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「SF考証」(2)
コーチャー/鹿野司(シカノツカサ)さん(科学ライター)

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。いよいよ12月です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回もSF考証を取り上げます。みんなの好きなSFのアニメや映画の中には、科学に詳しい人がアイデアを出してるものがあるという話を先週聞きました。そう考えるといろんなSFのドラマや映画をイメージしちゃったんですが、お知らせの後、サイコーに詳しく聞いていくよ。


大村正樹

今週のサイコーも科学ライターの鹿野司さんです。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

またSF考証をうかがっていきたいんですけれど、僕が子どもの時に影響を受けたのは『銀河鉄道999』と『宇宙戦艦ヤマト』ですが、あり得ない話ですよ。でも夢という部分では、大人になったらこういうのが来るんじゃないかと思って、結局は来なかったんですけれど。実際、ああいうアニメにも考証の方がいらっしゃったんですか?

付いているものと付いてないものがあると思うんですが。


大村正樹

“ヤマト”や“999”をご覧になって、考証のプロとしてはどうですか? 突っ込みどころはあります?

突っ込んでもしょうがないというか、物語によって違うと思うんですね。何かそういうことがしっかりできてないと成立しない物語とそうじゃないものとありますから。“999”は機械みたいな話がたくさん出てきますが、最終的にはファンタジーだからそんなに堅いことをいわなくても大丈夫だと思うんですよね。


大村正樹

なるほど。“ヤマト”はどうですか?

例えばワープをして遠くの星まで行きますね。ワープは、今の科学の延長上では不可能なものなんですよ。


だけど、そうやって遠くの宇宙へ行ったり、そういうことができた結果として何かおもしろいドラマができるんなら、それでいいじゃないですか。


大村正樹

あぁ〜。

SF考証は、物語をつくる時は絶対にウソは必要ですが、そのウソを最小限にして気にならなくなるように作ったりするんですよね。


大村正樹

“ヤマト”のワープなどはしょっちゅうだから、気にならなくなるようなイメージで物語を作っていくということですか?

ワープができるからこそ、宇宙人と会ったりという話になるわけです。それは物語として作りたいわけで、普通の人間同士の付き合いとはまた別の物語ができるわけですから。それはそれとしておいて、だけど他もすべてご都合主義に考えてしまうと、そんなに展開しないというか…。


大村正樹

なるほど。

そういうところがあるので、大きなウソがあるからには、どっかをきちんとしておかないと説得力がなくなっていくんじゃないかと思うんです。


大村正樹

その説得力という部分で、SF考証の方々の腕の見せどころがあるわけですよね。例えば、僕の世代の親子だったら“ガンダム”。たぶん40代からちびっ子たちまで幅広い。あの“ガンダム”のストーリーは、SF考証のプロからしてみるとどうですか?

“ガンダム”に関しては、一番最初の“ガンダム”はいろいろ現実の話を持ってきて、それ以前の巨大ロボットアニメとはまったく違ったものを作ろうとしたところが非常におもしろいと思いますよ。


大村正樹

愛とか人間の味がありましたものね。

例えば “ガンダム”の巨大ロボットはモビルスーツというんですが、モビルスーツ以前にパワードスーツというものが現実にあるんですよ。


大村正樹

へぇ〜。

もともとはアメリカのSF作家のハインラインという人が『宇宙の戦士』という中でパワードスーツを考えたんですが、その影響を受けてアメリカで1950年代ぐらいにパワードスーツの開発を実際にやって作ってるんですよ。


大村正樹

戦後まもない頃にですね、パワードスーツ。

そういうもののヒントを持ってきてモビルスーツをデザインしたりとか。あと、スペースコロニーがありますね。


大村正樹

ええ。

スペースコロニーも、やっぱり1970年代ぐらいにオニールという人が実際に考えたものなんですね。


大村正樹

オニールさんが、宇宙にそういったものを作りましょうというイメージを持ってたわけですね。

それ以前のSFでも何でも、将来人類は火星とか惑星に住むんだということを常識で考えてたんですが、惑星を人間が住めるような環境にするよりも、実際に宇宙にコロニーを作ったほうが簡単だということをオニールさんという学者が考えた。まさに“ガンダム”は、オニールさんが考えたスペースコロニーと同じデザインを使って作られている。


大村正樹

全然見当はずれのストーリー展開ではなくて…。

だから、宇宙に住んだ人類と地球人との一種の戦争みたいな話ですが、そういうウソをリアルに見せるためには、本当に学者が考えているようなものとか、現実のテクノロジーの延長にありそうなものを持ってくるから全体の話がおもしろくなるという。


大村正樹

なるほどねぇ。元々日本人で最初になさった方は、どの作品の何年ぐらい前の方ですか?

