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「行動分析学」(2)
コーチャー/島宗 理(シマムネ サトル)さん(法政大学)
大村正樹&島宗 理

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回も行動の科学といわれている行動分析学を取り上げます。先週の血液型は人間の性格あるいは行動と無関係だという、いまだに僕は引きずっているんだけれど。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイコーも先週に続きまして、法政大学の島宗理先生です。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

先生は行動分析学を研究されてるということで、先週も興味深いお話をうかがいました。そもそもこの行動分析学というキッズにはあまりなじみのない学問を始めようとしたきっかけは何だったんでしょうか?

自分も大学に行くまでは行動分析学を知らなかったんですが、心理学を勉強したいな、人間について勉強したいと思ってました。たとえば、高校受験の時にすごく仲のよい友だちに、ついついつらいことをいってしまったりとか、本当はこんなことしちゃいけないと思ってるのにやっちゃうとか、あるじゃないですか。


大村正樹

はい。

それから受験のために勉強しても、なかなか勉強できなかったりとか。だから、人間って、やらなければいけないことができなかったり、やっちゃいけないと頭ではわかっているけどやってしまったりすることが、わりとありますよね。それって「何でなんだろう?」とずっと思っていて、そういうことを大学で勉強したいなと思ったんです。


大村正樹

ええ。

ほんとは高校3年生までは建築家を目指していたんですけれど、いろいろ考えて心理学を勉強しようと進路を変えたんです。


大村正樹

なるほど。先生は光文社から『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』という本を出されています。先週、血液型は性格を判断する材料ではないというショッキングな話をうかがいましたが、ここに「人は、なぜ災害から逃げ遅れるのか?」という項目がある。

はい。


大村正樹

2004年の暮れに起こった、地球最大規模の災害といわれたインドネシアのスマトラ沖地震、死者15万人とも18万人ともいわれていますが…僕は、その現場に行った時に、「何でこんなに多くの人が逃げ遅れたんだろう?」と思ったんです。不可抗力の部分もあったと思うんですが、明らかに逃げる余裕があると思われる人が亡くなっている現場を見て、まさにこの項目を感じたんです。これも行動分析学ですか?

そうですね。実は災害から身を守るのはすごく難しい行動で、スマトラ沖地震の時には現場にいられたからご存じでしょうが。


大村正樹

津波ですよ。

そんなに津波がちょくちょく来るような地域ではなかったというのを聞いてたんです。津波は、1回波が来てから水が引く。


大村正樹

ええ。

魚とか海岸にピョコピョコ上がってくるから、子どもたちも喜んでとりに行ったということを聞いたんですがそうなんですか?


大村正樹

実際、日本人のお子さんでもいらっしゃった。それで亡くなった。

この本では、“天災は忘れた頃にやってくる型”というような、環境のことをそういうふうに説明してるんですね。要はめったに起こらないことだと、そのために逃げなくちゃいけない、という行動をとるのがとても難しい。シートベルトでもそうですが、着けてれば事故の時に生き残る確率が3倍とか4倍とかになります。しかし、そんなに毎日毎日事故にあうわけではないですよね。


大村正樹

そうですね。

そうすると、めったにないことに対して予防するような行動を持続してやるのは、実はすごく難しいんです。


大村正樹

う〜ん。

自然災害はまさにそうで、一生に1回あるかどうか、もしかしたら一生めぐり合うことはないかもしれないこと。だから、そのための行動を訓練するということはすごく難しいんですよね。


大村正樹

はぁ。それが行動分析学とやっぱり関係があるわけですか? めったにないから、緊急時の注意に関しては反応できないということですか?

反応が難しいから、そのためには、どういう仕組みをつくっておく必要があるのかを考えるんですね。工事現場で安全確保するために安全靴をはくとか、物が倒れないようにかたづけておくとか。だけれど、それを毎日毎日きちんとやるのは実は難しくて、これは安全管理という分野では永遠のテーマです。それをどうやって労働者の人たちにやってもらえるかを考えるのも行動分析学の研究のひとつです。


大村正樹

例えばこのスタジオ、シークレットラボという名前ですが、ラボ内で突然非常ベルが鳴った時に、まず僕が思ったのは「間違ってるのかな?」と思っちゃう。それと同じことですか?

