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「生き物“もどき”」(1)
コーチャー/山村紳一郎さん(サイエンスライター)
大村正樹&山村紳一郎
大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。 みんな「もどき」って言葉を聞いたことや、使ったことあるよね。「もどき」は似てるんだけれど、実は違うという意味。よく「誰々に似てる」という時に、「何々もどき」と言っちゃう人がいるけれど…。日本では「がんもどき」が一番有名で、何で「がんもどき」か? 諸説ある中で、空を飛ぶ雁という鳥がいて、その肉と味が似てるから「がんもどき」という名前が付いたそうですが…。といっても、雁の肉を食べたことがある人は誰もいないと思うのですが。でも、そういう語源があるそうです。今日は生き物の世界にも「もどき」がすごくたくさんあるというお話です。


大村正樹

今週のサイコーは、サイエンスライターの山村紳一郎さんです。こんばんは。

どうもこんばんは。よろしくお願いします。

大村正樹

山村さんは、誠文堂新光社から『いきものもどき』という本を出版されてますが、この本がめちゃめちゃ面白い! 今年出たんですよね?

ありがとうございます。そうです。

大村正樹

これ1500円ですけれど、50種類の生き物とか植物の「もどき」が書いてある。ここに出ている、ササキリモドキとかコオニグモモドキ、カミキリモドキとか…これは正式名称でそういう昆虫の名前が付いているということですよね。

そうですね。和名と言いますが、日本で正式な名前。

大村正樹

いわゆるトキとかヒバリとか、そういうことですよね。

はい。

大村正樹

誰が「もどき」と付けたんですか?

名前を付けるにはいろいろな方法があります。でも基本的には、それを発見して、分類と言いますか、動物のカテゴリーのどこにあるかを決めた段階で何々という名前が付くわけです。

大村正樹

カテゴリーを分類して、何々に似ているから「もどき」って付けちゃったわけですか?

いえ、実は怪しいことがいっぱいありまして…。きっちりと似ていて「もどき」というのもあるんですよ。ところが、あんまり似てなくて名前だけ「もどき」というのもあるんですね。

大村正樹

ほんとだ! この本に「もどき」度という円グラフが描いてある! 何だこれ(笑)?

ハハハハ。

大村正樹

「もどき」度80パーセント=カマキリモドキ。「もどき」度100パーセント=カミキリモドキとかアゲハモドキとか。パーセンテージで「もどき」度20パーセントとか、いろいろある。じゃあ、似てないけれど、「もどき」という名前を付けられちゃった動物たちもいるわけですか?

ええ、例えば身近にいる魚と植物がよく似てたらすごいと思いませんか?

大村正樹

魚と植物が似てたら…、はい。

例えば、分類の中で遠くにある生き物が似てると、「もどき」度はアップする。一方、近いものは「もどき」度がよく似てても、近いんだから当然だろうということで、「もどき」度はダウンする。ということを私が勝手に決めまして(笑)。

大村正樹

この本にあるアゲハモドキは「もどき」度が100パーセントで、アゲハチョウの挿絵が描いてあるんですが、アゲハモドキの挿絵とアゲハチョウの挿絵、ほぼ同じじゃないですか?

そうですね。

大村正樹

これ、「もどき」度100パーセントでしょ。だけど、同じようにチョウチョみたいに空を飛ぶものですよね。

はい。

大村正樹

でも今の先生の話だったら、「もどき」度は下がってもおかしくないのでは?

ええ、でも実はアゲハモドキには、すごい戦術があるんですよ。

大村正樹

何ですか?

このアゲハモドキが「もどき」をしている本家ですが、ジャコウアゲハというチョウチョで、体の中に毒を持っているんです。それは、幼虫の頃、毒のある葉っぱを食べていて、その毒を貯めているうちに、毒を持っちゃうわけです。アゲハ自体の体には影響はないんですが、カラスとか鳥が来て食べた時に、お腹をくだしたりして「こいつは食べられないよ」と。

大村正樹

へぇ〜。

そういう防御をしてきているわけですね。

大村正樹

もともと語源になったアゲハというのは、僕らがイメージしているアゲハチョウチョではなくて、ジャコウアゲハという毒を持っているアゲハチョウに似ているから、アゲハモドキだということ?

ところがアゲハモドキは、形はそっくりなのですが毒は持ってないんです。

大村正樹

じゃあ、アゲハモドキのほうがいいやつじゃないですか。

はい。つまり毒をとるという努力はしないけれど、格好だけ似せちゃったものだから、カラスとか鳥が来て、「こいつはジャコウアゲハだから食べられないや」と通り過ぎちゃうわけですよ。アゲハモドキは、うまい作戦を使っているんですね。ということで、アゲハモドキのような頭脳派プレイをやっているものには、どうしても点が甘くなってしまう(笑)。

大村正樹

へぇ〜。頭がいいから「もどき」度100パーセント。

頭がいいというか、不思議なことですよね。

大村正樹

このアゲハモドキは、どこにでもいるんですか?

アゲハモドキはあまり数は多くないですが、日本には1種類だけ、北海道から九州にかけて住んでると言われています。でも、実は、私は会ったことないんですよ。

大村正樹

では、ジャコウアゲハは、かなりいるんですか?

そうですね。

大村正樹

じゃあ、それを2つ見た時に、どっちが「もどき」で、どっちがジャコウアゲハかは分からないということですか?

