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「カラスの話」(1)
コーチャー/宮崎学(まなぶ)さん(写真家)
大村正樹&五十嵐海央
大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 1月もおしまいだねぇ。ということは、新年始まったばっかりかなと思ったら、もう1年の12分の1が終わっちゃった(笑)。残りの12分の11を充実して過ごしましょうね。 今日のテーマはカラス。みんな、いるでしょ。カラスについて、もしかしたら日本でいちばん詳しいんじゃないかというサイコーの登場です。これがかなり興味深いお話が聞けそうです。お知らせの後!


大村正樹

今週のサイコーは、はるばる長野県からお越しいただきました。写真家の宮崎学さんです。こんばんは。

どうも、こんばんは。

大村正樹

ラボへようこそ!

はい、ありがとうございます。

大村正樹

ラボですが、何もないですよね。

そうですね(笑)。

大村正樹

今日は、宮崎さんの『カラスのお宅拝見!』という、これ写真満載の本です。宮崎さんは、北海道から沖縄までのカラスの巣を撮影して回ってらっしゃる。

カラスだけではないんですが、いろいろなものをやりながら同時進行でカラスをやってましたね。

大村正樹

カラスって都会ではうるさいし、ゴミはあさるし、あんまり好かれてないんですけれど、長野県では愛されているんですか?

いえ、全然ダメですよ。

大村正樹

ダメ。

日本中どこでも、カラスをよく思ってるなんて人はいないですね。

大村正樹

何でまた、カラスの巣を撮ろうと思ったんですか?

カラスってけっこう、人間をスケベエに観察してるんですよ。ものすごく! 人間を見てるんですよ。

大村正樹

えっ、しかも「スケベエに」ですか!?

もう徹底的に人間を観察しまくったうえで生活してます。それに僕は興味があって、「じゃあカラスがスケベエなら、僕はもっとそれ以上にスケベエになってカラスの巣の中、全部お宅まで見ちゃおう!」と。そういうことがきっかけです。


大村正樹

へぇ〜。人間はカラスをバカにしてるけれど、実はバカにされてるカラスのほうが冷静に僕らを見てるってこと?

見事ですよ。

大村正樹

こわっ! やだ。

フフフフ。完璧に人相まで見分けてます。

大村正樹

カラスは賢い鳥っていいますよね。

はい。僕が東京の銀座を歩いていて、1日に何千人と歩道を歩いていても、その中から僕をピタッと見分けます。

大村正樹

えっ、宮崎さんはカラスと面識があるんですか!?

あるんです。木に登ったりして巣を写したから、もう銀座のカラスに僕の手配書が回っちゃってるんですよ。

大村正樹

何? カラスの巣を撮影した時に、宮崎さん、カラスに顔を覚えられたんですか?

完璧に、車まで覚えます。

大村正樹

宮崎さんは好かれてるんですか、嫌われてるんですか?

もう嫌われてるから、「あいつは、何千人の人がいる中でも一番やばい、変なやつだぞ」と。「警戒しろよ!」ということをカラス仲間にも知れ渡っている。

大村正樹

昔、椎名誠さんの『銀座のカラス』ってありましたよね。

ええ。


大村正樹

銀座にカラスがいる?

いるんですよ。

大村正樹

巣もあるんですか?

あるんですよ。次にネクタイをキチンと締めて変装して行っても、3ヵ月後に行っても完璧に見分けます。

大村正樹

へぇ〜、覚えている。

見事ですよ〜!

大村正樹

彼らはちゃんと巣に帰って寝るんですか?

子育ての時には巣に帰ります。それ以外は、ほかの郊外、明治神宮などの森へ行って寝てます。全員で、集団で。

大村正樹

じゃあ、巣はあくまでも仮の住まい?

そう、そう。子育てだけの。

大村正樹

巣ってどこにあるんですか?

ポプラ並木とかイチョウ並木とか、都内にいっぱい並木があるじゃないですか。

大村正樹

並木あります。

あれに全部作ってます。

大村正樹

カラスの巣とほかの鳥、スズメの巣の見分け方は?

それはもう簡単です。カラスは枝先に作ります、木の幹とか枝に。スズメは見えないすき間に作りますから。要するに屋根の間とか壁と壁の間、雨どいのすき間とか。

大村正樹

ツバメの巣も?

はい。

大村正樹

木に巣を作るのはカラスぐらいということですか?

いえ、ヒヨドリとかいろいろな小鳥もいますけれど、カラスの場合は大きいですから、30〜40センチ巣がありますから一発で分かります。しかも、植物の芽が出る前にちょっとだけ準備して、芽がどんどん伸びていって見えなくなる頃に、どどどどっと巣を作るんです(笑)。


大村正樹

まさに今、春前の時季っていうことですかねぇ。

そう、これからですね。2月下旬からは作り始めますね。

大村正樹

ということは、僕らも都会の並木道を見たら、カラスの巣って分かりますか?

一発で分かります。

大村正樹

知らなかったですよ〜。見たことないもの。

ハハハハ。あるんですよ。


大村正樹

全国にカラスの巣はあるんですね。

ありますよ。

大村正樹

へぇ〜。大体高さ何メートルぐらいのところに?

低いところは5メートルぐらいですねぇ。

大村正樹

高いところは?

高いところは20メートルぐらい。

大村正樹

20メートルぐらい。宮崎さんは、登って写真を撮影してるってことですよね。

全部、登って行くんです。

大村正樹

木登りが得意なんですか?

