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「知られざる海の世界」(2)
コーチャー/瀧澤美奈子さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&瀧澤美奈子

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、7月になりました。そして、今週も深い海の底のお話を取り上げますけれど、ゲストは『しんかい6500』という潜水艇に乗って、実際に深〜い海に行ったことがある女性のジャーナリストです。興味深い話は、お知らせの後です。


大村正樹

今週のサイコーは、科学ジャーナリストの瀧澤美奈子さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

先週は、すごく興味深い海の底の話を聞きました。瀧澤さんは深い海に潜ったことがあるということで、実際にどこの海に『しんかい6500』で潜ったのですか?

伊豆半島の東側、伊東港の近くに初島というちっちゃい島があるんですが、そこから南東に6キロぐらいの沖合いです。
大村正樹

南東に6キロ。じゃあ、そんなに遠い海ではないんですね。

そうですね。新幹線からも初島が確か見えますので、私たちの身近な場所に潜らせていただきました。


大村正樹

何メートルぐらい?

この海域は陸から近いわりにすごく深くて、1200から1500メートルあります。


大村正樹

へぇ〜、そうなんですか。沖合い6キロで、もう1200から1500メートル。

ストーンと落ちているんです。


大村正樹

何かこわ〜い。地獄だ(笑)。

       

ハハハ、そうですね。

大村正樹

伊豆半島のリゾート気分が、ちょっと向こうへ行ったら海の底があるわけですね。すご〜い! −なぜか目の前にシーフードヌードルのミニチュア版があるんですけど。これが実際に深海を経験したカップラーメンですか?

はい。

大村正樹

シーフードヌードルの高さがだいたい10センチ以上あると思うんですが、半分以下のサイズになっていて、こわれてないんだけれど文字とかカップそのものが全部ミニチュア版になっている。

そうですね。


大村正樹

これが圧力ということですか?

そうです。すごい圧力がかかるということですが、100メートルで1気圧ずつ加わってきます。カップラーメンは気泡が器のところにあるので、それがクシャッとつぶれてこんなふうになるんですね。


大村正樹

破壊されないで、キュルキュルキュルって伸縮しているわけですよね。

そうです。


大村正樹

それが不思議ですよ。ということは、瀧澤さんも4分の1ぐらいになった?

ならないです(笑)。

大村正樹

人間はならない。何でならないんですか?

『しんかい6500』の耐圧穀(タイアツコク)というチタン合金の殻におおわれた中にいたので。殻で守られてますから。

大村正樹

やっぱり『しんかい6500』は、水圧に相当タフな造りになっているんですね。

そうです。

大村正樹

普通なま身の人間がそんなところに行ったら、ピシャッとつぶれちゃうということですね。

そうですね。


大村正樹

こわ〜い! 人間だったら、素潜りで何メートルぐらいまで潜れるんですか?

えぇ〜、素潜りですか…。

大村正樹

たぶん100メートルといったらダメですよね。

ええ。ちゃんと潜水服を着て、だいたい300メートルぐらい。

大村正樹

300メートルまで行けるんですか、人間! へぇ〜。

そういう企画はありますね。


大村正樹

そうなのか。

そこで海底にステーションをつくって、1週間ぐらい生活したりということも過去にはしてました。

大村正樹

そうなんですか。意外に行けるんだな。その深海1200メートルの世界は何があったんですか?

この伊豆半島は世界的にもおもしろい場所で、シロウリガイという貝とか特有の生物の群集があることで知られていて、非常におもしろい生物がたくさんいましたね。

大村正樹

へぇ〜。瀧澤さんが日本実業出版社から『深海の不思議』という本を出されていて、これがおもしろい。

ありがとうございます。

大村正樹

イラストで、しかも気持ち悪い魚たちがいっぱい出てて、「こんなの深海にいるのかよ」という。最悪なの、ジュウモンジダコとか。もし興味があったら、みんなも見てください。海の底にこんなに気持ち悪いやつらがいるのかと思ったら、ゾッとして。

フフフフ。


大村正樹

ボウエンギョという魚は、こんなに気持ち悪い魚で「何、これ!?」という。でも、深海にこういうのがいっぱいいるんですね。

そうですね。私が潜った時に全部見たわけではないんですが、そもそも深海は生物の量が少ないので、たまに好運であれば見つかるんですけれども。


大村正樹

気持ち悪い魚には遭遇してない?

いえ、いましたよ。


大村正樹

何という?

バケダラという。


大村正樹

あぁ、最悪!

アハハハ。みなさんのイメージしやすいようにいいますと、巨大なオタマジャクシ。
大村正樹

あぁ〜。

しかも、しっぽが短いような感じですね。頭が7〜8センチぐらい、しっぽがヒュッとすぼまっていてユラユラと揺れて。


大村正樹

目もあって口もあるんですか?

はい。


大村正樹

全身が顔みたいな感じ?

