過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分
「宇宙“花伝説”」(2)
コーチャー/長谷川洋一さん(有人宇宙システム)
大村正樹&長谷川洋一
大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も宇宙を旅したサクラの種、“花伝説”の続きですよ。今週はいよいよ、「どのようにしてこの種が宇宙に飛び立ったのか?」、「そのかげには、さまざまな苦労があった」など、そんな話を聞いていこうと思っております。お知らせの後、サイコーに話を聞きま〜す。

宇宙

大村正樹

今週のサイコーも待ち遠しかったな、有人宇宙システムの長谷川洋一さんです。こんばんは。

こんばんは。

大村正樹

いよいよ今週は、「NASAに種を持って行った」、そして「シャトルを見送った」という話ですが、種を持って行くのがけっこう大変だったんですってね。

そうですね。ポッと手で持って行ければ簡単ですが、そうはまいりません。サクラは植物の種ですから、特にアメリカの法律もあって輸入に厳しいんですね。そして、日本でもちゃんと検疫をしなければならない。大変な手続きがございました。

大村正樹

ええ。

それで、まず真っ先にアメリカの農務省、政府ですね。こちらから「サクラの種を輸出してもいいですか?」という許可証を取らなければならない。これが申請しても申請しても、待てど暮らせどやってこないんです。

大村正樹

たかが種で、ですか?

なかなかですねぇ。


大村正樹

なぜですかねぇ?

たぶん農産物なので、もしもこのサクラがアメリカで増えてしまうと困ると。そう考えたんでしょう。


大村正樹

なるほど。いわゆる霞ヶ浦のブラックバスみたいなものですね。

そうそうそう! その逆です。

大村正樹

外来のものがはびこっちゃうということですね。

そうです。それで、待てど暮らせど許可がおりないんですが、一方スペースシャトルの打ち上げはどんどん迫ってくる。「これはまずいぞ」と思いまして…本当に眠れない夜が続きました。とうとうJAXA(ジャクサ)宇宙航空研究開発機構に頭を下げてお願いをして、NASAのワシントンにある本部に連絡を入れてもらったんです。

大村正樹

うん。

そしたら、NASAの本部が「それは大変だ!」と動いてくれまして、NASAからアメリカの政府にいってくださった。そしたら、1日で許可証が出てきたんですね(笑)。


大村正樹

そういう近道もあったんですね。

いや、いや、いや。

大村正樹

いわゆる外交ルートみたいなものを使ったんですね。

そうですね(笑)。そして、このシャトルは、実は若田さんよりもちょっと先に打ち上げられていたんです。

大村正樹

へぇ〜。じゃあ、早めに国際宇宙ステーションに到着したということですか?

2008年11月のスペースシャトルに先に乗せまして、上で若田さんを待っている形だったんです。

大村正樹

じゃあ、若田さんよりも宇宙に滞在した日数が長い?

4ヵ月ぐらい先輩なんです。

大村正樹

ということは、今の日本のもので最も長く滞在してるのは、この種だったかも知れないですね、若田さん以上に。

あっ、そうかもしれませんね(笑)。

大村正樹

国産品で。

そうですね(笑)。

大村正樹

ハハハハ。で、事前に飛ばして。

そのスペースシャトルの打ち上げに私も立ち会って、取材して来ました。


大村正樹

すごい! 若田さんが手を振ったわけではなくて、種だけのためにシャトルの打ち上げに立ち会ったんですか!?

はい。

大村正樹

すご〜い! まだ若田さんに手を振るほうが、気持ち的に盛り上がりませんでしたか?

