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「人体のナゾ」(2)
コーチャー/武村政春さん(東京理科大学大学院准教授)
大村正樹&武村政春

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 新学期始まったばかりだけど、やっぱりゴールデンウイークという声を聞くと、もう気もそぞろじゃない!?今週終わって、来週ちょっと学校へ行ったら5連休があって…。 では、今週もまた人体のナゾをラボからお送りしたいと思いますが、僕が生きてる中でどうしても気になっていることをサイコーにぶつけちゃいます。お知らせの後!


大村正樹

今週のサイコーも先週に続きまして、東京理科大学大学院准教授の武村政春先生です。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

武村先生は、新潮新書から『おへそはなぜ一生消えないか−人体の謎を解く』という本を出版されてます。人体の専門家というよりか、もっと細かいDNAの専門家であるということで。

そうなんです。

大村正樹

この番組は4週連続でDNAの専門家の方にお見えいただいております。

みなさん、食傷気味になってるんじゃないですか?

大村正樹

いえ、いえ。僕も日々生きている中で、「何で人間の体って、こんなによくできているのか!」とか「不便だな」と思うところがあるんですけれど。ただ1点思ったのが、魚と違って、人間は食べるところと呼吸するところが同じじゃないですか。

同じですね。


大村正樹

鼻からふだん呼吸をしても、息が上がったら口で呼吸しますよね。だから息が上がっている時に超空腹だったとしても、何かを食べながらはできない。

できませんね。


大村正樹

マラソン選手などもドリンクを飲むくらいしかない。器官が同じだから食事しながらというわけにいかないですよね。あれは何でですか?

不思議ですよね、考えてみたら。


大村正樹

不思議、不思議。

海の中
こういうことを考えるうえで、やっぱり僕たち生物が、人間がどうやってできてきたかなど、進化の話をするしかないんですけれど。結局、今おっしゃったように、われわれの先祖はやっぱり海の中にいたわけですよ。

大村正樹

えっ、そうなんですか! 僕たちの先祖は魚だったんですか?

魚と同じ海の中に住む生物だったんですね。つまり、僕らの先祖は、海の中にいたわけですから、最初は肺で呼吸する必要はなかったんです。

大村正樹

エラで呼吸していたということですか?

エラです。ということは、食べるだけでよかったんです。だから、外から取り入れるところとしては、口が1ヵ所あればいい――魚はエラを通して水を取り入れ、またそこから海水を出して、その時に酸素も取り入れるわけです。結局、海の中でしたから2つの穴を作る必要はなかったわけですね。


大村正樹

はい。

それがだんだん陸に上がるようになって、肺呼吸が必要になってくる状態というか、必然的にそうなっていったんです。その時に新たに穴をもう1個作るよりも、今ある穴を転用する形で、食べ物とは別の方向に流れる管(クダ)を、口から通じる管から枝分かれさせて作ったほうがエネルギー的に少なかったんじゃないかなと…。勝手な想像をしているわけですけれど。


大村正樹

のどの周辺で1回空気と食べ物が合流するけれど、その先、肺や胃にわたる器官は別になるということですか。

そういうことです。そのように作ったほうが効率よかったんじゃないかと思うんですね。ですから、不便なのか便利なのかは人によっては違うかもしれませんが、結局、食べ物も空気も一緒のところをまず通る。そして途中で枝分かれして、空気のほうは肺に、食べ物は胃袋にいく、というような形におそらくなっていったんでしょうね。

大村正樹

やっぱり便利にできているわけですよね。

便利にできてますね。単に枝分かれしただけではなくて、そこをうまく調節する。われわれには、喉頭蓋(コウトウガイ)という器官のところにフタみたいなものがある。ゴクンと飲む時は、肺のほうにいかないようにパッとフタをする。そのゴクンという瞬間だけ、パッと器官のほうにフタをして食べ物がいかないようにする。非常にち密なメカニズムを持っているんですね。

大村正樹

ゴックンする時は、喉頭蓋というのどの周辺のフタが、ピッと閉じて器官には食べ物がいかないようにする。ガイって蓋(フタ)という漢字ですよね。じゃあ、線路のレールのポイントみたいな感じになるんですか?

ポイントよりも、はるかに精密でしょうね。

大村正樹

でも、一生生きていたら何十万回と、いや何百万回と体の中で動いているということですか?

そういうことですね。

大村正樹

すご〜い、体!

すごいですね。

大村正樹

喉頭蓋が例えば劣化しちゃったり、「いい加減もう疲れたよ」となったら、人間は死んじゃうんですか?

すぐ死ぬまではいかないと思いますが、かなり具合が悪くなるでしょうね。


 
大村正樹

へぇ〜。

難しい言葉で飲み込むことを嚥下(エンゲ)というのですが、飲み込むところに障害が起こると、やっぱりちょっと具合が悪くなることはあるでしょうね。

大村正樹

なるほどね。

そういう病気は確かあったと思います。

大村正樹

僕らの体って快適に生きるために、見えないところでいろんな器官が活動してくれてるわけですね。

もう無意識に働いてくれてますからね、喉頭蓋なんて特に。

大村正樹

僕など素人だから分かりませんけれど、ラジオを聴いているキッズに、「こんなによくできている!」、「体って見えないけど、こんなにすごいんだよ!」というのは何かありますか?

