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「行動分析学」(1)
コーチャー/島宗 理(シマムネ サトル)さん(法政大学)
大村正樹&島宗 理

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回はいつもとちょっと違った分野の科学に迫っていきますよ。その名も、行動分析学。行動の科学とも呼ばれているということで、いったい、どうやって人間の行動を科学するんでしょうか。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

さぁ、今週のサイコーは、法政大学の島宗 理(シマムネ サトル)先生です。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

先生! 僕、法政の生徒でした。すみません(笑)。法政大学の社会学部だったんですが、先生は何学部ですか?

文学部です。


大村正樹

文学部の何学科ですか?

心理学科です。


大村正樹

心理学科。今、僕の心理を読まれちゃってるわけですか?

えぇ〜と、だいたいわかるんですけれど。


大村正樹

えっ! 今、何を考えているのか、当ててくださいよ。

いえ、そういうのはわからないんですけれど。


大村正樹

そうですか。先生は、光文社から『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』という本を出されています。「人間行動のなぜを読み解く」と書いてある。

はい。


大村正樹

「人は、なぜ血液型で性格を判断しようとするのか?」、「人は、なぜ傘を置き忘れるのか?」。「人は、なぜ同じ過ちを繰り返すのか?」−ほんとですよね。「人は、なぜ公衆マナーを守れなくなったのか?」。は〜っ、身につまされます。

ハハハ。


大村正樹

ということを、先生は本にしたためてらっしゃる。

はい、そうです。


大村正樹

先生は、もともとこの行動分析学をやってらっしゃる方?

そうです。それが私の専門です。


大村正樹

行動分析学はどんな学問ですか?

心理学の一種です。心理学は、心という見えないものを相手にしますけれど、行動分析学は見える行動を相手にして、どうしてこの人はこういうことをするのかなぁと考えていくような学問です。


大村正樹

じゃあ、無言で向き合っているのではなくて、僕のさっきからの動きを見て分析されてたわけですね。

まぁ、そういう観察が大事になってきます。


大村正樹

へぇ〜。怖〜い! 怖いサイコーだ。

ハハハハ。


大村正樹

例えば、ここに書いてある「人は、なぜ傘を置き忘れるのか?」。これも行動分析学で答が出てくるんですか?

そうですね。この本では、どういう理由があるかな?と推測していく方法を解説してるんです。


大村正樹

僕、傘忘れます。

私も忘れます(笑)。


大村正樹

何でですか?

傘を忘れるのはいろんなことがあると思うんですが、逆に忘れない時はどういう時かと行動分析では考えるんですね。


大村正樹

はい。

そうすると、例えば店を出てからとか、電車を下りてから雨が降っている場合は傘を忘れませんよね。


大村正樹

もちろんですよ。

ということは、傘を持っていく行動は雨をよけるためにあるわけだから、その時には傘を忘れない。だけど、雨が降ってなくて傘がいらない時は、傘が重たいから持って歩くと逆に手間になる。


大村正樹

はい。

なので、傘を忘れるという心に注目すると訳がわからなくなるけれど、傘を持ってくる行動が何で起こるのかなぁと考えると、持ってこない行動は雨が降ってないからだと読み取れる。


大村正樹

そりゃそうですよね。家を出る時には雨が降ってるから傘を持っていく。だけど学校から帰る時に雨が降ってなかったら、げた箱の横の傘立てに忘れちゃうということですよね、降ってなければ。

そうです。


大村正樹

降ってたら、当然さして帰りますよね。

なので逆にいうと、雨が降ってないのに傘を持ってこれるなんて、すごいことなんですよ。


大村正樹

あぁ、そうですか。

そのためにはいったいどういう手がかりがあれば、すごい行動が引き起こされるのか、ということを考えていく。


大村正樹

あっ、ここからが重要なんですね。

はい。


大村正樹

だって、小学校に傘を忘れても次の日に持って帰ればいいわけですが、僕ら大人は、これがまた飲み屋に忘れちゃったりとか。これ重要ですよ、どうすればいいんですか?

例えば500円の傘だったら飲み屋さんに忘れても「いいや、また新しいのを買えば」となりますけれど。


大村正樹

僕、悔しい、それでも。

ほんとに!?(笑)


大村正樹

3回まで使ってなかったら、悔しい(笑)。

そしたらば、いろいろなことを考えるんです。すごい極端な例ですが、飲み屋さんへ行って傘を置いた時に、傘は傘置きに置かないで自分の足元に置いて、かつ傘をひもで自分の体に引っぱっとけば絶対に忘れないですね。


大村正樹

忘れない!

