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「アリの真実」(2)
コーチャー/寺山守さん(サイエンスライター)
大村正樹&寺山守

大村正樹

キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今週もアリを取り上げます。先週サイコーが、アリはオスとメスがいるんだけれど働いているアリはみんなメス、しかも巣の中にいる女王もメス。「じゃあ、オスは何をやっているの?」と聞いたら、それを言わないまま時間が来ちゃったのね。1週間、ほんと僕はアリを観察したけど、オスがよく分かんなかった。ということでお知らせの後、サイコーの登場だよっ。


大村正樹

今週のサイコーは、先週なぞめいた言葉を残して立ち去っていったサイエンスライターの寺山守さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

衝撃でしたねぇ。アリとハチは同類であって、働いているのはメスのアリばかり。女王アリがいて、オスは何をやっているのか? その答を得られぬまま、オスは羽がはえているということで終わってしまいました。アリの中でオスの役割は何なんですか?

前回の続きになってしまい恐縮ですが、巣が大きくなるとアリの巣は新しい女王が生み出されます。新しい女王にはりっぱな羽がはえていて、その時に同時に羽を持つオスアリもつくられるわけです。


大村正樹

そうか。その卵からオスかメスどっちが生まれるか分からなくて、メスは羽がはえている?

女王は羽がはえている。


大村正樹

オスもはえている。

だけれど、オスの体はすごく弱々しい。巣の中で見ると羽がはえてて、「こいつ弱々しいなぁ」というのがオスアリだと思っていいと思います。


大村正樹

比率はどれぐらいですか?

実は新しくつくられた女王アリとオスアリの割合は、オスアリのほうがずい分数は多い感じで、ある種類ですと1対3という数字です。新しい女王が1でオスアリ3、倍率はオスが高いという形になります。


大村正樹

でも、羽をはやしたアリなどめったに見ないじゃないですか。ということは、ふだんオスはどこにいるんですか?

ゾウ

そういうような新しい女王アリ、オスは1年の特定の時期のみに巣の中に出てきます。そして新しい女王アリとオスアリは、巣の外に羽を使って飛び出していく。


大村正樹

ほぉ〜、飛んでっちゃう。

はい。巣の外に飛び出すとほかの巣でも同じことが起きてまして、ほかの巣の新しい女王アリとオスアリは相手を探して結婚する。


大村正樹

ふ〜ん。

結婚した後、オスアリはあっけなく死んじゃいます。


大村正樹

人間に例えたらこんなかわいそうなことありませんねぇ!

オスの役割は、ですから結婚するために生まれてきた。


大村正樹

えぇ〜!「死ぬなら一生独身でいたい」というオスアリはいないんですかねぇ。

先ほど「メスとオスの割合が1対3ぐらいの種類がいますよ」と言いましたが、結婚できないオスアリがずい分多いということですね。


大村正樹

ほぉ〜。結婚できないオスアリは?

そのまま死んじゃいます。


大村正樹

この世の春をおう歌せずに終わってしまうんですね。

ええ、かわいそうなんですけれど。


大村正樹

えぇ〜!?

アリも厳しい世界になってます。


大村正樹

いやぁ、衝撃です! 世界でどれぐらいの種類のアリがいるんですか?

今、世界で1万2000種類のアリが知られてます。ただし、いわゆる新種−名前がまだ付いてない、発見されていない種類がいっぱいおります。要するにアリは身近なんですが、分類研究はまだまだ進んでないんですよね。おそらく世界に3万種類以上は実際にいるだろうと言われています。


大村正樹

へぇ〜。日本にはどれぐらいですか?

日本では約280種類のアリが住んでます。


大村正樹

多いのか少ないのか分かりませんけれど、それなりの種類がいるわけですね。

はい。


大村正樹

寺山さんがこれまで見てきた中で一番インパクトが強かったのは何ですか?

そうですね。日本のアリで特に気に入っているアリと言うと、トゲアリというアリはすてきですね。


大村正樹

トゲアリ。それは東京で見られるんですか?

東京で見られますね。


大村正樹

どんなアリですか?

ちょっとした林などに住んでますが、まず大きいアリでして樹住性−木に住んでいるアリです。


大村正樹

木? 地下の巣ではなくて、木に住んでいる。

はい。木の幹に空洞ができた場合、そういうところを巣にしているアリです。


大村正樹

へぇ〜。

まず色がきれいだということ。頭とお腹が黒で、胸の部分が真っ赤っか。さらには名前がトゲアリということで、背中にトゲが8本はえています。


大村正樹

へぇ〜。

その内の1本は釣り針のように大きく伸びて、先がぐっと曲がってるんですね。


大村正樹

すごくイメージできました、トゲアリ。みんなもどうかなぁ?

