
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。 今日は、前回好評だったキッズからの質問特集、いっぱい質問が来てるんです。おなじみのサイコーがお知らせの後、登場しま〜す。

今週のサイコーはおなじみ、科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。
こんにちは。

先月来ていただいたばかりですが、またキッズからの質問が来てますので、よろしくお願いします。
はい、わかりました。

まず最初は茨城県だ、ひたちなか市−へぇ〜、ここまで文化放送、聴こえるんだ。ひたちなか市のユウキ君、小学校4年生からいただきました。「金星は地球にそっくりだとテレビで説明していました。ただ灼熱の風が吹き荒れているので、人は住めないともいってました。もしどんなに強い風でも耐えられる鉄やコンクリートで基地をつくれば、人は住めるんでしょうか? 大気圧が重過ぎて住めないといってましたが、今の地球の科学では耐えられる基地はつくれませんか?」。−金星って、水・金・地・火・木だから、太陽の水星の次ってことですね。
そうですね。ですから、地球の内側を回っている惑星になります。

ということは熱い?
そうですね。ただ熱いのにはもうひとつ訳があって、実は金星の大気が二酸化炭素なんですね。今、地球温暖化でよくいわれている温室効果がありますけれど、これがものすごく進んじゃってる。金星の表面は470度ぐらいあるといわれてるんですね。それはどのくらいの温度かというと、たとえば金属でも鉛とか溶けちゃうぐらいの温度です。

470度だったら、鉛が溶けちゃう。
ですから、ものすごく高い温度ですね。

金星人が大気を汚して、二酸化炭素だけになったわけではないですよね。
つまり、星ができた時からそのような大気があるということです。

でも、どこかの国のロケットが今、金星に向かってますよね。
今向かっているのは日本の探査機です。

日本の! 何という名前?
「あかつき」という。

あぁ。
つい最近、打ち上げられました。12月ぐらいに金星へ行って、金星の周りの雲を観測することになっています。

金星には着陸しないんですか?
今回はしません。昔、旧ソ連の時代にソ連の探査機の「ベネーラ」が何機か着陸してるんです。

へぇ〜。
それで、表面の写真を撮って送ってきました。ただ、ものすごい温度が高くて圧力が高い。90気圧、地球の90倍あるわけです。そのために、探査機も30分ぐらいしか生きていられないんですよ。

90気圧って、僕らの暮らしは1気圧といわれてますよね。ということは、空気の密度が濃いということですか?
そうです。ものすごい濃い。圧力がかかってペチャンコになっちゃう。

で、30分しかいられない。
そうです。

でも、帰還したんですか?
帰還しません。そこで表面の写真や気温のデータなどを送ってきて、それで探査機は寿命が尽きてしまった。

金星で溶けて終わった。
はい。

じゃあ、金星に基地をつくるのは、なかなか難しい。
ですから、今は人間が金星に着陸して住めるような建物をつくる計画は、ほとんどないんですね。

わかりました。続いても宇宙に関する質問です。東村山市のミキちゃん、小学校6年生の女の子です。これ、いいなぁ。「宇宙の外に何があるのか考えていると、夜眠れなくなります。地球の科学ではまだわからないと思いますが、どんな説があるんですか? そのほかにも何かあるはずです。ペンの上を見るとペンの端で机が見えて、机の上を見ると机の端で床が見えて、次々に外にあるものが見えてくる。外に何もない可能性はあるんでしょうか?」−いわゆる宇宙の果てはどうなってるのかという。
そうですね。これは、みんな一度は考えますよね。

僕ら地球人が営んでいて、でも、この銀河系はもしかしたら巨大生物の足で…とかいろいろなことを考えちゃう(笑)。
科学にとっても最大の疑問のひとつですね。なかなか難しいんですけれど、こんなふうに考えられてます。まず宇宙の果てがどこにあるかということですが、これは大きな望遠鏡でずっと遠くを見ている。望遠鏡で遠くを見るということは、光が来るのに時間がかかるので、ずっと昔の宇宙を見てるということになります。

そういうことですね。何光年も先ということ。
望遠鏡で見られている一番遠い天体が、だいたい距離にして130億光年。つまりその光が届くのに130億年かかっているわけです。

すごい! 130億年前の輝きが今、地球に届いているということですね。
それが一番見えてる先ですね。今、宇宙の果てでわれわれが見えているところは、だいたいそのあたりです。

