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「毒と薬」(2)
コーチャー/船山信次さん(日本薬科大学教授)
大村正樹&船山信次
大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。そして、今日は大人のみなさまも、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も毒と薬をテーマにお送りしますが、先週、サイコーから聞き捨てならないことを聞きました。「アルコールは毒だ」と。では、どれぐらい毒なのか? 大人の方もぜひ聞いてもらって、キッズのみなさんもお父さんのアルコールに関してぜひ勉強してください。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイコーも、日本薬科大学教授の船山信次先生です。こんばんは。

こんばんは。今日もよろしくお願いします。


大村正樹

よろしくお願いします。先生は中央公論新社から、『毒と薬の世界史』という本を出版されてます。この世界史を学んでも、たぶん世界史の成績は上がらないと思いますが、大変興味深い本で(笑)。“毒と薬”、もう表裏一体。毒ととらえるか、薬ととらえるかというお話を伺ったんですが、先週の最後に「アルコールは毒だ」ということで。

フフフ。

大村正樹

僕は1週間、悩みました。でも、“毒”を摂取し続けましたけど。僕はちょっとこの1週間で毒気づいてます(笑)。

アッハハハハハ。だいぶ貯められたようで。

大村正樹

だって、しょうがないじゃないですかぁ。

アルコールはうまく少量ずつ使えば、お酒は“百薬の長”ともいいますよね。


大村正樹

はい。

だから、体調をうま〜く整えるようなところもあるんですよ。でもそれは、うまく使えば、ということです。アルコールを全然飲めない人にとっては毒ですし、大量に飲んだり、それから一気に大量に飲んだりすることはいけません。そのことによって、最悪の場合は亡くなることもありますよね。


大村正樹

それは、長く飲み続けることじゃなくて、急に亡くなるケースもあるということですか?

ええ。新入生の歓迎会などで一気飲みとか、一時だいぶはやりましたよね。

大村正樹

大学生が、ね。

あれは、絶対いけない飲み方です!

大村正樹

僕の時代ですよ、“一気時代”。

そうですか(笑)。


大村正樹

僕、“一気世代”といわれてました。先生、ご相談ですが、家系は基本的にあまりお酒は強くないんです。飲むとすぐ赤くなっちゃう。だけど、日々の飲酒習慣のなかで、ある程度飲めるようになってしまったんですが、そういう人は今後どうすればいいですか?

今後とも、少しずつ体に聞きながら飲まれるように…。私は飲める方でしたら、楽しんで少し飲まれるのは、決して悪いことではないと思うんですけれども。


大村正樹

あんまり強くない人が鍛えられて強くなっていくことは、多少無理しちゃってるということですかね?

う〜ん。まぁ、いろいろあるかもしれません。

大村正樹

気をつけよう! 先生、ラボの後ちょっとお酒をおつき合いいただいて、僕の顔の変化とアルコールの度合いをジャッジしてください。

それは、よろしいですねぇ(笑)。

大村正樹

じゃあ、アルコールはちょっと毒ということで、お父さん、気をつけながらやってください。で、先生は薬と毒の専門家だから、薬の話に戻りたいんですけれど。例えば薬のネーミングなど、何かおもしろい話はありますか?

そうですね。一番よく知られている薬のひとつに正露丸があります。

大村正樹

あぁ、正露丸。好きっていうか…。

ほんとによく飲まれてるものですよね。

大村正樹

何かあったら、絶対に正露丸です。

作られたのは、ちょうど日露戦争の開戦前です。

大村正樹

日露戦争。

それで、この当時は、いわゆる脚気(かっけ)というのがありましたね。


 
大村正樹

はい。

脚気という病気は、脚気の菌があるんじゃないかという説がありまして、その時の兵隊さんたちが、むしろ戦死というよりも病死、病気で亡くなることがすごく多かったんです。

大村正樹

はい。

脚気が非常に問題になっていた。それで、クレオソートとか含めた、現在、正露丸と呼んでいるものを毎日服用させていたんです。当時はまだ、正露丸という名前はなかったので。

大村正樹

ええ。

脚気というのは、ビタミンB1不足でなることはよく知られていた。そして、兵隊さんたちが、食あたりとかにもよく効いたことを戦地からお土産話に持ち帰ったんですね。そういった薬は、非常に強いですよねぇ。それで広く飲まれるようになったということなんです。

大村正樹

ええ。

正露丸という名前ですが、いわゆる日露戦争に勝ったからロシアを征するということで、“征露”ですね。それに丸(ガン)という名前が初めについたのですが、「いくら何でもロシアを征するという“征”は、まずいだろう」ということで、今は“征する”ではなくて“正しい”。

大村正樹

“正”しいに、ロシアの“露”に“丸”で、正露丸。

という名前になったわけです。

大村正樹

じゃあ、百年ちょっと前の薬ということですね。

そうですね。

大村正樹

正露丸って何であんなに臭いんですか?