そうそうそう(笑)。


大村正樹

バケダラ。でも、バケダラ的には失礼な話ですよね。

そうですよね(笑)。


大村正樹

「俺は普通に生きてるのに、お前ら人間が勝手にバケダラとつけるな」と思ってますよね。それに会ったことがある?

はい、会いました。


大村正樹

何で深海の生き物は、こんなに気持ち悪いんですか? 顔がすごいデフォルメされてるのね。

そうそう。


大村正樹

目や口が異様に大きいとか、キバが異様にとがってるとか。何でですか?

深海は生物の量が少ないので、“食う食われる”の生存競争が激しい世界なんですね。だから、口を大きくして凶暴にすることによって、より少ないエサを確実にとらえるとか、あとは目を大きくしてわずかな光をとらえて、敵よりも優位に立つとか。そういうことで、どうしても強調された構造になっているのだと思います。


大村正樹

なるほど、分かりやすい。海の底は限られた生き物しかいないから、そこで勝ち残るためには強くなくちゃいけないということですね。

ええ。


大村正樹

今日、ラボに貝を持ってきてくれたんですか?

はい。
大村正樹

これは何ですか? 深海で取ってきた?

そうです。初島にまさにたくさんいる貝です。ちょっと器に入ってますが、ふたを開けてみて。
大村正樹

これ、何貝? 二枚貝、合わせ貝でハマグリの大きいバージョンというか。海の底から取ってきたんですか?

そうです。
大村正樹

何メートルから取ってきたんですか?

1200メートルぐらいですね。
大村正樹

この貝の名前を聞かないで、「においをかげ」ということですか?

はい。
大村正樹

海のにおい、磯の香り…。

いえ、硫化水素。ちょっと時間が経ってしまっているので、あまりわからないと思いますが。この貝は、硫化水素を水管から吸い込んで生きてる貝です。
大村正樹

硫化水素で生きてる貝?

はい。
大村正樹

ちょっと待ってください。人間が硫化水素を吸ったら死んじゃうでしょ?

ええ。


大村正樹

でも、この硫化水素で生きられる生き物もいるということですか?

そうです。それがないと、逆に生きられない。


大村正樹

深海だから、ゆえに?

はい。
大村正樹

これは一見、何のへんてつもない普通の二枚貝だけど、別に浅いところで生きている貝たちは、硫化水素で生きているわけではないですね。

ええ。
大村正樹

水中の酸素で生きるけれど、深海で生活するためには、硫化水素を栄養素としているということですか?

そうですね。たまたま地下から硫化水素が湧いて来ているところですね。そこにいることでうまく取り込んで、体内に硫化水素を栄養にするバクテリアを飼っているんです、エラの中に。
大村正樹

硫化水素が海の底から湧き出てるんですか?

それが、この初島沖の場所なんです。
大村正樹

それは、やっぱり日本に火山があるからですか?

そうです、その通りです。


大村正樹

へぇ〜。そう思って考えると、火山のにおいだ!

ウフフフフ。


大村正樹

磯の香りだと思ったら、ほんとだ。あの地獄谷のにおいがする。箱根へ行った感じです。

そうです、そうです(笑)。


大村正樹

浜松町にいながら、箱根気分です。

フフフフ。


大村正樹

僕、先週思ったのは、『しんかい6500』は性能的には世界で一番深いところへ行ける可能性があるということですよね。エベレストはある程度トレーニングしなければ行けないけれど、この潜水艇は何かお願いとか研究とか、何らかのルートを取れば行ける可能性はありますよね。

トレーニングは必要ないですものね。


大村正樹

ですよね。行きたい! 宇宙へは行けないからあきらめたけど、深海は僕にとっても可能性が…。40代からチャレンジするにはいいなと思って。

そうですね(笑)。


大村正樹

その時はぜひ紹介してください。

ぜひ(笑)。


大村正樹

もうおしまい? ちょっとごめんなさい、2週にわたって。いいたいこと、いえましたか? 僕の質問だけで終わっちゃって大丈夫ですか?

私も深海へ行ってみて、みなさんにあの世界をぜひ見ていただきたいと思って。できればそういう産業を誰かに起こしていただいて、みんなで行きたいですよねぇ。


大村正樹

本当にそう思いました。この間、南極へ行った方の話を聞いたけど、極地へ行くのはすごく魅力的だと思います。さぁ、時間になってしまいました。今週のサイコーは、科学ジャーナリストの瀧澤美奈子さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。。


大村正樹

今、瀧澤さんの『深海の不思議』という本を見てるんだけれど、ほんとに海の底の生き物は気味が悪いんだ! これも話を聞いたら、生きるために迫力も必要だということで、いやぁ、実は見ながら鳥肌が立っている。は虫類などこの手の生き物、本当に嫌いなのよ。だけれど、海の底は行ってみたいなぁ。ロマンを感じた。みんな、どうだったでしょうか? それでは、もうすぐ夏休みだね。みんなも7月、元気に過ごしましょう。また来週、バイバイ!