
キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。1月も今日で最後の放送になりましたね。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今週も運動会で1番になるためのコツということで、先週のまっすぐ歩く練習はできたかな?今日はそこから上のステップにいくので、ラジオの前でしっかりと運動ができる体勢で聴いてください。お知らせの後、サイコーの登場です。

今週のサイコーも、東京大学大学院教授の深代千之先生です。こんばんは。
こんばんは。

先生、この1週間、地下鉄とか電車の駅でタイルのます目に沿ってまっすぐ歩く。そして歩道を歩いている時も、何となく自分の中で20センチのラインを作ってちょっと駆け足をする。少しイメージできたんです。
よかったです。

これってトレーニングとしては?
入口ですね。まっすぐ蹴るということです。

まっすぐ蹴る。
男の人はO脚が多いので、クロスして蹴るという人が多い。女の人はX脚が多いので外に蹴ってしまうことがあって、まずそれを補正するということですね。

ついつい“まっすぐまっすぐ”でモデルさんみたいな歩き方になるけど、そうではなくて20センチの間隔がいいんですね。
骨盤の幅ですね。このぐらいの幅で走るので、それをクセにしようということです。

クセに、身につけちゃうんですね。
そうです。

骨盤の幅で歩く。そして走るのをクセにする。これがまず入口ですね。
入口です。

次のトレーニングは何ですか?
軽く走る時に足首とかヒザをイメージしがちですが、スポーツクラブの成果でわかったのは股関節を使って走る。股関節を使って走ると足がムチのように動いたり、一歩でグンと前に出たりすることになります。

はい。
そういうことがわかったんですけど、身につけるのは理屈ではなかなか難しい。それでいろんなドリルを提案しています。

計算ドリルみたいなものですか?
計算ドリルみたいなものを動きでやる。それをやってると自然に股関節で走れるようになるというものですね。

ぜひ教えてください、ラジオで。
ひとつはまず左足で立って、右足はつま先で支えます。

ちょっとやってみよう。左足で立って、右足はつま先で支える。
右足は少し後ろに。

右足をちょっと後ろへ?
はい。ヒジを90度に曲げて、左右で交互に軽く振ってみてください。

走る格好。はい。
うまく触れると体幹がねじれてくるんです。肩と腰がこう逆にねじれてくる。

左足を軸にして、右足を30センチぐらい引いてつま先立ち。そして走るようにして腕を前後に振るんですね。
骨盤が回転し出すはずです。

はい、回転してるかも−してる、してる。
手を振るというのは、骨盤をうまく回転させることですね。これがひとつです。

手を振りながら骨盤も回転させる!
そうです。手は骨盤を回転させるために振る。

そうなんですか! じゃあ手は上半身についてるけど、下半身のつけ根のお尻の脇の骨盤を動かすのが手の役割?
そういうことです。だから手を一生懸命振っても、骨盤が回転しないとあまり意味がない。

いわゆるポーズだけで手を振っちゃダメということですね。
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そうです、そうです。

手の反動を生かして骨盤も振る。
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はい。

振った、振った!
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それがひとつです。

はい。
-
では、座りましょう。

あ〜、疲れたぁ。
-
ちょっと疲れましたか(笑)?

いいです。どんどん教えてください。
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「モモを上げると速く走れる」が昔の定番の指導書だったんですが、そうではなくてモモを速く上げる。

モモを速く上げる?
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はい。みなさんスキップはできると思うんですが、「タタンタ、タンタ、タン♪」というスキップですね。ヒザを伸ばして足を前に出すようなスキップが普通ですね。その時にヒザを前にほうり出すような感じでグン、グンと出してあげる。うまくいくとムチのように前に足が運べます。

さらに上体の運動で、腕を振りながら骨盤を回転させる。そして腸腰筋(チョウヨウキン)。
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はい。

へぇ〜。
-
これで足が前にうまく行くというドリルが、ひとつできました。

はい。
-
次にやっぱり地面をうまく蹴らないといけない。蹴り方のコツがわかってきまして、ヒザを曲げて伸ばすことで蹴らない。ヒザを固定していて、足全体を1本の棒のようにして前から後ろへグーッと引き込む。

へぇ〜。
-
この筋肉はお尻の筋肉とか…。

足を後ろに蹴る時は、あまりヒザを曲げちゃいけないということですか?
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曲げないです。

そうか、そうか。分かった、イメージできた。
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グーンと腰を中心に回す。ひざを曲げ伸ばししない。

地面を蹴った足をむやみに曲げないということですね。
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蹴ってる時です。

蹴ってる時に曲げない?
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蹴ってる時にヒザを曲げないで、股関節だけ、お尻だけでやる。

お尻の筋肉もいるんですか?
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そうなんです。今の理屈を言ってもなかなかできないので、やっぱりまたドリルがあります。

はい。
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競歩ってありますよね。

歩いて競争する。
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20キロとか50キロとか長い距離を歩くのが競歩ですが、この競歩ドリルは短い距離をできるだけ速く歩く。10メートル、15メートルをできるだけ速く歩くことをやると、競歩で地面を押してる時の動きが、走ってる時の地面を押す動きととても似てるんですね。

じゃあ、かけっこしなくても10メートル15メートル速歩きするのがトレーニング、ドリルになる。
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そうです。それで速く歩こうとしてるとだんだんスピードが上がります。走っちゃうんですね。そのまま走り出すことをすれば、地面のキックの仕方が分かる。

はい。
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足を前に振り出すというスキップと足を蹴るという競歩ドリルで、だいたいうまく行くと絶対速くなります。

“絶対”ですね。すごい!
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ちゃんと1ヵ月やれば、1ヵ月前の自分より必ず速くなります。

そうですかぁ。すごい。ちょっとやってみたい。今、鳥肌立っちゃったよ。自分でイメージしてたら鳥肌立っちゃった。
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これを練習していてうまく力の入れ具合が体に伝わっていると、腸腰筋とかお尻の筋肉が筋肉痛になるんです。

はい。
-
そうではなくモモの前とかふくらはぎが筋肉痛になると、「ちょっとドリルが違っているんだな」ということです。

なるほど。先週うかがった腸腰筋を鍛えるには、ヒザ小僧に体重をかけながら、それに抵抗するような動きをすると腸腰筋が鍛えられる。そうすると腸腰筋が痛くなる。
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それを走りの中で意識する。例えばスキップ、意識するとそこが使われるので筋肉痛になる。

筋肉痛になったら正解、ということですね。
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正解ですね。

お尻は、蹴る時にやっぱり筋肉痛になる。
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そういうことです。お尻とモモの裏ですね。

へぇ〜。これは、ちなみに何メートル走まで効果があるんですか?
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短距離ですね。

100メートルぐらいですか?
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100メートル200メートルぐらいは大丈夫ですね。

子どもだったら、だいたいそれぐらいですよね。
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そうですね。

先生の理論は、陸上のトラック競技だったら800メートル、いわゆる短距離の中では限界と言われるところまで通じるわけですね。
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基本的に股関節で走るというのは、長距離まで通じます。

へぇ〜! マラソンも大丈夫?
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大丈夫です。

へぇ〜。
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走り方自体はそうですが、マラソンは100メートルほどスピードが速くないので股関節をそんなに使わなくなるだけで、股関節で走ることは変わらないですね。

なるほど。
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僕がいるところは教養学部で、英語でいうととてもユニークで、「サイエンス・アンド・アーツ」。

科学ですね。
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科学と芸術です。科学は誰にでも当てはまることが必ずあって、もしかしたら当てはまるかもしれない、というのが芸術なんですね。

はい。
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今いってきたドリルは誰でも当てはまることで、ピッチストライドというのは誰かにもしかしたら当てはまるかもしれない。科学と芸術をうまくミックスさせているということですね。

なるほど。じゃあ、運動会で1番になるのは、とりあえずは科学の分野。
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誰でも速くなる。

そうですか。いや、勇気づけられましたよ。先生、もしよかったらまたスポーツの大きなイベントがある時にでもぜひ遊びに来てください。
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ありがとうございます。

今週のサイコーは2週にわたってうかがいました、東京大学大学院教授の深代千之先生でした。ありがとうございました。
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ありがとうございました。

あと3ヵ月、春の運動会を待っているキッズは、ぜひ実践してください。先生は、「必ずこれで速くなる!」と断言してらっしゃいました。先生の著書『運動会で1番になる方法』は角川つばさ文庫、児童書の欄に置いてありますから、ぜひ本屋さんでチェックしてね。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。みんな、バイバ〜イ!