
キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。いまお台場の日本科学未来館では、すごい展示をやってるんですね、『‘おいしく、食べる’の科学展』。おいしく食べることを科学しちゃおう!という展覧会。キッズたちもぜひ、お母さんに連れてってもらってください。今日のテーマは食品物理学ということで非常に難しい漢字5文字です。日本科学未来館の方がお知らせの後、登場しま〜す。

今週のサイコーは、東京にお住まいならみんな知ってる日本科学未来館の科学コミュニケーターの森田由子さんです。こんばんは。
- こんばんは。

いまお台場の日本科学未来館では、すごい展示をやってるんですね。
- はい。

『‘おいしく、食べる’の科学展』、おいしく食べることを科学しちゃおう!ということで、観て来たんですけど、ちょっと感動しました!
- ありがとうございます。

すごくよかったです! 娘を連れて行こうと思ってるんです。
- ぜひ、いらしてください。

小学校5年生、適齢期ですよね。
- ちょうどいいと思います。

だから、ラジオ聴いてるキッズたちもぜひ、お母さんに連れていってもらってください。この展覧会、具体的には何を展示していますか?
- タイトルに‘おいしく、食べる’とあって、食べるということはみなさんが毎日行なっている活動ですが、これを支えている科学や技術について紹介しています。またそれだけではなくて、科学や技術だけでは‘おいしく、食べる’ことができない部分がいろいろあるんですね。こちらについても知っていただきたいという思いでさまざまなテーマを取り扱っています。

そうですよね。だから、あまり話しちゃうとネタばらしになっちゃいますが、僕が体にいいと思ってやってたことが、実はそうじゃない、とかね。
- はい。

世の中で「これはいけないことだよ」と言われてたことが、今の食育の中では必要だったりする。
- はい。

いわゆる食育ですよね、今、はやっている。
- そうですね。

これをプロデュースされているのが森田さん?
- いえ、そんな大げさなものではないんですが。

何をやってるんですか?
- この企画は、2年ぐらいかけて今回の公開にこぎつけました。最初の頃から「こういうテーマが食に関しては重要じゃないか」とか、私がもともと研究者の出身ということもあって、それを支える科学の部分を正確に取材する必要がありました。

2年間?
- そうですね。

集大成ですねぇ。
- はい。

満を持して。“マンジシ”で!
- そうですね(笑)。

そこで、今回はそのイベントと連動したテーマでお伝えしていこうと思っています。今日のテーマは食品物理学。非常に難しい漢字5文字です。
- はい。

食品物理学って何ですか?
- これは食べ物の物理学的な特徴、特性を明らかにしていく分野です。でも、物理学とついているだけで、ちょっと引いちゃう方もいらっしゃると思いますが。

そうだ、そうだ。
- 具体的には、例えば口当たりとか食感ですね。そういうものがどういう仕組みで、そもそも感じられているのか? あるいは、それを実現するためにはどうしたらいいのか? そういうことを研究していく分野です。

全然分かんないですけど、もっと詳しく教えてください。
- そうですね。例えば、チョコレートを例にとって話したいと思います。

いいねぇ、チョコレート。
- チョコレートはパリッとかじって、それが口の中に入った途端にトロッととろける。そこで甘〜い香りだったり、味が感じられるというのが一番の魅力だと思うんですね。単なる甘いものじゃなくて。

うん。
- そのパリッとなったのがすぐに溶ける、という部分がどういう仕組みでそういう現象が起こるのかを研究しているということです。
- それはそうなんですが。例えばバター。普通の牛乳で作ったバターがありますよね。そのバターを口の中に入れると、最初からだんだんドロドロしてきて、口の中でも何となくドロドロしてる感じになる。でも、チョコレートの場合は、最初はカチンカチンに固いけれど、これが口の中に入るとすぐドロッとなり、全体にトロッと溶けていく。つまり、溶け方の違いがあるんですね。

ええ。
- どちらも油でできているものですが…。

えっ! チョコレート、油でできているんですか?
- はい。

カカオマスじゃないんですか?
- カカオマスも、もちろん含まれています。でも、カカオマスとお砂糖と粉乳をカカオバターという油で。

書いてある、書いてある。カカオバター、はい。
- カカオバターというのが油にあたります。

ヘぇ〜。
- 室温では固まった状態ですし、油というとドロッとしたものを思い浮かべる方が多いと思いますので、ちょっとイメージがつきにくいかもしれませんですが。カカオバターは特別な性質を持っていて、口の中に入れたとたんに溶けるという、チョコレートの魅力ある口当たりが実現されているわけです。

ヘぇ〜。たかだかチョコレートだけれど、それは研究を重ねたうえであのような溶け方をするということですか?
- チョコレートの場合にはカカオバターを使っているので、そもそもカカオバターがトロッとすぐ溶けるというところを実現してるんですね。カカオマスは使うけれど、普通のバターで固めてみました、となるとあの口どけは実現できないんです。

ヘぇ〜、そうなんですか。普通のバターではダメで、カカオバターじゃないといけないということですか?
- はい。

そういえば、みんなはチョコレート、どこから来るか知ってる? 僕は、ずっとアフリカだと思ってたの。そしたら南米のものもあったし、アフリカもあるんですよね。
- はい。

南米とアフリカでは違うんですよね?
- そうですね。

何が違うのか教えてください。
- 南米とアフリカ、実はアジアでも作っているところがあるんですが、まずカカオの品種が違います。それともうひとつは、アフリカと南米の違いというよりは、赤道からの距離によってカカオ豆の中の様子が変わってくる。

先ほどカカオバターのお話をしましたが、赤道から遠いと、気温がちょっと低めになるんですね。そうすると、そこで育ったカカオ豆のカカオバターは、低めの温度で溶けるということなんです。
- はい。赤道に近くて暑いほど、カカオバターの溶ける温度がちょっと高めになるという産地の違いがあります。

赤道に近いほど、カカオバターが熱に強くなっているということですね。
- はい。

きたえられている、ということですね。
- そうですね(笑)。

となると、赤道近くの国から来るチョコレートの原料は、夏に強い。
- その通りです! 実は、日本で作られるチョコレートは、冬場に作るものと夏場に作るもので、もともとのカカオ豆の輸入先を変えていたんです。

ヘぇ〜。
- 冬場はブラジルで、夏場はマレーシアのもの、というような使い分けをしていたものも…。

東南アジアのマレーシアとブラジル産と違っていた。
- 使い分けていた、ということがあったそうです。

今はどうなんですか?
- 今は、そういう使い分けもまだ続けてるのかも知れませんが、それだけではなくて他の植物性の油脂を足したりというようなコントロールすることもあるようです。カカオバターだけでなくいろいろな工夫がされています。

なるほどね。たかだかチョコレートと思って日常的に食べてますけれど、実はすごい遠くの国からやってきて、僕らの口に入る時に“いかにおいしい食感で”ということをずっと研究しているわけですね、メーカーは。
- その通りですね。

もう時間が来ちゃいました。すみません森田さん、また来週も別の話を伺ってよろしいですか?
- ぜひ!

よろしくお願いします。今日のサイコーは、日本科学未来館の科学コミュニケーターの森田由子さんでした。ありがとうございました。
- ありがとうございました。

この『‘おいしく、食べる’の科学展』は来年の3月22日まで、あと4ヵ月近くやってます。本当に手作り感たっぷりの展示物で、僕なんか大人だけど非常に楽しかったし、好奇心旺盛なキッズたちが行くと、きっとすてきな冬の思い出になるんじゃないかと思います。入館料は子ども400円だったかな。ぜひ行ってみてください! それではまた来週も夕方5時半に会いましょう。もうすぐ冬休みだね。じゃあねバイバ〜イ!