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「キッズの質問に答えます」(2)
コーチャー/寺門和夫さん(科学ジャーナリスト)
大村正樹&寺門和夫

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、もうすぐ夏休みだねっ。夏休みというと自由研究。今週もみんなからの質問に応えていきます。自由研究のヒントになるようなテーマがあればいいかなと思っています。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイコーも前回に続きましてキッズの質問に応えていただきます。科学ジャーナリストの寺門和夫さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

先週は僕ら、子どもみたいに語り合いましたけれど。楽しかったですねぇ、宇宙の話。

そうですね。


大村正樹

さぁ、今週も質問が届いています。国立市のユウジ君、小学校5年生、男の子。「アメリカの研究者が、人工細菌を開発しました。質問したいのは、このことは研究者の間で驚かれている研究だったんでしょうか。それとも、そろそろ成功するだろうと思われていたのでしょうか? また人工の生物をつくることにつながるんですか?人工細菌は自己増殖することに成功しました」。自己増殖、自分の力で増えることだね。ということで、人工細菌を開発することで、人工の生物をつくることになるのかどうか?

そうですね。考え方によっては人工の生物ということだと思います。これは、細菌の非常に権威のある科学雑誌に論文として出ました。ですから、きちんとした研究なんですね。


大村正樹

はい。

基本的にここで使われている方法は原理的にはそんなに難しくないので、やろうと思えばできるだろうけれど、実際につくるのはけっこう大変だといわれてた研究です。


大村正樹

人工細菌が、ですか?

そうです。


大村正樹

へぇ〜。

どういうふうにしてつくったかというと、ある細菌の遺伝子DNA、これを人工的につくっちゃう。実はDNAを合成してつくる装置がもうずい分前に開発されているので、そういったものは可能なんです。


大村正樹

はい。

ある細菌のDNAを全部解読して、どういう文字でつづられているかを調べて、今度は同じ文字で実際に人工的にDNAを機械でつくるわけです。


大村正樹

ええ。

そうやってつくった人工の遺伝子を別の細菌の体の中に入れる。そして、その細菌を培養したところ、ちゃんと細菌は生きていてだんだん分裂して増えていったという、そういった研究です。


大村正樹

イメージ的に細菌というと悪者ですが、そんなものを培養して何か意味があるのでしょうか?

細菌は悪者もあるんですが、いいこともたくさんしてるんです。


大村正樹

いい菌もある?

そうです。特に科学の研究の中では、たとえば新しい薬を開発したり、それから新しい治療法を見つけたり、いろいろな生命の仕組みを研究する上で細菌は非常に役に立っている。


大村正樹

そうか、そうか。病気を治すための新薬をつくる時に細菌などを使って実験するとか。

ですから、人工細菌の研究も最終的にはそういったところを目指しているわけです。


大村正樹

そうか。じゃあユウジ君の最後の「人工細菌は自己増殖することに成功しました」というのは、実験はそこまで進んでいるということですね。

そうです。そこまで結果的に行ったということです。ですから、自己増殖する生命をつくり上げたということです。


大村正樹

ということはユウジ君の質問で、ゆくゆく人工の生物をつくることにつながっていくのかどうか。

まだできているのは遺伝子だけで、しかも完全な遺伝子ではなくてある部分ですけれど、これから完全な遺伝子をつくることもできるでしょうし、今度は細菌をつくっている体もつくらないと人工細菌にならないので、そういった研究もしなければいけません。そういった意味では、まだ人工生命をつくる研究の一番最初のところに来ただけというふうにも考えられます。


大村正樹

なるほど。クローン技術とはまた違うんですね?

クローン技術とは、ちょっと違います。あくまで人工的にDNAをつくって入れ込んで、いわゆる細菌を動かすということなので、クローン技術とはちょっと違うと思いますね。むしろ、生物学の研究の分野では非常にポピュラーになっている遺伝子を操作する技術、こちらに近いと思います。


大村正樹

遺伝子組換え食品とかジャガイモとか野菜、ああいうことですかねぇ。

そうですね。遺伝子を操作することは、そういうことに使われています。僕の考えですが、遺伝子操作でつくった食品は、自然の食品とそんなに違わなくて安全性は全然問題ないと思っています。ただ一部では危ないんじゃないかという考え方もありますけれど。でも現実的には遺伝子組換えの食品は世の中にたくさんあるし、今では新しく開発される薬はすべて遺伝子組換え技術を使ってつくられているわけです。そういった意味では、非常に役に立っている技術です。ですから、この人工細菌の技術も、そういった技術の応用のひとつと考えたらいいんじゃないかと思いますね。


大村正樹

なるほど。続きまして、相模原市のキヨシ君、小学校3年生です。夏休みを前にしていい質問だねぇ。「横浜八景島でシロイルカを見たり、普通のイルカに触ったりしました。トレーナーにとてもなついていて言葉がわかるようでしたし、いっせいに泣いたりして人の話がわかっているようでした。イルカは頭がいいとか言葉をしゃべるといいますが、どれぐらいわかっているんですか?」−あぁ、確かに。「イヌやサルも頭がいいといいますけれど、イルカと比べてどっちが頭がいいですか。人間のほうがどれぐらい頭がいいですか?」。これまた子どもらしい、なかなかね。

そうですね。


大村正樹

イルカは頭がいい。どうでしょうか?

