過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分
「DNAとは」(2)
コーチャー/桜井俊彦さん(法科学鑑定研究所)
大村正樹&桜井俊彦

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 新学期が始まってクラス替えとか新しい友だちとか、いろんな出会いがあったと思いますが、みんなの役割は、この番組の宣伝をすることです。よろしくねっ! ということで、今週もDNAの話を取り上げたいと思います。これがまた奥行きのある話なので、お知らせの後、ぜひ楽しみにしててくださ〜い


大村正樹

今週のサイコーも前回に続きまして、法科学鑑定研究所の桜井俊彦さんです。こんにちは。

こんにちは。よろしくお願いいたします。


大村正樹

お願いします。十何年前か、スティーブン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』という映画がありましたよね。恐竜の化石から恐竜をつくっちゃって、恐竜の遊園地をつくりましょうみたいな作品。DNAの話を聞くと、実際にできるということですよね?

結論からいうと、できない。

大村正樹

できないんですか。何でですか?

まず恐竜を再生するためには、人がDNAをつくることは、今の科学技術では不可能なんですね。

大村正樹

でも、化石があれば…。

はい。化石があるとすると、その化石からどういうDNAかは分かると思うんですが、それを逆に再生するためには、別の手段を選ぶ必要が出てくる。


大村正樹

はぁ。

例えば、今の時代でその恐竜の“代理母”を考えた場合に、恐竜の代理母は存在しないと思うんですね。


大村正樹

恐竜って、卵で生まれてくるんですよね。

ええ。


大村正樹

その卵を産んでくれる生き物がいないということですか?

簡単にいうと、今の再生技術はクローンにもあてがわれているように、ある一定のDNAを母体であるDNAに移植すること。それで、生まれてくるものが同じDNAを持ったものというように考えられてるんですね。

大村正樹

はい。

ですから、恐竜の場合だと、恐竜の化石から取れたDNAを、今生きている動物の生きているDNAに移植する必要が出てくる。じゃあ、その生きている動物に移植できる母親となるものがいるのか…。

大村正樹

恐竜はもういないから、それに近い生き物もいないということですか?

そうなんです。


大村正樹

お腹を代わりに貸してくれる動物がいないということ?

いない。


大村正樹

ニワトリじゃダメですか?

実はDNAの特徴の中のひとつに、子孫を繁栄するために同じもの、同一種のみにしか細胞分裂を起こさないというDNAの動きがあるんです。

大村正樹

そうだ、そういう話を先週うかがった。

例えばイヌのDNAをネコのDNAに入れても、ネコは生まれてこない。では、過去の恐竜のDNAは解析できて取れているので、それをニワトリに移植したら恐竜が生まれるのか?――生まれないんですねぇ。

大村正樹

なるほど。そうか、そうか。

分裂を起こさない。

大村正樹

じゃあ絶滅した生き物は、DNAを採取してもその生き物は再生できないということですね。

はい。つまり、現状で絶滅してしまった、もう明らかに子どもがいなくなってしまったものに関しては、不可能だと思います。

大村正樹

はい。

ただマンモスだったり、サーベルタイガーのようなものだったり、確かに絶滅はしているんだけど、現時代にも似たような生物があるものに関しては、再生できる可能性が高いということです。

大村正樹

マンモスはもういないけれど、似たような動物でゾウさんがいるから大丈夫ということですか?

そうですね。


 
大村正樹

へぇ〜。恐竜は似たような動物がいないからダメってことですね。

その通りです。

大村正樹

なるほど。実際、そういうマンモスを再生しようという計画はあるんですか?

実際に研究が進められてまして、昔のマンモスから取られたDNAを、今のゾウのお腹で、簡単にいえば移植して交配をする。すると、生まれてきた子どもは、マンモスとゾウのハーフです。

大村正樹

なるほど。完璧なマンモスは再生できないけれど、ハーフはできる。

その通りです。

大村正樹

いわゆる同じ種の生き物になると大丈夫ということですね。

その通りです。

大村正樹

分かりました。ちょっと前だったかな、エジプトのツタンカーメンのDNAを採取して調べたら、その死因は、骨を折ってマラリアになったという…。そこまで分かったというのが新聞に載ってましたよね。

はい。

大村正樹

ツタンカーメンって、たぶん3000年以上前の人ですよね。それぐらい古いものも大丈夫なんですよね?

DNA自体はケースバイケースですが、保存の状態がよければ、かなり昔のものからも抽出することが可能であると。

大村正樹

だから『ジュラシック・パーク』じゃないけれど、恐竜のものも抽出できるというわけですか?

