
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。
さぁ夏休みも残りわずかになっちゃったねぇ。自由研究とか、大丈夫?
先週に引き続き、今週も建物を科学します。みんなが印象に残っている建物も登場するかも知れませんよ。お知らせの後、サイコーの登場です。

今週のサイコーは、前回に続いて、アーバンデザイナーで一級建築士として活躍されている高橋俊介さんです。こんにちは。
- こんにちは。

建築のプロである高橋さんが、東京都内でがおすすめする美しい建物といえばどこですか?
- ちょっと古くなるかもしれませんが、建築の中のディテールを見るなら、渋谷の松濤にある松濤美術館です。

えっ、松濤美術館。有名なんですか?
- 有名だと思いますよ。

上野美術館よりも有名ですか?
- いや、展示物はあまり有名じゃないかもしれませんが。

すみません、知らなかったです。松濤美術館は内部も素晴らしいんですか?
- ええ。外も少し特殊な形をしています。白井晟一(セイイチ)先生という方が、70歳を過ぎてから設計されたもので、東洋的なものと西洋的なものが合わさったような、哲学的な雰囲気のあるいい建物です。

ぜひ明日あたり、お父さんに連れていってもらってください。では、さっそく様々な建物の構造を科学していただきたいんですが。
- はい。

東京都内ですごい建物といったら何だろうなぁ? 僕が最初「何、これ!?」と思ったのが東京ドーム。できた時は「すごいな!」と。もう27〜28年前ですかねぇ。
- そうですね。

やっぱりプロから見ても、すごいですか?
- ええ。東京ドームは、建て方がちょっと特殊。周りに壁があって、その上に屋根でふたをしているような形になってますよね。

そうですね。
- それは、下で野球をするスペースが必要だから、柱があっては困る。柱なしで、どうやったら大きな屋根がかけられるか? ということでいろいろな工夫がなされているんです。

例えばどんな?
- まず屋根を軽くして、重さをできるだけ減らす。そして、空気を柱の代わりにしようと。

東京ドームの中って空気なんですか?
- 中に閉じ込めた空気に圧力をかけてるんです。たくさんの送風機で、外から空気を吹き込んでいるんですね。ちょうど風船をふくらませているように。

それは、屋根の部分が風船になっているんですか? それともお客さんのいる場所に空気を送り込んで、屋根を上にふくらましているんでしょうか?
- 屋根の部分が風船になっています。

あの屋根の白いところが、巨大な風船だということ?
- そうです。

へぇ〜! 本当ですか!
- 屋根には、丈夫でしっかりした布のようなガラス繊維という材料がかけてあり、中に空気を吹き込んで圧力をかけているんです。それで、あのようにふくらんだ格好になるわけですね。

じゃあ、あの白い屋根の空気を抜いたら、東京ドームはえぐれちゃうんですか?
- しぼんじゃう。

えっ、そうなんですか!
- はい。

ビッグエッグといわれてますが、卵置きみたいな形にへっこんじゃうわけですね。
- そうです。

知らなかった。でも、福岡ドームや名古屋ドームはへっこまないですよね。
- ええ。あれは硬い材料なんです。

ソフトなのは、東京ドームだけなんですか?
- 東京ドームを考えた時に、そのような技術を新たに導入しようという意欲が高まり、それを後押しする建設省のお役人さんや、それを許可する法律の整備まで整えて、完成したんですね。

へぇ〜。では次に、世界に誇れる日本の建築物は何でしょうか?
- これから完成予定のスカイツリータワー。

はい、墨田区ですね。
- 東京スカイツリーです。高さも自立式としては世界一です。そこの展望台は、世界一ではありませんが、おそらく日本の方が国内で経験できる一番高いところにある展望台になりますよ。

たしか展望台は450メートルぐらい?
- そうです。実は先週お話したブルジュ・ドゥバイにも展望階があるんですが、あそこは建物としては高いのですが、上のほうは普通の人が入ってはいけないような階ばかりで。普通の人が入っていけるのは442メートルのところまでなんです。ですから、ブルジュ・ドゥバイの展望階よりも高いところを日本で経験できるわけです。

ということは、東京スカイツリーの展望台は、人類があまり経験してない高さにあるということですね。
- 僕はそれに類するようなところに上がったことがあるんですが、何か飛行機に乗っているような、雲の上にいるような感覚で…。

そうですか。
- ビルの中にいる感じがしないかも知れないですねぇ。

地震の後のニュースで、高いビルがしなるというイメージ映像を観ると、窓ガラスやコンクリートが割れちゃう…と心配になるのですが。建物がしなっても大丈夫なんですか?
- ええ。超高層ビルのひとつの技術として、地震が来た時には建物が揺れることによってエネルギーを吸収するという基本的な姿勢があるんです。それを柔構造といいます。

ジュウ構造。あっ、柔道の柔。
- そうです。

柔ら(ヤワラ)構造ですね。
- 柳の木はしなって倒れないといいますが、それと同じようにゆっくり揺れてしなって支える。では、今、心配された窓ガラスや壁とかは…。

ひびが入らないんですか?
- 超高層ビルの場合には、揺れる骨組みに壁や窓のパネルがぶら下げてあるようになってる。カーテンみたいなので、カーテンウォールという言葉があるんですが…。

へぇ〜。上から吊り下げているイメージ? 下は見た目にはくっついているようだけれど、本当は垂れ下がっているだけだと?
- 遊びがあって、動くことに追随できるようにしてあるんです。

ボコボコボコ(たたく音)。ラボの壁をたたいているんですが、非常にガッチリした造りですね。これも木だけれど遊びがあるんですね。
- 室内のパーティションは、そんなに頑丈な構造体ではないですね。

そうか、これは関係ないのか。
- 多分大きな地震がきたら、少しずれたりして動くとは思うんですが…。建物の外壁は構造体である柱と梁という骨組みがあり、それにぶら下がっている部分は吊ってあるだけでなんです。

今、イメージしてみますね。何となく外を歩いていると、すごく高いビルがいっぱい建っている。僕らに見えるところには柱があるけれど、その間の壁は遊びを設けていて、一枚一枚が上から吊るしてあるだけ…。
- そうです。

そういうイメージなんですね。
- はい。

いや〜、すごい! これからそういうイメージをしながら街を歩いたり、電車に乗ったりしようと思います。へぇ〜、興味深い。 ありがとうございました。このようなお話は高橋さんの著書に含まれているんですか?
- 『巨大高層建築の謎』という本に、そういった面白い話をまとめています。「これから建築を勉強したい!」と思っている人に興味を持ってもらえるような内容がいっぱい入ってます。

そうですか。建築も科学ですか?
- 建築も科学です。

今週のサイコーは、アーバンデザイナーで一級建築士の高橋俊介さんでした。ありがとうございました。
- どうもありがとうございました。

そうか、柔らかい構造…。たとえビルは四角くても、実は柔らかい造りだということがわかったね。さあ、みんなもわかったかな?