
キッズのみんな、進級進学おめでとう〜!まだ始業式や入学式をやってないかもしれませんが、4月1日からみんなは、ひとつ上の級になりましたよ。気づいているかな?ということで、サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、進級進学したということで、みんなには今日、ワンランク上の話を聴いてもらいたいと思います。アルファベット3文字だけど、もし近くにパソコンがあったら「DNA」とアルファベットを打ち込んで、お知らせを聴きながら予習しておいてください。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。

新年度最初のサイコーは、法科学鑑定研究所の桜井俊彦さんです。こんにちは。
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こんにちは、はじめまして。よろしくお願いいたします。

お願いします。法科学鑑定研究所とは、何をやる機関ですか?
- 裁判などの証拠の科学鑑定をおこなっている民間の鑑定会社です。

例えば、何を鑑定するんですか?
- DNA鑑定、指紋、筆跡、交通事故、火災、そういったものの科学鑑定をおこなう唯一の民間の会社ということです。

それは警察の組織とは違うんですか?
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民間ですので、公平です。警察は警察だけの組織ですけれど、民間ですから、「あくまで公平にジャッジメントができます」ということなんですね。

ということは、つかまったら警察につかまるけど、その後、裁判になると検察と弁護側が対決しますよね。
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はい。

じゃあ、弁護側の味方になることもあるということですね。
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あります。検察側につくこともあるし、弁護側につくこともあります。

なるほど。桜井さんは、メディアファクトリーから『DNA鑑定 暗殺、冤罪、浮気も暴くミクロの名探偵』という本を出されています。――あっ、ミクロの名探偵なんですね、桜井さんは。
- いや、DNAがミクロの名探偵なんです。

桜井さんのことではないんですね。
- 違います(笑)。

DNAがミクロの名探偵。
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その通り。

DNAって、どれぐらいの大きさですか?
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らせん状の幅が、2ナノメートルですね。

2ナノメートルは、1ミリよりもっとちっちゃいんですよね。
- 0.000002ミリ。

0が6つに最後に2が付く大きさが、DNAの大きさということですか。
- そうです。

DNAはどこにあるんですか?
- 人の体の中に細胞があるのはご存じだと思うんですが。

はい。
- 人の体の細胞は、大体60兆個といわれてます。そのひとつの細胞の中に、核というものがあります。核の中に染色体があって、この染色体をつくっている張本人がDNAです。

肉眼では見えないんですね。
- 見えないですねぇ。

日立ハイテクの電子顕微鏡だったら見えるということですね。
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ぼんやり見えるんじゃないでしょうか。

ぼんやりと。ものすごく小さなものが、僕たちの体内に。
- はい。

DNA何個ぐらい入っているんですか?
- 60兆個ぐらい、いえ、DNAはもっとですね。

もっと?
- 天文学的に。

人間の体内にDNAは天文学的に入っているんですか!?
- 入ってます。

すご〜い!
- 二重らせんになっているDNAがありますね。

二重らせんとかいうけれど、そんなの肉眼で見えないんだから、誰がらせんと決めたかとか分からないんですけれど。でも、それは顕微鏡で見たら、そういう世界があるということですね。
- DNAを発見した人は、顕微鏡でのぞいて発見したのではなくて、X線を照射して屈折率、曲がって出てくるものを計算機にあてて、「二重らせんではないか。きっと二重らせんだと思う」というのがDNA発見の論文です。だから、全部の計算で出てきたものがDNAなので、DNA自体を見るのは無理なんです。

よくらせん構造といわれているけれど、誰かが確認したわけではないんですね。
- 計算上です。

そのDNAはコドンとかいう暗号が入ってるんですよね、その人それぞれの。
- 入ってます。

それが、基本的には人の場合は何種類ぐらいの記号というか、何かDNAのらせんの物質があるんですか?
- 何種類というとちょっと話が違って。

違うんですか。
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簡単な話をします。遺伝子はお分かりになりますか?

お父さんお母さんからもらったものです。
- じゃあ、DNAは何だと思いますか?