実際、イルカは知能が高いといわれています。まずひとつ、人間の体重と脳の重さを比較した時に、ほかの動物で一番脳の重さが重いのはイルカです。


大村正樹

へぇ〜。

ですから、そういった意味では、脳がある程度やはり発達してるということが言えますね。


大村正樹

人間よりも、ですか?

いえ、そんなことはない。


大村正樹

やっぱり人間が、体の中では一番バランス的に脳が重い。

そうです。結局、イルカの知能は何かといった場合、キヨシ君の質問にもありましたけれど、ある程度話すことができる、人間と意思の疎通をすることができるという能力があるのは事実です。


大村正樹

ふ〜ん。

ですから、実際にイルカたちがトレーナーの人のいっていることとか、身振り手振りで何か指示したことの中身をちゃんと理解して反応しているはずです。


大村正樹

へぇ〜。振りじゃなくて、言葉もわかるということですか?

たぶん、言葉もわかると思います。それは、イルカたち同士でも当然、会話をしたりしゃべったりしているわけです。ですから、そういった音で聞きわけることをたぶんやってますので、人間の言葉というか声をある程度理解していると考えられます。


大村正樹

イルカの調教の方って、アメリカへ行ったらきっと英語をしゃべったりするんでしょうけど、日本語と英語とかわかるんですか?

イルカはわれわれが知っている言葉の意味を理解してるんじゃなくて、おそらく音として理解してる。


大村正樹

イルカのホイッスルみたいな、笛で。

そうですね。それと、いわれたことに対してどういう結果が起こるかということとの連想で、人間が発してる言葉がどういう意味かをたぶん理解してるんだと思います。


大村正樹

そうすると、日光のサル軍団と似てるじゃないですか?

チンバンジーもそうですが、ある程度の学習能力はあるんですね。これは間違いなくあると思います。ただし、人間がしゃべっている時には、言葉の話になりますがいろいろな言葉の意味を考えて、そして文章を頭の中でつくって会話してますね。非常に難しいことも人間は考えて言葉に表現したりすることができますが、さすがにこれはチンパンジーでもイルカでもまだできない。


大村正樹

なるほど。

ですから、ある動作をするとエサがもらえるとか、ある動作をしたら1回グルッと回って来るとか、そのくらいのことについては十分彼らも理解可能です。それは、ちゃんと学習で覚えることができる。


大村正樹

体重に対して脳の重さのバランスって興味深くて、人間がやっぱりバランス的に一番脳みそが重い。

そうです。重いですね。


大村正樹

次の動物はイルカ。

イルカです。


大村正樹

あとはどんな動物が?

たぶん、あとはチンパンジーが来ると思います。ちょっとその後の順番は覚えてませんけれど。


大村正樹

脳があるのは哺乳類だけ?

哺乳類というか、は虫類とか昔の恐竜にしても脳はあるんですが…。だんだん小さくなって、しかも人間みたいに大脳が大きく進化してるようにはなってないわけです。生きるための神経の器官として、もともと脳は発生してますので。


大村正樹

じゃあ、すっごい頭のでっかいイルカが生まれたら、人間以上に頭がいい可能性があるかもしれない。秘めてる可能性もあるということですかねぇ(笑)。

そのへんはどうなるんでしょうね。わからないですけどねぇ。


大村正樹

あっ、終わっちゃった。もう時間だ。やっぱりキッズの質問はおもしろいなぁ。また質問が溜まったら、寺門さん、来ていただいていいですか?

はい、いつでもどうぞ。


大村正樹

2週にわたってお送りしましたキッズの質問、今週のサイコーも科学ジャーナリストの寺門和夫さんでした。ありがとうございました。

どうも失礼しました。


大村正樹

う〜ん、結局イルカの頭のよさは分かったんですが、人間に比べると劣るということも分かった。今週もキッズの質問に応えていきましたけれど、ほんとに寺門さんって何でも知ってるなぁと思いました。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。そして、もうすぐ夏休み。バイバイ!