
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 ゴールデンウィーク明けの1週間って、1年で一番しんどいかもしれないけれど、まぁまぁこれから1学期楽しいことがありますから、学校、頑張ってエンジョイしてください。 今回はキッズからの質問特集ということで、みんなから寄せられた科学の素朴な疑問にこたえていきます。時間の許すかぎり、サイコーに聞いちゃいま〜す。お知らせの後!

今週のサイコーは、おなじみになりました科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。
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こんにちは。

今日はキッズからなかなか骨太な質問がきてますので、よろしくお願いいたします。
- はい、わかりました。

まず最初は板橋区のラジオネーム“猿の惑星”くん、小学校5年生、11歳の男の子から。「タイムマシンに興味を持っています。実際にいつかはできる発明ですか? 難しいようなら何が問題になっているんですか? 逆に将来可能性があるというなら、なぜ未来から来た人に会わないんでしょうか? 研究してる人はいるんですか。それとも絶対無理だからいないんですか?」。――どうですか?
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そうですね。ほんとにタイムマシンがあったらいいですよね。

でも25年前に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でドクはつくってくれたじゃないですか。
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そうですね。

でも、あれからできないですよね。
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映画や小説にはよく出てきますよね。実際にタイムマシンをまじめに研究している物理学者はいます。

あっ、そうなんですか。日本人でもいるんですか?
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日本人はあまりいないかもしれませんが、けっこう有名な物理学者がいろいろなアイデアを出したりしてます。ただ基本的には、なかなか難しいですね。実現はもちろんしてない。どうしてかというと、ひとつは宇宙には時間の流れがあって、過去から現在、未来へと流れている。その中で物事が起こっているわけですけれど、物事は必ず原因があって結果がある。

ええ。
- 結果があってから原因が起こるわけではない。基本的に宇宙の法則は、時間はひとつの方向にしか流れないだろうと考えてる学者がたくさんいます。スティーヴン・ホーキングという車椅子の物理学者をご存じですか?

はい、有名な方。
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有名な人ですよね。彼も実はそういう考え方で、おそらく自然界の法則の中には、そういった時間が逆行するとか、原因と結果が逆転するようなことは起こらない仕組みがあるんじゃないかという考え方をしています。

例えば、僕がタイムマシンに乗って50年ぐらい前、自分の年齢よりも生まれる前の時代にさかのぼって、そこの物事をいじくっちゃったら、僕が生まれない可能性もあるということですね。
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そうですね。それは特に、昔からいわれている「親殺しのパラドックス」という問題ですね。

へぇ〜。
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つまり自分が過去に戻って自分の親を殺してしまったら、自分は当然生まれてこないことになってしまう。でも、本人はそこに存在する。

はい。
- だから、これはちょっと矛盾している話ですよね。実はタイムマシンの話は、このパラドックス、逆説をまだ解決できてない。

ふ〜ん。
- ということなので、もしもそういったことが可能だとしたら、今自分がいる世界は、実は前の世界とまた別の世界になってしまっている。そういう可能性もありますね。

はい。
- だから、必ずしもちゃんと時間を過去から現在、未来と往復したことにはならないので、タイムマシンではないという考え方もありますね。

やっぱり科学ジャーナリストの目線から見ても、タイムマシンはちょっと厳しいというか難しい?
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未来へ行くだけのタイムマシンが可能であるということは、例えばアインシュタインがちゃんといってることなんですね。

えっ、そうなんですか!
- 有名な相対性理論がありますね。これによると光の速度、1秒間に30万キロメートルですが、これに非常に近いスピードで移動してる人は、その間、時間の流れが遅くなるということが分かってるんです。

そんな移動は、今できるんですか?
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今はできません。

できない。
- だから、これもそういう宇宙船ができなければ意味ないんですが、まぁ頭の中で考える実験、思考実験というもの――またパラドックスという言葉が出てくるんですが「双子のパラドックス」といわれたり、それから「ウラシマ効果」とかいわれるんですけれど。例えば双子がいるとしますね。ひとりが宇宙飛行士で、光の速度に非常に近いスピードで宇宙船に乗って、宇宙へ行って地球に帰って来たとします。

ええ。
- そうすると移動している間、光のスピードに近い速度で移動している間は、その人の時間の流れは遅くなります。ですから例えば50年後に地球に戻ってきた時、宇宙に行った宇宙飛行士のほうは時間の経過が遅れているので、わずか数年間しか時間が経ってないことになる。

