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「スーパーコンピュータの話」(1)
コーチャー/松岡聡さん(東京工業大学教授)
大村正樹&松岡聡

大村正樹

今年最初のサイエンスキッズです。あけましておめでとうございます。サイエンステラーの大村正樹です。7日になると、ちょっと時間が経った感じもしますけれどね。今年も大村さん、元気いっぱいこのラボからみんなのためになる科学の情報をお届けしたいと思います。よろしくお願いいたします。さぁ、みんな、もう7日目だからいろいろな想いがあると思いますが、今年のことをすでに計画したでしょうか?今日はスーパーコンピュータ。スパコン、聞いたことあるでしょ?日本のスーパーコンピュータは、世界トップレベル。本当にすばらしい技術を持っているのですけれど、今日は「TSUBAME」(ツバメ)というスーパーコンピュータを開発されているサイコーをお招きしたいと思います。とても興味深い話が待っていると思うよ。


大村正樹

今週のサイコーは、東京工業大学教授の松岡聡先生です。こんばんは。

こんばんは。


大村正樹

松岡先生は、いわゆるスパコン、スーパーコンピュータ「TSUBAME」の設計者です。すばらしいコンピュータをつくった方が今、目の前にいらっしゃるんですけれど、普通の方なんですよね。

ハハハ。


大村正樹

何か銀縁のメガネでもかけてキラキラしていらっしゃるかと思ったら、私と同世代の普通の方が目の前にいて…この方がすごいコンピュータをつくった人なんですね。

まぁ、そうですね。


大村正樹

勉強は何が好きでしたか?

勉強は理科、数学ですね、やっぱり。


大村正樹

理数系の方。

そればかりやってました。


大村正樹

スーパーコンピュータっていいますけれど、何がスーパーなんですか?

スーパーというのはすごく速いとか、すごく複雑なこととか、すごく大きな問題が解けるからスーパーなんですね。普通のコンピュータではできないスーパーなことができるから、スーパーコンピュータ。スーパーマンが人間以上というのと一緒ですね。


大村正樹

では、今ラジオの前のみんなの家にあるパソコンとは、比べものにならないぐらいすごいということですか?

むちゃくちゃ速いわけです。


大村正樹

えっ、むちゃくちゃ速いんですか!? 今のパソコンだって性能いいじゃないですか。

そうですよね。


大村正樹

そんなレベルじゃないということですか?

もちろんパソコンでできることはみんなができてしまうから、パソコンではできないことをやるからスーパーなので…。ものすごく速いとか大きいとか、というわけですね。


大村正樹

僕らが使っているパソコンを最新の乗用車だとすると、スパコンは何ですか?

どのぐらい速いかというと、だいたい10万倍ぐらい速かったりするんですね。


大村正樹

えぇ〜!

乗用車でいうより、人間の歩く速度。


大村正樹

はい。

普通のパソコンが人間ぐらいだとすると、どのぐらい速いか。「TSUBAME」とか最先端のスパコンがどれぐらい速いかというと、5万倍から10万倍速い。というのは、普通5キロメーターだから、時速30万キロメーターぐらいで動くことになるわけですね。それはどのぐらいかというとジェット機ぐらいか?−ジェット機より全然速い。


大村正樹

へぇ〜。

人工衛星よりも速い。「はやぶさ」よりも速い。


大村正樹

宇宙に行って来た「はやぶさ」?

「はやぶさ」のだいたい3倍から5倍ぐらい速い。


大村正樹

すごく基本的なことですけれど、パソコンの速さって通信速度だと勝手に思っていて、「フレッツ光を入れたからいいや」とか(笑)。そういうレベルじゃないんですね。

そういうレベルじゃない(笑)。


大村正樹

ハッハハハハ。

まぁそのくらい速くないと計算のシミュレーション、つまり世の中で起こっていることを計算機の中で仮想的な世界をつくって解くわけですけれど、それくらい速くないと解けない問題がいっぱいあるんですよ。


大村正樹

松岡さんの「TSUBAME」というスーパーコンピュータですが、ニュースになったじゃないですか。

はい。


大村正樹

イメージでいうと、パソコンよりも全然大きいわけですよね。

大きいですね。


大村正樹

一般の家庭には入らないわけで。

一般の家庭にも入れようと思えば入ると思いますけれど、ただ電気代がちょっとかかるから…。


大村正樹

研究室にはあるんですよね。

もっとちっちゃい実験用のがあって、うちの大学の計算機センターに僕らが設計してメーカーとつくったものを置いてあります。大きさは160平米ぐらいだから、まだそんなに大きくないんですけれども。


大村正樹

160平米って、大したもんですよ。

一般家庭、大きな家があれば入れるぐらいです。


大村正樹

3LDK住んでたら、それが2つ分という感じですかねぇ。

そうですね。


大村正樹

そんな大きいコンピュータということですか?

そのぐらい大きいですね。


大村正樹

へぇ〜!

もっとすごいのは電気代だと思うんですよ。


大村正樹

へぇ〜!

普通の家庭に何とか入れることはできるかもしれませんが、電気代が年間1億円ぐらいかかります。


大村正樹

えぇ〜! すごい! 先生、今日は土曜日ですけど、スパコンの電源入れっぱなしじゃないですか?

もちろん! もう1年中つけてます。


大村正樹

えぇ〜!

