
キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。
ほんと寒くなってきたけれど、もうすぐ晩ご飯の時間だよね。今日はその“食べる”を科学するんですが、すごくちっちゃい食材が紹介されます。その食材とは何でしょう?
ということで、お知らせの後。みんな、知ってるかな?

今週のサイコーは前回に続きまして、日本科学未来館・科学コミュニケーターの森田由子さんです。こんばんは。
- こんばんは。

いま、お台場の日本科学未来館では、来年の3月22日まで『‘おいしく、食べる’の科学展』という展覧会をやっています。みんながいまの学年が終わる頃まで、やっているんですよね。
- はい。

2年前から、相当気合いを入れて、温めてやってるということですから、多くの人に観てもらいたいですね。
- そうですね。

このイベント、僕も行って来たんですけれど、ちょっと「何、これ?」と思ったのが「ミドリムシが世界を救う?」。
- はい(笑)。

ちょっとオーバー過ぎではないですか?ミドリムシって小学校の高学年ぐらいに習っていると思うんですが、いわゆる微生物でしょ?
- そうですね。

キンギョを飼ってる水槽が緑になっちゃったら、ミドリムシが発生してるっていうこと?
- はい、ミドリムシ以外の緑のものもいるんですが。いま未来館で飼っている、というか育てているミドリムシは、そういう淡水と呼ばれる水のところでたくさん増えてくる生き物なんです。

つまり、庭のあるご家庭で、池があればミドリムシがいるだろうし、キンギョとか飼っていればいるだろうし…。
- そうです。

台所回りにもミドリムシはいるんですか?
- 台所回りは、きれいになさっているところだと分からないですが、例えば、田んぼとか、水たまりのあるようなところにはいます。

どこにでもいるわけですよね。
- そうですね。どこでも見つけることはできると思います。

僕の中では、微生物というとばい菌なんです。ミドリムシは、ばい菌じゃないんですか?
- ばい菌ではないです。ばい菌と言われるものはバクテリアの仲間が多いですが、ミドリムシは、それよりももうちょっと進化した生物です。

いいんですか?
- いいとも悪いとも…。たぶん普段は人間には悪さもしないし、水たまりにいる分には、それを食べようと思う人もなかなかいないと思うんですけれども。

でも、食べるということですよね、「世界を救う」ということは。
- そうです。未来館では「食べてみませんか」というお話をしています。

ミドリムシは大きさどれぐらいですか?
- 大きさは、大体40マイクロメートルぐらい。

40マイクロメートル!?
- はい。1マイクロメートルが1ミリの1000分の1ですので、40マイクロメートルは…。

1ミリの100分の4ということか。
- はい。

1ミリの100分の4! あっ、いま助手がミドリムシの写真を持ってきたけれど、虫じゃないな。何か粒ですね、これ。
- はい(笑)。そうですね、粒々な感じだと思います。

これが100分の4ミリというちっちゃいもので、これを食べる?
- はい。

何がいいんですか?
- この生き物は条件を整えてあげると、1日でだいたい倍ぐらい増えるんです。

へぇ〜。
- 分裂して増えていくので、1日たつと1匹――1匹というのか、どうか分からないですが、1匹いたものが2匹になるという感じでどんどん増えていける。

はい。
- 葉緑体を持っているので、光合成で増えることができます。つまり、水の中に少し栄養分があってミネラルがあって、光があたっていればどんどん増えていく。

何の栄養もいらない。エサはいらないんですね、ミドリムシは。
- キンギョを飼うみたいにエサをやる必要はなくて…。

光にあてるだけでよろしい?
- そうですね。全然栄養がないところだと育たないんですが、植物が普通に育つようなところであればミドリムシも育つことができます。

これをどうやって食べればいいんですか?
- これを食べるには、例えば網ですくってというわけにいかないので。

網だともれちゃうでしょ。
- ええ。実際にはそういうわけにはいかないので、集めて乾かして粉末状にします。

へぇ〜、粉になるんですか。
- ちっちゃいので、わざわざすりつぶすというよりは、乾かしたら粉になっているという感じです。

抹茶の粉末みたいになるんですか?
- まさにその通りです。

へぇ〜、抹茶になるの! 分かりました。
- 味もそういう。

抹茶の味?
- ちょっとコクのある、クセのある抹茶かな?