ハハハハ。

大村正樹

どっちがいいの? 種のために打ち上げるのか…。

私が預かったのは、全国みなさんのひと粒ひと粒の夢が何千粒も詰まった袋ですので、ジップロックがただの台所の袋じゃないわけですよね。

大村正樹

なるほど。

これがシャトルに積み込まれて、無事に打ち上がって宇宙に行くところをずーっと私が見守っていました。

大村正樹

一昨年の11月に。

そうです。

大村正樹

へぇ〜。あの時のシャトルの打ち上げは、当然NASAを通じて日本でも放送されたと思うんですが、ただ日本人の宇宙飛行士は乗ってなかったので、あんまり大きなニュースになってなかった。

はい、そうですね。

大村正樹

人知れず、長谷川さんはその現場でシャトルを見送ったんですか?

そうです。打ち上げの場所は、アメリカの東海岸にあるフロリダのケネディ宇宙センターというところからです。

大村正樹

はい。

スペースシャトルはエンディバー号ですが、夜の打ち上げだったんです。


大村正樹

珍しいんですか?

そうですね。昼間に打ち上げることが多いんですが、この時は夜で、宇宙ステーションとの軌道の関係で計算されたんでしょうけれども。

大村正樹

はい。

暗闇の中からボーンと光が上がって、そしてスルスルスルッとスペースシャトルが上がっていく。私は6キロぐらい離れたところから見ていました。


大村正樹

6キロ、近いのか遠いのか分からないんですが。

遠いですね。というのは、あまり近くですと、ロケットですので万が一爆発した時に巻き込まれますよね。

大村正樹

じゃあ、あのケネディ宇宙基地から飛び立つシャトルは、基本的に人間は近くにいないんですか?

そうですね。「3キロぐらい離れたところまでは近寄ってはいけない」となっていまして、私も6キロ離れた観覧台から見ていました。もう本当に昼間のように明るくなって、空一面に明るくなりました。

大村正樹

え〜、そうなんですか。空が青くなるんですか?

黄色ですね、どちらかというと。


大村正樹

黄色!?

黄色い炎を吹いて、もう空じゅう真っ黄色。

大村正樹

へぇ〜。

そこで、音が遅れてきます。

大村正樹

そうか、そうか。

6キロですから、計算すると何秒でしょうかねぇ。

大村正樹

1秒間に330メートルずつ遅れるわけですよね。

18秒とか。

大村正樹

ですね。

そのぐらい遅れて、ババババババーンと太鼓をたたくような、和太鼓のような音が響いてきました。

大村正樹

じゃあ、振動が、和太鼓の振動みたいなものがくるんですか?

もう腹の底に響いてくるような音が聞こえてまして。


大村正樹

いやぁ、ちょっと。夏場に和太鼓の「ソイヤ!」を観たら、シャトルのことをずっとイメージしちゃうなぁ。

ハハハハ。


大村正樹

夏祭りがちょっとドキドキですね。そうですか。

「無事に行ってくれ、無事に行ってくれ!」と心に念じながら、ずっと追いかけていました。


大村正樹

テレビで観るのとまったく違うわけですね。

音がありますから、全然違います。

大村正樹

で、若田さんと一緒に帰還したわけですよね。

そうです。

大村正樹

ジップロックに入った種たちは。

はい。


大村正樹

その後、どうしたんですか?

はい。それから今度は、各地の花の種を集めてくれたみなさまのところへ返しにあがったんです。


大村正樹

全国14の町へ。

そうです。プラス、ユリとスミレで16ヵ所だったんですが。


大村正樹

実際どうですか、長谷川さんがご覧になって、宇宙に行く前と後では、サクラの種は見た目的な変化はあったんですか?

まったく変わってません。


大村正樹

変わってない。無重力を体験したことによって、どういう変化があるかはこれから、ということですね。

そうですね。これから各地で植えていただきますので、芽が出て育ってどのような花が咲くか…ここまで追いかけないと。向こう3年、10年、30年かかるプロジェクトになっています。


大村正樹

もう植えているわけですよね。

ほとんどの各地で種を植えています。

大村正樹

じゃあ、もう芽が出ているところもあるんじゃないですか?

実はですね、このサクラに関しては1ヵ所だけ芽が出たんです!


