
キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 この番組ももうかれこれ足かけ5年。やはり話題が多いのは宇宙の話なんだよね。今、国際宇宙ステーションに宇宙飛行士の野口さんが長期滞在中です。今年2010年、日本と宇宙の関係はどんなことが起きるのか? この後、サイコーの登場で〜す。

さぁ今週のサイコーは、すっかり番組ではおなじみになりました科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんばんは。
- こんばんは。

どうもどうも。よろしくお願いします。
- よろしくお願いします。

寺門さんはやっぱり宇宙に詳しいので、今年期待される日本と宇宙との関係を伺いたいのですが。
- 今年はいろいろあるんですけれど、やっぱり僕がいちばん期待しているのは、小惑星に行った「はやぶさ」という探査機が地球に戻って来るんですね。

小惑星は、“水・金・地・火・木・土・天・海”に入ってないということですね。
- 入ってないです。小さい惑星という意味です。

どこにあるんですか?
- 主にあるのは、火星と木星の間です。

ちょっと地球よりも太陽から離れているところ。
- 遠くにあります。ただし小惑星の仲間の中には、もうちょっと地球の軌道に近いところを通ったり、地球の軌道の内側まで入ってくるような小惑星もあるんですね。ですから、小惑星は火星と木星の間に大部分ありますが、そうではないものもあって、実は「イトカワ」という小惑星は、ほとんど地球と同じような軌道を回っているんです。

「イトカワ」という日本名みたいな小惑星に今、日本の探査機の「はやぶさ」がいるってことですか?

©JAXA
- はい、そうです。

へぇ〜。
-
「イトカワ」という名前は、糸川先生という日本の宇宙開発の最初の頃に活躍された東大の先生ですね。ペンシルロケットって…。

おぼえてます。
- 実は、彼が飛ばしたんですよ。

はい。
- ですから、その糸川先生から名前をとった、「イトカワ」という小惑星です。

以前、ペンシルロケットがラボに遊びに来てくれたこともあったんですよ。その糸川先生にちなんでつけられた小惑星に「はやぶさ」がいる。
- そうです。

「はやぶさ」は、その「イトカワ」の惑星で何を調べたんですか?
- まず近寄って、いろいろな形とか、表面の岩石がどんなものでできているかを調べたうえで着陸したんですね。着陸をして、その瞬間に「イトカワ」の表面にある物質を採取した。その取ったサンプルを地球に持ち帰るというのが、実は「はやぶさ」の次のミッションだったんです。

はい。
- ですから行くだけではなくて、行ってそこで物を取って地球まで戻って来るというのが「はやぶさ」のザ・ミッションです。

戻って来るのが大事ということですね。
- そうです、そうです。

いわゆる向こうで使い捨てで映像を送るだけじゃなくて、物を取って来て持ち帰るのがポイント?
-
そうなんです。小惑星の物質を持って帰るというのは、世界でもこれが初めてなんです。

えぇ〜! 昔1969年に月の石を持って帰って来たアームストロング船長がいたりしましたが、それ以外に火星の物は持ち帰ったことはあるんですか?
- いえ、まだない。

ない。じゃあ、月以外から物が持ち帰られるのは初めてですか?
- 例えば、火星などは隕石という形で火星の表面にあったものが地球に落っこって来ることはあるんですが、人間が取りに行ったことはまだないんですね。

へぇ〜。
- それで彗星がありますね。コメット、ほうき星。

はい、コメット。
- これのチリは1回アメリカが取って戻って来てますけれど、小惑星というひとつの形を持った天体の表面から物質を持って地球に帰還するとなると、「はやぶさ」が最初です。

世界で初!?
- そうです。だから、僕は非常に期待しているんです。

「はやぶさ」はいつ戻って来るんですか?
- 今年の6月ですね。

もうすぐじゃないですか!
- はい、そうです。

どこに戻って来るんですか?
- 場所は残念ながら日本ではなくて、オーストラリアの広い砂漠の中に落とす予定です。

打ち上げる時はロケットで、地球上のもので打ち上げられるけど、向こうを飛び立つ時はどうやって飛び立つんですか?
- 小惑星を、ですか?

