過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分
「細胞の話」(2)
コーチャー/森田由子(ゆうこ)さん
(日本科学未来館・科学コミュニケーター)
大村正樹&森田由子

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、夏休みエンジョイしてるかなぁ。もうお盆だねぇ。お盆というとおじいちゃんおばあちゃんに会うかもしれないけれど、もしみんなのおじいちゃんおばあちゃんが病気になっていたら、ひょっとしたらiPS細胞によって治るかもしれないという話です。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイコーも、日本科学未来館・科学コミュニケーターの森田由子さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

待ち遠しかったですよ。あそこまで教えていただいて、やっぱりiPS細胞ってすごく夢があって…。

はい。


大村正樹

僕はもう40代でしょ。下手したら、もうすぐ何かの不治の病になっちゃうかもしれない。その時にiPS細胞によって僕の病気が治るかどうかという。そんな瀬戸際の方っていっぱいいらっしゃると思うんですよ。

そうだと思います。


大村正樹

キッズのおじいちゃんが、とか、あと僕らの世代のお父さんお母さんが、とかね。待ち遠しくて、早くこれを医療に活かしてもらいたい人が多いと思うんですけれど。

はい。


大村正樹

例えばこの細胞、人間の体からは容易に抽出はできるけれど、iPSになると非常にレア、珍しいということですね。

そうですね。


大村正樹

でも、そうやって抽出したものが医療の現場で活かされるんじゃないかというところまでうかがったんですが、例えばどんな病気に効果がありそうですか?

例えば心筋梗塞で心臓の働きが弱ってしまっている方は多いと思いますが、そうした時にiPSを使ってどういうことができるかということがあって、iPS細胞を心臓の筋肉を作る細胞にまず作り変えてあげる。で、その細胞を移植してあげることで、心臓の働きを少し補助する、助けてあげるということで・・・。


大村正樹

細胞を注射するとか、医療行為としてはそういうことですか?

いくつか方法があって、細胞をそのまま注射してしまう。そのままといっても、きちんと心臓にくっつくように処理してますが。それから、少し大きめの細胞のお団子みたいなものを作って、それを注射するという方法もあります。


大村正樹

はい。

もうひとつは細胞をシート状に育てて、そのシートを重ねたものをパッチをあてるように心臓にあててあげる。そういう方法もあります。


大村正樹

えっ〜! カットバンみたいな感じですか?

そうですね(笑)。心臓の筋肉に育てた状態で、働きが弱ったところに当て布をしてあげるような。


大村正樹

何かイメージでは細胞を心臓に注射するのはチクッと痛いと思ったけど、心臓にそっとシールを貼ってあげる手法で心筋梗塞を防ぐことも可能ということですか?

防ぐというよりは、一度起こってしまうとそこの筋肉細胞が一部死んでしまい心臓全体の働きが悪くなってしまうので、動きが悪くなったところに、例えば心筋細胞を注射したり心臓のシートを貼ってあげたりすると、そこがちゃんとまた動くようになる。


大村正樹

でも心筋梗塞って生還した人はいいけれど、「あっ、来た」と思ってそのまま死んでしまう人もいますね。その人は手遅れですよね。

そこまでいくと…。


大村正樹

では、何とか生還した人が、次に起こらないためにそういう治療方法もあるということですね。

そうです。死なないまでも、やっぱり心臓の動きが悪くなってしまうと日常生活、階段を上がるのも苦しかったりとか、心臓は要(カナメ)ですからいろいろなところに影響が出てしまう。幸い助かった方でも、もっとよりよく生きるためにそういう治療法があると非常にいいということになります。


大村正樹

週明けたら、心電図をとりに行こう。だって、そこで心臓の働きがちょっと弱ってるといわれたら、その可能性があるということですよね。

まぁ、そこまで心配しなくても大丈夫だと思いますけれど(笑)。


大村正樹

大丈夫ですかぁ。でも、気をつけよう。

ほかでも血管で心臓の表面に血がちゃんと送られなければいけないということもありますから、筋肉だけサポートしてもすべてがよくなるわけではないんですけれど。


大村正樹

へぇ〜。そのiPS細胞をいわゆる培養するようなものですよね。抽出してそれを育て上げる。その時に、「あなた、この細胞を心筋梗塞のために働け!」という指令を送らなくちゃいけないわけでしょ?

そうですね。


大村正樹

これはどうやってやってるんですか?

