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「モグラの生態」(2)
コーチャー/川田伸一郎さん(国立科学博物館研究員)
大村正樹&川田伸一郎

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 あ〜、運命の6月19日が来ちゃったよ。今夜、日本代表はオランダと戦うんだよ。もうねぇ、これでもしダメだったら、今週のテーマであるモグラみたいに僕も地中で暮らすようになるかもしれないなぁ。ということで、先週に続いてモグラのことをもっともっと詳しく聞いていきたいと思います。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイコーもモグラ博士、国立科学博物館研究員の川田伸一郎さんです。こんにちは。

どうも、よろしくお願いいたします。


大村正樹

川田さん、モグラ好きだけあって声のトーンもモグラっぽいですね。
 “くぐモグラ”系ですね。

「なかなか聞き取りにくい」とよくいわれますね。
大村正樹

「やっぱりモグラっぽい」っていわれませんか?

「モグラっぽい」っていわれたことはないですけど(笑)。


大村正樹

だいたいそのトーンですか? 「僕は〜」(高いトーンで)なんて絶対いわないですか?

いわないですね(笑)。


大村正樹

そうですか、分かりました。モグラのことなら何でもご存じの川田さん、日本のモグラ、例えば種類とかあるんですか? モグラはモグラだけですか?

大きく2つに分かれるんですよ。いわゆるわれわれが知っているモグラと、ヒミズというのがいるんです。


大村正樹

ヒミズ?

はい。ヒミズは、しっぽがちょっと長くて、体の3分の1ぐらいあるんですね。それで、どっちかというとトンネル掘りが得意ではない、半地中性という生き様をしてるモグラです。図鑑などに載ってますが。


大村正樹

カタカナで書くんですか?

       

はい。“日を見ず”というところから来てるらしいです。


大村正樹

へぇ〜。それは正式名称?

はい。

大村正樹

それもモグラの仲間ですか?

そうです。モグラ科という分類群になりますが、われわれはヒト科ですよね。モグラ科がありまして、そこにヒミズの仲間、モグラの仲間。


大村正樹

ほぉ〜。

日本にはヒミズの仲間が2種いるんですね。ヒメヒミズとヒミズがいまして。


大村正樹

ヒメヒミズ?

はい。ヒメヒミズとヒミズの2種。モグラのほうは、今6種に分けられてますね。全部で8種。


大村正樹

モグラ科は8種類。で、ヒミズ目(モク)とモグラ目(モク)?

ヒミズ亜科とか呼んでます。

大村正樹

亜科、アジアの亜ですね。

モグラ亜科。

大村正樹

モグラは6種類。

そうです。

大村正樹

生息地は違うんですか?

だいぶかぶってますけど、北海道にはいないんですね。


大村正樹

モグラがいない?

はい。

大村正樹

へぇ〜。

不思議なんですけどね。よく分からないですが、なぜか…。

 
大村正樹

じゃあ、青森から沖縄まではいるんですか?

沖縄にもいないですね、基本的には。沖縄県にいるのは、尖閣諸島にセンカクモグラがいまして、今まで1匹しかつかまってない、とんでもなく珍しいモグラです。


大村正樹

へぇ〜。

要するに調査できないんですよ。

大村正樹

あのあたりは中国ともめてますからね。

はい。

大村正樹

そのモグラの名前は、「モグラ」という名前があるんですか? 何とかモグラとかついてる?

はい、全部、何とかモグラとついてます。

大村正樹

例えば、どんな?

コウベモグラ、アズマモグラ、サドモグラ、エチゴモグラ、ミズラモグラというのが本州にいる。


大村正樹

ちょっと待って(笑)。アズマとコウベ、東と神戸は分かるけれど、佐渡?

佐渡島にしかないモグラがいるんです。


大村正樹

越後っておっしゃってました?

越後平野にしかいないモグラ。


大村正樹

同じ新潟県でも越後と佐渡で分かれる?

そうです。


大村正樹

あとは?

ミズラモグラ。これは、本州全体から見つかってますが、山のけっこう高いところでよく見つかるモグラです。
大村正樹

はぁ〜。

これが一番ナゾに包まれているモグラといっていい。


大村正樹

ミズラモグラ。こういうのをやっぱり探されるわけですか?

そうですねぇ。ミズラモグラは、今一番調べたいもののひとつですね。


大村正樹

今ちょっと初めて川田さんが科学者の目というか、すごくキラキラ輝きました!

ハハハ。


大村正樹

ミズラモグラは、まだご自分では?

昔つかまえたことはありますけれど、ただミズラモグラをつかまえようと思ってつかまえたことはないです。


大村正樹

偶然つかまえた。じゃあ、それを目標にしてゲットできたらすごい?

すごいですねぇ。


大村正樹

へぇ〜。

何が珍しいかというと、つまえられた例よりも、ひろわれたほうが多いんですよ。


大村正樹

それは死がいで、ということですか?

そうです。


大村正樹

生け捕りになったことはないということですか?

生け捕りは2〜3例あると思うんですが、ほとんどは死体をひろった。それも研究者がひろったんじゃなくて、山歩きしてる人が見つけて調べてもらったら、ミズラモグラだったということが多い。ほんとにナゾに包まれたモグラです。


大村正樹

生息域はどのあたりですか?