はい。
-
「はやぶさ」は普通のロケットのエンジンではなくて、イオンエンジンというので飛んでいるんです。

イオンエンジン?
- これは要するに、火薬を爆発させて飛ぶというロケットではないんです。小さな粒を電気を使って飛ばしていく、電気推進ともいうんですが、そういうロケットなので非常に力は弱い。だけど、ずーっと長いこと噴射できるので、時間が経つとものすごい加速がつくという特別なエンジンです。

打ち上げに爆発的な“ボワーン”というのは必要ないけれど、電気によるエネルギーで“ジワジワジワジワッ”と。
- もっと正確にいいますと、地球の軌道に行くまでは、もちろん今までのロケットで行って、宇宙に行った後、小惑星に向かう旅に出発する時からイオンエンジンを使い始めるんですね。

ふ〜ん。
-
そういうことでちょっと時間がかかるんですが、非常に効率的に行って帰って来れる。

そうか、宇宙は重力が地球に比べるとあまりないから、飛び立つのもそんなに地球を出る時みたいなエネルギーは必要ないということですね。
- 宇宙空間に行ってしまえば、そうですね。

じゃあ、イメージするような爆発するエンジンでなくても戻って来ることは可能。
-
そうですね。「はやぶさ」もイオンエンジンに多少トラブルがあったりして、実は正直なところ満身創痍の状態というか、そんな感じです。ただいろいろなトラブルがありましたが、そのたびに地上の「はやぶさ」チームが解決して、ともかく地球までもう一歩というところまで来ているわけです。

イメージ的に「はやぶさ」はどんな大きさですか?
- そんなに大きくないです。箱型ですが、ただし地球に戻って来るといっても、地上に落ちて来るのはその中のカプセルだけです。

そうなんですか。
- 残念ながら、ちょっとそれは大気圏で燃え尽きてしまうわけですけれど。

箱は大気圏で…。ミカン箱みたいなものにカプセルが入っていて、そのカプセルだけがオーストラリアのどこかに6月に落ちて来るということですか?
- そうです。つまり大気圏突入の時にものすごい高温になるんですね。ですから普通の状態ではもちろん燃えてしまうわけですけれど、特に高温に耐えられるようなカプセルの中に小惑星のサンプルを入れて、それを地上で回収しようということです。

ちょっとロマンチックじゃないですか。あとは何かイベントで楽しみなことはありますか?
- あとは、金星がありますよね。

金星は、地球よりも太陽に近いから熱い星ですね。
- そうですね。地球の内側を回っている惑星です。これは地球と大きさがほとんど同じで、双子の惑星とかいわれることもあるんですが、ただ中身は全然違っていて、ものすごい。いってみれば熱くなっている惑星です。

はい。
-
しかも雲が取り巻いていて、表面の様子が見えない。ここに日本が今年、探査機を打ち上げる予定です。

「はやぶさ」みたいなものを。
- そうです。

それは何という名前ですか?
- これは「あかつき」という名前です。

「あかつき」。
- なぜ「あかつき」かというと、金星はよく“宵の明星”、“明けの明星”といいますよね。

ええ。
- つまり太陽に近いので、夕方か朝にしか見えないわけです。それで、“明けの明星”から多分「あかつき」という名前が来てるんじゃないかなと思います。
-
打ち上げはもうすぐだと思います。多分、今年の暮れぐらいですね。

なるほど。それが飛び立って、金星の上空に達するのはいつ頃ですか?

「もうすぐ打ち上げ」といっても、暮れまでかかるんですね。
- やっぱり半年ぐらいかかるんですよ。

金星って表面温度が高いと聞いたんですが、何度ぐらいですか?
- 約470度っていわれてます。

470度で人工的に作ったものは、ちゃんと形は? 燃えたりしないんですか?
- 大変ですよ、鉛が溶けてしまう温度ですから。昔、ソ連が表面に着陸した探査機を送ってるんですが、この時もともかく高温に耐えられるようにものすごい防御をして送り出してるんです。ですから大変なことですね。

旧ソ連は、金星にすでに着陸した探査機もある?
-
あるんです。

でも今回の「あかつき」は、着陸はしない。
- しないです。目的は、むしろ金星の周りの大気を調べるのが目的です。金星の周りを回りながら、いろいろな観測装置で大気の流れとか構造を調べるのが目的ですね。

なるほどね。今年も宇宙に関しては、ちょっと興味深い出来事が目白押しですね。
- そうですね。

分かりました。今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。
- はい、どうも。

惑星の探査機で「はやぶさ」が出てきて、今年は「あかつき」が打ち上げられるという、日本製の。「はやぶさ」、「あかつき」と聞くと、かつてのブルートレインの名前と同じなんだよね。僕ぐらいの年で鉄道を好きな人、気づいた方はいらっしゃいますか? 同士のみなさん。 ブルートレインがどんどん姿を消しちゃって、今度は東京の上野発の数少ない「北陸」という――助手も知らないだろうな、上野から金沢を結ぶブルートレインも3月でなくなっちゃうって新聞に載ってて、すごい切なくて…。今日、実は寺門さんの話を聞きながら、ブルートレインに思いをはせてしまいました。「こういう人もいたのかな?」と思ってますけれど、みなさん、どうだったでしょうか? それでは、3学期わずかですから、がんばって行きましょう! 来週もまた夕方5時半ね。バイバ〜イ!