ええ、見ただけでは。そんなに簡単には区別がつかないと思います。

大村正樹

毒を持っているかどうかの違いぐらいは?

食べてみれば分かるという(笑)。

大村正樹

嫌だなぁ、それ!

ジャコウアゲハもそうですが、このように、生き残るためのうまい作戦を形だけまねたり、借りてるということでしょうか。“虎の皮をかぶった狐”なんて、よく言うじゃないですか。

大村正樹

別に悪気はないわけですよねぇ、アゲハモドキに。

はい。何を考えてるか分からないですけど(笑)。

大村正樹

たまたま遺伝子の関係でよく似ちゃっただけで。

進化も不思議ですねぇ。

大村正樹

海じゃなくて川の魚でもアユモドキ=「もどき」度100パーセント。

アユモドキ、これすごいですねぇ。

大村正樹

アユの挿絵があって、もうひとつアユモドキの挿絵がある。シマシマがあるかないかですけれど。

これはイラストで、特徴を完全には表せてないのですが、かなり丁寧に描いていただいています。模様は違うように見えますが、見た感じの雰囲気はアユっぽい魚だという。

大村正樹

イワナとかヤマメではダメですか? 何でアユなんですか?

これは、やっぱりアユがメジャーだからじゃないですか(笑)。イワナモドキは聞いたことないですが。

大村正樹

では、アユとアユモドキの決定的な違いは何ですか?

アユモドキはドジョウの仲間です。

大村正樹

えっ! ほんと?

アユは川魚ですよね。

大村正樹

アユモドキはドジョウの仲間!? あっ、ヒゲがある!

田んぼの水路とかにいたりするんですね。

大村正樹

見た感じでは、シマシマの模様が付いているから、例えば、シマドジョウとかマダラドジョウとか、そんな風に名前を付けちゃいけないんですか?

どうなんでしょうねぇ、そのへんは私も分からないんですが…。名前を付ける方のインスピレーションというかセンスだと思うんですね。

大村正樹

はぁ〜。

どういう思いで付けたのか分からないですけれど、確かに形をシルエットで見ればアユに似てるんですよ。

大村正樹

でもドジョウだから食べられると思うんですが、味はアユとは全然違いますよね。

当然違いますね。

大村正樹

ですよね。

食べられるんでしょうかねぇ、私もよく分かりませんが(笑)。はい、そういうのがいるということですね。

大村正樹

変なの〜。

ですから、とっても変なので、「もどき」度100パーセントと、付けさせていただきました。

大村正樹

ドジョウの種類がアユモドキ。アユ科はアユ…ということですね。

はい、アユ科はアユですね。

大村正樹

あっ、100パーセント発見! ペンギンモドキ。何だ、これ?

これは…。

大村正樹

ペンギンとそっくりだけど(笑)。ペンギンも「もどき」がいて、ペンギンとそっくりのイラスト、挿絵が描いてあります。何でこれが「もどき」なのですか?

実はペンギンモドキは、今生きている生き物ではないんですよ。

大村正樹

えっ〜、もういない!?

ペンギンモドキという種類の名前が付いてますが、これは化石に付けられた名前です。

大村正樹

もう死んじゃったんですか。

絶滅してます。

大村正樹

この世にいないわけだけど、絶滅した後で現代人がペンギンモドキと名前を付けた。じゃあ、昔は何て言われてたんですか?

昔は何て言われたんでしょうねぇ。その頃、人がいなかったと思いますから(笑)。

大村正樹

化石にも名前を付けちゃうんですか?

そうですねぇ。「もどき」の名前を付けたり。

大村正樹

人間って、勝手ですねぇ(笑)。

この「勝手」度はすごいですよね。

大村正樹

ペンギンというと、白と黒ですよね。その色彩まで化石で分かったんですか?

化石で分かるのは体の構造とか、どういう風に生きていたかというところまでですね。色まで完全に分かる化石は、ほとんどないです。

大村正樹

そうですか。この本では、カラーで、スッポンとスッポンモドキの写真とか出てるんだけれど、分かんないよ、これ(笑)。だけど、勝手に「もどき」とされても、スッポンモドキ的にもかわいそうだよ。「俺はスッポンと思って生きてるのにふざけんな!」と、怒ってるかも知れないですよ(笑)。

絶対そう思いますね!

大村正樹

ですよねぇ!

だって、先に見つかったほうが本家になっちゃうわけでしょ。

大村正樹

何か嫌だな、今回は釈然としない(笑)。あれ、もうこんな時間。ちょっと山村さん、来週また「もどき」の話を伺ってよろしいですか?

分かりました。

大村正樹

今日のサイコーは、サイエンスライターの山村紳一郎さんでした。ありがとうございました。

どうもありがとうございました。

大村正樹

ほんとに短い時間だったので紹介できなかったけれど、いっぱい「もどき」がいました。アリモドキとかオサムシモドキ、サフランモドキ、シロアリモドキ…。「もどき」ばっかりだけど、これインターネットでも調べれば写真とかあるそうです。もしよかったら、週末にインターネットで調べてもらうと、いろいろな「もどき」がいることに気づくかも知れないですよ。ほんと面白かったなぁ。みんな、どうだったでしょうか? それじゃまた来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!

ドジョウ  

ドジョウ

写真提供:大阪府環境農林水産総合研究所 水生生物センター

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