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「生き物“もどき”」(2)
コーチャー/山村紳一郎さん(サイエンスライター)
大村正樹&山村紳一郎
大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。先週聴いてくれたキッズは分かると思うのだけれど、先週は「もどき」ということで、いろいろな生き物の「もどき」の話を聞いたんですが、この1週間何を見ても「もどき」にしか見えなくなっちゃって…。今、ラボの中にマイクもどきがあるし、時計もどきがあるし、何かいろいろな本もどきがあったり水もどきがあったり…。どっちが本物なのかよく分からない(笑)。世の中に「もどき」というものがあることがよく分かったんですけどね。今日もさまざまな「もどき」に登場してもらいますが、「もどき」以外にこの後は「だまし」も登場するよ。お知らせの後!


大村正樹

今週のサイコーも前回に続きまして、サイエンスライターの山村紳一郎さんです。こんばんは。

どうもこんばんは。

大村正樹

先週は山村さんの『いきものもどき』という本をテーマにして話を伺ったら、あっという間に時間になっちゃって(笑)。今週もちょっと気になる「もどき」です。実は最悪で…。あっ、鳥肌立っちゃった。助手、おいらの鳥肌を見ろ(笑)。ボアモドキというのがあって最悪! もうヘビ、大嫌いなんですよ。

そうなんですか。

大村正樹

ボアモドキって、このボアはヘビ系ですよね。

そうです。

大村正樹

何ですか、ボアモドキって?

このボアは非常に大きなヘビですが、実はボアモドキはかわいそうなの。

大村正樹

かわいそうじゃないですよ。いい、こんなのいらない。

“アダムとイブ”の話があるじゃないですか。

大村正樹

はい、大昔の人類の原点。

アダムとイブをそそのかして悪いことをさせたという犯人がヘビだと、本には書いてあります。

大村正樹

そうなんですか。アダムとイブが禁断のリンゴを食べたんでしょ。

そのリンゴを食べさせた張本人が、このボアモドキだと。

大村正樹

ヘビが食べさせた? ボアモドキが?

甘くささやいたんでしょうね。

大村正樹

へぇ〜。

「食べたらいいよ〜」みたいなことを言ったんじゃないですか。それで人間がこうなってしまったよ、という話で。

大村正樹

ちょっと待って。それをやったのがボアモドキだったということですか?(笑)。

ということになっちゃったんですよ。

大村正樹

ボアじゃなくて、何でボアモドキだったという疑いが?

不思議ですね。ボアモドキは日本人がボアモドキと付けてますが、現地の人は別の名前で呼んでるんですね。

大村正樹

ですよね。

ですから、ボアモドキという名前だからどうのということではなくて、実はボアモドキというヘビは、そういう悪いことをした犯人だと決めつけられちゃったわけですね。それで、殺されたり痛めつけられて、もうほとんど絶滅寸前となってしまった。

大村正樹

じゃあ、ボアモドキはかなり大昔の生き物だということですか?

いえいえ、人間と同じように現代に生きている生き物です。

大村正樹

まだいるのだけれど、アダムとイブの元凶がボアモドキだということで、どんどん数が減っちゃったということですか?

はい。もう本当にひどい目にあっているというか、本来は山の中でひっそり暮らしているヘビですが、それをわざわざ引きずり出してきて「こいつは悪い奴だ!」と言ってたたいて殺したり…。

大村正樹

何それ! 勝手に人間がそう思ったんですよねぇ。

はい、そのアダムとイブの話も人間が作ったものだし、ボアモドキが犯人だと決めつけたのも人間だし、たたき殺してしまったのも人間であるという…。ひどい…。

大村正樹

かわいそうに…。この本にちゃんと書いてあるよ、「いくら何でもひどいと思います」というタイトルで。

ほんとにひどいと思います。

大村正樹

よかったら読んでください。あっ、植物でもある! 僕は果物が大好きなんですが、ビワモドキというビワ。

私もビワ大好きなんですよ。おいしいですよねぇ。

大村正樹

ビワ、おいしいですよね。でも、ビワにも「もどき」がいるんですか?

写真では分からないと思いますが、実際にはビワの数倍の大きさで、ソフトボールぐらいの大きな実がなるものがあるんですよ。

大村正樹

だから、「もどき」度60パーセントとなっている。ビワだと思って間違えて食べちゃうことはないですか?

ところが、あんまりおいしくないんだそうです。ただゾウが食べるそうで。

大村正樹

へぇ〜。

ゾウは、ビワモドキの実を好んで食べると言われてます。どちらかというと、よく似てるのは実よりも葉のほうですね。

大村正樹

葉っぱが…。そうなんですか。

たぶん実もビワの味がしたら100パーセントだったと思うんですけれど。

大村正樹

これこそ、種目も全くバラバラですね、ビワモドキとビワは。

そうです。全然違うものです。

大村正樹

見た目がよく似てる、葉っぱがよく似てるということでビワモドキと。

はい、私たちが食べているビワはバラ科といって、バラの仲間なんです。

大村正樹

そうなんですか。

ええ、でもビワモドキのほうはビワモドキ目ということで、ビワモドキ科という科を新たにたてています。

大村正樹

じゃあ、ビワモドキ科のほうが偉いじゃないですか。

「もどき」ではありますけれど、一応“一科一統(イッケイットウ)”というか、その系統の主ですね。

大村正樹

ですよね。

ビワはバラ目のバラ科のナシ亜科という、要するにバラの仲間のはじっこのほうにいる。そういう意味では肩身が狭いんじゃないかと。

大村正樹

じゃあ、本家のビワよりもビワモドキのほうが、分類的にはビワモドキ目、ビワモドキ科、ビワモドキ属とあるわけだから…。

偉いです(笑)。

大村正樹

ビワの場合は、バラ目バラ科ナシ亜科ビワ属という…。

そういうことですね。

大村正樹

ビワモドキって、かわいそう!「もどき」と言われて、ひど〜い!

