
キッズのみんな、こんばんは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今週もスーパーコンピュータ「TSUBAME」を開発されましたサイコーをお招きしたいと思います。ほんと「日本のスーパーコンピュータの技術はすごい!」という話です。で、このスパコンって何をする機械か? お知らせの後、じっくり聞いちゃうよ。

今週のサイコーもスーパーコンピュータ「TSUBAME」の東京工業大学教授の松岡聡先生です。こんばんは。
こんばんは。

いやぁ、スーパーコンピュータねぇ。とてつもないコンピュータであることは先週うかがいましたけれど、では、何のために開発されるのか。僕らの生活にスーパーコンピュータが役立っているかどうかというところですけれど、何のためにスーパーコンピュータがつくられるんですか?
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いろいろな世界を中で仮想的にシミュレーションできる。ただ単にそのままシミュレーションをするだけではなくて、ものすごくいっぱい回数をやるとか、ものすごく細かいところまでやるとか、時間も過去から未来まで、空間も広いところから狭いところまで、いろんなことができるわけですよ。

ええ。
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だから、スパコンは四次元の観測装置。四次元というのは空間と時間ですけれど、四次元の観測装置といわれてるんですね。その中で一番用途があるのは、できないことをやる。

はい。
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一番身近だと、例えば携帯電話。小学生が携帯電話をいっぱい持っているかどうかわからないですけれど、少なくとも大人が携帯電話を持っていますよね。でも、最近の携帯電話は落としてもあまりこわれないですよね。

はい。前は液晶だったから、割れましたもの。
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最近は割れないですよね。

はい。
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どうしてかというと、それはスパコンが活躍してるからなんです。

何でですかぁ?
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つまり、昔は携帯電話をつくる時に一生懸命落としてたんですよ。落として、「こういう材質だとこわれない」、「こうやるとこわれる」−そういうことをやってた。でもキリがないですよね。時間もかかるし、つくらなくちゃいけない。

ええ。
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それをスパコンの中でやると、仮想的に携帯電話をつくり、いろんなバリエーションをつくっていろんな落とし方をする。それが何万回、何十万回もスパコンの中でできてしまう。

ちょっと待って。携帯のブツを落とすんじゃなくて、コンピュータでバーチャルに携帯電話を落として、その強度を測れるんですか?
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そう。「どうやってこわれるか?」ということも含めてね。

その材質などを全部インプットして、ということですか?
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そういうことです。

わかったぁ、みんな。今のすごくわかりやすい話だったけれど。ほかに何かありますか?
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そうすると、その中で一番いいデザインをいくつか選んで、今度は本当につくってみる。

はぁ〜。
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ほかにも同じような例だと薬。薬がどうやって効くかは、普通だとハツカネズミなどに注射したりしますよね。でも最近は、薬はいろんな物質が百万とか何百万個もあるから、何がどうやって効くかはネズミが何匹いてもわからない。それも例えば分子のレベルで、コンピュータの中でいろんな薬を分子に作用させて、どうやって効くかを調べる。そうすると、有望な薬がわかる。そうやってできた薬が今実際使われていて、例えばガンや白血病の特効薬になってたりするんですね。

僕が子どもの頃、某車メーカーのCMで、「みなさんの安全のために毎日2台の車の衝突実験をしてます」というのがあったよね。お父さんお母さん、たぶん覚えていると思うけれど。ということは、今の話は車2台をつぶさなくても、スーパーコンピュータにインプットすればシミュレーションできるということですか?
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実際、今の自動車会社はスパコンの中で山のように車をつぶしちゃってるんですよ。

えぇ〜!
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とても数え切れないぐらい。

はぁぁ!
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それだけじゃなく、例えばレースでも速く車を走らせるためにレーシングカーに羽とかついているから一生懸命押さえつけたりコーナーを速く曲がったりするわけで、F1のチームはみんな大きなスパコンを持っていて、そういうF1の車を全部スーパーコンピュータの中で実現して、レースコースに着く前に10万回ぐらいレースをやっている。

それでいろんなエンジンの状況とかタイヤの磨耗とか…。
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そう、「羽をどうやってやればいいか?」とか「雨が降ってきたらどうすればいいか?」とか、だいたいシナリオを10万回ぐらい。

「雨が降った」という想定もあるんですか?
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そうです。

雪とか?
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雪は、さすがにF1のシーズンに降らないので。

風向きとか?
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風向きはもちろん。

すごい! そこに生身の人間のドライビングテクニックが加わるわけですから、その人の腕前などはインプットできないわけですか?
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それもある程度インプットして。

えぇ〜! 「片山右京さんだったらこうだった」とか「高木虎之助さんだったらこうだ」とか(笑)?
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例えば。

今、日本の歴代のレーサーの中で最も腕のいい人、それは誰ですか(笑)?
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そこまでは(笑)。それはたぶん企業秘密だと思います。

アハハハハ。すごい!
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そういういろんな工業製品とか新幹線が静かになるとか、例えば災害を予測したりとか…。天気予報もそうですよね。最近、天気予報もだいぶ当たるようになっていて、よく当たるのはやっぱりスーパーコンピュータで天気をものすごくきめ細かくシミュレーションをしてるから。

そうなんですか。気象予報士さんの独断でというわけではなく、ベースがあって気象予報士さんが肉付けをする。
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そうですね。

やっぱりベースはスパコンの活躍があるということですね。
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そうです。それをさらにずーっと伸ばしていくと、例えば地球温暖化のより人類が直面する大きな問題などもスパコンが応用されるわけですね。

ほぉ〜。
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正確にはちょっと違うんだけれど、一応そういう同じようなやり方で「将来は天気がどうなる」とか、そういうものまでできる。

へぇ〜。
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だから、そういうことに使ったり、逆に過去でいえば、例えば「月がどうやってできたか?」。今、月ができたのは惑星があって、うーんと昔の地球に小さめの惑星がバカンとぶつかっちゃって飛び散ったのがまた固まって月になったというのが定説ですが、僕が子どもの頃は全然違う説がいっぱいあったんですね。

ええ。
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例えば「月からわかれたんじゃないか?」とか、「もともと外からやってきた月が地球につかまったんじゃないか?」とかいろんな説があったんですよ。今はそういう説に落ち着いたのは、それもスーパーコンピュータで昔起こったことをいろいろシミュレーションしてみたら、それが一番確からしい。そういうことがわかって、月はたぶんこうやってできたんだろうという説に固まったんですね。

へぇ〜。先生、今40代後半ですけれど…。
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ハハハ、そうですね。

スパコンの研究は、一生ものですよね。開発研究はずっとやり続けるわけですよね。
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まぁ、そうですね。僕らコンピュータ屋さんにとってみれば、今あるスパコンは過去の作品なわけですね。つくっちゃったらそのままで、改良はできるけれど。だから、車をつくるでも何でもそうですが、つくったものは過去の作品だけれど、見るとやっぱり「ここをこうしたかった」とか「技術が進歩すれば、ここはこうできる!」とかいっぱいあるわけですよ。

ええ。
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「TSUBAME2.0」だって自画自賛すればいろいろよくできてると思うけれど…。でも、「ここダメだ」とか「ここをこうしたいな!」とかいっぱいあるわけですよ。それをまた次のマシーンに活かしていく。そのためにいっぱい研究しなきゃいけなくて…。

はい。
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そうすると、次のマシーンがより速くなる。今の「TSUBAME」と比べると、「TSUBAME3.0」があって、それはたぶん何十倍かまた速くなる。そうやって、どんどんどんどん速くなっていって、もっといろんな難しい問題が解けるようになる。

今の30秒だけを聴いた人ってF1の話としか思わないかもしれないけれど、それと似てますね、開発というのは。
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そうですね。だから、やっぱり立ち止まれない。F1などもそうですが、ルールがあってつくるわけですが常に改良して、でも次の年の車はやっぱり全然違う進化した車にするわけですよね。

ええ。
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それと一緒で、やっぱりある物をつくると、次のやつは根本的にいろんな改良をしたり進化させる。でも、それは常に勉強の過程があって、ほかの物を見たり、実際に使ってもらった人の様子を見てやる。もちろん、研究室で研究して「こういう新しいことができる」という知恵を全部入れて、次のスパコンをつくる。そういうことを今までみんな何十年も繰り返してきて、昔のスパコンと比べると今は何千万倍も何億倍も速くなったわけです。

わかりました。先生、陰ながら応援しております。
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はい、ありがとうございます。

今週のサイコーはスパコンの先生、東京工業大学教授の松岡聡先生でした。ありがとうございました。
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ありがとうございました。

松岡さんの話、久しぶりにおもしろかったですね。またお会いしたいなぁ。スーパーコンピュータの世界、これも可能性は無限大です。ちょっとうかがったんですが、これまでの経歴をインプットして今後の病気に関するインフォメーションとか、「自分がいくつまで生きるか?」これもやっぱりスーパーコンピュータの世界では研究されてるんですって。興味があったら、みんなスパコンの世界を目指すのもいいんじゃない。日本はやっぱりこういうの得意なんだ、日本人は!それでは、来週も夕方また5時半に会いましょうね。キッズのみんなも楽しい週末を。バイバ〜イ!