お父さんに似ている部分と、お母さんに似てる部分をとった僕です。
- はい。DNAは物質なんです。遺伝子は情報です。

遺伝子は情報。
- ええ。遺伝子は情報だから、目に見えることはない。でも、DNAは物質だから、目で見ることができる。

はい。
- その人の体にたくさん入っているDNAですが、実は遺伝情報に関わっているDNAは、たくさんあるDNAのわずか10分の1しかないんです。

へぇ〜。じゃあ、残りの10分の9は何ですか?
- これは、総称としてガラクタDNAと呼ばれています。

へぇ〜。
- 実際にガラクタDNAと呼ばれていて、遺伝情報にまったく関わってないDNAが、どういう働きをするのかは実はなぞめいていて、今まさに研究の真っ最中です。

僕たち、お父さんお母さんのDNAは、10のうち1しかないということですか?
- いえ、DNAの相対を見ると50パーセントはお父さんから、残りの50パーセントはお母さんから、そして自分が成り立っている。で、その中の遺伝情報を見ると、全部のDNAの中のわずか10パーセントしか遺伝情報に関わってない。

あとはガラクタDNAですか?
- ええ。

そのDNAは体内でどんな活動をしているんですか?
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今まで、ガラクタDNAは何の働きもないだろうと科学者たちは思っていたんですね。ところが、最近いろいろな研究をしていくと、ガラクタDNAが、ある日突然変異を起こすことが分かってきているんです。

はい。
- 人の体の中にあるわずか10パーセントのDNAは、どんな状態でも10パーセントのDNA――これを平たくいうと、仮に最初から耳が聴こえなかったりとか目が見えなかったりした人は、このガラクタDNAの一部が覚醒することが分かっている。

じゃあ、耳が聴こえるようになったり、目が見えるようになったりするということですか?
- 別の部分がすごく覚醒している。

ほぉ〜。
- だから、目が見えないのに絶対音感を持っている人とか、音楽能力がものすごく高い人が出てきているのは、そのガラクタDNAが一部目を覚ました状態になっている。

なるほど。
- だから今、人間の体のDNAの中でわずか10パーセントしか動いてないといいましたが、“わずか”ではなくてガラクタDNAが眠っているんじゃないか、と科学者たちが考えるようになってきた。

なるほどね。
- そういう研究が進んでいくうちに、よくいろいろな意味で目がめちゃめちゃいい方だったり、音感力がものすごくいい方はその反面、例えば足が不自由だったり目が見えなかったり耳が聴こえなかったり…、ごく一部の人類しかないんですが、DNA上では「どれがスタンダードなんだろう?」「ひょっとしたら、彼らがスタンダードじゃないだろうか?」という考えが、今ちょうど研究している最中に出てきているんです。

確かに盲目のピアニストとかいろいろな方がいますね
- はい。

では、DNAの分析は、どうやってやるんですか?
- アナライザーという機械を使います。

それはコンピュータですか?
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コンピュータと連動した分析機です。

よく警察で「DNA鑑定の結果、本人と分かりました」と発表がありますね。その鑑定をなさっているわけですよね。
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そうです。

例えば、僕の髪の毛を1本さし上げます。これでDNA鑑定をする場合、まずどんな作業をするんですか?
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DNA鑑定は、人によって著しく個性が出る箇所を探し出して、そこを比較してるんです。ですから、60兆個すべての細胞のDNAを調べているわけではないんです。

はい。
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DNAのある一部分に着目すると、人によって、兄弟であろうと若干のずれが出る箇所がもうすでに報告されているんですね。そこの箇所だけを取り出して、アナライザーという分析装置にかけるとはっきりと違いが出てくる。

第三者と僕との違い?
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決定的なものが…。

分かってくる。いや、すごい! 僕はこのサイエンステラーもやりながら、テレビリポーターの仕事もやっているので、こういう話はとても興味深いです。来週もまたお話をうかがってよろしいですか?
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はい。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。今日のサイコーは、法科学鑑定研究所の桜井俊彦さんでした。ありがとうございました。
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ありがとうございました。

3週間前に「薬と毒」というお話をしました。だから、DNAでその人に合った薬が開発されると、ひょっとしたら人間はものすごく長生きになるんじゃないかと…。DNAの話は、事件の時によく出てくるだけかと思いきや、実はいろいろな形で研究がなされているんですねぇ。どうですか? ひとつワンランク上のお話。来週も楽しみにしててねっ!それじゃまた来週も夕方5時半に会いましょう。バイバ〜イ!