それは柴野拓美(シバノタクミ)さんといって、今年の初めに亡くなった。


大村正樹

柴野拓美さん、女性ですか?

いえ、男性です。なかなかすごい方で、日本のSF作家の小松左京さん、星新一さん、みんな『宇宙塵』(ウチュウジン)という同人誌から出てるんですが、その同人誌を主宰された方なんですね。


大村正樹

ふ〜ん。

さらに柴野さんは日本にSF大会を導入、要するにSFの人たちが集まって毎年楽しむイベントを始められた。その中のメンバーからコミケットが出てきたり、コスプレが始まったりとか。例えば『エヴァンゲリオン』のガイナックスができたのも、SF大会の中から出てきてるんですよ。


大村正樹

へぇ〜。

つまり柴野さんが始めたいろいろなことによって、今のアニメやSF、コスプレなど世界中に発信しているサブカルチャーが出てきてるんですよ。あまり知られてない方ですが、日本のサブカルチャーのある意味中心になったような方で、その方が昔、タツノコプロの一番最初のアニメの頃からSF考証をやられたんですね。


大村正樹

タツノコプロの作品で、柴野さんという方がSF考証を。じゃあ、『タイムボカン』シリーズとか。

もっと前ですね。『ガッチャマン』とか。


大村正樹

『マッハGo Go Go』とか?

そうですね。


大村正樹

あれはSFじゃないか。大好きだったけど。

最初の『宇宙エース』という白黒の…。


大村正樹

『宇宙エース』、知らない(笑)。

知らないでしょうね、生まれてないと思います(笑)。


大村正樹

『宇宙エース』、知らないなぁ。

その頃からやっている。


大村正樹

へぇ〜。『ガッチャマン』もやってらっしゃって。そうですか。イメージがすごく湧いてきたなぁ。今、星新一さんとか小松左京さん、『時をかける少女』とか『なぞの転校生』は僕の中でものすごくインパクトの強いドラマですが、ドラマ化する時にはSF考証の方がいらっしゃったわけですかねぇ。

原作がしっかりしているので、いるかどうかちょっと分からないですけれど。


大村正樹

もう衝撃でしたよ、NHKで「少年少女ドラマシリーズ」を夕方6時過ぎにやってるわけですよ。

最初は『タイム・トラベラー』でしたね。


大村正樹

はい! そうです。SF物の時はものすごくときめいて、普通のヒューマンドラマの時はちょっとテンションが下がっちゃったんですけれど。よく観てました。分かりました。これは科学番組ですが、鹿野さんは科学を語った気分になってくださいました?

どうなんでしょうね(笑)。


大村正樹

いや、僕は十分科学とつながったと確信してますので。ありがとうございました。今週のサイコーは科学ライターの鹿野司さんでした。

どうもありがとうございました。


大村正樹

サイコーの鹿野さん、年齢を聞いて僕よりもずいぶんお兄さんであることが分かったんだ。ツヤツヤしててめちゃめちゃ若く見えたので、人間やっぱり好きなことを仕事にしてると年を取らないってことなのかなぁ。ちょっと悔しいけど、すごかったなぁ。こうやって子どもの頃からSFの本を読んで興味を持って、これを仕事にして…。みんなも今好きなことをトコトンつきつめると、将来すごくすてきな職業につけるんじゃないかなと思っちゃいました。それでは、大村さんは今日何かSF映画でも観に行こうかな。で、考証の人がいるかどうかチェックしてみよう。それじゃみんな楽しい週末を。バイバイ!