子どもの頃からずっと得意です。

大村正樹

宮崎さんのプロフィールを拝見したら、いわゆる団塊の世代なんで、ラジオを聴いているキッズたちのおじいちゃん世代ですが、木登りしてるんですね。

はい(笑)。

大村正樹

しかも都会で?

はい。都会でも田舎でもやってますよ。

大村正樹

都会で、銀座とかで木登りしたら、おまわりさんに怒られないんですか?

やっぱりやばいですね。


大村正樹

やばいですか。

全部、地主さんとかに一応お断りすることにしてるんですよ。まぁ僕も実績を積んでいるから、そういう意味では分かってくれてる方はすぐ二つ返事で目をつぶってくれますね。

大村正樹

へぇ〜。カメラを持って巣に登って行って、パチッと撮った写真がこの『カラスのお宅拝見!』に詰まっている。

はい。

大村正樹

この本を見ると、ヒナがいたりタマゴがあったり。確かにタマゴを見てると、タマゴの色が緑色っぽいようなものから白っぽいタマゴとか、地域や巣によってタマゴの色は違うんですか?

それが全身黒装束のカラスが真っ黒なのに、やっぱり体内に流れているDNAは、脈々と全部違うんでしょうね。

大村正樹

地域によって?

はい。

大村正樹

じゃあ、銀座のカラスのタマゴは何色ですか?

銀座は、地方からいっぱい出てくるみたいに茶色系統のモザイク、ある意味グシャグシャですね。


大村正樹

モザイク(笑)。いろいろな出身地の人が集まって、モザイク的な、人間と同じですね(笑)。長野県は?

長野はアルプスがありますから、日本海側からの、要するに人間が暮らしてきた昔の“塩の道”があるんです。

大村正樹

ええ。

それはやっぱり糸魚川、新潟県とほぼ一緒。逆に山梨みたいなところは、甲府と浜松、太平洋側は一緒です。富士川沿いにずーっと、人の文化が上って来てますから。その人に合わせて、カラスもずーっと、何百年の歴史の中で内陸に入って来てます。だから、そういうことは分かっています。

大村正樹

カラスの進出と人間の生活の進出は、ほぼ同じ?

同じと思っていいですよ。要するにスカベンジャーですから、お掃除人、掃除をするクリーニンガーでもある。人間のそばで食べ物が出てくる、その余剰部分をカラスが食べてクリーニングする。

大村正樹

なるほど。

食べないと環境が悪くなっちゃう。要するにウジが湧いたり、病原菌が出てきちゃいますから。食べることによってクリーニングするのがカラスの役目ですから、自然界の中で。


大村正樹

じゃあ、酸素を人間が吸って、二酸化炭素を出して植物が吸って酸素を出すのと同じ。

はい。だから都会でもどこでもカラスは、例えば生ゴミをあさってて、「ギョウザをくわえて行っちゃったわよ。食べかけのギョウザ、あれはひどいカラスだ!」と普通の方はいうじゃないですか。

大村正樹

いう、いう。

ギョウザの中には生のひき肉が入っている。豚肉にしても何にしても、ひき肉を誰も処理をしないで腐ったら、そこから病原菌が出るんですよ。極端な話、コレラ菌とか。そういうのが出ないためにカラスが食べることによって、きれいにクリーニングしてる。

大村正樹

そうか。ちょっとカラスの見方が変わったんですけど。

フフフフ。

大村正樹

カラスは基本的に凶暴な鳥ですか?

いえ、そうじゃないですよ。

大村正樹

大丈夫ですか?

要するに人間がマヌケだから襲われる。カラスのほうが「優位だぞ」と。人間はとにかくとんでもなく無関心だ、自然界のことに対して、カラスに関しても。そういう人は襲われるんです。

大村正樹

へぇ〜。

僕みたいなものは何があっても襲われません。ピッと目と目が合った瞬間に、カラスのほうが萎縮しちゃいます。

大村正樹

向こうも嫌っているけれど、宮崎さんは襲われる対象ではない。

ないです。要するに殺気というか、その辺の精神的な強いオーラが僕からパッと出るんですね。それを瞬間的に見抜きます。

大村正樹

この番組はもう3年以上やってますけど、ラボに来られたサイコーの方で最も野生オーラを出しているのが宮崎学さんだと、僕は今日思いました。

ありがとうございます(笑)。

大村正樹

もうこんな時間! あっという間だったんですけど、実は宮崎さんの『カラスのお宅拝見!』は、文章よりも写真の印象が強いの。来週ちょっとこの写真を見ながら、カラスの驚くべき実態を見ていきたいと思うので、来週もまた長野からお越しいただいてよろしいですか?

はい、ありがとうございます。

大村正樹

よろしくお願いします。今回のサイコーは、写真家の宮崎学さんでした。



大村正樹

カラスって害鳥、害のある鳥というイメージにとらわれがちだけど、いいんだね。やっぱり豊かな暮らしに対して、その余ったものを処理してくれてると思うと、そうなのかという気もしたし…。何かカラスのこと、これまで敬遠してたけど、もうちょっとカラスを愛することにしようかな、なんて思ったりして。この宮崎学さんの著書『カラスのお宅拝見!』、ほんと写真主体で分かりやすくて、とっても興味深い内容になっています。「新しい」に樹木の「樹」の新樹社から出版されてますが、興味のある方はぜひ見てください。それでは来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!