
キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。もう7月最後、明日から8月。何か夏休みに入ると「7月はまだまだ余裕だぜ」と思うけど、8月に入ると「えっ! 夏休み、あと4週間…」とか思ったりしない? 大村さんは、7月の夏休みをものすごく楽しんだんですけどねっ。だらだら過ごさずに充実した時間をみなさん過ごしてください。さぁ、今週も「はやぶさ」。7年も宇宙に行って、小惑星イトカワに“タッチアンドゴー”した「はやぶさ」。おみやげを持ってきた。そのおみやげの中に何が入っているの!? お知らせの後、サイコーの登場で〜す。

今週のサイコーも、有人宇宙システムの長谷川洋一さんです。こんにちは。
こんにちは。

長谷川メモによりますと、「イトカワに着陸した『はやぶさ』、カプセルを持ち帰った。そのカプセルの秘密、そして中身は?」って。
はい。

“タッチアンドゴー”した「はやぶさ」なんだけど、カプセルの中に何か入れてきたということですか?
そうですねぇ。まずカプセル、先週から「はやぶさ」の形は翼を広げて足が1本といってますが、その足に秘密があって、ハヤブサは足でパッと獲物をとりますよね。

ええ。
この足というのは、冷蔵庫みたいな本体から出ているサンプルをとるための足なんですよ。

イトカワにあるものを採取するための足?
そうなんです。

引っかけるようなものですか?
それが、吸い込むような形になっている。

掃除機の口みたいな感じですか?
ちょっと複雑な格好をしていて掃除機みたいになっているんですけれど、実は鉄砲みたいな弾丸をバキューンバキューンと撃つんですね。そうすると、砂が舞い上がるじゃないですか。

ええ。
砂が舞い上がったところでその足の筒の中を通って、奥にあるカプセルのところまで砂が舞い上がっていく。

はぁ〜。
空気がないので、掃除機は使えないんですよ。

なるほどね。
ですから、この方法でやろうとしてるんですね。

イメージ的にはお母さんが布団を干してて、布団たたきでパンパンとやるとほこりが出て、そのたたいたほこりを持って帰ったという。
自然に筒の中に入っていく。

なるほど。それはどれぐらいの大きさの筒に、どれぐらいのものが入るんですか?
人の足よりちょっと太いぐらいですが、カプセルは大きさ、ひとかかえくらいですね。それで、サンプルは小惑星の砂です。

小惑星の砂。
イトカワにバキューンと撃って、その反動で舞い上がってくる砂を何でもいいからその中に持ち帰って来ようということです。

月以外から宇宙へ行ったもので生還したのが「はやぶさ」だけということは、昔「アポロ」が月へ行って月の石を持ち帰って来ましたね。じゃあ、それ以外の宇宙空間の物質が地球上に持ち帰られたのは、もしかしたらイトカワのものが初めてですか?
実は、着陸せずに持って帰って来たというのがあるんですよ。これはスイセイです。スイセイの近くを通りかかって、スイセイのモヤモヤとしたものを持って帰って来たという外国の探査機はあるんですけれど。

むちゃくちゃ熱い星ですね。
スイセイってボーッとしている…。

あっ、スイセイってハレー彗星みたいな彗星。
ほうき星。それはあるんですが着陸してませんから。ちゃんと着陸して持って帰って来たのは、このイトカワが世界で2番目。月以外では初めて。

月以外の宇宙の地べたのものを持って来たのは、初めて。
着陸して帰って来たのは初めて。

すごい、すご〜い!
それで、イトカワが何でそんなにまでして小惑星の砂を持って帰ってくる意味があるのか。

はい。
イトカワのような小惑星は、太陽系が誕生した頃、地球や金星などいろいろな惑星が誕生した46億年ぐらい前の姿をそのまま留めてるんですね。

へぇ〜。
ですから、そこで持ち帰って来たものは大昔の太陽系、できた頃の太陽系の姿だと、こういうふうな研究ができるんですよ。

えっ〜! ちょっと待ってください。月は何年前?
月も同じぐらいですね。

月も同じぐらい。
もうちょっと新しいですけれど。もしもイトカワから持ち帰って来た砂などに、生命の元とか水みたいなものがあったら非常におもしろいじゃないですか。

うん。
これが今回の研究の目的でもあるんです。

それは今、日本国内にあるということですよね。
そうです。カプセルの着陸が今年の6月13日、オーストラリアに落ちましたね。それをもう持ち帰って来てまして、今、中を開けて分析しているところです。