そうですねぇ。「こんなにすごい!」ということで一番パッと思い浮かぶのは、昨今はやったインフルエンザでしょうか。
大村正樹

はい。

よく免疫という話を新聞やテレビですると思うんですが、結局、なぜインフルエンザにかかるかというと、体のいわゆる防御メカニズム、守る体勢がインフルエンザウイルスに対してあまり強くないわけです。


大村正樹

はい。

だから、かかってしまう。でも、この間の新型の豚由来のウイルスでしたけれど、豚インフルエンザウイルスというちょっと訳の分からないものが来た時には、――少し難しい話になりますが、僕たちが生きている、このまわりにはたくさんのバイ菌がウヨウヨしている。

大村正樹

ラボの中にも、ですか?

もちろん。たぶん、たくさんいると思いますよ。

大村正樹

えっ!

手のひらにもたくさんいます。
大村正樹

はい。

そのようなものがいるにも関わらず病気にならないのは、そういったものを私たちが知らないうちに排除してくれている。


大村正樹

体の免疫力で?

そうです、免疫力でやっつけてくれている。われわれには何十年かの寿命がありますけれど、そういうメカニズムがその間ずっと働いてくれている。つまり、働けるだけのメカニズムを僕たちは作り上げているというところがすごいなと思いますね。

大村正樹

無意識のうちに、体がバイ菌と戦っているということですね。

そういうことですね。

大村正樹

へぇ〜。僕らが意識しなくても。

さっきのフタと一緒ですね。


大村正樹

あと、人間の体は進化するとか退化するとかいわれてます。例えば、おサルさんが私たちのルーツだとすると、人間になって退化したからシッポはなくなったという話をする人がいますよね。でも実際、シッポがもともと生えていたと思いますか?

それはサルに近かったわけですから、たぶん生えてたに違いないでしょうね。


大村正樹

じゃあ、必要ないからなくなっていったという…。

まぁ、そうですね。というか、実は退化というのは進化のひとつで、退化は時間を追って変わっていくわけですから進化のひとつなんです。必要がないから退化していくのももちろんあるだろうけど、結果的になくなったほうがよかったというようなこともあるので、なかなか一言でいえないですけれど。

大村正樹

人類がもし滅亡しなければ――どうなるか分かりませんけれど、何億年後、やがては人類も僕らみたいに目と鼻と口がある顔ではなくて、逆に進化して別の顔になっている可能性もあるわけですかねぇ?

口と目の位置が逆転してることは、まずないと思いますけれど(笑)。でも、今のこの形が、例えば毛のあり様とか髪の毛とかヒゲの形、そういったようなところでかなり変わっていくことはあるかもしれませんね。

大村正樹

僕らもずっと後の人たちから、原始人みたいに見られるかもしれないんですね。

それは、たぶんそうでしょうね。

大村正樹

いくら一生懸命オシャレしても。そういうふうに思われるわけですね(笑)。

ほぼ確実にそうでしょうね。

大村正樹

なるほど。今の段階で僕らが未来の人を見ると「ダッサい未来人」と思うかもしれないけれど、未来の人が僕らを見たら「原始的だな」と思っちゃうわけですね。

そういうことでしょうね。


大村正樹

いやぁ、ショックだなぁ!

だって100年前の日本人を見ても、われわれは思うわけですから。

大村正樹

そうですよねぇ! へぇ〜、おもしろいなぁ。もう時間ですか。先生、あっという間でしたよね。

ほんとですね。

大村正樹

先生、最後にラジオを聴いているキッズに何かメッセージはありますか?

そうですね。今もお話にありましたけれど、私たちは無意識に生きてるといってもいいわけですね。その無意識の中で、隠れていろいろなすごいことを私たちの体がやっているということをラジオを聴いている子どもたちが分かってくれて、「将来そういったことを研究したい!」みたいな人が出てくると、僕としてはうれしいなと思います。まぁ、そこまでは求めませんけれど(笑)。

大村正樹

自分の体に感謝する気持ちになりましたよ、今日は。

みなさんにそうなっていただければ、ほんとにありがたいと思います。


大村正樹

今週のサイコーは、東京理科大学大学院准教授の武村政春先生でした。ありがとうございました。

ありがとうございました。

大村正樹

武村先生は人体にも詳しかったけど、DNAの研究をされている先生です。お知らせの時にいってくれたのが、DNAは遺伝子で、その遺伝子を受け継いだみんなは、世界にたったひとつだけある個の存在ということなんだよね。 今日も人間の体は、僕たちが生きていく中で一生懸命、知らず知らずのうちに戦ってくれている。その受け継いでもらったDNAの個の力を大事にして、今一度みんなも自分の体と向き合うと、意外な感謝の気持ちとか「大事にしよう」とか、お父さんお母さんに「ありがとう!」という気持ちになるんじゃないかなと思いました。 それじゃ、あとひと頑張りでゴールデンウイーク。来週も夕方また5時半ね。バイバ〜