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「自然エネルギー」(1)
コーチャー/石川憲二さん(科学技術ジャーナリスト)
大村正樹&石川憲二

大村正樹

みんな、元気?下半期だよ、10月の1日。学校は後期に入りますねぇ。残り半分、気持ちも新たに頑張ってください。さぁ、今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。今回のテーマは自然エネルギー。みんなもニュース、テレビ、新聞、ラジオなどでこの言葉を多く聴いたと思うけれど、「自然エネルギーって元々何?」。これが今後の今いわれている原発以降の発電に役に立っていくかどうか? お知らせの後、サイコーに聞いちゃうよ。


大村正樹

今週のサイコーは、科学技術ジャーナリストの石川憲二さんです。こんにちは。

こんにちは。


大村正樹

石川さんはオーム社からいろいろな本を出していらっしゃるんですが、今回取り上げましたのは『自然エネルギーの可能性と限界』という本。やっぱり今年は自然エネルギーの話を抜きにして語れない年になりましたものねぇ。

そうですね。かなり話題にはなっていますね。


大村正樹

そもそも自然エネルギーの範ちゅうにあたるのは何ですか?

けっこう難しいんですよ。一般的には再生可能エネルギーという言い方をして、つまり使ってもまた元に戻る。要するに資源が減っていかないものを再生可能エネルギーといいます。でも、例えば石油とか石炭みたいな化石燃料は、使うとどんどん減っていってしまいます。


大村正樹

ええ。

あれも自然界でできるものだけれど、できるスピードが間に合わないから人間が使うと減ってしまう枯渇性エネルギー。それに対して、再生可能エネルギーは使っても基本的に減らないもの。それを別の言い方でよく自然エネルギーというのですが、正式には再生可能エネルギーというものなんです。


大村正樹

ええ。

その中で強いていうなら、水力ね。


大村正樹

水。川の流れ?

そう、溜める。水力は基本的に、高い位置に雪や雨が降った水が下に降りる力を利用する。


大村正樹

水は、水力発電は自然エネルギー?

もちろん、一番代表ですよ。


大村正樹

そうか。

最も規模が大きい。それから二番目が地熱。


大村正樹

地熱。

地熱も世界的に二番目に規模が大きいといわれている。


大村正樹

温泉とか……。

そう、もっとマグマですね。


大村正樹

地中のマグマ。

それ以外に、今いった風力とか太陽光がある。


大村正樹

はぁ〜。

日本でいえば水力はかなり使っているので、実は自然エネルギーは昔から使っているんですよ。


大村正樹

それ、知らなかったです。何か風力とか太陽光パネルのことを自然エネルギーというのかと思ってた。

ちょっと新しいものが目立っているんだけれど、古いものもいっぱいあるし、地熱は日本で開発が進んでないけれどかなり資源力があるといわれているので。風力、太陽光だけではないことは知っておいたほうがいいです。


大村正樹

発電というと、風力発電だったらモーターが回っているので発電するというイメージがあるんですけれど。

発電機ね。


大村正樹

地熱は何で電力に換えるんですか? お湯が沸くだけではないんですか?

お湯が沸ければいいんですよ。火力でも原子力でもお湯を沸かして発電機を回しているんですね。


大村正樹

そうか。蒸気が出るから、それでモーターが回るということか。

そうそう。例えば自然に出てくる湯気もあるし、それから土の中に熱い場所がいっぱいあるので、そこに水を送り込んで湯気を出す。それでそのままタービンを回して発電機を回すという方法もある。


大村正樹

へぇ〜。わかりやすいところで風力発電。東京だったら新木場の先の若洲にありますよね。

横浜にもあるし、けっこうあるんですよねぇ。


大村正樹

あれは風の力で発電機を回す。効率としてはどうなんですか?

効率は場所によるんだけれど、ずーっと吹いている場合を100とすると、よくて20ぐらい。


大村正樹

へぇ〜。ほんとは100でいけるのに20がだいたい平均的な能力ですか?