大村正樹

それは、全国14ヵ所のサクラでどこだろう? 僕、当てよう!――え〜と、あったかい所だから、鹿児島県奄美市のシロバナヒカンザクラ?

違いますねぇ。

大村正樹

沖縄県のヒカンザクラ?

沖縄県のヒカンザクラ 「ヒカンザクラ」

このページのトップへ

いい線いってますが、違いますねぇ。


大村正樹

あったかいところですか?

そうですね。

大村正樹

高知のひょうたん桜?

あっ、近いですね!

大村正樹

じゃあ、高知の稚木(ワカキ)のサクラ?

(ワカキ)のサクラ 写真提供/佐川町役場

このページのトップへ

それです!

大村正樹

ここはもう芽が出た!

そうです。出ました。

大村正樹

高知県高岡郡佐川町の稚木のサクラ。

はい。

大村正樹

あっ、写真をお持ちいただいた!

はい、そうです。

大村正樹

発芽してる!

青々と!

大村正樹

えっ、これは去年の9月に種をまいて、11月の下旬に発芽したということですね。

そうです。

大村正樹

じゃあ、2ヵ月半ぐらいで芽が出るんですか?

あたたかかったんで、出たんでしょうね。

大村正樹

へぇ〜。宇宙に行ったサクラが、いち早く高知県で。

出ました!

大村正樹

これがサクラの木になるには、どれぐらいの期間がかかるんですか?

この木は成長が早いんですが、普通、今回持って行きました野生のサクラは、花が咲くまでに10年近くかかります。

大村正樹

10年!?

はい。

大村正樹

この種まきに立ち会ったキッズが成人した頃に、やっと。

そうですね。みんな、振袖を着て「あれっ!」という頃に、「咲いたよっ!」と。

大村正樹

完全に僕らが“おっちゃん”になってる頃ですねぇ。

まだまだですね。

大村正樹

大丈夫ですか?

この番組まだまだ続けていただいて(笑)。

大村正樹

いやぁ、夢がある! 今ここに、高知の稚木の桜を植える時に立ち会った子どもたちの写真もあって、すごい笑顔で。これ、学校の校庭でやったんですか?

校庭にポットでまいてます。

大村正樹

この子たち、たぶん小学校5、6年の子だろうけど。へぇ〜、この子たちが成人する頃、社会に出る頃に木になって花が咲くということですか?

そうですね。

大村正樹

これが全国で14ヵ所。

ええ。それで苗になりますので、これをどんどん全国に広げていくべきだと私は思ってまして、“みんなで宇宙のサクラを植えよう”と。こういうことをしたいですね。

大村正樹

これが“花伝説”。そうか、“花伝説”の伝説というタイトルは、子どもたちが大人になって次の世代に、宇宙に行った伝説として継承するねらいがあって“伝説”という。

まさに、そうです!

大村正樹

ちょっとロマンチック!“スーパーロマンチック・アンクル”長谷川洋一さん。いい話だったぁ(拍手)。

いえ、いえ。

大村正樹

もう時間になっちゃった。次、いつ来てくれるんですか、長谷川さん?

次はじゃあ、花が咲く前に来ましょうか。

大村正樹

10年以内には来てくださいよ。

はい、もちろん!

大村正樹

よかったぁ。もう時間ないよね。すみません、ありがとうございました。ちょっと感動しちゃったぁ。――言葉を最後、失ってしまったんですが、今週のサイコーは、有人宇宙システムの長谷川洋一さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。



大村正樹

長谷川さんが、北海道から沖縄までの種を全国に配ってまわったので、全国の人たちにこのラジオを聴いてもらいたいんだけど、「どこで放送してるんですか?」というから、エ〜ン、この番組は首都圏だけなんだよねぇ。「ごめんなさいね!」ということで。
それじゃまた、来週も夕方5時半に会いましょう。今日は本当に気持ちのいい放送でした。バイバ〜イ!