抽出はできるけれど、再生はできない。

大村正樹

やっぱりある程度完璧な状態というのは、比較的新しいものに限るわけですね。

その通りです。

大村正樹

大村正樹の再生はできるけれど(笑)、ツタンカーメンや聖徳太子の再生は難しいかも、ってこと?

はい。再生は不可能ですが、今ある研究で、ツタンカーメンもしくはエジプトでいろいろなミイラが出てきてるんですが、その方たちの現存する子孫を探すとか、探してみたいという研究者が現れていて…。


大村正樹

家系図は残ってないけれど、DNAの検査の結果、「あなた、ツタンカーメンの何とか何とか何とかの孫ですよ」ということもありうるんですね。

「何千代目のDNAをあなたが引き継いでますよ」ということは、調べることが可能じゃないかと。

大村正樹

そうだ、ちょっと待ってください。じゃあ、人間のルーツも分かるということですか?

以前、人類はあるいろんな地球上でいっせいに進化して白人ができたり、日本人ができたりとかしたんだろう、といわれてたんですね。

大村正樹

僕らって何でしたっけ? クロマニヨン人?

いえ、北京原人です。

大村正樹

そうだ。僕ら北京原人。そこまでやっぱり分かるわけですか?

今、DNAを調べていくと、どんどんどんどん親から子へ、子から孫へ引き継がれていきますよね。逆に「さかのぼることも可能なはずだ」という、地球上のいろんな人種からDNAを集めて人類の大きな家系図をつくってみようという研究者が現れたんです。その結果、何と今現存する地球上の人類は、東アフリカに住んでいた女性をひとりの母親とするという論文が出てるんです。

大村正樹

へぇ〜。あっ、じゃあ何年か前の“グレートジャーニー”じゃないですか!

そうですね(笑)。

大村正樹

2000年にゴールした、南アメリカの南からグーッと北アメリカへ行って、ヨーロッパへ行ってアフリカにゴールした関野さんというお医者さんがいらっしゃったけど、あの人のゴールが確か東アフリカ。

はい、その通り。

大村正樹

ンゴロンゴロというところですよ。それが原点というのは本当ですか?

ええ。人の体は当然、代々受け継がれていくDNAが蓄積されているはずですから、先ほど言ったようなミイラだったり化石だったり…。例えば、大村さんは日本人ですよね。

大村正樹

はい。

でも同じミトコンドリアを持っている人が、実は東アフリカ系の人にもいたとする。そうすると、大村さんの歴代をずーっとたどっていくと、ある一定のところからわかれたDNAというのが分かる。そこにたどり着いていくと、じゃあ大村さんは、大昔はアフリカ人だったのかもしれない。

大村正樹

えぇ〜!? がぜん今年のワールドカップが楽しみになってきました!僕らって日本人で北京原人が元と思ったけれど、北京原人の前にアフリカに人類のルーツがあるということですね。

ええ。


大村正樹

ちょっとこのラジオを聴いていただいたみなさん、6月、2ヵ月後にワールドカップが迫ってきたんで、そちらにも注目してもらえればいいなぁと思ってますが…。じゃあ、桜井さんは、いつもやっぱりアフリカとくると「俺の先祖がいるな」と、ずっと何年も前から思ってたわけですか?

ミトコンドリアというDNAを見ながら、ずーっと眺めていくとものすごくロマンを感じますよね。

大村正樹

いいなぁ、その仕事。当然、お仕事ですから大変なこともあると思いますが、すっごい無限大に可能性が広がる、ちょっとした宇宙ですよねぇ。

宇宙ですよねぇ、DNAは。

大村正樹

ちょっと今度、仕事場に遊びに行っていいですか?

はい。ぜひ!

大村正樹

お願いします(笑)。もう、こんな時間、あっという間だったなぁ。今週のサイコーも、法科学鑑定研究所の桜井俊彦さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。

大村正樹

DNAを抽出して再生できるものもあれば、できないものもある。人間の場合は、実はできちゃうということなんだけれど、やっぱり倫理上、それはやらないというのが基本方針なんですよね。 僕なんかやっぱり自分の分身じゃないけど、疲れた時に代わりにやってくれるやつがいたらうれしいしなぁ。でも、DNAで再生しても赤ちゃんから始まるわけだから、分身が育つには20年ぐらいかかるわけで、その時までは無理だしなぁ〜。いろんな広がりがあるお話で、DNA、みなさんも興味があったら調べてみてねっ!さぁ、今日のサイコーの桜井さん、メディアファクトリーから『DNA鑑定 暗殺、冤罪、浮気も暴くミクロの名探偵』という本を出してらっしゃいます。これも、奥行きのある本ですよ。それでは新学期、また元気にやっていきましょう。バイバ〜イ!