ハハハ。これは、薬はいろいろな化学薬品というか、いろいろな成分が入ってますから、その香りですね。

大村正樹

ええ。

いろいろな香りのする薬があります。そのなかのひとつだと思って飲んでいただいて。

大村正樹

日露戦争の頃から、百年変わらない臭いをさらし続けてるんですか?

今、正露丸は実は何十種類、いろいろな会社から出ています。それぞれの会社のものによって、内容がちょっと違っていることがあります。ですから、成分名をよくご覧になって、あるいは薬剤師さんに相談して自分に合うものを見つけられるとよろしいかと思います。

大村正樹

メーカーによって、正露丸は成分が違うんですか?

違うんですよ。


大村正樹

へぇ〜。

名前は同じでも。

大村正樹

そうなんですか。

ですから、専門家の方によく相談されることがよろしいかと思います。

大村正樹

正露丸は、もともと草などで作られた薬ですか?

先ほどいいましたがクレオソートとか、一番よく入っているもののひとつにベルベリンという成分があります。これは、キハダという植物の皮です。真っ黄色な色をしたアルカロイドの一種ですが、そういったものが入っているのが多いと思います。

大村正樹

はい。

たくさん種類がありますから、今度よくご覧になってみたら、それもまた勉強になるかなと思いますよ。

大村正樹

なるほど。僕みたいな世代って、けっこう薬を飲みますよ。

あっ、そうですか(笑)。

大村正樹

だって、病院へ行ったら、お医者さんが簡単に処方箋どんどん出してくるじゃないですか。「これ、どうですか? どうですか?」みたいに。僕は花粉症ですから、これからの季節はきついんですよ。だから鼻炎の薬などは、「新しいのが出たから」とつい飲んでしまうわけですよ。

ええ。

大村正樹

「それも、ちょっといかがなもんかな?」と思いながら、自分でも試してしまうんですね。やっぱり傾向としてあまりよろしくないですかねぇ?

専門家の意見には従ってくださいね。

大村正樹

ええ。

例えば、花粉症の薬として、抗ヒスタミン剤のジフェンヒドラミンという化学合成薬があるんです。

大村正樹

はい。

このジフェンヒドラミンは鼻づまりなどに対処する薬で、眠くなるという副作用があることが有名ですね。


大村正樹

はい。

今度は眠くなるほうを主作用にして、この化合物を、いわゆる夜眠れない人が服用するような薬になる。

大村正樹

睡眠導入剤。

はい。

大村正樹

それも飲んじゃう時があります。

そうですか(笑)。両方で同じ薬を飲んでいるから、損かもしれませんね。

大村正樹

そうか、そういうことか。寝る前に花粉症の薬を飲むんですよ。それで、「ちゃんと寝なくちゃ」という時は睡眠導入剤を飲んでいるので、これは市販されている薬だけれど毒になるかもしれないということですね。

まぁ毒とはいいませんけれど、容量的に多くなっている可能性もあります。

大村正樹

あぁ〜。

ですから、そういった面は薬剤師が専門家ですから、一応薬剤師に「こういった薬を飲んでる」ということで相談されたらいかがでしょうか。そしたら、ダブルに同じものを飲んでいるとかの可能性もあると思います。

大村正樹

こういった薬以外にも、現代人ってドリンク好きですよ。だって、最近コンビニにドリンクありますから、やっぱり買っちゃうじゃないですか。あのドリンクは、値段も大なり小なりありますが、ドリンクの効果はどうなんですか?

これもいろいろなことがありましょうねぇ。ただカフェインが入ってるものがありますよね。

私たちがお茶を飲んだりすると、シャキッとする。そういった効果でカフェインが役立っているかもしれませんし、ほかのものが役立ってるかもしれない。そこは、なかなか分からない。ただ、カフェインは大量に摂ると、やはりよくない可能性もありますからねぇ。

大村正樹

なるほど〜。眠い時、カフェインとかガンガン飲んじゃうんだけど、「ほどほどに」ということですね。

アッハハ。そうです。

大村正樹

「お酒も薬もほどほどに」。すごくいい勉強になりました。よし、これから一生懸命に生きよう!もう、こんな時間だ。すみません。今回のサイコーは、日本薬科大学教授の船山信次先生でした。ありがとうございました。

どうもありがとうございました。


大村正樹

そうなんだよね。薬は飲み合わせがあるみたいで、最近薬局へ行くと、「お薬手帳を持ってますか?」といわれるわけですよ。そうすると、この患者さんがどういう薬を飲んできたかがすぐ分かるということで、僕はそういうの面倒くさいから「いえ、いらないです」といってたけど、これからちょっと飲み合わせもあるから、花粉症の薬も飲んでるし「お薬手帳」を作ってみようかなぁ。薬とはいえ、容量を間違えると大変なことになることがよく分かりました。さぁ、みんなどうだったでしょうか?
来週もじゃあ夕方5時半に会いましょう。来週あたり卒業式の人もいるかなぁ。みんな、バイバ〜イ!