そういう極端な例を考えていきます。


大村正樹

はい。

物理的な拘束があれば手がかりがあるからわかりますよね。それでうまくいけばいいし、でもカッコ悪いですよね、そんなことをしたら。


変人だと思われちゃうから。そしたらそれをもうちょっと見えないようにしていこうということで、傘の柄をカバンのところに引っかける。カバンを取れば傘が動くから、傘に気付く。


大村正樹

はい。

こういうふうにしてグラデーションというか、いろいろ強い手がかりから弱い手がかりまでいろいろ考えていって…。


大村正樹

段階的に。

自分が一番満足できるところはどの辺かなと探すと、自分の工夫で傘を忘れなくなるということですね。


大村正樹

人それぞれで自分の体と傘をくくってもいいし、テーブルの上にちょっと引っかけておいてもいい。カバンとくっつけてもいいし、そういうグラデーションということですね。

そうそう。それを自分では自己実験と呼んでいるんですよ。実際、どういう時に傘を忘れちゃうのか、どういう手がかりをつくっていったら傘を忘れなくなるのかということを試しにやってみると、自分が傘を忘れないための手がかりを発見できるじゃないですか。


大村正樹

例えば、思い切って奮発して5,000円の傘を買った。「俺は5,000円の傘を買ったから、これをなくしちゃいけないんだ!」という意識も行動分析学の範ちゅうですか?

はい、その通りです。


大村正樹

えっ、そうなんですか!

これも非常にそれがうまくいったということであれば、その人にとって5,000円の傘が非常に大きな動機付けとして効いたととらえることができます。


大村正樹

ほぉ〜。僕は500円の傘でも“きます”から、5,000円なんて大変ですよ。

はい。


大村正樹

そういうふうに心にくさびを打つのも大事なんですね。

有効な人もいるかもしれないですね。


大村正樹

へぇ〜。

僕も実は5,000円の傘を買ったことがあるんですけど、ダメでしたね(笑)。 それは、お金のしばりが効かなかったということでしょうね。


大村正樹

ふんふん。じゃあ、先生は5,000円のお金の価値観ではダメだった人で、体にくくりつけるとか、もっと変人的なことをしたら傘を忘れないということですね。

そうですね。ただ変人はちょっときついので、自分の場合、今は折りたたみの傘ですね。傘を閉じたらすぐにビニールに入れて、カバンの中に入れちゃう。


大村正樹

それもその人に合った行動学の一種ですね。

そうですね。


大村正樹

島宗先生は折りたたみの傘を持つことが、傘を忘れない結論。

その通りですね。


大村正樹

へぇ〜。すごい何か“国語チック”ですね。

ハッハハ、“国語チック”ですか。


大村正樹

文法が。この番組は科学の番組ですけど、でもそこにも科学はあるわけですよね。

それを測定していくんですね。


大村正樹

ふ〜ん。あとは、ほかに何かありますか?

例えば、どれからいきましょうか?


大村正樹

この本に書いてあります「人は、なぜ血液型で性格を判断しようとするのか?」。

それか(笑)。


大村正樹

これも行動分析学ですよね。

逆にいうと、血液型と性格の間には、一般にいわれているような関係はまずないのが心理学の中では常識です。


大村正樹

ショック!

ご存じでした?


大村正樹

知らなかったぁ。

ハハハハハハ。


大村正樹

すみません、僕のやってるテレビでは、ついこの間まで「血液型選手権」というのを11年もやってました。

朝よく観てます。


大村正樹

信じてました。

そうですか(笑)。


大村正樹

あれ、違う! よかった、あのコーナー終わって。

ハッハハハハ。マスコミとか雑誌で子どもや大人もすごい楽しく会話ができますよね。だから、「あの人はA型だよね」「ほんと、そうだよね」というのは、「あの人、几帳面だよね」「ほんと、そうだよね」と同じようなコミュニケーションですよね。


大村正樹

ふ〜ん。

そういうふうにして、人について、あるいは自分について「こうだよね」「ああだよね」というのは楽しいじゃないですか、会話の中で。


大村正樹

はい。

だから、そういうふうにして残ってる、信じられている仕組みがあると思いますね。


大村正樹

ほんとに血液型と性格には根拠がないということですね。

ええ、ないです! 心理学のいろいろな研究室でちゃんとした性格テストがあって、性格をいくつかの特性から測る、妥当性がある科学的な研究があるんですよ。それと、その人は血液型とどう関係があるのかを見てみると、まず関係が見い出せません。


大村正樹

ラジオの前の全国のAB型の人たち、ほんとごめんなさい! 二重人格といっちゃいましてすみませんでした。

ハハハハ。


大村正樹

全国のB型の人たち、ほんとごめんなさい! マイペースすぎるといっちゃいました。この中に僕の娘や妻も含みます。

ハッハハ、そうですか。


大村正樹

すごい失礼なことをしてきたんだ。

それでもね、結婚されてるわけですから。奥さんにとっては万事よかったんじゃないかと思いますけれど。


大村正樹

そうか、わかりました。もう、こんな時間だ。先生、来週またよろしいですか? より深いお話を。

わかりました。よろしくお願いします。


大村正樹

今週のサイコーは、法政大学の島宗理先生でした。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

いや、血液型の話はショックだったけど、助手は何型? O型。関係ないんだね、もう。今までO型同士で愛称がいいかと思ったけれど、もう来週からAB型の助手を雇おう。関係ないっていうから、性格は。番組ではなぜと思う世の中の科学の疑問や番組で行なう科学実験に参加してみたい人、といいつつも、やっぱり血液型と性格はつながってると思っちゃうんだけどねぇ。関係ないんだって。バイバイ!