そうですね。防災に関して必ず防災訓練あるいは非常ベルのテストをしますね。あれも非常に問題があって、防災訓練をすればするほど防災行動が出そうな気がしますよね。


大村正樹

はい。

そのためにやってるんだけれど、実際には防災ベルのテストを何回もやってると、本当の災害時のベルと訓練の時のベルと区別がつきにくくなるから、なかなか「じゃあ、逃げよう!」とならない。


大村正樹

ですよねぇ。

下手すると、「ベルが鳴ってたら、その場にいればいいですよ」ということを教えていることになってしまう。そこがまた難しいところですね。


大村正樹

集合住宅などでもたまにイタズラとか間違えて非常ベルが鳴っちゃって、「あっ、鳴ってるな、またか」となっちゃう。

そうそう、うちもそうです。


大村正樹

その時は、実はもう逃げ場を失っているかもしれない。

はい。


大村正樹

じゃあ今後、僕らはどうすればいいんですか?

この本でも提唱しているのは、本当の災害時のベルと訓練のベルの音を少し変えてやるとか、あるいは本当の場合には必ず生の音声でその時の日付がわかる、録音ではないとわかるような情報で災害を知らせるとか。つまり区別がつくようにしてあげることがまず大事だと考えているんですね。


大村正樹

先月、福島のほうで「地震が起きますよ」という緊急地震速報が全国の携帯電話に…。

ありましたねぇ!


大村正樹

多くの携帯を持っている人たちがビックリした。

ビックリしましたねぇ。


大村正樹

あの時は福島の人はたぶん行動したんでしょうねぇ、イレギュラーということで。

どうでしょうねぇ。


大村正樹

そこは先生、まだ研究されてないんですか?

残念ながら、あの時はうちの大学の文学部の教授会で、会議中にいろんな人の携帯のいろんな音がして「いったい、どうしたんだろう?」と。誰一人地震が来るまで、それが地震警報だとわからなかったんですよ。


大村正樹

なるほど(笑)。いろんな着メロで。

そうそう(笑)。着メロとか着ボイスとか変な音でしたね、ピーピープープーというような。


大村正樹

特別な音だったんですか?

特別な音だったみたいですね。


大村正樹

僕はバイブにしてたからわからなかったんですが。

そうですか。


大村正樹

その時は、特別な音が用意されていたんですかねぇ。

機種によってみたいですけれど、その時点では誰もそれが地震の予告だとは知らなくて、逆にみんな会議中だからあわてて止めようとしてました。


大村正樹

じゃあ、そこの部分では電話会社は先生の提唱していた、本当の時には別の音を鳴らすというひとつの条件はクリアしてたわけですね。

クリアしてました。ただ、その音が何の音かわからなかったというところが(笑)。


大村正樹

認知はされなかったという(笑)。難しいですねぇ。

そう思います。


大村正樹

最後に、僕は一番興味があったんですが、先生の著書の帯に書いてある「人は、なぜ騙されるのか?」。これ、ズバリお答えを!

はい。「人は、なぜ騙されるのか?」、だまし方にもいろいろとあると思うんですが、やっぱりそこに欲があるから、というのが一番。


大村正樹

いやぁ、そうですよねぇ。欲深い人間がだまされやすいということですかねぇ。

いえ、いろんな欲があると思うので。


大村正樹

いろんな欲、そうかぁ。

でも、それは人間が生きてる証拠だから。欲がなかったら生きてくこともできないわけですから否定するのではなくて、それを肯定しながらどういうふうにして取り組めるかを考えていくのがこの学問だと思っていただければいいと思います。


大村正樹

そうですか。欲があるからだまされるんですね、わかりました(笑)。

フフフ。


大村正樹

ということで、今回と前回ってラジオの前のキッズたちはチンプンカンプンだったのか興味深く聴いたのか、どちらだと思います?

お子さんにはかなり難しかったかなぁという気がしますけれど。


大村正樹

僕は、今どきの子どもたちって、けっこうこのジャンルにくいついたと思いますよ。

そうだとすごく嬉しいですね。勉強してくれれば。


大村正樹

この「サイエンスキッズ」では初めて文科系のサイコーというのかな、だけどそこにも科学があるということで、2週にわたって行動分析学の島宗理先生にお越しいただきました。ありがとうございました。

ありがとうございました。


大村正樹

ほんとですよね、地震があちこちで起きるとテレビで速報が流れて、「津波の心配がありません」とか。場合によっては津波注意報、津波警報で沿岸部の地図が出たりするけれど、その時にどれぐらいのお茶の間の人たちが備える行動を取っているかというとわからないものね。災害はあまりにもイレギュラーだから、どこかで油断しがちなんだけれど、やっぱりしっかりと備えておくこともとても重要なんだよねぇ。みんなも週末の行動、気をつけてね。バイバイ!