これは、iPS細胞を作るのとはまた別に研究している方がいろいろいらっしゃる。例えば、特別なたん白質を心臓の場合には、この濃さでかけてあげると心筋細胞になりますとか、肝臓の場合にはこういう物質をかけてあげましょうということで、いろいろな薬品やたん白質を働かせてあげることで育て分けることができる。


大村正樹

へぇ〜、すごいですねぇ。これは医療分野の話ですかねぇ。もう科学全体の話ですよね、きっと。

そうですね。科学全体の話ですね。


大村正樹

これを日本の京都大学の山中先生が率先してやってるということですね。

そうです。iPS細胞を作ったのが山中先生です。再分化−育て分けといいましたが、“再び分けて化けさせる”という研究分野があるんですが…。


大村正樹

再分化。

それはまたほかの人たちがずっと何十年も歴史のある研究でやってらして、これも実は日本人で浅島誠先生が非常に詳しい。最初にカエルやイモリで研究なさってるんですが、いろいろな心臓を作ったり肝臓を作ったり、そういう研究をやってらっしゃいます。


大村正樹

そうか。例えば病気でアルツハイマー、認知症とかガン…。やっぱり日本人の死因の1位はガンじゃないですか。そこにもやがて役立つ可能性もあるわけですよね。

そうですね。


大村正樹

例えば事故で光を失った人、失明した人にも可能性はあるんですか?

失われたところを戻すような医療のことを再生治療というんですが、自分の細胞を使って、例えば目を事故で傷めてしまった方に目に関するような網膜の細胞とか角膜の細胞を、自分の体の中から作り出したものを移植すれば拒絶反応が起こらないので、うまく育てて移植することができればもしかしたら治せるかもしれない。


ただ、やっぱり人間の体は複雑なので、なかなか…。すぐに「目が作れましたよ」とは、フラスコの中に目ができましたというわけにはいかないので、それをどうやって立体的な臓器を作るとか、どうやって移植したらもともと残ってるところにうまくつながるのか、そういう研究が必要なんですね。


大村正樹

体の部位や臓器そのものの再生はもうちょっと研究に時間がかかるかもしれないけれど、いわゆる心筋梗塞やガンの治療に関しては、ひょっとしたら近い将来に実現するかもしれないということですね。

そこのところを臨床にいけるかどうか、動物実験では、例えば心臓の筋肉の細胞を移植することをやってる方もいますので。ただ動物実験から人間に移す時には、確実に安全じゃないと困るので、そのための基準作りを山中先生もそうですし、ほかのところも今その研究もしているところです。


大村正樹

そこをうかがいたかったです。だって、森田さんがここまで語ってらっしゃるから、明日にでもその治療方法で多くの人を救ってあげてもいいんじゃないかと思ったんですけれど、やっぱり臨床実験、動物から始まって人間にというところで、まだ人間までいってないということですか?

ちょっと、そこにハードルがあります。


大村正樹

へぇ〜。

先ほどガンという話が出たんですが、ガン自体をiPS細胞で治すというよりは、ガンの発生の仕組みについてiPS細胞を研究することはあると思いますが、iPS細胞は役割分担が決まっていないので、そのまま体の中に戻すとガンのようになってしまう。


大村正樹

う〜ん。

なのでiPS細胞をどうやってうまく育てあげるか、それから体の中に入れた時にガンのようになってしまわないためにどうしたらいいのか、というところを研究しないと、やっぱり人に使うにはちょっと危ない。治療してるつもりが別の病気を引き起こしてしまうと大変なので、その研究がどうしても必要です。


大村正樹

なるほど。すっごい勉強になった。もう時間。2週、早かったなぁ。これを理科の自由研究に考えるキッズ、もしできたら僕に見せて! ということで、今週のサイコーは、日本科学未来館・科学コミュニケーターの森田由子さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

ものすごくいい話だけど、やっぱり実用化には時間がかかっちゃうのかもしれないねぇ。今のところ大村さんは健康だから、急いでiPS細胞で何か治してというのはないけれど。ひとついうと身長がもうちょっと欲しかったと思ってんだけど、身長とか体の一部みたいなものの実現はものすごく先だというから(笑)。あきらめて、「日々健康に頑張って生きよう!」ということで、みんな、どうだったかな?それじゃまた夕方、来週5時半に会いましょう。水の事故に注意してね。バイバイ!