はい。
そうすると、その頃はどうなっているかというと、宇宙は大体137億年前に誕生したといわれているので、誕生してから7億年か8億年ぐらい経った時の天体が見えてるんです。それが何かというと、今の私たちが住んでいる星とか天の川宇宙みたいなものの、生まれたばかりの赤ちゃんの時代の銀河や星が見えつつあるわけです。

いわゆる宇宙の黎明期かもしれない光を見ているということ?
そうです。

じゃあ、その元がもう消えてる可能性もあるということですね。
そうですね。ですから、もっと先があるはずですね。もっと先に行くと、もっと過去にさかのぼる。それは今、例えば電波で調べたりしてるんですが、最終的には137億年前まではなかなか行けない。われわれが調べる手段がなくなってしまう。

はぁ。ただ間違いなく宇宙で存在してたはずですよね。
そうです。今の理論では、ビッグバンといってものすごくちっちゃな火のかたまりが巨大化して宇宙になったといわれているわけです。ですから、われわれが考えている宇宙の果てはず〜っと見ていくと、最終的にはその宇宙が生まれた瞬間、ビッグバンにたどり着く。

なるほど。
そして、その前がどうなっているのかが気になりますけれど。

気になる!
これは、科学ではわかりようがない。

分からない。だってビッグバンは、はじけて粉々になった星たちが宇宙空間に散らばったという…。
大爆発によってできた。

大爆発する前の核になっていた宇宙の集合体の大玉がどこかにいたわけですよね。
そこが、今の科学はおもしろくて、どうしてビッグバンが起こって宇宙がちっちゃな点から生まれたかというと、今考えられている一番有力な説は、宇宙が何もないところから生まれたといわれてるんです。

ゼロの無…。
無から生まれた。

何でですか?
そういう理論があって、どういうことかというと、宇宙が生まれる前の段階で、無といってもプラスマイナスがあってゼロになるわけで、実はよ〜く見るとプラスになったりマイナスになったり揺らぎ、波みたいな状態があって、そこから泡がはじけるみたいにしてビッグバンが起こって今の宇宙になったといわれている。

へぇ〜。
だけど、われわれは生まれた宇宙の中にいるので、どうしても宇宙の外側は見ることができない。宇宙の外側に何があるかは、われわれとしては調べようがない。

ということは、質問者の東村山市のミキちゃんは、ますます眠れないですね。
でも、こういうふうに考えたらいいと思うんです。今、考えている宇宙の果てはそういうことで、われわれが住んでいる宇宙のすべてなんですね。すべての一番先のところで、そういった意味では宇宙の果てはあるわけです、ビッグバンまでたどり着けば。

137億年前。
われわれが見ているすべては、われわれの宇宙に含まれているので、たとえば机の上にあった鉛筆を見て、机があって床があって家があって…というふうに見ていった時に、最終的にはわれわれは宇宙のすべてを見ることができる。それが宇宙の果てなんです。

じゃあ、137億年前に思いを馳せることによって、ある程度宇宙の果てを見えるということ。
そうですね。考えることができるということではないでしょうか。

そして、大きな望遠鏡からは、その130億光年前の光を見ることもできる。
そうです。

残りののり代は7億年という。
そうですねぇ。

そこに行くと、ビッグバンにたどり着く。
そのあたりはもう最先端の科学の研究ですね。

そうか。
ミキちゃんもそのうち科学者になって、そういったものがどうだったのか研究していただくといいなと思いますねぇ。いろいろなことがわかると思います。

そしたら、何年か後にラボに報告に来てもらいたいなぁ。
そうですね。

おもしろかった! もう時間。寺門さん、まだ質問が来てるんだけど、来週またよろしいですか?
はい、分かりました。

よろしくお願いします。今週のサイコーは、科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。
どうも。

ミキちゃん、6年生。眠れないでしょう。これで何となく決着するのもつまんないわけで…。宇宙の論争はいろいろしたほうがおもしろいと思うので、やがてあなたが大人になったら解明してもらいたいなと思っています。それからユウキ君、ひたちなか市、茨城で聴いてくれてありがとう。金星はとっても熱いので、なかなか今の技術では基地をつくるのは難しいことがわかりました。それでは来週も夕方5時半に会いましょう。バイバイ!