
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、7月になりました。そして、今週も深い海の底のお話を取り上げますけれど、ゲストは『しんかい6500』という潜水艇に乗って、実際に深〜い海に行ったことがある女性のジャーナリストです。興味深い話は、お知らせの後です。

今週のサイコーは、科学ジャーナリストの瀧澤美奈子さんです。こんにちは。
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こんにちは。
- 伊豆半島の東側、伊東港の近くに初島というちっちゃい島があるんですが、そこから南東に6キロぐらいの沖合いです。

南東に6キロ。じゃあ、そんなに遠い海ではないんですね。
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そうですね。新幹線からも初島が確か見えますので、私たちの身近な場所に潜らせていただきました。

何メートルぐらい?
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この海域は陸から近いわりにすごく深くて、1200から1500メートルあります。

へぇ〜、そうなんですか。沖合い6キロで、もう1200から1500メートル。
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ストーンと落ちているんです。

何かこわ〜い。地獄だ(笑)。
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ハハハ、そうですね。

伊豆半島のリゾート気分が、ちょっと向こうへ行ったら海の底があるわけですね。すご〜い! −なぜか目の前にシーフードヌードルのミニチュア版があるんですけど。これが実際に深海を経験したカップラーメンですか?
- はい。

シーフードヌードルの高さがだいたい10センチ以上あると思うんですが、半分以下のサイズになっていて、こわれてないんだけれど文字とかカップそのものが全部ミニチュア版になっている。
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そうですね。

これが圧力ということですか?
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そうです。すごい圧力がかかるということですが、100メートルで1気圧ずつ加わってきます。カップラーメンは気泡が器のところにあるので、それがクシャッとつぶれてこんなふうになるんですね。

破壊されないで、キュルキュルキュルって伸縮しているわけですよね。
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そうです。

それが不思議ですよ。ということは、瀧澤さんも4分の1ぐらいになった?
- ならないです(笑)。

人間はならない。何でならないんですか?
- 『しんかい6500』の耐圧穀(タイアツコク)というチタン合金の殻におおわれた中にいたので。殻で守られてますから。

やっぱり『しんかい6500』は、水圧に相当タフな造りになっているんですね。
- そうです。

普通なま身の人間がそんなところに行ったら、ピシャッとつぶれちゃうということですね。
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そうですね。

こわ〜い! 人間だったら、素潜りで何メートルぐらいまで潜れるんですか?
- えぇ〜、素潜りですか…。

たぶん100メートルといったらダメですよね。
- ええ。ちゃんと潜水服を着て、だいたい300メートルぐらい。

300メートルまで行けるんですか、人間! へぇ〜。
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そういう企画はありますね。

そうなのか。
- そこで海底にステーションをつくって、1週間ぐらい生活したりということも過去にはしてました。

そうなんですか。意外に行けるんだな。その深海1200メートルの世界は何があったんですか?
- この伊豆半島は世界的にもおもしろい場所で、シロウリガイという貝とか特有の生物の群集があることで知られていて、非常におもしろい生物がたくさんいましたね。

へぇ〜。瀧澤さんが日本実業出版社から『深海の不思議』という本を出されていて、これがおもしろい。
- ありがとうございます。

イラストで、しかも気持ち悪い魚たちがいっぱい出てて、「こんなの深海にいるのかよ」という。最悪なの、ジュウモンジダコとか。もし興味があったら、みんなも見てください。海の底にこんなに気持ち悪いやつらがいるのかと思ったら、ゾッとして。
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フフフフ。

ボウエンギョという魚は、こんなに気持ち悪い魚で「何、これ!?」という。でも、深海にこういうのがいっぱいいるんですね。
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そうですね。私が潜った時に全部見たわけではないんですが、そもそも深海は生物の量が少ないので、たまに好運であれば見つかるんですけれども。

気持ち悪い魚には遭遇してない?
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いえ、いましたよ。

何という?
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バケダラという。

あぁ、最悪!
- アハハハ。みなさんのイメージしやすいようにいいますと、巨大なオタマジャクシ。

あぁ〜。
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しかも、しっぽが短いような感じですね。頭が7〜8センチぐらい、しっぽがヒュッとすぼまっていてユラユラと揺れて。

目もあって口もあるんですか?
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はい。

全身が顔みたいな感じ?
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そうそうそう(笑)。

バケダラ。でも、バケダラ的には失礼な話ですよね。
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そうですよね(笑)。

「俺は普通に生きてるのに、お前ら人間が勝手にバケダラとつけるな」と思ってますよね。それに会ったことがある?
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はい、会いました。

