キッズのみんな、こんにちは。夏休みだねぇ。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。いやいや夏休みだねぇ、ほんとに。でも暑いねぇ!みんなも熱中症に気をつけてね。 さぁ今週のテーマは「はやぶさ」という7年も宇宙に行って帰ってきたという日本の小惑星探査機。ということで、「はやぶさ」っていったい何なの? これ、自由研究にぴったりです。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。
夏休みに入って最初のサイコーは、有人宇宙システムの長谷川洋一さんです。こんにちは。
こんにちは。
ご無沙汰しています。
こちらこそ(笑)。
冬だったかな? 2月に来ていただいて。あの時は宇宙飛行士の若田光一さんが、長谷川さんから託されたサクラの種を“花伝説”ということで宇宙に滞在して…。
ええ。
各地に植えたんですよね。
植えました。
本題。先月のニュースで「はやぶさ」という小惑星探査機が、7年もかけて戻ってきたじゃないですか!
はい。
新聞とかニュースとか載ってましたから、夏休みの自由研究にどうかなと思って長谷川さんをお招きしたんですけれど。
そうですね。みなさん、ぜひ研究して書いて欲しいですねぇ。
「はやぶさ」は日本の惑星探査機ですよね。
はい。
イメージ的には大きさとかどんなものですか?
本体がだいたい冷蔵庫ぐらいと思っていただければいいですけれど、翼がワッと広がって6メーター程度あるんですね。それで、形もまぁハヤブサみたいな格好をしてるんですよ。
へぇ〜。
翼と私がいいましたのは、太陽電池の翼ですね。
なるほど。
惑星探査機は、たいていついてますよね。その翼が冷蔵庫の両側にワッと広がっていて、そして足が1本出てるんです。
微妙だなぁ。
ハッハハハ。
冷蔵庫から翼がはえてて、1本足で立っている。
そうですね。
なるほど。それが小惑星の探査機で、行った星は?
名前がイトカワというんです。
イトカワ、日本語ですね。
日本語っぽいですねぇ。何でかといいますと、糸川先生という方が大昔…。
宇宙開発の生みの親といわれた人!
そうです。日本の宇宙開発の父、あの糸川英夫先生のことなんですよ。それでカタカナでイトカワという名前がつけられてます。
「はやぶさ」はイトカワに行った。
そうです。
イトカワはどこにあるんですか?
だいたい3億キロとよく新聞に書かれているかと思いますけれど、もうちょっとわかりやすくいうと地球と火星の間ぐらいを行ったり来たりしている。
地球と火星の間の軌道を。じゃあ、火星よりも地球に近づいたり、火星よりも遠くへ行ったりということですか?
そうですね。地球の内側に入ったり火星の外側へ出たりという感じで、一番遠いところでだいたい3億キロぐらいになりますね。
そこにわざわざ日本の「はやぶさ」が行って、長谷川さんの手元の資料だと7年も宇宙を旅して帰ってきたって!
ハッハハハハ。
何でそこに7年もかけて行くんですか?
まず遠かったというのと、すごくゆっくりゆっくり行ったんですね。
ゆっくり?
これは、ちょっと後でも説明しますが、特別なエンジンだったんですね。
へぇ〜。
ロケットでブーンと行くんではなくて、非常に遠いのでイオンエンジンという。
ジャスコのエンジンとか(笑)。
ハハハ、そのイオンじゃないです。イオンはもしかすると小学校では習わないかもしれませんねぇ。
マイナスイオンとかいいますよね、癒し系の。
よくいいますよね、マイナスイオン。ああいったイオンで進む特別なエンジンだったんです。ですから、ゆっくりゆっくりと、本当にゆっくりゆっくりゆっくりスピードを出していくというタイプだったんです。
イオンからエネルギーが出てるんですか?
はい。これは4つのエンジンがあったんですが、イオンエンジンは火を噴いて飛ぶエンジンと違って、本当にイオンというもののガスの原子みたいなもの。原子よりもっと小さいようなもので、電気を帯びた原子。この粒々を噴き出しながら飛ぶので、力が弱い。
ほぉ〜。
そのかわり、すごく省エネなんです。
そうか、無重力だからあまりハイパワーは必要ないということですね、宇宙空間。
そうですね。それに7年かけて行けばいいわけですから、ゆっくりゆっくりスピードが出ればいい。
そうか、ガソリンエンジンを使うともっと早く到達できたけれど、イオンエンジンで行ったからゆっくりと省エネ、エコで。
ガソリンだと持たないんですね、すぐなくなっちゃうから。
だから逆に軽量化できたとか、いろいろなメリットがあるわけで。
限られた冷蔵庫の大きさの中に詰め込むには、この方法が一番よかったということです。
その「はやぶさ」のすごいところは、行って帰ってきたというのがやっぱりすごいことですか?
そうですね。たとえば「アポロ」は月に着陸して、またそこから地球まで帰ってきましたね。月以外にそういうことをやったのは、実はこの「はやぶさ」が世界で初めてなんです。
えっ、うそ! だって、火星探査機とか話題になったじゃないですか。あれは火星でゴミになっちゃうということですか?