はい。


大村正樹

時速100キロ出る車でも20キロで走るようなもの。

現実にはそうなんです。風はいつも吹いていないので、そううまくはいかないですよね。


大村正樹

でもクリーンなわけですよね。

クリーンはクリーンだけれど、それは水力も同じことで、基本的にはそれ自体は何か変なものを出すわけではないですから。ただ建築とか後で捨てたりする時には自然には負荷がかかるので、完全にゼロというわけではないですけれどね。


大村正樹

そうなんですか。

つくる時には当然車なども使って整地をして建てなければいけないでしょ。


大村正樹

そういうことですね。

それから回っているものは、基本的にはプラスチックなんですよ。ガラス強化樹脂などで、羽根は石油でできているのね。


大村正樹

あぁ。そのプロセスには、けっこうCO2も出しちゃってる。

そうそう、当然出している。最後に廃棄する時の問題とかも考えなくてはいけないのでね。


大村正樹

石川さんの話を聞いていると別にこれが最高だというわけではないですね。何かデメリットをずいぶんおっしゃるので、ちょっとヘコんでいるんですけれど。

元々規模が、風力でも火力や原子力の1000分の1ぐらいしかないし、太陽光などは1万分の1以下なんです、大きさが。だから、その代わりになるのはちょっと難しい。だけど、例えば北海道の場合は特に冬は暖房が欠かせないじゃないですか。


大村正樹

はい。

広いところに点々と人がいるから、石油を運ぶだけでけっこうエネルギーがいっちゃうわけですよ。例えばちょっとでもそういうのを使っていろいろな地区とか家で省エネ、今あるエネルギーの少しでもそういうものを使えば、だいぶ省エネには効果が大きいですよね。


大村正樹

はい。

北海道でやるってけっこうおもしろいなぁと思いますよ。


大村正樹

新木場の先の若洲にある巨大な風力発電1基でどれぐらいの電力がまかなえるんですか?

ちょっと数字は知らないけれど、たぶんあの辺のクラスだと1000キロワットといってるやつだとその20パーセントだから200キロワット出ればいいんだけれど。でも都会にあるやつは、もうちょっと低いと思うんですよ。


大村正樹

風力発電の1基あたりの出力が少ない、ちっちゃいんですかねぇ、いわゆる原子力とか火力に比べると。

はい。


大村正樹

わかりやすくいうと、どのぐらいですか?

例えば1つの発電機のセット−それをプラントというんだけれど、1つのプラントの単位でいうと、火力や原子力はだいたい100万キロワットぐらいまではつくれるんですよ。


大村正樹

100万キロワット。

火力は燃料をつくれば、ほぼ100パーセント。メンテナンスの時期を除いて、ほぼ100パーセント出る。しかし、それに対して風力の場合は、日本で多いのはさっきの1000キロワットクラスが多いのだけれど、実質は200キロワットになってしまう。ですから200と100万。


大村正樹

全然違うじゃないですか。100万キロワットと200キロワット。

だから、それを同じようにするには、それだけかけた分がなければいけない。


大村正樹

はぁ〜。風力発電は、設備のわりにはパワーが弱い。

大きくはないです。それは事実なんで知らなければいけないですね。わかりやすい例えでいうと、今、東京電力などで「エネルギー、電力が足りませんよ」という時に出てくる数字が5000万キロワットとか6000万キロワット。これ、つまり円に直すと5000万円とか6000万円。家を買うようなお金ですよね。


大村正樹

はい。

それに対して、さっきの200キロワットは子どものお小遣いぐらいの量でしょ。


大村正樹

ということですね。

それを子どものお小遣いを集めてお家を買うのは、ちょっと無理がある。


大村正樹

はぁ〜、わかりやすい例えですね。

子どものお小遣いは意味があるお金なので、彼らは彼らで必要なものを買えばいいわけであって、それをとって家を買うお金にさせるというのはやっぱりおかしいよね。


大村正樹

そうか、いやいや。今年は「原発を廃炉にしていくよ」と野田総理大臣も新たにおっしゃってますよね。「今燃えているものは使うけれど、やがては減らしていきますよ」と。じゃあ日本が自然エネルギーで100パーセントまかなえるかというと、そうはいかないよという。

だから、原子力はみんなで決めればいい。もし原子力を減らしていくんだったら、その分とりあえずは火力しかない。だから火力を増やすか、あるいは火力をもうちょっと研究して、もっと効率を上げられることをしていかないと効果としては現れにくいですね。


大村正樹

わかりました。火力に関してもいろいろ思うところがあるので、あっという間に時間がなくなっちゃったけれど、また来週お話をうかがっていいですか?

いいですよ。


大村正樹

今週のサイコーは、科学技術ジャーナリストの石川憲二さんでした。ありがとうございました。

どうもありがとうございました。


大村正樹

そうか、風力発電ねぇ。あまり効率よくないんですって。石川さん、最後調べてくださいましたけれど、200キロワットだったらだいたい町内会1軒分ぐらいの電気以下という、あまり大きいエネルギーは産み出せないということなんですねぇ。そうなるとやっぱりいろんな家電製品も増えてしまったので、より電気が効率よく使えるように発電方法も変わって、そして原子力発電所につながってきたという歴史があるんだねぇ。また来週も聞いちゃいます。それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんなも下半期、後期がんばるんだよ。バイバイ!