浦島太郎みたいなもんですか?
- そうですね。一方、もうひとりが仮に双子の兄弟のお兄さんだったとすると、お兄さんは50年後になれば、50歳分年をとっているわけです。

はい。
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ということで、地上に帰ってみたら、ほかの人はみんな年をとってしまっていた。浦島太郎の話とよく似ているので、「ウラシマ効果」といわれることもあるわけです。

でも、もしかしたら1秒間に30万キロという光の速さと同じレベルの宇宙船が開発されたら、そういう現象は起きうるということですね。
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それは、むしろアインシュタインが相対性理論で、そういうことがあるといってます。相対性理論自体はまちがいないと今、考えられてますので。

へぇ〜。
- 未来にだけ行くタイムマシン、これはたぶん考えられますね。

いいな、骨太な質問をもう1問! ラジオネーム“ジェイポット”くん、小学校6年生、所沢市の男の子から来ています。これはいい質問だ!「地球が砂漠化していると学校で習いましたが、日本も砂漠になるのでしょうか? 日本の周りは海ですが、隣の国の砂漠が広がってくるのではなくて、日本がほかの国とちょうど同じ頃、砂漠になるんですか? 砂漠になるのを防ぐには、どうすればいいのですか。努力すればできますか?」と、これはけっこう深刻な環境問題です。
- そうですね。確かに今、地球で砂漠化は起こってます。ただし、これは地球全体が全部一緒に砂漠化していることではなくて、砂漠化が進んでいる地域があるという意味です。あるいはトータルで見ると、乾燥して砂漠化になっている面積が全体として増えていることはありますけれど、すべての場所が砂漠化しているわけではないですね。

はい。
- ただこれは非常に深刻な問題で、例えば、砂漠化で問題になっている場所のひとつは中国の奥地のほうですね。

コビ砂漠。
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はい、その周辺ですね。ここで今、砂漠化が進んでいます。ここの場合、原因は森林を切ってしまったり、それから川が流れている水を農業に使いますが、使いすぎてしまうと水が少なくなって乾燥化が進むという、どちらかというと人間的な要素によることも大きいんじゃないかといわれています。

そうなんですか。
- ただこれから地球温暖化が進むと、雨が降る場所と降らない場所が変わってくる可能性があるんですね。

ふ〜ん。
- あるいは、雨があまり降らないところに、よけいに降らなくなったりすることもある。そのようにいくつか心配されている場所があります。

注目の日本が砂漠になるかどうかという問題はどうですか?
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そうですね。日本の場合は海に囲まれてるし、雨量が全体として多いので、今のところ砂漠化を心配する必要はあまりないかもしれません。

そうですか。でも、ちょっと気になるのが、海岸線がだんだん侵食されて、陸そのものが狭くなってくる。これはどうですか?
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もちろん、それもあります。それから、もうひとつ心配なのは、砂漠化しないまでも雨の量が減ってくることは当然考えられる。

今年は春先は多かったけれど、減ってくる可能性もあるんですか?
- そういった短期的なものではなく長期的に見て、だんだんこの地域は雨量が少なくなってくるという場所が、もしかしたら出てくるかもしれませんね。

日本でも、ですか?
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まだ日本ぐらいの地域――地球全体から見ると非常に狭い地域ですよね。ここの地球温暖化による予測があまり詳しく出てないので、どこの場所がそういうふうになるかとか、まだよく分かってません。けれど当然、雨の降るパターンや雨の量が変わったりするので、今よりも雨が降らなくなって乾燥してくる場所がたぶんこれから増えてくる可能性がありますね。

なるほど。
- そうなるとたぶん農業などは、かなり深刻な打撃を受ける可能性がありますね。

分かりました。もうこんな時間だ。まだまだ紹介したい質問があるので、寺門さん、また来週も来ていただいてよろしいですか?
- はい、分かりました。

よろしくお願いします。今日のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。
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どうも失礼しました。

質問の答え、ラジオネーム“猿の惑星”くん。タイムマシンは、やがては未来には行けるかもしれない。だけど、今生きている自分をあきらめなければいけないという、難しい選択だそうです。「やがては、未来へは行けるかも」ということで、「過去にさかのぼることは難しいでしょう」ということでした。 ラジオネーム“ジェイポット”くん。地球の砂漠化、「日本の周りは当面大丈夫でしょう」ということでした。みなさん、どうだったでしょうか? ほんとにいい質問だったねぇ。僕も勉強になりました。 それでは、来週もまた夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバイ!