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「音力発電の力」(1)
コーチャー/速水浩平さん(株式会社音力発電 社長)
大村正樹&寺門和夫
大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。ところで突然だけど、発電といえば一番最初に何発電をイメージする?原子力発電? 火力発電?最近は風力発電、水力発電などもあるけれど、全く新しいジャンルの発電方法があるんだって。それは音力発電。僕は今「あぁ〜」としゃべっていますが、この声も発電に活用できちゃうんだって。ということで、今週のサイコーは、音力発電の速水浩平(ハヤミズコウヘイ)さんです。こんにちは。


こんにちは。

大村正樹

株式会社音力発電の社長さんですか? お若い社長さんですね。しかも、大学院生だという?

そうです。

大村正樹

学校にも通ってらっしゃるということですか?

はい。今28歳ですが、3年前に会社をつくらせてもらって学問と実業の兼業をやってます。

大村正樹

慶應義塾大学大学院の博士課程。28歳で学生さんでもあり、社長でもあるということですか? 学費は払うんですよね?

もちろん(笑)。

大村正樹

じゃあ、社長の収入で学費を払っていけるんですね。

はい。

大村正樹

うらやましいなぁ。どっちが楽しいですか、学生と社長は?

難しいですが、今はやっぱり会社のほうに集中してますね。

大村正樹

そうですか。でも音力発電を研究する学問もされてるんですね。

研究開発が好きなんで、どっちが好きかというと微妙ですが、まずは仕事のほうをやらせてもらってます。

大村正樹

今日はキャンパスライフではなくて仕事のほうの話、音力発電に関して伺いたいんですが、音力発電って聞いたことないんですけど具体的には何ですか?

書いて字の如く、音の力で発電するという新しい発電方法です。今、私がしゃべったりしている声から発電できたり…。

大村正樹

えっ、しゃべっている声が?

そうです。あとは自動車の騒音などからも電力が生み出せるという技術です。

大村正樹

都会の車の騒音で電気がつくってことですか?

そうですね。

大村正樹

何でですか、それは?

それが技術のコアなところですが…(笑)、圧電素子という物質を使うと発電ができるんですよ。身近な例でいうと、100円ライターとかガスコンロは、パチッとやると火花がつきますよね。あれは、圧電素子に力を加えてたたいて発電しているんですね。

大村正樹

へぇ〜。

圧電効果というんですが、その発電で火花が飛んで引火する。

大村正樹

圧電効果でライターは火がつくんですか?

はい。私が行なっている音力発電の技術も、その圧電効果を利用したものです。もちろん100円ライターやガスコンロのように直接たたくわけではないんですが、圧電素子に音の力を効率よく与える仕組みを工夫して発電してるということです。

大村正樹

風力発電は風車が回っているから「これで電気が起きるんだな」と何かイメージがつくんですが、今のお話だと僕がしゃべっていて、これも発電する可能性はあるんですか?

ありますね。

大村正樹

えっ、僕の声で電気がつくんですか!? 僕はどれだけ無駄な電力を今まで振りまいてきたんだろう(笑)。そういうことですか?

はい。

大村正樹

声のエネルギーを電力に変えることができる。

そうですね。正確にいうと、声以外でも、音は空気中を伝わる振動ですので。 その振動のエネルギーを電気に変えることができる。

大村正樹

やっと分かった。そういうことか! 大きい音をスピーカーで 聴くとズンズンするけど、あの振動の音をエネルギーに変えるということですか?何となく分かりました。例えば、東京で速水さんの圧電装置を使った発電機はあるんですか?

あります。今、設置されてるものでいうと、首都高速道路の五色桜大橋という橋があります。

大村正樹

五色桜大橋? 何区ですか?

足立区です。荒川にかかる橋ですが、首都高五大橋のひとつでもあって、橋が好きな人は知ってるかもしれません。

大村正樹

首都高速の五色桜大橋の何が?

橋の裏側に、橋の振動を使った発電という仕組みの装置が付いています。橋の上を車やトラックが通ると、橋が揺れますよね。その揺れで発電して一旦バッテリーに貯めて、夜になるとその橋のライトアップ、イルミネーションをやってるんですけど、その電力の一部に使われてます。

大村正樹

すごい! それは橋の走行中に見えるのか、橋の外側から見えるのか、どちらですか?

発電装置自体は橋の裏側なので、橋の上を通っていると見えない。

大村正樹

「これが発電機だ」とは分からない。橋の下に設置されてて、明かりはどこについているんですか?

アーチ橋で、アーチの部分にLEDのイルミネーションが付いてます。それが光ります。

大村正樹

車からも外からも見える?

それは見えますね。

大村正樹

これ終わったら行ってみます。でもそれは音じゃなくて、振動をエネルギーに変えることで発電してるんですよね。振動を生み出すことは声、音でも可能ということですね。

そうです。

大村正樹

へぇ〜。実際、発電機を今日お持ちいただいたと聞いたんですが、どれですか?

今日、こちらにご用意させて…。

大村正樹

これ? ノートパソコンかと思った。これ発電機だったんですか!ラボ内に速水さんが何か黒い箱を持ってきたので「さすが研究者なんだな」と思ったら、パソコンじゃない…。

これは発電床という発電機ですが、床ですので実際に置いて人が上を歩きます。踏みますよ。

大村正樹

あっ、ちょっと待って!ただ単にノートパソコンみたいな黒い箱を踏んでいるだけで、一瞬、緑色のライトが光るんです! みんなに見せてあげられないのが残念ですけれど、イメージしてみて!黒いパソコンを踏んづけています。踏んづけた瞬間、パソコンからコードが延びてて豆電球が光ります。 何で?これはバッテリーがパソコンのこの黒い箱に入っているわけではなくて?

もちろん、そういったものは入ってなくて、踏んだ力を振動に変えて発電させているんです。

大村正樹

その五色桜大橋のイルミネーションは、結局車が走ることによる橋の振動をイルミネーションにしてるということですね。

そうです。これは床を歩いた時に、床の表面に振動が伝わるんです。わずかな振動を効率よくひろって圧電させて発電している。

大村正樹

感動しました。今、日本では原子力発電に一番頼っているわけで、エコ、エコっていわれながら、やっぱり風力発電になかなかシフトできないですよね。こういう音力発電、振動の発電にシフトしたら、夢として日本の電力の何パーセントぐらいをまかないたいという気持ちですか?

将来的には20パーセントぐらいをまかなえればなぁ、という大きな夢があります。もし100パーセントクリーンエネルギーでまかなうとしたら、半分ぐらいが太陽光だろう。30パーセントぐらいが風力発電じゃないか。残りの20パーセントをどうするか、という課題がひとつあると思うんですが。でもそれを振動で発電できればなぁと思ってます。

大村正樹

僕なんか人一倍元気なおじさんですから、ぜひ僕の声も発電に使ってくださいよ。 ところで、速水さんは、ほかにも色々な発明をしているという情報がある。その他もろもろ?

その他もろもろ(笑)。

大村正樹

時間が来ちゃった。また来週お話を聞いてよろしいですか? 今回のサイコーは、音力発電の速水浩平さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございます。

大村正樹

東京もぼちぼち夕暮れの時刻ですが、この五色桜大橋というのは足立区、首都高速の中央環状線の江北ジャンクションと王子北出入口の間にあります。今ドライブ中の人がいたら、ぜひお子さんを連れて行ってあげてください。ちょうど光り始める時間帯だと思います。これは振動による発電で光っている橋なんですって。すごいですね!さぁ、僕も今から五色桜大橋に行って来ます。それじゃみんな、バイバ〜イ!