形としてはすごく面白いアリですね。


大村正樹

見つけやすさはどうなんですか?

そんなに珍しくはないですね。


大村正樹

夏休みの自由研究に間に合いますかねぇ。

間に合いますよ。特に林の中にいますので、カブトムシやクワガタムシを探しに行く時によく木の上を歩き回っている光景を見ることができます。


大村正樹

胸が赤いのが特徴で…。

胸が赤くて、背中にトゲがはえている。このトゲアリというのは、女王アリがほかのアリの巣に侵入して、ほかの種類のアリの女王を殺しちゃう。


大村正樹

へぇ〜。

殺してしまって、その巣を乗っ取ってしまう。働きアリを自分の働きアリとして最初は使って、だんだんだんだん自分が卵を産んで、働きアリが増えてくるとやがては自分の巣になってしまうというようなすごく面白い生活もしている。


大村正樹

戦国時代の国盗り合戦みたいなものと考えればよろしいんですか?

まぁ、そんな感じでしょうか(笑)。


大村正樹

今のこの時代に“アリ武将”がいるわけですね。

必ずそういう形で、むしろほかのアリの巣を乗っ取らないとトゲアリは巣をつくれないんですね。


大村正樹

いや、見たことなかったぁ。小学校時代、夏休みの自由研究で水槽のアリの巣に黒い紙を張って、しばらくしてこの黒い紙をめくって研究材料にしたんですけれど。

いいですねぇ(笑)。


大村正樹

ちなみにやりました?

僕もやはり同じように小さい時に。


大村正樹

あれ、最高ですよね。たぶん今もやってる子どもたちがいると思うんですが、あのアリの巣の研究ポイントは何かありますか?

僕も小さい時に容器の中に土を入れて巣をつくらせて観察することをやってたんですけれど、アリを飼う場合に砂や土を入れなくても簡単に飼えるんですよ。


大村正樹

えっ、えっ、アリだけで?

ええ。容器、例えばコップであるとか口の広い空きビンみたいなやつですね。あるいは普通のおかずを入れるようなプラスチックの容器でもいいと思うんですが、そういう容器にひとつの巣から取ってきたアリを入れて十分観察できます。


大村正樹

へぇ〜。

むしろ土があると土がじゃまして観察しにくいぐらいですよね。ただ巣作りを見たい人はもちろん土を入れて黒い紙を表面に張っておくと、だいたい容器の壁に沿って巣をつくってくれる。2、3日で巣をつくってくれるので、簡単に観察できると思います。


大村正樹

まだ間に合いますよね。

ええ、すごく面白いと思いますよ。


大村正樹

寺山さんは昆虫を含めアリを、これから将来アリを極めて何かやりたいことはありますか?

アリを極めてというわけではないですけれど、ひとつとして日本のアリでも名前が付いてないアリが20種類ぐらいありまして・・・。


大村正樹

そうなんですか。“名無しの権兵衛”アリが?

はい。それの名前をまず付けてあげなきゃいけないなと。


大村正樹

ヘぇ〜。

さらには、東アジアのアリを全体的にまとめていきたいなと思っております。


大村正樹

今、ネーミング・ライツってはやっているから、名前のないアリ20種類、何か求めましょうか。

まずは名前を付けてあげて、アリのほうが「名前を付けてくれアリがとう!」という(笑)。それをやっていきたいと思ってます。


大村正樹

今、ラボの外と内側に8人の大人たちがいるんですが、ちょっとハッピーな気分になりまして、寺山さんに「アリがとう!」と言ってます。ということで、今週のサイコーは、サイエンスライターの寺山守さんでした。どうもありがとうございました。

どうもありがとうございました。


大村正樹

いやぁ、アリはちっちゃいけど奥が深いねぇ。自由研究のテーマにやっぱりいいですよ。みんな、アリの巣を見つけたらスコップとかシャベルでガバッとすくってきて、ビンの中に入れて黒い紙をかぶせると2〜3日で巣ができるのが見えますよ。ということと、土がなくてもアリだけを採取してきて、透明なビンの中に入れてお水とエサ代わりのハチミツを別々のお皿に用意しておくとアリの観察がよくできるそうです。ということで、自由研究のテーマにアリはどうかな?それでは、お盆を過ぎるといよいよ夏休みも後半だね。みんな、充実した休みを過ごしてください。それじゃまた来週。バイバイ!