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「人体のナゾ」(1)
コーチャー/武村政春さん(東京理科大学大学院准教授)
大村正樹&武村政春

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。新しい学年になって、みんな、もうすでに身体測定は終わってると思うけれど。今日のテーマは、人体のナゾ。ということで、用意するものは何もありません。君がラジオの前にいてくれたら、それでいいです。お知らせの後、人体のナゾに迫っていきますよ〜。


大村正樹

今週のサイコーは、東京理科大学大学院准教授の武村政春先生です。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

武村先生は、新潮新書から『おへそはなぜ一生消えないか−人体の謎を解く』という本を出されてます。本当におへそ! おへそって何のためにあって…。何でなんだろう? だって、全員が持ってるわけですよね。

そうですね。

大村正樹

あれは何のためにあるんですか?

何のために今われわれが持っているか、これは分からんですねぇ。

大村正樹

何で分からないんですか?

誰もやってないからだと思います(笑)。誰も考えたことがないからじゃないかなと思うんですけど。ただ、これもよく知られているように、僕たちはお母さんのお腹の中にいる時はへその緒でつながっているわけで。


大村正樹

はい。

もちろん生まれてくる前までは、おへその役割はおへそではなかったですよね。へその緒がつながってた部分ですから、それ相当の役割はあって、それがあるから、われわれはお母さんのお腹の中で育ってくるんでしょうけれど。結局、その役割を終えた後、残った痕跡ですよね、いわばおへそは…。


大村正樹

ええ。

それがどういう役割があるのかというと、まぁあまりよく分かんないですねぇ。ないのかもしれないし、あるのかもしれない。


大村正樹

一応、僕も2児の父です。子どもたちが生まれたとき、産婦人科の先生が、へそをけっこうゆとりを持って切ったわけです。「やばい! この子、出べそになったらどうしよう」と思ったら、やっぱりちょっと出べそっぽい。へその緒の切り方次第で、大人になってからのおへその形は変わってくるものなんですよね、きっと。

へその緒の切り方ですか?

大村正樹

はい。

そこまで僕は知らないですけどねぇ。

大村正樹

じゃあ、おへそをすごく短いギリギリのところで切って縫い合わせたら、ぺロッと皮膚になったりしないですか? おへそがなくなったりしないんですかねぇ?

分かりませんねぇ。なるかもしれないですが、ただ、結局おへその中はお母さんとつながっていた血管があるわけです。正確には臍(サイ)動脈、臍静脈という言い方をするんですが。


大村正樹

サイ動脈、サイ静脈?

へそを漢字で書いて、それを音読みすると「サイ」と読むんですね。


大村正樹

臍(へそ)って音読みで「サイ」と読むんですか!

はい。結局今おっしゃったように、出っぱった部分をチョキンと切る。もちろんえぐって切るわけにいきませんから。

大村正樹

ええ。

チョキンと、切るとその辺りは血液が流れなくなりますから、だんだん血管は萎縮してしぼんでいってしまう。

大村正樹

はい。

けれど、お腹の内側にある部分はどうしても、お医者さんとしては手のほどこしようもないわけですから、そのまま残すしかない。それが痕跡として一生残っちゃって、へその一部になっている。結局、痕跡以上の何かがあるとは思えませんけれど、医学的にひょっとしたら何かがあるのかもしれない。

大村正樹

あるのかもしれない…。それは、まだナゾですね。

医者の友人に聞いても、あまり「よく知らん」とか「考えたこともないね」というような返事だったので。

大村正樹

子どもの時『ブラック・ジャック』のマンガで、すごい外国の先生が、人のへそからお腹の中へ手を入れて、手で治す…。

ありましたね(笑)。読んだことがあります。

大村正樹

へその中に手を突っ込んでいくと内臓にたどり着くと、いまだに信じているけれど…。でも、みんな、やっちゃダメだよ!おへその中に綿棒をクリクリ入れていくと、やがては内臓に到達するんですか?

もちろん、おへそはへこんでいますから、へこんでいる内側は皮下脂肪もなければ、いわゆる腹筋もないんですね。いきなりそのすぐ下に腹膜という膜があって。


 
大村正樹

腹膜?

腹膜は、お腹の臓器を包んでいる膜みたいなものです。その内側は、臓器なわけです。だから、指をギュギュギュッとやっちゃうと、もちろん内臓にギュギュギュッとなる可能性はあります。

大村正樹

えっ〜!

それほど、へそは、ちょっとやわい部分ではあるんです。

大村正樹

へそは腹膜、内臓を包んでいる膜まで通じているわけですね。

通じている。

大村正樹

絶対やっちゃダメだよ!

だから、おへそのゴマを取るのは、そういう意味では危険です。あまりいいことではない。

大村正樹

へその掃除をしたら、何でお腹が痛くなるんですか?

そういうことだと思います。つまり腹膜を直接刺激してるようなことになるので、だから痛いんでしょうね。

大村正樹

先生もやっぱり『ブラック・ジャック』読んだのですか?