まだ結果が出ないんですか?
ええ、残念ながらまだ今日は結果を申し上げられないんですが。砂がたくさん入っていればよかったんですけれど、少なくともたくさんの砂は入ってなかったですね。

そうなんですか。
実はちょっと失敗がありまして、ひとつだけ。さっき、私が鉄砲の弾丸みたいなものをバキューンと撃って砂を舞い上げて、それで持って帰って来るといいましたが…。

はい。
どうもバキューンと鉄砲の弾が出なかったみたいですね。

ダメじゃないですか、それ。
どうも、それがうまくいかなかったみたいです。ただ惑星イトカワに“タッチアンドゴー”してるんで、その時の勢いで砂が舞い上がったんじゃないかといわれている。ですから、砂が少し入っている可能性があります。

すみません。僕はてっきりボーンと撃った瞬間にバッと舞い上がって、だいたいバスケットボールとかバレーボールぐらいの大きさのガッツリとしたものを持って帰って来たと思ってたんですが、そうじゃなくて…。
実は、それは全然ダメでしたね。

どんな感じ?
もうほんとに目に見えないぐらい小さな粒々が100個ぐらい。

ちょっと待って。目に見えない粒々が100個ぐらいって! まったく肉眼じゃ分からない?
まぁ科学者ですから、小っちゃいものでも分析できるわけですけれど、ただそれぐらいしか取れなかった。

日立ハイテクの電子顕微鏡があれば、どうですか?
そうですね。それで分析すればずいぶん見えると思います。

そうなんですか。
ただ、それがほんとにイトカワの砂なのか、それとも地上で紛れ込んだほこりなのか、これもちゃんと分析してみないとわからない。まだちょっと、みんなの夏休みが終わる頃ぐらいまで待たないと結果が発表されないかもしれませんね。

そのカプセルは、イトカワに“タッチアンドゴー”した時に密閉して降りてきたわけじゃないということですか?
密閉だったんですが、その後地上で開けるわけですから、小さな粒々がどこで混じるかわからないわけですね。ですから、はっきりしたことをいうにはちゃんと分析しないとわからない。

ワォ〜! これも自由研究ですねぇ。
ハハハハ。

夏休みが終わる頃に、「実はイトカワから持ち帰ったカプセルからは、オーストラリアの砂が採取されました」となる可能性もあるということですね(笑)。
そうならないといいんですけどねぇ(笑)。

そのほか長谷川メモには、「88万人の名前を載せて」と書いてある。
そうですね。これは科学というより夢ですが、イトカワに実は小さな野球のボールのようなターゲットマーカーというものを置いてきた。

イトカワに?
そうです。「はやぶさ」がイトカワに着陸するために、目印が必要だったんですね。それで、その目印を先に野球のボールのようなものをイトカワに落としたんです。

えっ、「はやぶさ」が?
「はやぶさ」が自分で。

着陸する前に自分で落として、それをターゲットに着陸しようと。
そうです。「あそこだ、あそこだ!」と。

上空から鳥がフンを落っことして、そのフンを目指すようなイメージ。
私が野球のボールと言いましたけれど、そのターゲットマーカーというものの内側に88万人分の名前が掘り込まれたものが入っているんです。

それはデータじゃなくて、ちゃんと彫り込んであるアナログなものが入っているんですか?
そうですね。これは印刷です。

ほぉ〜。
コンピュータのチップの印刷。日本はすごい技術を持ってるんですが、ものすごく小さな字を書く技術ですね。これでちゃんと印刷された多くの人々の名前、これが今も小惑星イトカワの上にあるということです。

すごいじゃないですか! 日本から飛び立ったということは、日本人が主体ですか?
世界中から集めましたので、日本人だけじゃないです。

長谷川洋一という名前は?
私は登録しなかったんです(笑)。

これだけやってるんだから、名前入れれば。僕もやったほうがいいですよねぇ。
そうですねぇ。

まだ7月だけど、いきなり夏休みの自由研究にぴったりのお話が聞けたなぁ。ありがとうございました。長谷川さん、また来てくださいね。
はい、ありがとうございます。

今週のサイコーは、有人宇宙システムの長谷川洋一さんでした。

今日お話があった「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルを包んでいたシールドというものが、8月2日から3日はつくばの宇宙センターで、15日16日は丸の内オアゾで展示されます。7年間宇宙へ行ったものが展示されるので、興味のあるキッズはぜひ見に行ってください。それでは7月も終わりだねっ。明日から8月ということで、夏休みも本番です。キッズのみんなも楽しい夏休みを過ごしてね。バイバイ!