本州、中国地方から東北地方まで。山地沿いにあちこちで見つかってます。
大村正樹

ほぉ〜。でも、その大半は死がいということですね。

そうなんです。
大村正樹

川田さんがかつて見つけた時は、生きてた?

死んでましたね。
大村正樹

そうなんですか。じゃあ、生きてるミズラモグラをまだ見たことがない?

一度見たことがあります。
大村正樹

それは?

知り合いの研究者がつかまえたのを、わざわざ京都まで見に行きました。
大村正樹

自然の中で生息しているものを見たことはない?

ないですねぇ。
大村正樹

それは、見た目にアズマモグラと違うんですか?

違います。
大村正樹

どう違うんですか?

しっぽがやや長い。小さい、世界で一番小さなモグラです。


大村正樹

へぇ〜。

ヒミズの仲間を除くと、モグラといういわゆる地中性の中では一番小さい。


大村正樹

普通のモグラのミニチュア版で、しっぽ長バージョンということですよね。

で、鼻先の形態とかも全然違う。
大村正樹

違うんですね。へぇ〜。僕、帰ったらネットで調べてみようかな。興味深い。あと、モグラって毛の生え方は、ネズミやリスの毛のイメージ?

リス
モグラの毛は、よくいわれるんですが体の表面から比較的垂直に近い方向に生えてる。
大村正樹

ヤマアラシ系ですか?

ヤマアラシも、まだ後ろに倒れてるんですよ。
大村正樹

へぇ〜。

立てることはできるんですけれど。普通どんな動物でも、毛の生える方向は前のほうから後ろのほうへ向かって生える。
大村正樹

そうですよね。ウマやウシもみんな。

やっぱり空気の抵抗とか考えると、それが一番理想的なんですね。


大村正樹

はい。

ところがモグラの場合は、ほとんど垂直に。


大村正樹

へぇ〜。

これは、土の中で前にも後ろにも移動するためという説明がされてるんですね。


大村正樹

ほんとだ。川田さんの著書『モグラ博士のモグラの話』にモグラの写真があるけれど、タワシみたいですね。

はい。いい表現だと思います。


大村正樹

モグラの毛は固いんですか?

柔らかいです。すごく柔らかい。


大村正樹

柔らかいけど、おっ立ってるということですね。

おっ立ってる。


大村正樹

何センチぐらいですか?

毛の長さ、1センチもないですね。5ミリぐらいかな。やっぱり冬のほうが長い毛が生えるんですよ。ちゃんと毛変わりがあるんです。


大村正樹

垂直なのは、前後に移動できるためですか?

そうですね。やっぱりトンネルの狭い空間なので、いきなり折り返すことができないんですね。


大村正樹

ユーターンができない。

ですから、前にも後ろにも進めるように体の構造が進化してる。


大村正樹

そうか。モグラのトンネルは縦が3センチ、横がだいたい4センチぐらい。そうすると、モグラの本体はフィットしちゃってユーターンできない。

そうなんです。だから前にも後ろにも同じぐらいのスピードで動くことができる。


大村正樹

足の向きは前に歩くようにできてるけれど、この足の向きは後ろにも同じ速度で動けるようにできてるんですか?

できてる。


大村正樹

不思議ですねぇ。

不思議ですね。


大村正樹

へぇ〜。毛は垂直で前後に行けるようになってるけれど、足は前向きになってるし、顔も前にしかついてないけれど、前後自由自在に?

はい。


大村正樹

チューブ内を自由に移動するカプセルみたいなイメージですね。

そうですねぇ。しっぽが短いのも、そういうことに関係した特長だといわれてまして、しっぽが長いと後ろに歩く時にジャマでしょう?


大村正樹

はい。

だから、短くなったという。


大村正樹

へぇ〜。

土の中にいる動物は、基本的にしっぽが短いものが多いんですね。


大村正樹

なるほどね。子どもの頃から昆虫、生き物が好きで、今これをお仕事とされてる。しかもキラキラと目が輝いていて。モグラの目はちっちゃいけれど、川田さん、目が輝いてました。

ハハハ。


大村正樹

目標は何かありますか?

そうですね。僕は世界にモグラが何種いるかを、死ぬまでにつきとめるのが一応究極のテーマなので(笑)。まぁ、できるだけ生きてる間にたくさんつかまえて、ちゃんと調べてやっていきたいなぁと思ってます。

大村正樹

分かりました。ぜひ極めてください。

はい。


大村正樹

ありがとうございました。

ありがとうございます。


大村正樹

今週のサイコーは、国立科学博物館研究員の川田伸一郎さんでした。




大村正樹

ということで、モグラに6種類あって、ミズラモグラが非常に珍しい。夏休みに山へ行くキッズがいたら、ひょっとしたらミズラモグラの生け捕りに成功するかもしれない。そしたら、川田さんにぜひ報告をしてください。飛んで来ると思います。 ということで、川田さんの『モグラ博士のモグラの話』という本が岩波ジュニア新書から出版されてます。この本、意外なモグラの生態や、川田さんがなぜモグラに行き着いたのかという歴史なども書いてあります。ほんとにおもしろい本でした。 それでは今夜のオランダ戦、みんなサッカーに興味がなくても応援しよう!そして、来週楽しいトークで再会しよう!じゃあね。