そのまま帰って来ないんですよ。
うそ! じゃあ、月以外で宇宙へ行って帰ってきたのは「はやぶさ」だけ!?
そうなんです。
日本の「はやぶさ」だけ。
そうです!
自由研究!
みんな、書いてねぇ(笑)。
すごい! ちょっと待って。イメージで「はやぶさ」って、鹿児島の大隅半島の内之浦から飛び立った?
そうです。
僕ね、鹿児島にかつていたから、すごい興味あったの。2003年ワールドカップの翌年だったんですよ。
なるほど(笑)。
2003年、イラクとアメリカがいろいろやっている時。その時はロケットでしょ。
ええ。
じゃあ、「はやぶさ」がイトカワに旅立つ時はどうやって旅立つんですか?
それが、まさにハヤブサみたいなんですよ。
何でですか?
ハヤブサってシャーッと飛んでいって、そして獲物をパッと足でつかんで、また戻ってきます。これと同じように今回のこの「はやぶさ」も、イトカワにスーッと降り立って、イトカワの砂をパッとつかんでそのまますぐ飛び立ってきたんです。
“タッチアンドゴー”ですか?
あぁ“タッチアンドゴー”、そういう感じですね。
ちょっと待って(笑)。全然知らなかった。何? 一瞬しかいなかったんですか?
ええ。
じゃあ、本当に7年間宇宙にいたんですね。
ええ。
数ヵ月間イトカワに滞在したんじゃなくて、タッチして帰ってきた。
ええ。もう30分とちょっとしかいなかった。
子どもの時の鬼ごっこ、缶けりみたいな感じですかねぇ。
パッと触って逃げる(笑)。
ハハハハ。3年半かけて片道、で3年半かけて戻ってきたというイメージですか?
正確には2年とちょっとかけてたどり着いて、そうして帰りにちょっと時間がかかっちゃった。行きと帰り、いろいろな位置関係がありますから。
行きは2年ちょっと、帰りは5年弱ということですか?
そうですね。
すご〜い!「行きはよいよい、帰りはこわい♪」、『通りゃんせ』みたいな感じですねぇ。
いろいろとこわれたりして、よく帰ってきましたね、ほんとに!
長谷川さんのメモに「幾多の故障を乗り越えて生還」と書いてありますけれど。
もう大変です。途中で気を失ったり…。
「はやぶさ」が?
ええ。通信が取れなくなっちゃって、「おい、大丈夫か、大丈夫か?」とやったら返事がやっとあったとか。こんなことがあって、燃料はもれちゃうわ、電池はなくなっちゃうわ。
イオンのエネルギーが?
そうです。イオンエネルギーのエンジンも4つあったんですが、3つこわれちゃった。
1個だけで?
1個だけではとてもとても帰って来れないだろうといわれてたんですが、ここは日本の科学者が知恵を絞って、こわれた2つのエンジンをつなげるようにして1つのエンジンにしたんです。
ちょっと待ってください。「はやぶさ」は人が乗ってないんですよね。
ええ。
地球上から遠隔操作でコントロールして、2個のこわれたエンジンを合体させて1個の動くエンジンに改造したということですか?
改造というか、地上から指令を送ったんですね。こういうふうに動きなさいと。
人が乗ってないのに?
乗ってないのに、です。
3億キロも離れたところで!
そうですね。相模原からはるばると。
すご〜い! それで4個のうち3個こわれたけど、1個復帰して2個で。
そうですね。2個になって、何とかそのおかげで地球に戻って来られた。
だけど、そうやって世界の宇宙開発の中で、遠くへ飛ばしたもののトラブルを解消できず宇宙の藻くずになってしまったものっていっぱいあるんですよね。
それのほうがすごく多いですよね。
それで帰ってきたのは、やっぱり快挙ですか?
それは、あきらめずに頑張ったことも快挙ですし、もう日本として自慢できることだと思いますよ。
日本人の子どもたちも、夏の自由研究だけじゃなくて日々の勉強もあきらめずに最後まで成し遂げれば結果が出るということで(笑)。
そういうことですね(笑)。
2人ともおやじのキャラになってますね(笑)。
アッハハハハ。
すみません。もうちょっと時間ないですねぇ。長谷川さん、「はやぶさ」はおみやげを持ってきたんですよね。
そうですねぇ。これ次回かな?
はい。じゃあ、また来週よろしくお願いします。
こちらこそ。
今週のサイコーは、有人宇宙システムの長谷川洋一さんでした。ありがとうございました。
ありがとうございました。
さぁ、この「はやぶさ」の持ち帰ったおみやげを、実は入ってたカプセルを展示してるんですって。7月30日31日は相模原市立博物館、8月15日16日は丸の内オアゾということで、興味のあるキッズはぜひ見てください。それでは、キッズのみんなも楽しい夏休みを過ごしてね。バイバイ!