食べたことあるんですか、ミドリムシ?
- はい。

へぇ〜。食べたい! 助手、今日はミドリムシないの? ――何これ? ミドリムシクッキー! ミドリムシクッキーってどこで売ってるんですか?
- これは、未来館で今回の企画展と連動して。

見逃したよ! ミドリムシクッキー5枚入り、焼かれてるんで茶色ですが、ちょっと焼きの甘いところは緑色してます。だいたい直径が5センチぐらいで厚さが8ミリぐらい。この中にミドリムシが練り込んであるということですね。
- はい、その通りです。

ミドリムシを何匹練り込んでいるんですか?
- 1枚あたり2億匹。

えぇ〜!! 日本の人口よりも多いの!
- そうです。

この1枚のクッキーに!
- 1枚で2億匹です。

ちょっと食べてみる。――匂いはクッキーの匂いだね。抹茶の匂いしないよ。うん、歯ごたえあるね。おっ、香ばしい。
- そうですね。

何にきくのですか、これは?
- 何にきくと言われると、ちょっと…。食品なので「こうなりますよ」というのは言えないんですが、実は栄養バランスが非常にいいんですね。

へぇ〜。
- アミノ酸のバランスが非常によくて、例えばお米とか植物性のものばかり食べてると、アミノ酸の中でもリジンというアミノ酸が足りなくなってしまうんです。アミノ酸は、人間の体を作っているたん白質の材料になりますから、バランスよく食べないといけない。でもミドリムシの場合には、植物ではないのでリジンもちゃんと含まれていて、いろいろなアミノ酸がいいバランスで入っている。まずその部分がすばらしい。

なるほど。アミノ酸のサプリが最近ありますが、そういうものじゃなくて、こういうクッキーの中で摂取するといい。あまりおいしくないけれど…。
- フフッ。

サプリよりはおいしく食べられて、腹持ちもよいということですね。
- はい(笑)。そのほかにもビタミンが非常に豊富で、AやBのビタミンは多いですし、植物には基本的に含まれていないDHAとかEPAといった脂質の成分が含まれています。

DHAって頭がよくなるやつですよね。
- そうですね。脳に多く含まれている脂なので。

これ、すごい! ミドリムシに含まれる栄養素が書いてあって、全部で何と59項目! これすごいねぇ。
- はい。

全然知らないビタミンB1、B2、B6、B12、ビタミンC、D、E、ビタミンK1。あとはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、マンガン、クロム、銅。――銅って体にいいんですか?
- どうしても必要なら…。大量に摂ると毒になっちゃいますが。

シャレ? いまのシャレですか?
- すみません、意識してませんでした(笑)。

どうしても体に必要。へぇ〜。
- そうです。たくさんじゃないですけど、必要なものなんです。

59項目の栄養がここに詰まっていて、ミドリムシは家庭でも簡単に培養できる。いわゆる飼うことができる。
- そうですね。増やそうと思えば飼えます。ただミドリムシだけをきれいに育てようとすると、ちょっとノウハウがいるので難しい部分もあるんですが、普通に池や水槽の中にいる生き物なので、ミドリムシを飼うのはそんなに難しくはない。

なるほどね。結局、微生物は原始生物と言われているから、こういうシンプルなものはどこでもはびこってるわけで、“お手軽なものを使って健康のために”という提案ですよね。
-
そうですね。食べ物というのは、栄養素はもちろんですが、カロリーをきちんと含んでないと、体をきちんと燃やせないので動けなくなってしまいます。ミドリムシはカロリーが少ないので、その部分は補わなければいけない。あるいは人間の体に必要なものは、まだ全部解明されているわけではないんですね。なので、ミドリムシだけを食べていくと、もしかすると足りないものも出てくるかも知れませんが。でも、こういう高機能の食材を食べていくことで、改めて食事全体を見直したり、ぜい沢になり過ぎないようにする。最後の最後は、どうやっても地球のみんなが食べるだけの食べ物が作れない状態が来てしまう。そういうことがないようにしていこう、ということに役に立つんじゃないかと思います。

いい話じゃないですか。ミドリムシのことで10分以上しゃべっちゃったら、もう時間がなくなっちゃった。でもひとつ分かったのが、ミドリムシはばい菌じゃなくて地球を救う重要な食材ということですね。
- そうですね。

ということで、日本科学未来館の科学コミュニケーターの森田由子さんに2週にわたってお話を伺いました。ありがとうございました。
- ありがとうございました。

興味があったら、未来館で売っているミドリムシクッキーを、ぜひ。 インフルエンザも流行ってるし、みんなも風邪とかにも注意して健康に生きてくださいね。それではまた来週も夕方5時半に会いましょう。じゃあね、バイバ〜イ!