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「生き物の進化」(1)
コーチャー/藤本和典さん(シェアリングアース協会代表)
大村正樹&藤本和典

大村正樹

キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。キッズから届くお便りで特に多いのが動物の進化に関する質問だけど、今回は生き物の進化を取り上げます。実は生き物の進化は場所によって違うんだって。東京に住む生き物たちは、都会の環境に合わせて結構おもしろい進化してるというんですねぇ。どんなお話が聞けるのか、お知らせの後、サイコーの登場で〜す。


大村正樹

今週のサイコーは、シェアリングアース協会代表の藤本和典さんです。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

何ですか、シェアリングアース協会って?

「シェアする」はアメリカではよく使うんですが、分かち合う。


地球を私たちは分かち合って生き物たちがみんな存在してるんだ、という意味でシェアリングアース、地球ですね。


大村正樹

地球分断ではなく地球の恵みをみんなで分かち合って、ということ。

前にってどんどん使っちゃってますけど、そうじゃなく後ろへ引いてもうちょっと考えましょうということです。


大村正樹

へぇ〜。藤本さんは、あの日本野鳥の会に10年務めていらした。

10年務めました。でも「元野鳥の会」とは絶対いいません。


大村正樹

そうなんですか。

鳥ばかりしか知らないと思われるので。私は全般ですから。花、昆虫、動物、鳥…みんなです。


大村正樹

動植物全般に精通されてらっしゃる。

好きなんです。


大村正樹

しかも、都会に住む動物に関しては…。

“身近”がおもしろいです。


大村正樹

いいですねぇ。まさに文化放送のために(笑)。先生は、技術評論社から『生物いまどき進化論』という本を出されてます。都市化がもたらす人工サバイバル、生き物が都市化の中で進化してるという話ですよね。

進化の前の適応ですね。


大村正樹

適応、適応能力の適応。

そうですね。そのほうが大きいと思います。


大村正樹

進化というと、ダーウィンの進化論。

まだかなりスパンがありそうな気がしますよね。


大村正樹

だけど、都市部では。

1年で鳥がエサを変えて、また入ってきたりするんです。


大村正樹

ちょっと待ってください。1年ということは、親から子で進化が顕著ということですか?

起こるんですね。それをみなさんが見ていると、とってもおもしろいことが見えてくる。


大村正樹

やっぱり都市のほうが顕著ですか?

顕著ですね。開発されてますから、鳥にとっても困ることが多いので。都市という開発された別のものに対してどう生きるかということで、エサを変えたり住む場所を変えたりする。


大村正樹

それは生態系の絶滅には直結しない話?

簡単にいうと生態系で絶滅するということは、やはり遺伝子の中にたくさんの遺伝子があってちゃんと変わっていくものがあれば変われるんですが、そうでないものたちはどんどん変われる。


大村正樹

へぇ〜。

だから、トキは変われなかったもののひとつです。進化しすぎた。クチバシを見ると分かるんですが曲がっている。サギは曲がってませんよね。曲がったことが進化しすぎたんです。


大村正樹

トキのクチバシが曲がっちゃったことが進化しすぎた?

ドジョウを食べるために土の中を探るんです。顔を上げませんよね。あぜ道にいるキツネとか野良猫とか犬にとられちゃう。


大村正樹

ドジョウだけを食べるクチバシをつくったからダメだったんですか?

つっついて魚をとれないでしょ。サギはつっついてとって、それから顔を上げる。それで外敵を確認できる。


大村正樹

はぁ〜。

トキは群れでみんな下を向いている、土の中でクチバシを振りながら。そういうことによって進化というか変わっていく時に、それ以上曲がると変われない。


大村正樹

そうかぁ。トキは佐渡島のトキ保護センターに行かないと見られないし一般に公開してないから、トキを肉眼で見るチャンスはなかなかありませんけれど。

見てくるんですよ、私は。


大村正樹

どこで見てくるんですか?

中国まで行って。越冬地まで行って、たくさんの野生のトキを見てきたんです。


大村正樹

ちょっと待ってください。トキは日本で限られた数しかいないけれど、中国には結構いるんですか?

何百羽もいる。


大村正樹

学名はニッポニア・ニッポンといわれてますけれど。

同じものです。


大村正樹

トキは中国で何百羽もいる!

日本は絶滅しました。


大村正樹

ですよね。

日本のトキは、もういないんです。


大村正樹

“キンちゃん”とか。

あれも全部死にました。今いるのは全部、中国の洋県(ヨウケン)という西のほうの研究機関で増えたものをいただいてきたんです。それを日本で増やしている。


大村正樹

都会の動物の話ですが、僕らが目にできる動物たちで明らかに都会の生活に順応しているというものは、例えば何ですか?

セキレイ。


大村正樹

セキレイ?

黒と白で尾の長い鳥です。歩いてる時にチチチッ、チチチッと鳴く。


大村正樹

それはどのあたりにいるんですか?

ちょっとしたグラウンド、サッカーコートの周り、それから河川敷とか、開けたオープンスペースのところにいます。最近は農園、人がいない時に畑におりてくる。


大村正樹

黒と白の鳥で尾っぽが長くて、体長は何センチぐらいですか?

20センチ弱ですね。体自身はスズメぐらいですがシッポが長い。体長はクチバシからしっぽまでで体長なんで、図鑑では大きく見えるけど大きさはスズメぐらいです。


大村正樹

そのセキレイは、学校の校庭などに現れやすい。

現れます。飛ぶ時は、必ず波型に飛びます。チチチッチチチッと。


大村正樹

ウェーブするように。

そうです。


大村正樹

見たことあります。

ありますか。この仲間には3種類いて、ハクセキレイは白っぽいセキレイ、背中が黒いセグロセキレイ、それからキセキレイはお腹が黄色いセキレイです。一番都会にいるのはハクセキレイ。


大村正樹

白っぽいセキレイ。

キセキレイは、冬になるとたまに明治神宮の芝生の中に現れます。


大村正樹

明治神宮の芝生に? ちょっとピンポイントですね。

ピンポイント。


大村正樹

なぜですか?

なぜかというと、私はもうあそこで38年も毎月観察会をやってるからです。


大村正樹

明治神宮の芝生に、キセキレイが冬になると現れやすい。

こともあります。ただハクセキレイのほうが数は多いですけれど。


大村正樹

これは進化論的には、都会でどういうふうに進化したんでしょう?

簡単にいうと、エサが変わった。


大村正樹

都会のエサ?

エサは都会に来ると虫をひろっているんですが、冬の間はなかなか見つかりませんよね。越冬している小さなバッタとかクモを食べてます、地面を歩きながら。そしたらある時、ドバトにパンをやってる人を見つけた。パンくずがころがってきたら、つっついて食べちゃった。


大村正樹

セキレイがパンを食べちゃった。

いけないことですねぇ(笑)。


大村正樹

今まで食べてなかったんですよね(笑)。

昆虫食ですから。それが今は普通に食べるようになったし、私が初めて見た時は、渋谷の宮下公園。


大村正樹

山手線の脇の。

はい。あそこのベンチの脇でカリカリッと音がする。のぞいてみたら、スナック菓子をカリカリかじってたんですよ(笑)。驚いちゃって、「えぇ〜!?」って思いました。それ以来よく見ていると、パンを食べる姿を見るようになりました。だからお菓子も好きです。


大村正樹

へぇ〜。じゃあ、都会のセキレイは、昆虫類を食べずに人間の食べ残しのパンとかスナックを食べてるということですか?

それがすべてじゃなくて、主食はおそらく昆虫だと思います。でも足りない分は、そういうところで補っている。


大村正樹

へぇ〜。

ハクセキレイ以外のキセキレイやセグロセキレイはちょっと珍しいし、都会から離れた環境のいいところにいるんですよ。ところが、セグロセキレイもパンを食べ始めました。


大村正樹

へぇ〜。

だから、今は全体にセキレイの仲間は人間がつくったお菓子やパンを食べるようになってるみたいです。


大村正樹

セキレイは、日本列島で分布してるところはどこからどこまで?

ほぼ全部にいます。


大村正樹

もし沖縄のセキレイが、例えばフェリーにまちがえて乗っちゃって、フェリーの船蔵の中で東京の有明の海で放たれたら、そのセキレイはパンを食べない?

今現在? もしかすると、もう沖縄でも食べてるかもしれない。


大村正樹

そうなんですか。

まだ確認してませんけれど。かなり広く、大阪や名古屋でも普通ですから。


大村正樹

都会のセキレイたちは、結構パン食! へぇ〜。これによって、見た目の変化はあるんですか?

見た目の変化は全然ないんですよ。だから、その辺が難しい。


大村正樹

嗜好の変化ということですね。

嗜好の変化です。


大村正樹

ハハハッ。

ただ問題は図鑑−図鑑を書いている方がすべてそうじゃないけれど、古い図鑑をうつすんですよ。僕も図鑑を出していて3年がかりで1冊書きましたけれど。そうすると、その記載が入ってないんですよ。


大村正樹

へぇ〜。

というのは大変失礼だけど、身近な自然を見るようなバードウォッチャーは少ない。珍しいものを見に行く。


大村正樹

なるほど、分かりました。

これは、誤りが多いですね。ごめんなさいね、批判しているわけじゃないんですけれど。


大村正樹

きっとつくってらっしゃる方も勉強してくれると思いますよ。藤本さん、もうこんな時間だ。ちょっとまだまだうかがいたいことがあるので、来週またより深い話をうかがってよろしいですか?

はい。


大村正樹

今週のサイコーは、シェアリングアース協会代表の藤本和典さんでした。ありがとうございました。

ありがとうございます。


大村正樹

都会にけっこうセキレイっているんだけど、食べ物の変化は僕らには分からないよね。だけど見た目の進化というか、そういうのもやっぱりあるんだよねぇ。東京って意外にちっちゃいなと思ったけど、各公園ごとに微妙な進化とか変化が…。これを適応とか順応というのかなぁ? それを考えると、自分だけの生き物がもしかしたら君たちも発見できるかな。けっこう夢があるお話だった。これは動物にとってはどうだろう? 迷惑なのかもしれないけれど。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバイ!