。 |
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いいんですか? |
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ただし、落ちるって言わないんですね、飛行機の場合は。 |
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へぇ〜。 |
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なぜかと言うと、雷って地上から見ていると雷光が空から地面に走りますが、空ではそうとは限らない。目標物さえあれば、真横にでも真上にでも襲ってくるんですよ。だから、落雷とは言わないんです。 |
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でも、飛行機に電流が走って、中の人が感電するとか色々と素人は考えるわけですよ。 |
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雷で人に被害が及ぶのは、電気が体内を通っていく時にやけどをしたり心臓が止まったりということです。ですが飛行機は金属のボディに守られているので、ボディを通って外に逃げるんです。 |
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はい |
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よく「車で移動していて雷が鳴ったら、とにかく車に入れ」と言うじゃないですか。あれと同じですね。 |
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でも、今度のボーイング787は金属ではないんですよね。 |
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ちゃんと電流を逃す装置が付いているので大丈夫です。 |
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エンジンが「バンッ!」て爆発したりしないんですか? |
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ちゃんと考えて対処していますから、エンジンは。 |
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よくバードストライクでエンジンが1個ダメになったとか聞くじゃないですか。 |
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あれは大変ですね。 |
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あれのほうが大変ですか? |
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そうですね。対策がないんですよ。 |
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えっ〜! じゃあ、どうすればいいんですか? |
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この間の「ハドソン川の奇跡」、ありましたね。 |
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ええ。ニューヨークの。 |
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2つあるエンジンが両方一気に壊れてしまったので不時着になったんですが、そういうのは大変ですね。珍しいですけどね。 |
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航空評論家としては、ハドソン川に不時着した飛行機に乗っていたら、さすがに肝を冷やしますよね? |
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まぁ、でも不時着で済んでくれれば、「いい経験だったなぁ」と思うんでしょうねぇ(笑)。 |
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航空評論家としては箔が付くかも知れませんけれど。絶対、乗っていたらビビリますよ〜(笑)。 |
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ハハハハ。 |
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でもねぇ、先週と今週で飛行機に乗る怖さが、相当軽減されました。本当は専門の方にこんなことを話してもらうために来ていただいたのではないのですが、もう時間になっちゃったんで(笑)。絶対また来てください。 |
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はい。 |
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本当ですよ〜。もっと聞きたいことがいっぱいあるんですから。この番組も始まって3年近くになるんですが、航空の専門家は初めてですから。 |
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じゃあ、もっとやってください。 |
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助手たちも「航空の専門家にまた来てもらいたい!」と興味津々だったので、ぜひまたお願いします。今日のサイコーは、航空ジャーナリストの秋本俊二さんでした。ありがとうございました。 |
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ありがとうございました。 |
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2週にわたって、「僕が飛行機に乗ってビビッた」とか「肝が冷えた。寿命が縮んだ」という話ばかりしていたけど、実は航空ジャーナリストの秋本俊二さんは、「『飛行機の旅は本当に素晴らしくて、楽しいよ!』というメッセージを言いたかった」と帰り際におっしゃっていました。それをしっかり話せなくてごめんね。みんなも夏休みに飛行機に乗ることがあったら、思い切り楽しんでください。 |
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