読みました。今、思い出しましたけれど(笑)。


大村正樹

めちゃくちゃうれしい〜!(笑)

何か超能力者ですよねぇ。

大村正樹

そうそう。東洋医学みたいな人ですよねぇ。

そうでした。

大村正樹

何かへその話、分かったような分からないような。とにかくお母さんとつながっていたという証(アカシ)でもあって、それが内臓につながるという器官であるけれど、なぜ付いているのかという役割はまだ分からないということですね。

まぁ分からないんでしょうね。あるということそのものが役割かもしれないですけれど…。
大村正樹

あと、男の子なんか考えたと思うんですが、乳首がありますよね。僕はこの年になると、なくちゃカッコ悪いと思ってるんだけれど、おっぱい出ないのに、何で男の子にも乳首があるんですか?

これは、私もその本に書きましたけれど。よくいわれていることですが、結局、男という性が女という性から生まれたものであるというようなことが、最近ではいわれている。


大村正樹

お母さんから生まれたということ?

そういうわけではなくて…。

大村正樹

違う。

最初は女として生まれる運命を持っていたものが、途中で男に切り替わったのが男なんです。

大村正樹

えっ〜!? じゃあ、お母さんのお腹の中では、みんな人類は女ということで用意されているんだけれど、それが男にチェンジしてるということですか?

それは概念上の話で、実際には、人間を含めたほとんどの哺乳類が染色体という遺伝子の集まりみたいなものがあって、例えばこういう状態になると男になる、こういう状態では女というのがあらかじめ決まっている。

大村正樹

ええ。

ですから、最初お母さんのお腹の中で細胞だった受精卵の時にはもう分かっているんだけれど、ただ、それは運命としては分かっている。それが体を作り上げる過程の中で、だんだん――例えば粘土に目や鼻を付けるような形でいうと、粘土がある状態は女としてあるわけです。

大村正樹

へぇ〜!?

粘土でいろんな目を付けたり鼻を付けたりする過程で、男になるというような…、男にするための遺伝子が働き出すと男になっていく。

大村正樹

そういうことか。

だから最初、女になる。けれども男にもなれるという状態で始まるから、われわれは、最初から乳首は置いてあるんですね。

大村正樹

興味深い! あと、子どもの時から人間の体で何でかなぁと思っていたんですが、鏡を見て愕然としたのが、鼻の下に小鼻があってポコッとふくらんでいるじゃないですか、両サイドに鼻が。

鼻。

大村正樹

幼稚園の時は、鼻は三角だったんですよ。よーく鏡を見たら、鼻って下のほうがふくらんでいて、「何これ!?」って思ったの。で、親の顔を見にいって「みんな、そうなんだ」と安心したんですが、今度は、鼻の下に彫刻で彫ったような溝がありますよね。

ありますね。

大村正樹

唇と鼻の間。

はい。


大村正樹

この小鼻とか鼻の下のヒゲが生える溝は、何なんですか?

僕は、小鼻の話はよく知らないんですけれど、少なくとも溝に関しては、僕たちの体は左と右からバーッとできてきて、最後に真ん中でガシンとくっつき合うような形に、お母さんのお腹の中でつくられるんですね。

大村正樹

へぇ〜。

いわゆる正中線と呼ばれるもの、真ん中。

大村正樹

体の真ん中、脳天、鼻、口の真ん中…。

真ん中にあるものは、基本的に痕跡として残りやすい、というものなんですね。鼻の下のこの溝も、おそらくそうなんじゃないかといわれてます。


大村正樹

あと、耳の形とか耳たぶ…。「何で耳たぶがあるんだろうか?」とか思うんですよ。

そうですね。そういわれて、そういえばそうだなと思いました。

大村正樹

そのあたりに関しては、先生は研究は?

全然しておりません(笑)。それ、今後の研究課題にしてもいいですね。


大村正樹

だって、人間は「福耳だったら、この人は金持ちだ」とかいわれたり…、文化放送の月刊誌も『fukuMIMI(フクミミ)』ですけれど…(笑)。先生、福耳ですよね。

そうですかね。

大村正樹

僕は耳たぶが小っちゃいから、よく「お金がたまらない」といわれるんですけれど…。

僕、福耳かもしれませんけれど、お金がたまってないから、たぶん根も葉もないうわさでしょうね(笑)。

大村正樹

迷信ですか?

いわゆる迷信でしょうね。科学的にいうと、ね。

大村正樹

すごい人間の体は不思議ですけれど、実は、「何で人間ってこうなんだろう?」といくつか疑問に思っていることがあるので、また来週も伺ってよろしいですか?

私のこたえられる範囲で(笑)。僕の考えなど瑣末なものなので…。

大村正樹

いきなり来られて、僕もいろいろなことを聞いてしまいましたが、また来週もよろしくお願いします。

はい、ありがとうございます。

大村正樹

今週のサイコーは、東京理科大学大学院准教授の武村政春先生でした。

ありがとございました。

大村正樹

イラクという中東の国――戦争があったところですね、あの国はすごく戒律が厳しいんです。で、実は何年か前にお相撲さんの巡業があって、その時のポスターがイラクに残ってた。そしたら、そのポスターのお相撲さんの胸にブラジャーを書いてあるわけですよ(笑)。やっぱり、この国は乳首を出しちゃいけないのだと思いました。じゃあ、男でもし乳首がなければ、お相撲さんの胸もきっと出したんだろう。でもそれは人間が形成される過程で乳首は万人に付いているということでしたね。本当にナゾだよねぇ。 それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。みんな、楽しい週末を。バイバイ!