年間ですよ。年間1億円です。


大村正樹

何で電気代がそんなにかかるんですか?

やっぱりそれだけ計算をすると…。計算というのはみんな熱になるんです、最後はね。それだけの計算をさせているから。もちろん省エネにつくらなければいけなくて、「TSUBAME」は世界の大きなスパコンの中で最も省エネなスパコンだということはいろんなところから認定を受けてます。


大村正樹

電気代1億かかるけれど、世界で一番省エネなスパコン?

そう。


それがどれぐらい省エネかというと、ノートパソコンがありますよね。


大村正樹

はい。

いろんな計算があるんだけれど、代表的な計算をするとノートパソコンより3倍ぐらい省エネなんですよ。


大村正樹

へぇ〜〜! なるほど。

逆にいうと、ノートパソコンをいっぱい動かすよりスパコンを動かしているほうが省エネなんですね。


大村正樹

へぇ〜。

それでもやっぱり1億円かかる。


大村正樹

電気代が1億ということは、開発にはいくらぐらいかかるんですか?

開発するのはなかなか難しいですけれど。「TSUBAME」を開発するお金と、「TSUBAME」を実際ハードウェアとか含めて購入したり置いたり運用したりするお金は、いろんなお金がかかって…。その開発の部分はもうちょっと小さなお金だけれど、「TSUBAME」を実際メーカーにつくってもらって、それを置いて運用するのは30億円以上かかるんですね。


大村正樹

はぁ〜。

年間だいたい10億円ぐらいかかります。


大村正樹

なるほどね。11月に日本のスパコンが1位になってニュースになったじゃないですか。その前に、かつて蓮舫さんが「2位じゃダメなんですか?」といったじゃないですか。

はい。


大村正樹

まさに先生は当事者みたいな存在ですよね。

アハハ。僕がつくったわけじゃないですけれど、1位になった「京」(ケイ)のほうは。


大村正樹

だけど、日本のスパコンの技術を「2位じゃダメなんですか?」と大臣クラスがいったことは、研究者からするとどんな胸中だったですかねぇ。

アメリカにいて聞いたんですね。まさにスパコンの1万人ぐらい来る学会があってみんなで行っていたら、ちょうどニュースが入ってきた。で、みんなびっくりしていろいろ対策に追われたんですけれど。


大村正樹

ええ。

確かに「何で2位じゃダメなの?」は、質問としては悪くない。どうしてそういうスーパーコンピュータがあって、どうしてそれでいつもいい結果を出さなきゃいけないか?「どうしてみんな競争をしてるの?」と。世界中で競争をしているわけですね。アメリカが1位になったり、中国が1位になったり、日本が1位になったり。


大村正樹

はい。

「どうしてみんなそんな競争をするの?」と。結局、それはやっぱりそれだけスパコンでやられているシミュレーションが世の中の役に立っていて、その1位を目指す開発をすることが、やはり非常に世の中に役立つからなんですね。


大村正樹

なるほど。ただの巨大な電卓じゃないんだということですね。

そうですね。


大村正樹

そこですよね!

しかも、スパコンはどんどんすごい勢いで進化するから、逆にいうと10年間で1,000分の1になってしまうわけですね、スパコンというのは。


大村正樹

えっ、どういうことですか?

つまり10年間経つと、1,000倍速くなってしまう。


大村正樹

へぇ〜。

ということは、10年前のスパコンは1,000分の1の速度なわけですよね。


大村正樹

ものすごいスピードで進化してるんですね。

この30年間ぐらい、常に10年間で1,000倍、20年経つと100万倍というふうに進化しているから、逆にいうと今1位でやってきたことは、そのうち企業や家庭にどんどん入るんですね、安くなるから。


大村正樹

はい。

ところが、1位の研究はそう簡単にはできないわけですよ。本当に大きなマシーン、トップのマシーンを使わないとできない。1位を目指すマシーンをつくっていれば、3年5年経つとそれが企業などにおりてきて、そこで役立つ。


大村正樹

なるほど。1位という動機付けが必要なところもあるわけですね。

そう、1位じゃないと最高の技が使えない。


大村正樹

で、それがどういうふうに活かされているかをまた来週うかがいたいと思います。今週のサイコーは、東京工業大学教授の松岡聡先生でした。ありがとうございました。


大村正樹

あらためてみんな、1の位から行くとどこまで行くか? 僕はよくわからないけれど助手が詳しいんだって?

助手:子どもの時に丸暗記したんですね。


大村正樹

言って、言って!

助手:一、十、百、千、万、億、兆、京(ケイ)、垓(ガイ)、ジョ(ジョ)、次が穣(ジョー)で、溝(コウ)、澗(カン)、正(セイ)、載(サイ)、極(ゴク)、恒河沙(ゴウガシャ)。


大村正樹

ゴウガシャ? 何、ゴウガシャって(笑)。まだあります?

助手:阿僧祇(アソウギ)、那由他(ナユタ)。


大村正樹

ナユタ? 何語ですか、それは? 何ゆったん?(笑)

助手:ナユタです(笑)。不可思議(フカシギ)。それから上は無量大数(ムリョウタイスウ)というか、太くなっていきますね。


大村正樹

すごい! 見直したよ、助手。今年もよろしくね。

助手:よろしくお願いします(笑)。


大村正樹

また来週ね。バイバイ!