ビワのほうが先に知られちゃったので。ビワモドキのほうが後で名前を付けてますから。

大村正樹

なるほどね。

そういう関係がよくある。

大村正樹

先に知られたことが大事なんですね。

はい。

大村正樹

星もそうですよね。後から知られた星には有名な名前が付きませんものね。

なかなか付かないですねぇ。

大村正樹

なるほどね。でも「もどき」以外でも、例えばニセアカシアとか有名なものがあるじゃないですか。

ニセアカシア、有名ですよね。

大村正樹

ニセアカシア的には「ふざけるな!」と絶対怒ってると思いますよ。「何で人間が勝手に付けてんだ!」と。

もっと怒ってると思いますが、実は私たちがアカシアと呼んでる木があるじゃないですか。実はニセアカシアのほうが本当のアカシアで、アカシアは後で生えてきたものなんです。

大村正樹

へぇ〜。

最初に紹介されたアカシアが日本ではアカシアと認識したわけですが、実はそれはアカシアじゃなくて別のものだったんです。

大村正樹

“アカシアさんま”さんだったんですか?

さんまさんかどうか分からないですが(笑)。ただ先に名前を付けちゃったもんだから、後で入ってきたものが実は本家だと分かって困ったわけですよ。

大村正樹

そういうこともあるんですか!?

で、しょうがなくてニセアカシアにしちゃったんです。

大村正樹

今もニセアカシアと言われている。

それどころか、ニセアカシアは本来あるべきところに生えてるわけじゃないということで、有害樹木になって伐採されたりしてるんです。

大村正樹

日本でですか?

日本で。

大村正樹

世界ではニセアカシアがアカシアのスタンダードなんですね。日本の和名だけがニセアカシアと付けちゃってる。

日本では、和名でニセアカシアと言っているのがアカシアで、アカシアと言っているのが実は本家とは違うということですね。

大村正樹

変なの〜。

そういうのがけっこうあるんですよ。

大村正樹

へぇ〜。

誰が先に発見して名前を付けるかで、いろいろな“前後”が出てきますから、ひょっとして「先に私が見つけたから、この名前付けちゃおう!」と。
例えば、ホタルイカは、いろいろな段階でいろいろな人が見つけたので、「やれ、あっちのほうに近い」「こっちのに近い」となったんですね。でも名前というのは、分類学上で近いか遠いかを調べて決定するわけですから、さまざまな名前が飛びかってしまい、どれがどれだか分からなくなっちゃったんです。

大村正樹

あぁ、なるほどね。

正直、私も混乱してます。

大村正樹

そうですか(笑)。あっ、また人聞き悪い名前を発見した! 何これ? テントウムシダマシ。

はい。

大村正樹

テントウムシをだましてるわけじゃなくて、テントウムシに似ていて、ほかの外敵をだましてるわけですよね。

そうですね。主にだまされているのは人間だと思います。

大村正樹

ですよね。それをテントウムシダマシと、人聞きの悪いことを言われているわけですよね。

ええ。日本では、テントウムシダマシはよく見ることができます。別の名前でニジュウヤホシテントウとか呼んでる方もいらっしゃる。

大村正樹

ニジュウヤホシテントウ。

いろいろなテントウムシがいますが、よく知っている一番ポピュラーなのがナナホシテントウと言って、星が七つあってちょっと大きなテントウムシです。害虫を食べると言われる益虫です。

大村正樹

ええ。

一方、ニジュウヤホシテントウやテントウムシダマシの仲間は、作物を食べる害虫と言われてます。

大村正樹

へぇ〜。

だから、それがいいか悪いか別にしても、害虫と言われているから、やっぱり「だまし」になっちゃうのかも知れないですねぇ。

大村正樹

これはいいですよ。許します。テントウムシは役に立っている虫と習ってますものね。

ええ。ただ役に立ってるのは人間の役に立ってるわけですから、自然の中でどう役に立っているかと言えば、やっぱり両方とも同じですよね。

大村正樹

そうか、そうか。

両方いるから成り立つのであって、これ全部テントウムシだけになって小さな虫を食べる、害虫を食べることばっかりやってると、今度は食べられた害虫の果たしていた役割がなくなっちゃう。

大村正樹

テントウムシは、アブラムシを食べるわけですよね。

でも、アブラムシも必要ですよね。

大村正樹

アブラムシも生きている意味があるわけですからね。

はい。

大村正樹

人間的には役に立ってるけれど…。そうか、どっちもどっちなんですね。

そうですねぇ。だから人間がどのように名前を決めるかと同じように、どういうふうに生き物のことを考えているか…。調べているといろいろなことが分かってきますよね。

大村正樹

はぁ〜。おもしろかった! もう時間になっちゃいました。すみません。あっという間でしたねぇ。

ええ。

大村正樹

2回にわたって、ありがとうございました。

ありがとうございました。

大村正樹

今日のサイコーは、サイエンスライターの山村紳一郎さんでした。

大村正樹

よくアメリカで“何々ジュニア”とか名前があるじゃないですか。偉大なお父さんだったらいいけれど、偉大じゃなかったら「ふざけんな! こんな名前を付けて」と思うかも知れない(笑)。日本はそういう名前はないよね。もし、この「もどき」の習慣があって、“大村正樹もどき”と家の子どもに付けたら、家の子は怒っただろうなと思いましたけれど。それじゃまた、来週も夕方5時半に会いましょう。みんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!

ビワモドキ

ビワモドキ

写真提供:東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林樹芸研究所

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