何で深海の生き物は、こんなに気持ち悪いんですか? 顔がすごいデフォルメされてるのね。
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そうそう。

目や口が異様に大きいとか、キバが異様にとがってるとか。何でですか?
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深海は生物の量が少ないので、“食う食われる”の生存競争が激しい世界なんですね。だから、口を大きくして凶暴にすることによって、より少ないエサを確実にとらえるとか、あとは目を大きくしてわずかな光をとらえて、敵よりも優位に立つとか。そういうことで、どうしても強調された構造になっているのだと思います。

なるほど、分かりやすい。海の底は限られた生き物しかいないから、そこで勝ち残るためには強くなくちゃいけないということですね。
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ええ。

今日、ラボに貝を持ってきてくれたんですか?
- はい。

これは何ですか? 深海で取ってきた?
- そうです。初島にまさにたくさんいる貝です。ちょっと器に入ってますが、ふたを開けてみて。

これ、何貝? 二枚貝、合わせ貝でハマグリの大きいバージョンというか。海の底から取ってきたんですか?
- そうです。

何メートルから取ってきたんですか?
- 1200メートルぐらいですね。

この貝の名前を聞かないで、「においをかげ」ということですか?
- はい。

海のにおい、磯の香り…。
- いえ、硫化水素。ちょっと時間が経ってしまっているので、あまりわからないと思いますが。この貝は、硫化水素を水管から吸い込んで生きてる貝です。

硫化水素で生きてる貝?
- はい。

ちょっと待ってください。人間が硫化水素を吸ったら死んじゃうでしょ?
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ええ。

でも、この硫化水素で生きられる生き物もいるということですか?
-
そうです。それがないと、逆に生きられない。

深海だから、ゆえに?
- はい。

これは一見、何のへんてつもない普通の二枚貝だけど、別に浅いところで生きている貝たちは、硫化水素で生きているわけではないですね。
- ええ。

水中の酸素で生きるけれど、深海で生活するためには、硫化水素を栄養素としているということですか?
- そうですね。たまたま地下から硫化水素が湧いて来ているところですね。そこにいることでうまく取り込んで、体内に硫化水素を栄養にするバクテリアを飼っているんです、エラの中に。

硫化水素が海の底から湧き出てるんですか?
- それが、この初島沖の場所なんです。

それは、やっぱり日本に火山があるからですか?
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そうです、その通りです。

へぇ〜。そう思って考えると、火山のにおいだ!
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ウフフフフ。

磯の香りだと思ったら、ほんとだ。あの地獄谷のにおいがする。箱根へ行った感じです。
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そうです、そうです(笑)。

浜松町にいながら、箱根気分です。
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フフフフ。

僕、先週思ったのは、『しんかい6500』は性能的には世界で一番深いところへ行ける可能性があるということですよね。エベレストはある程度トレーニングしなければ行けないけれど、この潜水艇は何かお願いとか研究とか、何らかのルートを取れば行ける可能性はありますよね。
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トレーニングは必要ないですものね。

ですよね。行きたい! 宇宙へは行けないからあきらめたけど、深海は僕にとっても可能性が…。40代からチャレンジするにはいいなと思って。
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そうですね(笑)。

その時はぜひ紹介してください。
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ぜひ(笑)。

もうおしまい? ちょっとごめんなさい、2週にわたって。いいたいこと、いえましたか? 僕の質問だけで終わっちゃって大丈夫ですか?
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私も深海へ行ってみて、みなさんにあの世界をぜひ見ていただきたいと思って。できればそういう産業を誰かに起こしていただいて、みんなで行きたいですよねぇ。

本当にそう思いました。この間、南極へ行った方の話を聞いたけど、極地へ行くのはすごく魅力的だと思います。さぁ、時間になってしまいました。今週のサイコーは、科学ジャーナリストの瀧澤美奈子さんでした。ありがとうございました。
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ありがとうございました。。

今、瀧澤さんの『深海の不思議』という本を見てるんだけれど、ほんとに海の底の生き物は気味が悪いんだ! これも話を聞いたら、生きるために迫力も必要だということで、いやぁ、実は見ながら鳥肌が立っている。は虫類などこの手の生き物、本当に嫌いなのよ。だけれど、海の底は行ってみたいなぁ。ロマンを感じた。みんな、どうだったでしょうか? それでは、もうすぐ夏休みだね。みんなも7月、元気に過ごしましょう。また来週、バイバイ!